• 作成日 : 2022年10月21日

社会保険の随時改定とは?条件や手続き方法を解説!

社会保険の随時改定とは?条件や手続き方法を解説!

昇格などで賃金に大幅な変動があれば、それに伴い社会保険の保険料も改定が必要になります。この手続きを社会保険の随時改定といいます。ただし、臨時手当により1カ月だけ賃金が増加したり、残業代によって給与が増えたりする場合は随時改定の対象外です。

ここでは、随時改定の条件や変更時期についてわかりやすく解説します。

社会保険の随時改定とは?

健康保険や厚生年金などの社会保険の保険料は、給与に応じて区分された標準月額報酬をもとに算出されます。この保険料の算出は、毎月の給与によって変動するのではありません。資格取得時に決まった社会保険料が改定されるのは、「年に1回の改定」と「給与に大きな変動があったとき」の2つです。具体的には、以下の手続きになります。

  • 年に1回の改定(定時決定):算定基礎届
  • 給与に大きな変動があった時など(随時改定):月額変更基礎届
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社会保険の随時改定はいつ行われる?変更時期について

社会保険の定時決定は、その名の通り年に1回提出の時期が決まっています。6月中旬以降に年金事務所から送られてくる算定基礎届に、必要な内容を記入し、毎年7月10日までに管轄の年金事務所に提出します。

一方、随時改定は、いつからといった決まった時期はありません。随時改定とは、昇給や降格に伴い、給与額に大きな変動があったときのみ必要となる手続きです。従業員の個別の状況に合わせて必要となるため、変更時期が固定されている定時決定と比べて人事が手続きを失念しやすく、「どんなときに」月額変更届の提出が必要なのか、きちんと理解しておくことが大切です。

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社会保険の随時改定の条件と範囲

では、どのようなときに随時改定が必要となるのか、具体的な条件と範囲を見てみましょう。

社会保険の随時改定は、以下の3つの条件を全て満たすときに行います。

  • 昇給または降格等により固定的賃金に変動があった
  • 賃金変動以降3カ月間の給与の平均額に基づく標準報酬月額と、変動前の標準報酬月額との間に、2等級以上の差が生じたとき
  • 賃金の変動があった月以降3カ月間連続して、支払基礎日数が一定基準を越すとき

参考:随時改定(月額変更届)|日本年金機構

逆にいえば、給与に変動があったとしても、上記いずれか一つでも当てはまらない条件がある場合は、随時改定の必要はありません。

6月までに随時改定があった場合、再び随時改定がない限りその年の8月まで各月の社会保険料に適用されます。7月以降に随時改定が発生した場合は、同様のケースで翌年の8月まで適用されます。

昇給または降格等により固定的賃金に変動があった

ここでいう「固定的賃金」とは、支給額や支給率が決められたものを指します。イメージが浮かびやすいものは基本給ですが、それ以外に通勤手当や家族手当など、月々の支給額が決まっているものも固定的賃金に含まれます。

また、日給や時間給に変更があったときや、割増賃金率や時間単価の変更により、時間外手当の支給割合・支給単価が変更になった際は、固定的賃金の変動とみなします。人事考課制度による昇給や降格だけでなく、結婚による家族手当の支給、引っ越しでの通勤手当の変更なども対象となるため注意が必要です。

賃金変動以降3カ月間の給与の平均額に基づく標準報酬月額と、変動前の標準報酬月額との間に、2等級以上の差が生じたとき

社会保険料を算出する基となる標準報酬月額は、現在は厚生年金は32等級、健康保険は50等級に分かれています。賃金の変動により、以降3カ月間2等級以上の差が生じたとき随時改定が必要となりますが、以下に当てはまるケースは対象には含まれません。

  • 固定的賃金は増えたが、残業手当などの非固定的賃金が減ったため、結果として新たな標準報酬月額が2等級以上下がった場合
  • 固定的賃金は減ったが、非固定的賃金が増えたため、結果として新たな標準報酬月額が2等級以上上がった場合

また、標準報酬月額の上限・下限にわたる等級変更では、1等級の変更でも随時改定の対象となるため注意が必要です。

賃金の変動があった月以降3カ月間連続して、支払基礎日数が一定基準を越すとき

支払基礎日数とは、給与を計算するときの対象日数をいいます。随時改定の対象となるのは、支払基礎日数が1月あたり17日以上の場合です。賃金の変動があったあと、1カ月でも17日未満の月があれば、随時改定の対象にはなりません。

なお、特定適用事業所に雇用されるパート・アルバイトなどの短時間労働者で社会保険に加入している人は、随時改定の対象となる支払基礎日数は11日以上となります。

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社会保険の随時改定の手続き方法 – 書類の記入方法など

健康保険や厚生年金などの社会保険の随時改定の対象となる従業員がいる場合、月額変更届を事業所を管轄する年金事務所に提出します。必要書類と提出時期は以下の通りです。

  • 必要書類:月額変更届(健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届/厚生年金保険 70歳以上被用者月額変更届)
  • 提出時期:速やかに
  • 提出方法:郵送、窓口または電子申請

添付書類は原則必要ありませんが、年間平均の標準報酬月額で随時改定の申し立てを行う場合には、以下の2つの書類が必要になります。

  • (様式1)年間報酬の平均で算定することの申立書(随時改定用)
  • (様式2)健康保険厚生年金保険被保険者報酬月額変更届・保険者算定申立に係る例年の状況、標準報酬月額の比較及び被保険者の同意書(随時改定用)

月額変更届の記入方法

被保険者報酬月額変更届

引用:被保険者報酬月額変更届|日本年金機構

月額変更届は、上部の「項目名」に合わせて必要事項を記入します。以下、注意が必要な箇所について解説します。

  • 改定年月:標準報酬月額が改定される月を指します。変動後の「賃金を支払った月」から4カ月目を記入します。
  • 給与支給月:変動後の賃金を支払った月から3カ月間を記入します。
  • 通過によるものの額:給与や手当といった名称をとわず、対象の月に労働の報酬として金銭で支払われたすべての金額を記入します。
  • 現物によるものの額:報酬のうち食事・住宅・被服・定期券などの、金銭以外で支払われるものを記入します。
  • 修正平均額:昇給がさかのぼったため、対象月に差額分が含まれている場合は、その差額を引いた平均額を記入します。

たとえば、給与の支払いが月末締め翌月20日払いの会社で、1月に昇給がありその後の3カ月間の状態から随時改定の条件に合致する場合には、以下のようになります。

  • 賃金変動の決定:1月
  • 改定年月:5月
  • 給与支払月:2月、3月、4月(変動後の賃金が支払われた月)
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社会保険の随時改定をしなかったら?遡及などある?

社会保険の随時改定は、「速やかに」という提出指示があるだけで、定時決定の算定基礎届のような明確な提出期限がありません。そのため、昇給や降格など賃金変動が発生した従業員がいたら、その発生月の4カ月後を作業日として目安をつけ、「10日までには必要な届出を確認し終わらせる」など、自分なりのスケジュールを立てることが重要です。

月額変更届の提出が遅れ、随時改定をしなかったら、賃金変動が社会保険料に正しく反映されないことになります。つまり、社会保険料を多く払いすぎる・不足分があったという事態が発生してしまいます

月額変更届の提出忘れがあった場合は、気づいた時点で管轄の年金事務所・健康保険組合に確認し、指示に従いましょう。基本的に保険料は遡及され改定されます。本人負担分についての過不足があれば精算する作業も発生するので注意が必要です。

随時改定を忘れず月額変更届を提出しよう

社会保険料の随時改定は、タイミングを忘れずに届出を行うことが大切です。随時改定の対象と範囲を理解し、月額変更届の提出漏れがないように注意しましょう。

よくある質問

社会保険の随時改定とはなんですか?

随時改定とは、社会保険料を変更する手続きです。通常は年に1回の定時決定で保険料が決まりますが、昇給や降格などの賃金の変動に伴い標準報酬月額が変動した場合、随時改定で保険料を変更します。詳しくはこちらをご覧ください。

社会保険の随時改定について、条件を教えてください。

本給や手当などの固定的賃金が変動したこと、変動が生じた月から3カ月間連続で2等級以上の標準報酬月額の差が生じていること、当該3カ月の支払基礎日数がいずれも17日以上あることです。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:加治 直樹(経営労務コンサルタント)

銀行に20年以上勤務し、融資融資から資産運用、年金相談まで幅広く相談業務の経験あり。中小企業の決算書の財務内容のアドバイス、資金調達における銀行対応までできるコンサルタント。退職後、かじ社会保険労務士事務所として独立。現在は行政で企業及び労働者の労働相談業務を行いながら、セミナー講師など幅広く活動中。

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