• 更新日 : 2023年6月16日

離職票は必要?離職証明書との違い、再発行の方法、退職時・失業保険の手続きを解説

離職票は必要?離職証明書との違い、再発行の方法、退職時・失業保険の手続きを解説

離職票は、従業員が退職した際、企業がハローワークで退職手続きをすると発行される書類です。退職した従業員が雇用保険の求職者給付、いわゆる失業保険を受給するためには、離職票が必要となります。

離職票の発行はどのようにして申請し、いつ従業員に交付されるのでしょうか。離職証明書との違いや求職者給付の手続きについて解説します。

離職票とは?

離職票とは、従業員が退職した際にハローワークで交付される書類です。離職票は、退職した従業員が再就職先が決まるまで受け取ることができる求職者給付の基本手当(いわゆる失業手当)を受給するために必要となります。

雇用保険の被保険者であった従業員が離職した際、企業がハローワークへ「雇用保険被保険者資格喪失届」とともに「雇用保険被保険者離職証明書」を提出すると、その離職証明書に基づいて離職票が交付されます。

離職票が必要な場合

企業が「雇用保険被保険者離職証明書」を作成するのは、雇用保険の被保険者であった従業員が離職票の交付を希望するときです。ただし、従業員が59歳以上の場合は、希望の有無にかかわらず「雇用保険被保険者離職証明書」を提出し、ハローワークで発行された離職票を退職した従業員に交付する必要があります。

いつ離職票が交付されるのか

退職予定の従業員が離職票を希望した場合の「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」の提出期日は、「被保険者ではなくなった日の翌日(退職日の翌々日)から起算して10日以内」です。

従業員退職後、ハローワークの窓口に書類を持参すれば即日離職票が交付されますが、郵送や電子申請など、手続き方法によって交付までの日数が異なります。また、退職者へ交付する際、離職票を郵送するということもあるでしょう。したがって、退職後2週間から3週間程度で離職票が退職者に交付されるのが一般的です。

離職票がないと退職した従業員は求職者給付を受給することができません。給与計算に時間がかかると、提出期日までに退職手続きが間に合わないことがあるため注意が必要です。退職予定の従業員がいる場合には、離職票の発行の希望の有無、退職届の確認、ハローワークへ提出する書類の作成など、できるだけ事前に準備することが大切です。手続き後離職票が発行されたら、なるべく早く退職した従業員に交付しましょう。

離職票が不要な場合

従業員が、「離職後すぐに再就職するつもりがない」「再就職先が決まっているので求職活動をする予定がない」などの理由で離職票の交付を希望しないときは、従業員が59歳以上の場合を除き、「雇用保険被保険者離職証明書」の提出は不要です。したがって、このようなケースでは、離職票が交付されることはありません。

離職票と離職証明書、退職証明書、雇用保険被保険者証との違い

従業員退職時の雇用保険の手続きでは、離職票と離職証明書の違いを理解することが大切です。そのほか、雇用保険被保険者証や公的なものではなく企業が任意で発行する退職証明書との違いについても解説します。

離職証明書との違い

離職証明書は、退職する従業員が離職票の交付を希望する場合にハローワークへ提出する書類です。1枚目が事業主の控え、2枚目がハローワーク提出用、3枚目が退職者に交付する「離職票-2」の3枚複写の書式となっています。

雇用保険の資格喪失の手続きの際に離職証明書を提出すると、ハローワークから以下の書類が交付されます。

  • 雇用保険被保険者離職証明書(事業主控)
  • 雇用保険被保険者離職票‐1 資格喪失確認通知書(被保険者通知用)
  • 雇用保険被保険者離職票‐2
  • 雇用保険被保険者資格喪失確認通知書(事業主通知用)

「雇用保険被保険者離職票‐1 資格喪失確認通知書(被保険者通知用)」は、「求職者給付等払渡希望金融機関指定届」「雇用保険被保険者資格喪失確認通知書(事業主通知用)」とともに1枚の書類で発行されます。

「雇用保険被保険者資格喪失確認通知書(事業主通知用)」のみ切り離して会社で保管し、退職した従業員が求職者給付を受給する際に受取口座を指定する「求職者給付等払渡希望金融機関指定届」は、被保険者へ交付する際には切り離さないように注意しましょう。

離職票と離職証明書、退職証明書、雇用保険被保険者証との違い

引用:雇用保険事務手続きの手引き《令和5年4月版》|熊本労働局

退職証明書との違い

退職証明書は、退職した従業員が企業に在籍していたことや、退職した事実を証明するための書類です。企業が任意の書式で発行する書類であり、公的な機関が発行する証明書ではありません。退職証明書は、発行を希望する従業員がいる場合に交付します。

労働基準法第22条では、「使用期間」「業務の種類」「その事業における地位」「賃金又は退職の事由」ついて労働者が証明書の発行を請求した場合には、使用者に遅滞なく交付することを義務付けています。請求があった場合には、必ず発行しなければならない点に注意しましょう。

雇用保険被保険者証との違い

雇用保険被保険者証は、従業員の雇用保険加入手続きをした際にハローワークから交付される書類です。雇用保険加入を証明する大切な書類となりますので、ハローワークから交付されたら、従業員に必ず渡しましょう。被保険者証には、雇用保険の被保険者となった従業員の氏名や生年月日、雇用保険の被保険者番号が記載されています。被保険者番号は初めて雇用保険の被保険者となったときに割り振られ、転職して勤務先が変わったとしても、原則として変更されることはありません。

雇用保険被保険者証は、雇用保険の加入要件を満たす従業員が入社した際、ハローワークへ「雇用保険被保険者資格取得届」を提出すると発行される書類です。パートなど労働時間が短くて雇用保険に加入できなかった従業員が、労働時間や勤務日数の増加など労働条件を変更して雇用保険の加入要件を満たした場合にも、雇用保険加入の手続きが必要になります。

なお、週の所定労働時間が20時間以上あり、31日以上雇用される見込みがある従業員は、原則として雇用保険の被保険者となります。たとえ試用期間や研修期間であっても、企業は就労した初日(雇入れ日)を資格取得日として雇用保険の加入手続きを行わなければなりません。

雇用保険被保険者証との違い

引用:雇用保険被保険者証 見本|厚生労働省

離職票のもらい方、発行・送付までの流れ

ここでは、従業員が会社を退職した際のハローワークへの資格喪失届や離職証明書の提出から、離職票の発行、退職者へ交付されるまでの流れを説明します。

退職者に離職票が必要か確認する

「雇用保険被保険者離職証明書」を作成するのは、原則として退職者が離職票の交付を希望するときです。従業員が退職後すぐに転職して働く場合には、離職票は必要としません。従業員が退職する際には、退職届や退職願を事前に提出してもらうとともに、求職者給付を受給する予定かどうか、離職票が必要かどうかなど、希望の有無を必ず確認しましょう。

会社は離職証明書と資格喪失届を作成する

離職証明書には退職前の賃金額を記入する必要があるため、給与計算に時間がかかると提出までのスケジュールがタイトになることがあります。離職証明書や資格喪失届、添付書類の作成は、早めの準備が大切です。

退職者に離職証明書を確認してもらう

離職証明書のハローワーク提出用(3枚複写の2枚目)には、退職者が確認して署名する欄が2箇所あります。1つ目は離職証明書の「離職の日以前の賃金支払状況等」の内容の確認欄、2つ目が離職理由の「離職者本人の判断」の確認欄です。退職者に確認してもらう必要がありますので、注意が必要です。

会社がハローワークに離職証明書と資格喪失届を提出する

資格喪失届と離職証明書は、「被保険者ではなくなった日の翌日(退職日の翌々日)から起算して10日以内」に提出します。提出の際には、離職証明書のハローワーク提出用(3枚複写の2枚目)の枠外に事業主の捨印を押印するのを忘れないようにしましょう。ハローワークの窓口へ持参・郵送により提出する方法のほか、電子申請による提出も便利です。電子申請で手続きをする場合、入力方法や交付される書式に相違する部分はありますが、ベースとなる考え方は通常の手続き方法と同じです。

ハローワークが会社に離職票を発行する

資格喪失届と離職証明書を提出すると、退職者が求職者給付を受給する際に必要となる「雇用保険被保険者離職票-1」と「雇用保険被保険者離職票-2」をハローワークが発行します。離職票や資格喪失確認書の事業主控も発行されますので、会社で保管する書類と退職者へ交付する書類を間違えないように分けておきましょう。

会社が退職者に離職票を送付する

ハローワークから離職票を受け取ったら、退職者に交付します。従業員が退職後転居することも考えられますので、退職後の連絡先や住所・郵送先などは退職前に必ず確認しておきましょう。

離職票の書き方

離職証明書のハローワーク提出用(3枚複写の2枚目)には「離職の日以前の賃金支払状況等」の内容の確認欄と離職理由の「離職者本人の判断」の確認欄があります。

この2箇所は、原則として退職者が署名します。しかし、退職者が退職前に年次有給休暇を取得して出勤しないことや、転居して出勤が難しいケースもあり、退職者が署名できないケースもあるでしょう。そのような場合には、「すでに退職済であり、署名ができないため」「離職者は転居により署名ができないため」などと退職者が氏名を署名できない理由を記入し、事業主氏名を記載する(電子申請の場合は疎明書を添付)することで、退職者の署名に代えることができます。

【離職証明書のハローワーク提出用(3枚複写の2枚目)「離職の日以前の賃金支払状況等」の欄】

離職証明書のハローワーク提出用

引用:雇用保険事務手続きの手引き【令和4年10月版 】|厚生労働省

【離職証明書のハローワーク提出用(3枚複写の2枚目)離職理由の「離職者本人の判断」の欄】

離職証明書のハローワーク提出用

引用:雇用保険事務手続きの手引き【令和4年10月版 】|厚生労働省

退職後に離職票の交付を退職者から求められたときや届かない場合の対処法

退職時には従業員が離職票の交付を希望していなかったために離職証明書を作成しなかったが、「退職後の予定が変わって、やっぱり欲しい」などと離職票の交付を希望してくるケースがあります。退職者がしばらくしてから離職票の交付を希望してきた場合のように、退職時ではなくても、後日離職票の交付を受けることは可能です。すみやかに離職証明書を作成し、ハローワークで離職票の交付を受けましょう。

また、離職票を送付したが届かないと退職者が言ってくるケースもあります。このようなケースでは、退職後実家に帰ったり、転職先がある近隣に転居したりしていることが考えられるでしょう。離職票の郵送漏れや宛先不明で郵便局から返送されていないかを確認するとともに、退職者に転居前の住所に届いていないかを確認してもらうことが必要となります。

離職票が届かない場合、調査に手間と時間がかかるうえに、退職者とのトラブルにもなりかねません。退職者に直接手交できない場合には、退職後の連絡先や住所・郵送先などを退職前に確認しておき、簡易書留など届いたことが確認できる方法で郵送すれば、このような事態は防げるでしょう。

退職後一ヶ月経っても離職票が届かないと、退職者はいつ届くのかと不安に感じ、ハローワークに相談に行くこともあるでしょう。提出期限は「被保険者ではなくなった日の翌日(退職日の翌々日)から起算して10日以内」です。期限経過後に退職者がハローワークへ相談すれば、離職証明書の提出を求められることになります。また、雇用保険法には罰則の規定もあり、届出を怠れば「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられることもあります。

参考:雇用保険法 | e-Gov法令検索

もし離職票をなくしたら再発行できる?

退職者が離職票を失くした場合には、「雇用保険被保険者離職票再交付申請書」に必要な事項を記載してハローワークに申請することで、再発行が可能です。

退職者本人が申請することも、会社で申請することも、電子申請により申請することも可能です。申請者が退職者本人の場合は、運転免許証など本人確認書類を添付する必要があります。会社を管轄するハローワーク以外でも申請することは可能ですが、再発行を急ぐ場合には、会社を管轄するハローワークで手続きをしましょう。

ハローワークで失業保険の申請をするのに必要な書類

退職者が受給する雇用保険の代表的なものが、いわゆる「失業保険」と呼ばれる求職者給付です。求職者給付には、一般被保険者が受給する基本手当、高年齢被保険者が受給する高年齢求職者給付金、短期雇用特例被保険者が受給する特例一時金などがありますが、退職者はその中でも基本手当を申請するケースが多いでしょう。

求職者給付を申請するためには、退職者自身が自分の住所地を管轄するハローワークで求職の申し込みを行い、求職活動をする必要があります。

求職者給付を申請する際に必要となる書類には以下のものがあります。

  • 雇用保険被保険者離職票‐1 (「求職者給付等払渡希望金融機関指定届」のついたもの)
  • 雇用保険被保険者離職票‐2
  • マイナンバーカード (持っていない場合は通知カードなどの個人番号確認書類と運転免許証など官公署が発行した本人確認書類が必要)
  • 6ヶ月以内の写真2枚(タテ 3.0cm×ヨコ 2.4cm)
  • 本人名義の預金通帳やキャッシュカード
  • 船員保険失業保険証や船員手帳(船員だった場合)

参考:(求職者の方へ)離職されたみなさまへ|厚生労働省 ハローワーク

離職証明書の賃金額や離職理由は正確に記載しましょう

離職票は、退職した従業員の求職活動期間中の生活を支えるために必要な求職者給付を申請する際に必要となる重要書類です。雇用保険の被保険者であった従業員が離職票の交付を希望するときや、59歳以上の場合は、企業は「雇用保険被保険者離職証明書」を提出し、ハローワークで発行された離職票を退職した従業員に交付しなければなりません。

従業員の退職後、いつまでたっても離職票が送られて来ないと、退職者は不安を感じることでしょう。また、離職票には離職理由の「離職者本人の判断」の確認欄があり、企業が作成した離職証明書の離職理由と本人の認識している離職理由とで相違があるとトラブルになることがあります。

離職票は退職した従業員にとって重要な書類となります。トラブルを避けるためにも、離職証明書を作成する際には、過去に支払われた賃金額や離職理由を正確に記載しましょう。


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