• 更新日 : 2024年8月27日

ハイブリッドワークとは?生産性向上への効果的な導入や規則の変更方法

政府が推し進める働き方改革を背景に、多様な働き方が普及しています。テレワークやリモートワークなど、出社を要しない勤務形態も馴染みのあるものとなっています。

当記事では、テレワークとオフィス勤務を組み合わせたハイブリッドワークについて解説します。メリット・デメリットや導入方法なども紹介しますので、参考にしてください。

ハイブリッドワークとは?

「ハイブリットワーク」とは、従来型のオフィス勤務と、テレワークを組み合わせた新しい働き方を指す言葉です。ハイブリッドワークの導入によって、従業員個々の事情に合わせた勤務が可能となり、より柔軟な働き方を実現できます。多様な働き方を求める働き方改革やコロナ禍、従業員の要望などを背景に、ハイブリッドワークに注目する企業が増えています。

ハイブリットワークの例

ハイブリッドワークは、オフィスワークとテレワークを組み合わせた勤務形態です。具体的には、以下のような働き方を指します。

  • 週のうち3日はオフィスへ出社し、残りの2日は自宅でテレワークを行う
  • 毎週金曜日のみオフィスに出社し、月曜日から木曜日はテレワークを行う

上記のようなオフィスワークとテレワークの双方を取り入れた働き方が、ハイブリッドワークの代表例です。このような勤務形態では、オフィスワークとテレワーク双方のメリットを享受できます。また、希望する従業員のみがテレワークを行う選択的テレワークを指して、ハイブリッドワークとする企業もあります。

その日の業務に応じて、オフィスワークとテレワークを使い分けるような働き方もハイブリッドワークの例です。いずれにしても、ハイブリッドワークでは、オフィスか自宅のいずれかに勤務場所を固定しないのが特徴であり、勤務場所を自由に選択できる柔軟な働き方といえるでしょう。

テレワークとの違い

テレワークは、出社を要しない勤務形態です。自宅だけではなく、自宅外のサテライトオフィスやコワーキングスペースで作業を行う場合もありますが、本来の勤務場所であるオフィスに出社することはありません。

これに対して、ハイブリッドワークは、オフィスワークとテレワークを組み合わせた勤務形態であるため、オフィスへの出社が必要となる場合もあります。出社の可能性の有無という点で両者は異なった制度であるといえるでしょう。また、ハイブリッドワークをテレワークが包含された働き方と見ることも可能です。

ハイブリッドワークの導入率・割合

ハイブリッドワークが広まった背景には、コロナ禍によるテレワークの普及が存在します。コロナ禍においては、密を避ける必要性から、出社を要しないテレワークが一気に普及しました。しかし、テレワークにはコミュニケーションの希薄化や環境整備の問題、不向きな業務の存在など、課題も少なくありません。そのため、アフターコロナにおいては、従来型のオフィス勤務に戻す企業も多く見られました。

課題も存在するとはいえ、テレワークは生産性の向上や、多様な人材の雇用など、多くのメリットがある制度です。そのため、テレワークのメリットを享受しつつ、デメリットを軽減する働き方として、オフィス勤務と組み合わせたハイブリッドワークが注目されるようになりました。他にも多様な働き方を推進する政府の働き方改革や、柔軟な働き方を求める従業員の要望も背景として挙げられます。

デル・テクノロジーズとZDNET Japanが2023年6月に実施した「ハイブリッドワークに関する市場調査」によると、「在宅勤務と出社の併用」という回答は全体の36.6%でした。「ほぼ在宅勤務」の14.6%と合わせれば、過半数の組織でハイブリッドワークを実施していることになります。

これは、2023年5月の都内企業におけるテレワーク実施率の44.0%とも乖離した数字ではありません。東京都の例はテレワーク実施率であり、調査対象の差などもあることから一概に比較はできません。しかし、テレワークを含めてハイブリッドワークが注目されていることをうかがわせる結果といえるでしょう。

HubSpotは、2022年12月にアメリカやイギリス、日本などをはじめとする10か国の企業を対象に、ハイブリッドワークの実態調査を行っています。同調査は、5,000人以上を調査対象としており、その内訳は以下の通りです。

リモート勤務:1,283人(25%)

オフィス勤務:2,317人(46%)

ハイブリッド勤務:1,458人(29%)

約3割がハイブリットワークで勤務しており、世界的に見たハイブリットワークへの注目の高まりがうかがえます。

参考:

調査結果「最も生産性の高い働き方」はハイブリッドワーク|ZDNET Japan

テレワーク実施率調査結果 5月|東京都

ハイブリッドワーク実態調査|HubSpot

ハイブリッドワークのメリット

ハイブリッドワークには、多くのメリットが存在します。メリットを正確に把握し、導入の効果を最大化しましょう。

生産性を向上する

ハイブリッドワークでは、業務や従業員の状況に応じて、最適な勤務場所を選択可能です。そのため、オフィスワークやテレワークの一方のみの勤務形態に比べて、生産性の向上を望めます。

従業員の満足度を高める

ハイブリッドワークを導入すれば、育児や介護など、従業員が置かれている状況に合わせて、柔軟な働き方が可能となります。ハイブリッドワークによって、家庭と仕事の両立を図りやすくなり、従業員の満足度も向上するでしょう。

優秀な人材を確保する

親族の介護や、距離的な問題などからオフィスへの出社が困難な人材も存在します。そのような人材であっても、ハイブリッドワークであれば勤務可能です。ハイブリッドワークを導入すれば、今まで見逃していた優秀な人材も確保できるでしょう。

オフィスの有効活用・コスト削減につながる

ハイブリッドワークによって、テレワークの比率が高まれば、オフィススペースにも余裕が生まれます。その余裕を活かして、より効率的なオフィススペースの構築も可能です。また、スペースが不要となるため、より賃料の低いオフィスに移転することでコスト削減を図ることもできるでしょう。

ハイブリッドワークのデメリット

メリットの多いハイブリッドワークですが、デメリットも存在します。ひとつずつ見ていきましょう。

勤怠管理が煩雑になりやすい

ハイブリッドワークでは、オフィスワークとテレワークの双方について、勤怠管理が必要です。オフィスワークとテレワークのいずれか一方だけの場合よりも、労働時間をはじめとする勤怠状況の把握が困難となり、勤怠管理が煩雑化してしまいます。

コミュニケーションが希薄になりやすい

テレワークを含む勤務形態であるハイブリッドワークは、テレワークと同様に、従業員間のコミュニケーションが希薄化しやすい傾向にあります。また、オフィス勤務者と在宅勤務者の二分化が起きてしまう恐れもあるため、定期的な懇談会などを開催し、コミュニケーションの充実を図る必要があります。

人事考課が難しくなりやすい

ハイブリッドワークでは、勤怠状況の管理が複雑になる関係上、勤怠状況を基にした人事考課も複雑になりがちです。オフィス勤務と在宅勤務の双方が納得できる公平な評価基準を設ける必要があります。

セキュリティ面でリスクを抱えやすい

ハイブリッドワークでは、在宅やコワーキングスペースでの作業を行う場合もあります。そのような場合には、備品や支給品の紛失や盗難に注意が必要です。社外秘の情報が入った記録媒体などの持ち出しを厳重に管理しなければなりません。また、在宅勤務におけるパスワードや、IDの漏えいを防ぐセキュリティ体制も必要です。

ハイブリッドワークの効果的な導入方法

ハイブリッドワークのメリットを最大限に享受するためには、適切な方法で導入しなければなりません。導入における注意点を解説します。

業務の明確なルールを設ける

ハイブリッドワークは、業務内容や従業員の状況に応じて、勤務場所を選択できる制度です。しかし、選択する際の基準がなければ従業員は判断に迷うでしょう。スムーズな選択を促すためには、事前に業務について明確なルールを定め、依るべき根拠として提示することが求められます。

ITツールを幅広く活用する

ハイブリッドワークでは、コミュニケーションの希薄化という問題が生じます。そのような事態に対しては、チャットなどのコミュニケーションツールを活用し、交流することによって、希薄化を防止可能です。他にもテレワークに適した労務管理システムを導入するなど、ITツールを活用することがハイブリッドワークの導入において重要です。

評価制度を明確にする

ハイブリッドワークでは、オフィス勤務とテレワークの双方を平等に評価しなければなりません。不平等な評価制度は、従業員のモチベーションを下げ、最悪の場合、離職につながってしまいます。ハイブリッドワークの導入に際しては、オフィス勤務者と在宅勤務者の双方が納得できる評価制度を作る必要があります。

セキュリティ面の対策を行う

オフィスにおける情報セキュリティ体制が構築されていても、従業員の自宅やサテライトオフィスのセキュリティが万全でない可能性もあります。勤務場所となる自宅などの情報セキュリティ体制に気を配ることはもちろん、セキュリティに関する講習などを開催し、意識の向上にも努めなければなりません。

ハイブリッドワークに適したオフィス環境

ハイブリッドワークの導入に伴って、オフィスにおける席を固定しないフリーアドレスを併せて導入する場合もあります。フリーアドレスを導入すれば、オフィスのレイアウトの変更が必要となりますが、その際にはテレワークにより不要となった席をそのままとしないようにしましょう。空いたスペースの有効活用ができなくなります。

フリーアドレスは、コミュニケーションの促進を目的とした制度です。ハイブリッドワークでは、コミュニケーションが希薄化する傾向にあるため、それを補う意味でもコミュニケーションが取りやすい導線を作るなどの配慮が必要です。ただし、セキュリティには気を配らなければなりません。フリーアドレスでは、他のチームや部署のメンバーが周りにいることも多いため、機密性の高い会話を行えるスペースも設けましょう。

ハイブリッドワークの導入に伴う就業規則の変更方法

就業規則では、在宅勤務について変更や追加が必要です。ここでは、変更項目と例文を紹介します。

変更が必要な項目

就業規則では、在宅勤務について変更や追加が必要です。以下に変更項目を例文と併せて紹介します。

  • 定義

在宅勤務をどのように定義付けるか明らかとします。

例)「在宅勤務は、従業員の自宅その他会社の指定する場所における情報通信機器を用いた勤務をいう」

  • 対象者

対象となる従業員を特定します。

例)「在宅勤務は、希望者であって会社が適正と認める者を対象とする」

上記の他にも、テレワークにみなし労働時間制やフレックスタイム制を採用する場合であれば、労働時間について変更が必要です。また、テレワーク時の休憩や賃金、教育訓練などについて変更が必要となる場合もあります。詳しくは以下の資料を参考にしてください。

参考:テレワークモデル就業規則~作成の手引き~|厚生労働省

変更案を作成して経営陣の承認を得る

まず、就業規則の変更案を作成して、経営陣の承認を得る必要があります。実務担当の意見を踏まえたうえで作成し、経営陣と内容を協議しましょう。

従業員の意見書を作成する

就業規則の変更には、従業員代表の意見書が必要です。民主的な方法により選出したうえで、変更についての意見を求めましょう。なお、従業員代表の意見が反対であっても、変更に影響は及ぼしません。

労働基準監督署に必要書類を届出する

意見書を添えた就業規則変更届を労働基準監督署に提出します。この際には、変更後の就業規則も同時に提出することが必要です。窓口に直接持参するほか、郵送や電子申請も可能です。

変更内容を従業員に周知する

変更した就業規則は、従業員に周知しなければ効力を発揮しません。見やすい場所に掲示したり、書面を配布したりして周知を図りましょう。周知義務を果たさない場合には、労働基準法第106条違反となり同法第120条によって、30万円以下の罰金が科される恐れもあります。

参考:労働基準法|e-Gov法令検索

就業規則への意見書・就業規則(ワード)のテンプレート

「意見書をどのように作成すればよいのかわからない」「テンプレートに沿って就業規則の変更を行いたい」といった悩みを抱えている方もいるでしょう。そのような場合には、以下のテンプレートの利用が便利です。ぜひ、ご活用ください。

就業規則への意見書(ワード)

就業規則(ワード)テンプレート

ハイブリッドワークの導入で業務効率化を

コロナ過を経て、テレワークなどのオフィス外勤務もすっかり定着しました。アフターコロナにおいては、オフィス勤務に回帰する傾向も見られましたが、ハイブリッドワークという新たな選択肢も登場しています。ハイブリッドワークは、従業員にとってもメリットの大きな制度です。ハイブリッドワークを導入し、従業員のワークライフバランス実現に努めてください。


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