• 更新日 : 2023年12月27日

ファシリ―テーターとは?司会との違いや役割・必要なスキルを解説

ファシリ―テーターとは?司会との違いや役割・必要なスキルを解説

ファシリテーターとは、会議や研修などを円滑に進める役割を担う人のことです。この記事ではファシリテーターの定義を司会などとの違いに着目して説明し、ファシリテーターが注目される背景、ファシリテーターの必要性、求められるスキルや育成方法について解説します。自社でファシリテーターの導入を検討する際の参考にしてください。

目次

ファシリテーターとは?

ファシリテーターとは、会議や研修などの場で参加者の積極的な意見交換を促したり、中立的な立場で意見調整を行ったりしながら、効率的によりよい結果を導き出す役割を果たす人のことです。以下ではファシリテーターの定義について、司会やネゴシエーターとの相違点にも着目しながら解説します。

ファシリテーションとは?

ファシリテーター(facilitator)とは「ファシリテーション(facilitation)」の役割を担う人のことです。ファシリテーションとは、会議や研修などを円滑に進めるためのサポートのことを指します。具体的には、参加者の意見交換を通じて相互理解を図り、意見調整を行いながら、効率的に合意形成を促すことを意味します。

司会との違い

ファシリテーターと同様に、会議などの進行役として知られているものに司会があります。司会はプログラム通りに会議などを進行する役割を果たしますが、ファシリテーターのように参加者の発言を促す場面は非常に限られています。会社の方針をトップダウンでメンバーに落とし込むための会議や、定例の報告会といった場で司会の役割が重要になります。

ネゴシエーターとの違い

ネゴシエーター(negotiator)とは「ネゴシエーション(negotiation)=交渉」の役割を担う人のことです。具体的には取引などにおいて利害関係が対立する相手に対して、説得術や傾聴術などのスキルを駆使して交渉し、合意形成を目指します。

ネゴシエーターは利害関係の異なる人々との間で合意形成を目指すのに対し、ファシリテーターは必ずしも利害関係が対立するメンバー間での合意形成を目指すわけではない点に大きな違いがあります。

ファシリテーター、ファシリテーションが注目されている背景

近年、少子高齢化の進展に伴い、企業においても多様な人材の活躍が求められています。従来は、強力なリーダーシップによるトップダウン型の経営が効率的と考えられていましたが、従業員の多様化が進んだことから、個人の価値観などを尊重した組織運営が求められるようになっています。

このような背景から、組織のメンバーの意見を引き出し、効率的に合意形成を行いながら成果を挙げることの重要性が高まりました。ファシリテーターは会議などの場に留まらず、マネジメント全般で必要不可欠な存在として注目されています。

ファシリテーターの目的および必要性

以下ではファシリテーターを設ける目的及び必要性を6点解説します。

① 会議・議論のゴールを明確にする

ファシリテーターは、会議や議論における合意形成を目指すことを目的としています。したがってファシリテーションの対象となる会議などのゴールを明確にする必要があります。テーマや目的、議論内容(アジェンダ)とともに、どこまで結論を出すかという形でゴールを明確にした上で、参加者と共有します。

➁ 場の雰囲気を良くする

ファシリテーションでは、会議や議論などにおいて、参加者に活発な意見交換をさせることが重要です。参加者が他人の意見を聞き、または意見を出しやすい場の雰囲気にするため、ファシリテーターが中立的な立場で積極的に傾聴するとともに、意見対立が生じた場合には議論が円滑に進むようにコントロールする必要があります。

③ 参加者の方の満足感を高め、発言頻度を増やす

会議や議論などにおける参加者の満足感を高めることで、発言頻度を増やし、活発な意見交換を促すことが重要です。そのためには参加者の相互理解が進むよう、コミュニケーションをうまく取れるようにする必要があります。

ファシリテーターは参加者それぞれの意見をうまく引き出したり、発言者が偏らないように質問を振ったりします。また、一人ひとりの発言を尊重し、それを発言者以外の参加者に伝えることで発言を躊躇する原因を取り払うなどの取り組みも求められます。

④ 合意形成を容易にする

意見を出し合った後に決定しなければならない事柄がある場合には、ファシリテーターが合意形成を促します。この場合、参加者がネガティブな感情を持たない形での合意が求められます。ファシリテーターが参加者全員に目配りし、少数派の意見にも傾聴しつつ、中立的な立場で意見の取りまとめを行い、合意形成につなげます。

⑤ 時間管理を適切に行う

会議や議論などのゴールを定めていますので、ゴールに到達するために時間管理を適切に行うこともファシリテーターの重要な役割です。活発な意見交換が行われる中でも、開始時に参加者間で共有したアジェンダを確実に消化してゴールに導きます。ファシリテーターの負担が大きい場合は別にタイムキーパーを設けて、この役割を担わせます。

⑥ 議論の文脈を明確にする

参加者から多くの意見が出て、活発な意見交換が行われる際に、議論の論点とのズレや脱線が起きがちです。そのような場合にファシリテーターは議論の文脈を明確にした上で軌道修正を行うことが求められます。

ファシリテーターに必要なスキル

ここでは、ファシリテーターが先に述べた目的を果たすために必要とされる8つのスキルについて解説します。

① ゴール・目的の設定能力

ファシリテーターが会議などを効率的に進めるために、ゴール・目的を設定することが重要です。加えてゴール・目的に導くためのアジェンダ作りも必要になります。会議などの企画者や依頼者が別にいるのであれば、事前にその考えなどを十分に把握し、ゴール・目的に反映する能力が求められることでしょう。

② 議論を活性化する雰囲気作り

ファシリテーションでは、参加者の活発な意見交換を通じて相互理解を進めながら合意形成を行う必要があります。そのため、ファシリテーターには議論を活性化する雰囲気作りのスキルが求められます。

具体的には参加者同士の関係性をしっかり把握し、関係性ができていない場合にアイスブレイクを企画・進行するスキルや、意見の出しやすい会議スタイル(少人数のグループ分け、ブレーンストーミングなど)を考えて実行に移すスキルなどが挙げられます。

③ 参加者への積極的な働きかけ・コミュニケーション能力

ファシリテーターは議論を活性化するために、参加者への積極的な働きかけを行い、アイディアや意見を十分に引き出さなければなりません。また、発言者の意見などを他の参加者に分かりやすく共有する形で、参加者同士の相互理解を促すことも重要です。そのためには質問力や傾聴力、意見を要約して伝える力など、高いコミュニケーション能力が求められます。

④ 内容のまとめ能力・抽象化力

活発な議論の末に多くの意見が出された場合、ファシリテーターはそれらの意見をまとめて結論につなげる必要があります。

議論が活発になると、各論に陥ってしまう場合もありますので、それぞれの意見に共通する内容や重要な内容などを基に集約し、議論を整理するためのまとめ能力、すなわち抽象化能力が求められます。

⑤ タイムマネジメント

議論が白熱することは良いことですが、そのために会議などで求められる結論に至らないのは本末転倒です。これを防ぎ、効率的に会議などを進行するために、ファシリテーターにはタイムマネジメントのスキルが求められます。

⑥ セカンドペンギン・下支えスキル

セカンドペンギンとはビジネスの世界では、新市場に最初に参入するファーストペンギンの成功を確認して追随する企業などのことを意味します。

ファーストペンギンがリーダーならば、セカンドペンギンは最初のフォロワーで、セカンドペンギンが他の多くのフォロワーに影響を与えると言われています。会議の場で考えると、最初に意見を言い出した人がファーストペンギンで、その意見への最初の賛同者がセカンドペンギンとなります。セカンドペンギンがいて初めてファーストペンギンの意見の価値が生まれることでしょう。

議論の活性化のため、ファシリテーターには、参加者の意見をセカンドペンギンとして下支えするスキルが求められます。

⑦ 価値観の中立性

ファシリテーターは参加者の多様な意見の取りまとめを行わなければならないため、様々な意見を公平なスタンスで受け入れる必要があります。そのため、ファシリテーターの価値観には中立性が求められます。

⑧ ロジカルシンキングスキル

ファシリテーターは議論の中で多くの意見が出された場合に、開始時に設定したアジェンダやゴールに従い適切に進行しなければなりません。

そのためには、参加者の発言内容を踏まえて論点を把握し、適切に整理できるロジカルシンキングスキルを高めることが重要です。

ファシリテーターを立てる上での注意点

ファシリテーターは会議などの円滑な進行に大きな役割を果たすため、その負担も大きくなりがちです。ここでは負担軽減という観点から、ファシリテーターを立てる上での注意点を2点解説します。

ファシリテーターのスキルによって会議の質が変化する

先述の通り、ファシリテーターには多くのスキルが求められます。ファシリテーターのこれらのスキルの保有状況により、会議の質が変わり、その成否が左右されると言えるでしょう。

必要によりファシリテーターのサポート役を置くなど、会議の進行をファシリテーター任せにせず、事前にアジェンダや目的、ゴールなどを参加者全員で十分に共有する形で、円滑に進められる仕組みを作ることも重要です。

ファシリテーターの負担が増える座組だと機能しない

ファシリテーターは会議などの進行におけるキーマンであるため、ファシリテーターがしっかりと機能する座組・体制とすることが重要です。

参加者が多い会議などの場合、ファシリテーターが1人では負担が大きくなり十分に機能しないことも考えられます。その場合にはファシリテーターを複数名設けるなど、負担が集中しない形にするとよいでしょう。

ファシリテーター育成に活用できる研修・制度

多くのスキルを求められるファシリテーターを効率的に育成するために様々な研修や制度が用意されています。ここでは主なものを4つ紹介します。

社内ファシリテーター養成制度(フランクリン・コヴィー・ジャパン提供)

社内ファシリテーター養成制度は、「7つの習慣」の著者、スティーブン・R・コヴィー博士が共同創業者のフランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社が提供する、社内ファシリテーターの養成プログラムです。

この養成プログラムを修了した社内ファシリテーターが、同社とのライセンス契約によってフランクリン・コヴィーの研修プログラムを自社内で実施することができます。参加者が多い研修の場合、内製化によってコストダウンを図ることができます。

参考:社内ファシリテーター養成制度 | フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社

ファシリテーション&ネゴシエーション(グロービス提供)

グロービス経営大学院が提供する講座「ファシリテーション&ネゴシエーション」では、関係者との合意形成という意味で同じ活動である、ファシリテーションとネゴシエーションのスキルを同時に習得できます。ゴールや論点の設定方法など、会議や交渉の準備についてマスターし、実践的なロールプレイングを通じて理解を深めていく形式の講座です。

参考:ファシリテーション&ネゴシエーション講座|グロービス経営大学院 創造と変革のMBA

ファシリテーション研修(インソース提供)

株式会社インソースが提供するファシリテーション研修は、ファシリテーターに求められる4つのスキル(場のデザイン、対人関係、構造化、合意形成)を習得するプログラムを提供しています。ファシリテーター役と参加者役に分かれ、ロールプレイング形式の模擬会議での実践を通してスキルを習得します。

参考:【研修セミナー公開講座】ファシリテーション研修|株式会社インソース

ファシリテーター資格認定講座(Carritra提供)

株式会社Carritraが提供するファシリテーター資格認定講座では、「人の成長の支援」を楽しくゲーム感覚で学ぶカリキュラムが提供されています。グループファシリテーションの進行方法を学び、キャリアデザイン、キャリア形成や、コミュニケーション、モチベーションアップなどの研修やセミナー、グループファシリテーションが行えるようになる講座です。

参考:ファシリテーター資格認定講座(CTF) | Carritra

ファシリテーターを育成し、自社のマネジメントのレベルアップを

ファシリテーターは会議や研修などを円滑に進行し、効率的に合意形成を行うためのキーマンであるため、企業では必要不可欠な人材です。また、人材の多様性も進む中で、従業員それぞれの価値観を尊重しながら組織を運営することが求められており、会議などに限らず、マネジメント全般においてファシリテーターの役割が重要と言えるでしょう。ファシリテーターを自社で育て上げ、マネジメントのレベルアップを図りましょう。


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