• 作成日 : 2023年1月27日

雇用調整助成金とは?令和4年12月以降の特例措置(コロナ特例)についても解説

雇用調整助成金とは?令和4年12月以降の特例措置(コロナ特例)についても解説

雇用調整助成金とは、事業主が労働者に支払う休業手当等の一部を助成する制度です。新型コロナウイルス感染症の流行に伴う特例措置として、助成率と上限額が引き上げられています。期間は令和4年11月30日まででしたが、12月以降も延長され一定の経過措置を受けることが可能です。当記事では雇用調整助成金の概要と申請方法を紹介します。

雇用調整助成金とは?

雇用調整助成金とは、経済状況の悪化などが原因で事業の縮小を余儀なくされた事業主に対し、雇用を維持するためにかかる費用の一部を助成する制度です。助成を受けるには下記の要件を全て満たす必要があります。

  1. 雇用保険の適用事業所であること。
  2. 売上高や生産量など事業活動を示す指標について、直近3ヶ月間の月平均値が前年同期に比べて10%以上減少していること。
  3. 従業員(雇用保険被保険者)数および派遣労働者数など雇用量を示す指標について、直近3ヶ月間の月平均値が前年同期に比べて下記基準以上に増加していないこと。
    • 中小企業の場合は10%超かつ4人以上
    • 大企業の場合は5%超かつ6人以上
  4. 実施する雇用調整が一定の基準を満たすこと。
    • 休業の場合
      労使間の協定により、所定労働日の全一日にわたって実施されること。または、従業員(雇用保険被保険者)全員を対象に、一斉に1時間以上実施されること。
    • 教育訓練の場合
      休業の場合と同様の基準に加え、教育訓練の内容が職業に関する知識・技能・技術の習得や向上を目的とするものであり、当該受講日は教育訓練以外の業務に就かないこと。
    • 出向の場合
      対象期間内に開始され、3ヶ月以上1年以内に出向元事業所に復帰すること。
  5. 過去に雇用調整助成金を受給したことのある事業主が新たに申請する場合は、直前の対象期間における満了日の翌日から起算し1年を超えていること。

受給額は令和4年8月1日現在、対象労働者1人あたり8,355円を上限とし、負担額に下記の助成率を乗じた金額です。また、教育訓練を実施した場合は1人につき1日あたり1,200円加算されます。

  • 中小企業の助成率:2/3
  • 大企業の助成率:1/2

対象期間は、休業・教育訓練の場合、1年間で最大100日、3年間で最大150日です。出向の場合は、最大1年間受給することができます。

参考:雇用調整助成金 |厚生労働省

令和4年12月以降の雇用調整助成金の特例措置(コロナ特例)の経過措置とは?

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、特例措置として助成率および上限額が引き上げられました。特例措置の対象期間は令和4年11月30日まででしたが、期間が延長され12月以降も一定の経過措置を受けることが可能です。ここでは特例措置、いわゆるコロナ特例と経過措置について解説します。

経過措置の対象範囲

令和2年1月24日から令和4年11月30日までの間に休業等でコロナ特例を利用した事業所が経過措置の対象となります。経過措置の期間は令和4年12月1日から令和5年3月31日までです。
生産指標と雇用量要件は通常制度と同様ですが、生産指標が直近3ヶ月の月平均で前年・前々年・3年前同期比で30%以上減少している場合は、特に業況が厳しい事業主として特定措置を受けることができます。

さらに、コロナ特例では学生アルバイトなど、雇用保険被保険者以外の従業員も助成の対象です。該当する場合は、緊急雇用安定助成金を受給することができます。助成内容や申請方法については雇用調整助成金と同様です。

なお、コロナ特例を利用していない事業主が令和4年12月以降新たに雇用調整助成金を申請する場合は、コロナ特例ではなく通常制度に則った申請となります。ただし、申請理由が新型コロナウイルス感染症の影響によるもので、対象期間の初日が令和4年12月1日から令和5年3月31日の間に該当する場合は支給要件が一部緩和されるため、申請前に十分確認しましょう。

参考:雇用調整助成金(新型コロナ特例)|厚生労働省

経過措置の内容

コロナ特例を利用した事業主は、経過措置期間中も引き続き助成率ならびに上限額が引き上げられます。経過措置期間における助成率および上限額は下記の通りです。

  • 助成率

    助成率は中小企業と大企業で異なります。また、特に業況の厳しい事業主が解雇等を行っていない場合は助成率が引き上げられるため、申請する際は業務状況を今一度確認してみましょう。

    対象期間の初日令和4年12月1日~令和5年1月31日令和5年2月1日~3月31日
    中小企業原則2/32/3
    特に業況が厳しい事業主に該当し解雇等行っていない場合9/10
    大企業原則1/21/2
    特に業況が厳しい事業主に該当し解雇等行っていない場合2/3
  • 上限額

    上限額については、企業規模に関わらず一律です。特に業況が厳しい事業主は一定期間上限額が引き上げられます。

    対象期間の初日令和4年12月1日~令和5年1月31日令和5年2月1日~3月31日
    原則8,355円8,355円
    特に業況が厳しい事業主9,000円

令和5年1月末日をもって、特に業況が厳しい事業主に対する特例が廃止となるため気を付けましょう。
2月以降は、原則に則った助成率および上限額で雇用調整助成金を受給することが可能です。なお、経過措置期間中に教育訓練を実施した場合は、1人につき1日あたり2,400円加算されます。

参考:令和4年12月以降の雇用調整助成金の特例措置(コロナ特例)の経過措置について|厚生労働省

雇用調整助成金の支給申請の手続きは?

ここからは、雇用調整助成金の支給申請手続きを具体的に紹介します。申請手続きの流れは下記の通りです。

  1. 休業等計画策定・労使協定締結
    まず、休業・教育訓練・出向などの具体的な内容を検討します。計画届が作成できたら、労使間で休業に関する協定を締結しましょう。
  2. 休業等の実施
    計画届に従い休業・教育訓練・出向を実施します。
  3. 支給申請
    休業等の実績に基づき、雇用調整助成金の支給申請を行います。なお、申請は支給対象期間ごとに実施する必要があり、申請期限は対象期間末日の翌日から2ヶ月以内です。
  4. 労働局による審査
    申請内容について、労働局で審査が行われます。
  5. 支給決定
    支給が決定したら、助成金が振り込まれます。

申請から支給までは概ね1ヶ月程度かかります。また、経過措置期間中は特例として計画届の提出は不要です。

雇用調整助成金の支給申請に必要な書類は?

続いて、雇用調整助成金の支給申請に必要な書類を紹介します。申請に必要な書類は下記の通りです。

  1. 雇用調整事業所の事業活動の状況に関する申出書(様式特第4号)
    生産指標の低下が確認できる書類も必ず添付しましょう。売上簿・営業収入簿・会計システムの帳簿・客数データ・客室等の稼働率など、売上げ等がわかる既存書類の写しでも代替可能です。
  2. 支給要件確認申立書・役員等一覧(様式特第6号)
    計画届に役員名簿を添付した場合は役員等一覧の提出は不要です。
  3. 休業・教育訓練実績一覧表(様式特第9号)
  4. 助成額算定書(様式特第8号)
  5. (休業等)支給申請書(様式特第7号)
  6. 休業協定書
    労働組合がある場合は組合員名簿、ない場合は労働者代表選任書を添付しましょう。3の休業・教育訓練実績一覧表(様式特第9号)に氏名等の記載があれば省略することも可能です。
  7. 事業所の規模を確認する書類
    既存の労働者名簿および役員名簿を提出しましょう。
  8. 労働・休日の実績に関する書類
    出勤簿やタイムカードの写しなどを提出しましょう。必要に応じて就業規則または労働条件通知書の写しなどを添付してください。
  9. 休業手当・賃金の実績に関する書類
    賃金台帳や給与明細の写しなどを提出しましょう。必要に応じて給与規定または労働条件通知書の写しなどを添付してください。

なお、雇用調整助成金の支給申請は事業所の所在地を管轄している都道府県労働局または公共職業安定所(ハローワーク)にて受け付けています。郵送やオンラインによる申請も受け付けているため、申請する際は活用してみましょう。

参考:雇用調整助成金・産業雇用安定助成金オンライン受付システム|厚生労働省

休業支援金も期限が延長に

コロナ特例の延長に伴い、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の期限も延長されました。
休業支援金・給付金とは、新型コロナウイルス感染症の拡大および緊急事態措置・まん延防止等重点措置の影響で休業を余儀なくされた労働者のうち、休業中に休業手当を受け取ることができなかった方に支給される給付金です。

当初は令和4年11月30日までの休業が対象でしたが、コロナ特例の経過措置と合わせて令和5年3月31日まで延長されています。ただし、給付率は80%から60%に減額されているため注意しましょう。

参考:新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金|厚生労働省

制度の概要を理解し雇用調整助成金を活用しよう

雇用調整助成金について紹介しました。雇用調整助成金とは、経済状況等の悪化が原因で事業規模の縮小を余儀なくされた事業主に対し、雇用を維持するためにかかる費用の一部を助成する制度です。雇用保険の適用事業所が対象で、雇用調整は休業・教育訓練・出向が該当します。

現在新型コロナウイルス感染症の流行に伴う特例措置、いわゆるコロナ特例で助成率と上限額が引き上げられており、令和5年3月31日までは経過措置を受けることも可能です。長引くコロナ禍で経済状況が不安定な中、制度の概要を正しく理解し雇用調整助成金を活用してみましょう。

よくある質問

雇用調整助成金とは?

雇用調整助成金とは、経済状況の悪化が原因で事業規模の縮小を余儀なくされた事業主に対し、雇用の維持にかかる費用の一部を助成する制度です。雇用調整には休業・教育訓練・出向などが該当します。詳しくはこちらをご覧ください。

令和4年12月以降の雇用調整助成金の特例措置(コロナ特例)の経過措置とは?

令和4年11月30日までは、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う特例措置(コロナ特例)で助成率と上限額が引き上げられていました。期間が延長され、12月以降も一定の経過措置を受けることが可能です。詳しくはこちらをご覧ください。


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