• 更新日 : 2025年1月27日

体調不良で休めないのはパワハラ?欠勤が多い従業員への対応も解説

体調不良で休めない状況は、パワハラに該当する可能性があります。一方で、欠勤が多い従業員への対応に悩む企業も少なくありません。本記事では、体調不良時の休暇取得とパワハラの関係、そして欠勤が多い従業員への適切な対応方法を解説します。

体調不良で休めないのはパワハラ?

体調不良で休めない状況は、時と場合によってパワハラに該当する可能性があります。厚生労働省が定めるパワハラの6類型のうち、「過大な要求」や「精神的な攻撃」に当てはまる場合、違法なパワハラとみなされることがあるでしょう。

体調不良時に休めない状況がパワハラに該当する場合とは?

体調不良時に休めない状況がパワハラに該当するのは、以下のような場合です。

  • 上司が病気を理由に休むことを認めず、出勤を強要する
  • 体調不良を訴えても、無理な仕事を押しつける
  • 休暇を取得しようとすると、嫌がらせや嘲笑の対象になる

これらの行為は、従業員の健康と安全を脅かし、職場環境を悪化させる可能性があります。適切な休養を取れないことで、病状が悪化したり、他の従業員に感染が広がったりする恐れもあるでしょう。

パワハラの6類型と「休めない状況」の関連性

パワハラの6類型とは厚生労働省が示すパワハラの分類です。「体調不良で休めない」は、少なくとも以下4つに該当する可能性があります。

  • 身体的な攻撃:直接的な暴力があり、体調不良時の出勤強要は身体的な苦痛を与える可能性
  • 精神的な攻撃:体調不良を理由に休むことを非難したり、侮辱的な言葉を浴びせたりすることが該当する
  • 過大な要求:体調不良にもかかわらず、無理な仕事や難しい業務を課すことが該当します。
  • 個の侵害:体調不良の詳細を必要以上に詮索したり、プライバシーを侵害したりする行為が該当します。

これらの行為が継続的に行われる場合、パワハラとして認定される可能性が高くなります。

また、体調不良で休んだことを理由とした不当な仲間外れや、本人の体調や希望を考慮しない簡単な仕事ばかりを与える行為も「人間関係からの切り離し」「過小な要求」に該当することがあるので注意が必要です。

体調不良で休めないことが違法となるケース

体調不良で休めないことが違法となるケースには、以下のようなものがあります。

  • 労働安全衛生法(労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境の形成を促進することを目的とした法律)
    →事業主(会社)には従業員の安全と健康を守る義務がある。体調不良の従業員に無理に働かせることは、この義務に反する可能性が高い。
  • 労働基準法(労働者の保護を目的として、労働条件の最低基準を定めた法律)
    →年次有給休暇の取得を正当な理由なく拒否することは労働基準法違反に該当する。体調不良時の休暇取得を認めないのは、この規定に抵触する可能性がある。
  • 改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)
    →2020年6月にパワハラ防止措置を講じる義務が施行された。体調不良者への不適切な対応は、この法律に違反する可能性がある。
  • 安全配慮義務(使用者が労働者の生命・身体・健康を守るために必要な配慮を行う義務)違反
    →事業主には従業員の心身の健康に配慮する義務がある。体調不良者を休ませずに働かせることは、この義務に反すると判断される可能性が高い。

これらの違法行為が認められた場合、企業は法的責任を問われるでしょう。そのため、従業員の健康と安全を守ることは、企業側の重要な責務となります。

「休むなら代わりを探すように」と指示するとパワハラ?

シフト制の職場で「休むなら代わりを探すように」と指示することは、パワハラに該当する可能性があります。人員の確保は事業主の責任であり、これを労働者に強いることは、過度な負担をかける「過大な要求」とみなされる場合があるためです。

シフト制の職場における「代わりを探す指示」がパワハラになる可能性

事業主が欠勤をする従業員へ代わりを探すよう指示することは、以下の理由でパワハラになる可能性があります。

  • 労働者の休む権利を侵害する
    →本来は事業主の責任である人員確保を労働者に押しつける。
  • 休暇取得を困難にし、労働者の健康を害する恐れがある
    →特に体調不良時に代わりを探す指示をすることは、労働者の健康と安全を軽視する行為と判断される。

また、このような指示が常態化すると、職場の雰囲気をさらに悪化させ、労働者のストレスを増大させる可能性があります。

違法性が認められる場合と認められない場合

体調不良の従業員へ「休むなら代わりを探すように」と指示することに、違法性が認められる場合とそうでない場合があります。

  • 違法性が認められる場合
    休暇取得を実質的に妨げている
    労働者の健康や安全を脅かしている
    強制的に代わりを探させている
  • 違法性が認められない場合
    代わりを探すことを任意の協力として依頼している
    代わりが見つからなくても休暇取得を認めている
    会社側も代わりを探す努力をしている

違法性が認められない場合、あくまで事業主である会社が代わりの人を探すことに積極的であるのが特徴です。

しかし、違法性が認められない場合であっても、労働者の負担を増やすことになるため、慎重に対応する必要があります。

代わりを探させる指示の適切な伝え方と注意点

体調不良で休む従業員に対し、可能な範囲で代わりを探すよう依頼したい場合は、適切な伝え方であることが重要です。ポイントとしては、次の3つです。

  • 「可能であれば」など、強制でないことを明確にする
  • 会社側も代わりを探す努力をすることを伝える
  • 代わりが見つからなくても休暇を認めることを明言する

また、注意点として以下のポイントを意識しましょう。

  • 労働者の健康状態を最優先に考える
  • 休暇取得の権利を尊重する
  • 人員確保は基本的に会社の責任であることを忘れない

伝え方に配慮することで、労働者の権利を守りつつ、円滑な職場運営を実現できます。実現す常に労働者の立場でコミュニケーションを大切にすることが重要です。

休職制度を利用できないのはパワハラ?

休職制度があるにもかかわらず、会社が利用を拒むことは、状況によってはパワハラに当てはまる可能性があります。従業員の健康と権利を守るため、正当な理由がなく休職制度の利用を拒否することは望ましくありません。以下では、会社側が知っておくべきパワハラの認定条件にまつわる留意点について解説します。

休職制度の利用を拒否された場合にパワハラと認定される条件

休職制度の利用拒否がパワハラと認定される条件は以下の通りです。

  • 正当な理由なく休職を拒否する
  • 休職申請者に対して精神的な攻撃や嫌がらせを行う
  • 休職制度の利用を妨げるような過大な要求をする
  • 休職申請者を人間関係から切り離すような行為をする

特に、従業員の健康状態を軽視して休職を認めない場合や、休職申請を理由に不当な扱いをすることは、パワハラとして認定される可能性が高くなります。

会社側の違法性が問われるケースとは

会社側の違法性が問われるケースとして、以下のようなものがあります。

  • 就業規則に定められた休職制度を恣意的に運用する
  • 休職制度の利用を妨げることで労働者の健康を害する
  • 休職申請を理由に不当な解雇や降格を行う
  • 休職中の従業員に対して不当な退職勧奨を行う

これらの行為は、労働契約法第5条に定められている安全配慮義務や、労働安全衛生法に違反する可能性があります。パワハラ防止法に基づく企業の義務違反にもなり得るため、注意が必要です。

休職制度を利用しやすい職場環境を整えるポイント

従業員が休職制度を利用しやすい職場環境を整えるためのポイントは、以下の通りです。

  • 休職制度の内容を従業員に明確に周知する
  • 休職申請のプロセスを簡素化し、相談窓口を設置する
  • 休職中の処遇や復職条件を明確にする
  • 管理職に対して休職制度の適切な運用方法を教育する
  • 休職者のプライバシーを守り、不当な扱いを禁止する

これらのポイントを押さえることで、従業員が必要なときに安心して休職制度を利用できる環境が整います。結果として、従業員の健康維持と生産性の向上につながるでしょう。

体調不良による欠勤が多い従業員を解雇できる?

体調不良による欠勤が多い従業員の解雇は、慎重に判断する必要があります。単に欠勤が多いというだけでは解雇の正当な理由にはなりません。以下では、解雇できるケースと解雇できないケース、そして適切な対応方法を解説します。

解雇できるケース

体調不良による欠勤が多い従業員を解雇できるケースは、以下のような状況が考えられます。

  • 休職期間が満了し、なお就業が困難
  • 正当な理由なく診断書の提出を拒否し続ける
  • 会社が指示する診断や治療を正当な理由なく拒否する
  • 欠勤を繰り返し、会社が再三指導を行ったにもかかわらず改善の兆候が見られない
  • 虚偽の理由で欠勤を繰り返していることが判明した

ただし、これらのケースでも会社側が適切な対応や配慮を行ったことを示す必要があります。このため、就業規則に明確な規定があることも重要です。労働契約法第16条に基づき、解雇は客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められない解雇は、権利の濫用として無効となります。

解雇できないケース

以下のようなケースでは、特定の従業員の体調不良による欠勤が多くても、会社側が解雇することは難しいでしょう。

  • 会社側にメンタルヘルス不調の原因がある(ハラスメントや長時間労働など)
  • 労働災害と認定される可能性がある
  • 休職制度があるにもかかわらず、休職させずにいきなり解雇する
  • 欠勤の日数が多くない、または欠勤の期間が短いという理由で会社からの注意・指導や懲戒処分を経ずに解雇する
  • 従業員の健康状態を適切に把握せずに解雇を決定する

これらのケースでは、解雇が不当解雇(無効)と判断される可能性が高くなります。解雇を検討する要素が体調不良による欠勤だけであれば、早急に解雇の決断をせず改善を目指した対応を行い、様子を見ましょう。

体調不良による欠勤が多い従業員に取るべき対応

体調不良による欠勤が多い従業員に対しては、以下のような対応が望ましいとされています。

  • 具体的な病状の確認:病院名、診断名、服薬の有無などを尋ね、不調の程度を把握する
  • 医師の診断書の提出要請:就業の可否に関する診断書を提出するよう求める
  • 適切な配慮:担当業務の変更や業務量の調整など、健康状態の改善のための配慮を検討する
  • 休職制度の適用:就業が難しい状況が続く場合は、休職を命じることを検討する
  • 段階的な対応:まずは口頭や書面による注意・指導から始め、必要に応じて懲戒処分を行う
  • 復職支援:休職後の復職に向けて、段階的な職場復帰プログラムを用意する
  • 健康管理体制の整備:従業員の健康管理を支援する体制を整え、予防的な対策を講じる

これらの対応を適切に行うことで、従業員の健康回復を支援するとともに、職場全体の生産性も維持することが可能です。ただし、詳細な病名や病状は個人情報の中でもセンシティブな情報に該当します。本人の意思を尊重しながら、可能な範囲での対応を心がけるのが賢明です。

従業員の体調不良には会社のサポートも必要

従業員を頼りにしている事業主にとって、体調不良による欠勤は歓迎できるものではないでしょう。しかし、体調不良は誰にでも起こり得る現象です。そのため、従業員が休息を必要とする際には、職場全体で助け合い、サポートする体制づくりが重要です。一日も早い復帰を目指すためにも、従業員が休みやすい環境を整え、安心して療養に専念できるような職場環境を目指しましょう。


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