• 更新日 : 2026年8月4日

社会保険料の随時改定とは?3つの条件・月額変更届の書き方・残業や賞与の影響を解説

Point随時改定の条件と手続きとは?

社会保険料の随時改定は、固定的賃金の変動・2等級以上の差・支払基礎日数の3条件をすべて満たす場合に月額変更届の提出が必要です。

  • 残業代のみの増加は随時改定の対象外
  • 新保険料は変動月から4ヶ月目に適用
  • 提出漏れは保険料の過不足と遡及精算が発生

Q. 随時改定が必要な3つの条件は?

A. ①固定的賃金に変動があった、②変動後3ヶ月の平均報酬で2等級以上の差が生じた、③その3ヶ月すべてで支払基礎日数が基準以上、の3点をすべて満たす場合です。

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昇給・降格などで固定的賃金に大きな変動があった場合、年に一度の定時決定を待たずに標準報酬月額を見直す手続きが必要です。これを社会保険料の随時改定(月額変更)といいます。対象となる3つの条件を正しく把握し、月額変更届の提出漏れを防ぐことが、バックオフィス担当者の重要な実務のひとつです。本記事では、随時改定の要件・変更時期・手続きの流れをわかりやすく解説します。

社会保険の随時改定とは何か?

社会保険の随時改定とは、昇給・降給などで固定的賃金に大きな変動が生じた際、年に一度の定時決定を待たずに標準報酬月額を見直す手続きです。月額変更届を提出することで、給与と保険料の乖離を防ぎます。

健康保険・厚生年金の保険料は、給与の実額そのものではなく「標準報酬月額」という等級区分をもとに算出されます。この標準報酬月額が改定されるタイミングは、以下の2種類です。

手続き 別名 提出書類 時期
定時決定 年1回の改定 算定基礎届 毎年7月10日まで
随時改定 月額変更・月変 月額変更届 変動があり次第、速やかに

参考:随時改定(月額変更届)|日本年金機構

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随時改定と定時決定はどう違う?

随時改定は固定的賃金の変動に応じて随時おこなわれ、定時決定は毎年4・5・6月の報酬を基に年1回おこなわれます。定時決定が7月1日現在の全被保険者を対象とする年次業務であるのに対し、随時改定は変動のあった従業員のみが対象となる点が大きな違いです。

定時決定では、6月中旬以降に年金事務所から送付される算定基礎届に必要事項を記入し、毎年7月10日までに管轄の年金事務所へ提出します。決定した標準報酬月額は、その年の9月から翌年8月まで適用されます。

一方、随時改定には「いつまでに提出」という明確な期限がありません。昇給・降格などで賃金が変動した従業員が発生するたびに必要となるため、定時決定と比べて見落としが起きやすい手続きです。

社会保険の随時改定をすべき条件とは?

社会保険の随時改定は、以下の条件をすべて満たす場合に必要です。ひとつでも該当しない条件があれば、随時改定は不要です。

  1. 昇給または降格等により固定的賃金に変動があった
  2. 変動月以降3ヶ月間の平均報酬に基づく標準報酬月額と、変動前の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた
  3. 変動月以降3ヶ月間、すべての月で支払基礎日数が一定基準を超えた

参考:随時改定(月額変更届)|日本年金機構

1. 固定的賃金の変動

固定的賃金とは、支給額や支給率があらかじめ決められた賃金のことです。基本給・通勤手当・家族手当・住宅手当・役職手当などが該当します。日給や時間給の単価変更、割増賃金率の変更なども固定的賃金の変動に含まれます。

人事考課による昇給・降格はもちろん、結婚に伴う家族手当の新規支給や、引越しによる通勤手当の増減も対象になるため、給与改定以外の場面でも随時改定が必要になることがあります。

なお、変動の方向と等級差の方向が一致している必要がある点に注意してください。固定的賃金が増加した場合は標準報酬月額も2等級以上増加、固定的賃金が減少した場合は2等級以上減少している場合のみ随時改定の対象となります。

2. 標準報酬月額で2等級以上の差

標準報酬月額の等級は、健康保険で50等級、厚生年金保険で32等級に区分されています。変動後3ヶ月間の平均報酬をこの等級区分に当てはめ、変動前と比べて2等級以上の差が生じた場合に随時改定の対象となります。

たとえば、厚生年金の標準報酬月額が25等級の従業員が昇給し、以降3ヶ月の平均報酬が27等級以上に該当するようになった場合は要件を満たします。

ただし、以下のケースは2等級以上の差が生じていても随時改定の対象外です。

ケース 随時改定の要否
固定的賃金は増加、非固定的賃金の減少で標準報酬月額が2等級以上低下 対象外
固定的賃金は減少、非固定的賃金の増加で標準報酬月額が2等級以上上昇 対象外
標準報酬月額が上限・下限に該当し1等級のみの変動 対象(例外)

3. 支払基礎日数が17日以上

支払基礎日数とは、給与計算の対象となる日数のことです。随時改定の対象となるには、変動月以降の3ヶ月がすべて支払基礎日数の基準を満たす必要があります。1ヶ月でも基準を下回れば随時改定は行われません。

支払基礎日数の基準は、雇用形態によって異なります。

雇用形態 支払基礎日数の数え方 基準日数
月給制・週給制(通常の労働者) 休日を含む暦日数
※欠勤控除のある場合、所定労働日数から欠勤日数を控除した日数
17日以上
日給制・時間給制(通常の労働者) 出勤日数 17日以上
特定適用事業所の短時間労働者 出勤日数 11日以上

参考:随時改定(月額変更届)|日本年金機構

特定適用事業所とは、一定規模以上の事業所で社会保険の適用が拡大された事業所を指します。パートタイマーやアルバイトで社会保険に加入している短時間労働者については、この特例が適用されるため、見落としのないよう確認が必要です。

随時改定が適用される時期はいつから?

随時改定による新たな標準報酬月額は、固定的賃金の変動があった月から数えて4ヶ月目から適用されます。変動後3ヶ月間の平均報酬が確定してから、翌月に改定が反映される仕組みです。

たとえば、1月に昇給があり月末締め翌月20日払いの会社では、変動後の賃金が実際に支払われるのは2月・3月・4月の3ヶ月間となります。この場合の改定年月は5月です。

随時改定後の標準報酬月額は、原則として次の定時決定(翌年8月)まで継続して適用されます。ただし、適用開始時期によって継続期間が異なります。

随時改定の発生時期 適用開始月 適用終了の目安
6月以前に改定 変動月から4ヶ月目 その年の8月
7月以降に改定 変動月から4ヶ月目 翌年の8月

社会保険の随時改定に残業代・賞与は含まれる?

残業代だけが増加しても、随時改定の対象にはなりません。随時改定の起点となるのは固定的賃金の変動であり、毎月変動する非固定的賃金は要件に含まれないためです。

随時改定の対象外となる非固定的賃金

非固定的賃金とは、勤務状況や成果によって毎月支給額が変動する賃金です。随時改定の要件である「固定的賃金の変動」には該当せず、対象外となります。

非固定的賃金の主な例は以下のとおりです。

  • 残業代(時間外手当)
  • 精皆勤手当
  • 育児・介護休業手当
  • 能率給・業績給

ただし、これらの非固定的賃金が変動しても、標準報酬月額の等級差に影響は与えます。固定的賃金の増減方向と、3ヶ月の平均報酬による等級変動の方向が一致しているかどうかが判断の分岐点となります。

参考:随時改定(月額変更届)|日本年金機構

賞与が支給される場合の取り扱い

賞与が随時改定に含まれるかどうかは、年間の支給回数によって判断が分かれます。

支給回数 取り扱い 提出書類
年3回以下 標準賞与額として別途処理 被保険者賞与支払届(支給日から5日以内)
年4回以上 「賞与にかかる報酬」として標準報酬月額の対象 算定基礎届に含めて計算

年4回以上支給される賞与は報酬の一部として扱われ、毎年7月の定時決定で提出する算定基礎届に含めて計算します。

年間平均による随時改定(保険者算定)とは?

業務の繁閑が大きい職種など、変動後3ヶ月の報酬が例年の平均とかけ離れている場合、年間報酬の平均額によって随時改定を申し立てることができます。これを保険者算定(年間平均による随時改定)といいます。

通常の随時改定では変動後3ヶ月の平均をもとに等級を決定しますが、この特例では変動前9ヶ月と変動後3ヶ月の計12ヶ月の年間平均を用います。申し立てには被保険者本人の同意が必要で、以下の書類を月額変更届と併せて提出します。

  • (様式1)年間報酬の平均で算定することの申立書(随時改定用)
  • (様式2)健康保険厚生年金保険被保険者報酬月額変更届・保険者算定申立に係る例年の状況、標準報酬月額の比較及び被保険者の同意書(随時改定用)

参考:随時改定の際、年間報酬の平均で算定するとき|日本年金機構

随時改定の手続きの流れ・月額変更届の書き方は?

随時改定の対象となる従業員がいる場合、月額変更届(正式名称:健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届/厚生年金保険70歳以上被用者月額変更届)を管轄の年金事務所または事務センターに提出します。

STEP1. 月額変更届を作成する

被保険者報酬月額変更届

引用:被保険者報酬月額変更届|日本年金機構

月額変更届は上部の「項目名」に合わせて必要事項を記入します。注意が必要な記入欄は以下のとおりです。

記入欄 内容
改定年月 標準報酬月額が改定される月。変動後の賃金を支払った月から4ヶ月目を記入する
給与支給月 変動後の賃金を支払った月から3ヶ月間を記入する
通貨によるものの額 対象月に金銭で支払われたすべての報酬額(名称を問わず)
現物によるものの額 食事・住宅・被服・定期券など、金銭以外の報酬
修正平均額 昇給が遡及適用されて差額が含まれる場合、その差額を除いた平均額

具体例として、月末締め翌月20日払いの会社で1月に昇給があった場合は次のようになります。

  • 賃金変動の決定:1月
  • 給与支払月:2月・3月・4月(変動後の賃金が実際に支払われた月)
  • 改定年月:5月

STEP2. 書類を提出する

月額変更届の提出先は、事業所を管轄する年金事務所または事務センターです。提出方法は郵送・窓口持参・電子申請の3種類から選択できます。

  • 事務センター:郵送のみ受け付け。封筒に事務センター名と郵便番号(大口事業所個別番号)を記載すれば住所の記載は不要
  • 年金事務所の窓口:管轄の年金事務所のみで受け付け
  • 電子申請:e-Govポータル(https://www.e-gov.go.jp/)を利用

各地域の事務センターは全国の事務センター一覧|日本年金機構で、窓口は全国の相談・手続き窓口|日本年金機構で確認できます。

なお、以下に該当する法人は2020年4月より電子申請が義務化されています。

  • 資本金・出資金・拠出金の額が1億円を超える法人
  • 相互会社
  • 投資法人
  • 特定目的会社

参考:2020年4⽉から特定の法人について電子申請が義務化されます。|厚生労働省

STEP3. 決定通知を受け取る

月額変更届を提出すると、通常1〜2週間程度で日本年金機構から「標準報酬決定通知書」が届きます。

決定通知を受け取ったら、社会保険料の等級が変更になったことを対象従業員へ速やかに通知しなければなりません。正当な理由なく通知を怠った場合には、事業者に罰則が科せられます。

STEP4. 新しい社会保険料を給与計算に反映する

新しい標準報酬月額は、報酬の変動があった月から数えて4ヶ月目から適用されます。たとえば2月に変動があった場合、5月分の社会保険料(6月支給の給与から控除)より新しい保険料率が適用されます。

給与計算システムを利用している場合は、標準報酬月額の等級を更新するタイミングを誤らないよう注意が必要です。

随時改定をしなかった場合・提出が遅れた場合はどうなる?

随時改定の届出が遅れると、賃金変動が社会保険料に正しく反映されず、保険料の過不足が発生します。過払い・未払いのいずれも従業員との精算が必要になるため、実務上の負担が増大します。

随時改定には、定時決定の算定基礎届のような明確な提出期限はなく、「速やかに」提出することが求められるにとどまります。そのため、賃金変動が発生したら変動月から4ヶ月目を目安に確認・提出のスケジュールを設けておくことが重要です。

月額変更届の提出漏れに気づいた場合は、管轄の年金事務所または健康保険組合に速やかに連絡し、指示に従って対応してください。原則として保険料は遡及して改定され、本人負担分の過不足についても精算が必要となります。

随時改定や月額変更届の提出で注意したい社会保険手続きの課題

随時改定にともなう月額変更届の提出など、社会保険に関連する手続きは多岐にわたり、実務担当者にとって大きな負担となります。

マネーフォワードが独自に実施した調査において、入社手続きで特にトラブルや苦労が発生しやすい項目を尋ねたところ、最も多かったのは社会保険(健康保険・厚生年金)や住民税の手続きで39.0%でした。次いで、前職の源泉徴収票の回収が31.2%、年金手帳・マイナンバー等の必要書類の回収が29.5%という結果になりました。

社会保険手続きはトラブルや苦労が発生しやすい

このように、社会保険をはじめとする労務手続きは、多くの担当者が実務上のハードルを感じています。定時決定とは異なり、固定的賃金の変動に応じてその都度発生する随時改定では、対象者の把握や支払基礎日数の確認などが必要なため、さらに見落としが生じやすい傾向にあります。手続き漏れを防ぐためにも、業務フローの整理や確認体制の構築が求められます。

出典:マネーフォワード クラウド、入社手続きにおいてトラブルが発生しやすい項目【入退社に関する調査データ】(回答者:入退社手続きの経験者597名、集計期間:2026年2月実施)

社会保険料の随時改定を正しく理解して手続き漏れを防ごう

社会保険料の随時改定は、固定的賃金の変動・2等級以上の等級差・支払基礎日数の3条件をすべて満たす場合に発生します。定時決定と異なり通年で発生しうる手続きであるため、変動のある都度確認する体制を整えることが大切です。月額変更届の提出漏れは保険料の過不足につながるため、昇給・降格・手当の変更が生じた際は速やかに対応しましょう。

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よくある質問

社会保険の随時改定とはなんですか?

随時改定とは、社会保険料を変更する手続きです。通常は年に1回の定時決定で保険料が決まりますが、昇給や降格などの賃金の変動に伴い標準報酬月額が変動した場合、随時改定で保険料を変更します。詳しくはこちらをご覧ください。

社会保険の随時改定について、条件を教えてください。

本給や手当などの固定的賃金が変動したこと、変動が生じた月から3カ月間連続で2等級以上の標準報酬月額の差が生じていること、当該3カ月の支払基礎日数がいずれも17日以上あることです。詳しくはこちらをご覧ください。


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