• 作成日 : 2022年9月2日

労災保険とは?手続き方法と適用範囲を解説!

労災保険とは?手続き方法と適用範囲を解説!

労災保険とは、労災事故にあった労働者に対して、療養補償給付や休業補償給付などを行う社会保険制度です。業務上の事故に限らず、通勤中の事故、仕事が原因で発症する病気も労災保険の適用範囲とされています。給付を受けるには申請方法に従った手続きが必要で、会社にやってもらうだけでなく自分で請求することができます。

広告

労災保険とは?

労災保険は労働者を対象に、労災事故発生時などに必要な給付を行う社会保険制度です。労働者の仕事中や通勤中にした怪我、仕事によって発症する病気(白血病や肺がん、皮膚がん、甲状腺がん、腰痛、難聴、潜水病、高山病、伝染性疾患など)、長時間労働によって発症する病気(脳出血やくも膜下出血、脳梗塞、心筋梗塞、狭心症など)、仕事による精神的な負担から発症する精神疾患(うつ病など)に対して、保険給付を行います。労災保険から保険給付を受けられるのは労働者に限られ、事業主や役員は基本的に労災保険の対象外とされます。

労災保険の対象者とされる労働者とは、労働基準法の定義に基づく労働者です。労災保険は労働者災害補償保険法に基づく保険制度で、労働者災害補償保険法は労働基準法とセットになっている法律です。このため労災保険の対象となる労働者は、労働基準法の定義による労働者とされています。

広告

労災保険の適用範囲と条件

労働者の怪我や病気が労災保険の適用範囲かどうかは、次の2つの条件で判定されます。

  • 業務遂行性
  • 業務起因性

業務遂行性とは、労働者の怪我や病気がどのようなときに発生したかを問うものです。雇い主や上司の支配下にあることを意味し、指示を受けている状態であれば業務遂行性があると判断されます。

業務起因性とは、労働者の怪我や病気が何を原因にしたものかを問うものです。例えば仕事中の怪我でも、同僚との揉めごとで殴られたり、犯罪者の侵入で切りつけられたりした場合に業務起因性はないと判断されます。

労働者の怪我や病気が労災であると認められるためには、業務遂行性と業務起因性の2つがあると判断される必要があります。しかし、事業主の支配下にあり、事業場の施設内で業務遂行中の事故は業務遂行性と業務起因性の2つがあり、労災であると認められます。

広告
広告

労災保険の申請手続き

労災保険の申請手続きは、以下の方法で行いますが、通常は被災労働者本人ではなく、事業主が手続きをします。

  1. 請求書を入手する

    労災保険の請求書は以下の厚生労働省ホームページからダウンロードできます。

    労災保険給付関係請求書等ダウンロード|厚生労働省

    印刷して使用しますが、直接入力できるファイルもダウンロードできるようになっています。申請する労災保険の種類によって請求書が違うため、間違わないように注意が必要です。

  2. 必要事項を記入する

    記入する必要事項は正確に、わかるように記述することが求められます。請求書のダウンロード先には記載例もあるため、確認しながら記入できます。

  3. 事業主証明欄に記入してもらう

    労災保険の請求書には事業主証明欄があり、記入は事業主が行うため、記入を依頼します。断られた場合は「証明拒否理由書」を準備します。証明拒否理由書は、労災保険の事業主記入欄への記入を断られた場合に、添付して提出する書類です。証明拒否理由書を添付することで事業主記入がなくても請求書を提出することができるようになります。

  4. 労働基準監督署に提出する

    労災保険の請求書の提出先は、労働基準監督署です。労働者自身の住所を管轄する労働基準監督署ではなく、勤め先を管轄する労働基準監督署へ提出します。

広告
広告

労災保険の補償内容

業務や通勤による病気や怪我に対して、次の表の補償内容が労災保険から行われます。

保険給付の種類対象内容
療養補償等給付(業務災害のとき)
療養等給付(通勤災害のとき)
療養を受けるとき療養に必要な給付
休業補償等給付(業務災害のとき)
休業給付(通勤災害のとき)
労働することができず、賃金を受けられないとき(給付基礎日額の60%)×休業日数
傷病補償等年金(業務災害のとき)
傷病等年金(通勤災害のとき
療養開始後1年6カ月を経過しても治癒しないで、傷病等級に該当するの障害程度にあるとき障害等級に応じて給付基礎日額の313~245日分の年金
障害補償等給付(業務災害のとき)
障害等給付(通勤災害のとき)
障害等級に該当する障害が残ったとき障害等級に応じて給付基礎日額の313~131日分の年金、または給付基礎日額の503~131日分の一時金
遺族補償等給付(業務災害のとき)
遺族給付(通勤災害のとき)
労働者が死亡したとき遺族の人数に応じて給付基礎日額の245~153日分の年金、または給付基礎日額の1000日分の一時金
葬祭料(業務災害のとき)
葬祭給付(通勤災害のとき)
死亡した労働者の葬祭を行うとき315,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額
介護補償等給付(業務災害のとき)
介護給付(通勤災害のとき)
必要な介護を受けているとき常時介護の場合は171,650円、随時介護の場合は73,090円

このほかに、二次健康診断等給付があります。また休業(補償)等給付、傷病(補償)等年金、障害(補償)等給付、遺族(補償)等給付には特別支給金の制度もあります。

仕事が原因で病気や怪我をした場合は労災保険の給付を受けよう

労働者が仕事中や通勤中の事故で怪我をしたり、仕事によって病気になったりした場合に、労災保険から必要な給付が行われます。治療などの医療費や、仕事ができずに休む場合の休業補償などです。怪我が治っても障害が残った場合にも、障害の程度に応じた補償が行われます。そのほかにも不幸にして死亡してしまった場合の給付、介護が必要になった場合の給付などもあります。

労災保険の給付は、申請手続きをしなければ受けられません。通常は会社が手続きしますが、労災保険の給付は労働者が自ら申請手続きしても受けることができます。「面倒くさい」、あるいは「労災事故を知られたくない」といった理由から、労災保険申請手続きをやりたがらない会社も残念ながらありますが、労災隠しという違法行為です。労災保険の給付や申請方法を理解し、当てはまる場合は給付を受けるための申請を自ら行いましょう。

広告

よくある質問

労災保険とはなんですか?

労働者が労働災害(労災)にあった場合に、補償のための給付を行う社会保険制度です。詳しくはこちらをご覧ください。

労災保険の適用範囲について教えてください。

仕事中や通勤中の怪我、仕事に起因して発症する病気、これらの怪我・病気による障害や介護や死亡に対して、労災保険から給付が行われます。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:坪 義生(社会保険労務士)

じんじ労務経営研究所代表(社会保険労務士登録)、労働保険事務組合 鎌ヶ谷経営労務管理協会会長、清和大学法学部非常勤講師、「月刊人事マネジメント」(㈱ビジネスパブリッシング)取材記者。社会保険診療報酬支払基金、衆議院議員秘書、㈱矢野経済研究所、等を経て、91年、じんじ労務経営研究所を開設。同年より、企業のトップ・人事担当者を中心に人事制度を取材・執筆するほか、中小企業の労働社会保険業務、自治体管理職研修の講師など広範に活動。著書に『社会保険・労働保険の実務 疑問解決マニュアル』(三修社)、『管理者のための労務管理のしくみと実務マニュアル』(三修社)、『リーダー部課長のための最新ビジネス法律常識ハンドブック』(日本実業出版社、共著)などがある。

関連記事