• 更新日 : 2026年10月5日

社労士に年末調整を依頼するのは違法?税理士との業務範囲の違いをわかりやすく解説

Point社労士への年末調整依頼は違法になる?

源泉徴収票の作成など税務判断を伴う年末調整業務を社労士が行うと、税理士法違反となる可能性があります。

  • 源泉徴収票の作成・提出は税理士の独占業務
  • 社会保険料の算定・給与計算は社労士が対応可
  • 無資格業者への委託は両業務ともに違法

Q. 社労士が年末調整を担当すると違法になりますか?

A. 税務判断を伴う業務(源泉徴収票の作成など)は違法になる可能性があります。算定基礎届や社会保険料の算定は社労士が行っても問題ありません。

企業の人事労務担当者が年末調整を外部に依頼する際、迷いやすいのが社労士(社会保険労務士)と税理士のどちらに頼むべきかという点です。年末調整は社労士が担当すると違法になるケースがある一方、給与計算や社会保険料の算定は社労士に任せても問題ありません。本記事では、社労士 年末調整の業務範囲と、税理士に依頼すべき手続きの違いを整理します。

社労士に年末調整を依頼するのは違法?税理士なら問題ない?

年末調整のうち、税務判断を伴う事務(源泉徴収票の作成など)を社労士が行うと違法となる可能性があります。一方、同じ手続きを税理士に依頼することは問題ありません。

これは、年末調整が所得税法に基づく手続きであり、税務に関する業務は税理士の独占業務とされているためです。税理士や税理士法人ではない者が税理士業務を行うことは、税理士法第52条により禁止されています。

税理士業務の範囲とは

税理士業務とは、有償・無償を問わず、依頼を受けて税務書類の作成や税務相談などを反復継続して行うことです。税理士以外がこれを行った場合、2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金という罰則が科される可能性があります。

税理士業務に含まれる範囲は次の3つです。

  1. 税務代理(税務官公署への申告等の代理・代行)
  2. 税務書類の作成(申告書等の作成)
  3. 税務相談(課税標準等の計算に関する相談)

なお、税務書類の作成には単なる代筆は含まれません。また「反復継続」とは、たとえ1回であっても反復して行う意思があれば該当するとされています。

参考:6 税理士法違反行為|国税庁

日本税理士会連合会と全国社会保険労務士会連合会の合意内容

年末調整に関する業務の切り分けは、日本税理士会連合会と全国社会保険労務士会連合会の間で協議が行われ、「年末調整事務の過程における税務判断を必要とする事務」は税理士業務の範囲に該当することが確認されています。

年末調整に必要な源泉徴収票の作成は所得税法第226条に定められた業務であり、社労士が源泉徴収票を作成すれば違法となる可能性があります。ただし、年末調整に必要な給与計算や、健康保険料・厚生年金保険料などの社会保険料を確定する事務は、社労士が行っても問題ありません。

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年末調整に関して社労士が担当できる業務範囲は?

社労士は、算定基礎届や月額変更届、労働保険関係書類の作成・提出、および社会保険料控除の計算を担当できます。税務判断を伴わない事務であれば、社労士が関与しても違法にはなりません。

年末調整の業務上、税務判断が必要となる場面は多くありますが、毎月の給与計算そのものは資格を必要としない業務であるため、社労士が担うケースが実務上多く見られます。

社労士が行える業務の一覧

社会保険労務士法に基づき、社労士および社会保険労務士法人が行える業務は以下のとおりです。

  1. 労働社会保険諸法令に基づく申請書等・帳簿書類の作成
  2. 申請書等の提出代行
  3. 申請等についての事務代理
  4. 労務管理その他の労働に関する事項および労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項に係る、法令並びに労働協約・就業規則・労働契約の遵守状況の監査(令和7年法律第77号により新たに明記)
  5. 都道府県労働局・労働委員会が行う個別労働関係紛争のあっせん手続の代理
  6. 障害者雇用促進法、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、労働者派遣法、育児・介護休業法、パートタイム・有期雇用労働法に基づく調停手続の代理
  7. 厚生労働大臣が指定する団体が行う裁判外紛争解決手続の代理(紛争価額120万円超の事件は弁護士との共同受任が必要)
  8. 労務管理その他労働・社会保険に関する事項についての相談および指導
  9. 労務管理・社会保険に関する事項について、裁判所において補佐人として弁護士である代理人とともに出頭し、陳述をすること

このうち1~3の業務は、社労士または社会保険労務士法人以外の者が報酬を得て反復継続的に行うことはできません。5~7の紛争解決手続代理業務は、特定社会保険労務士のみが行える業務です。

参考:社会保険労務士制度|厚生労働省

算定基礎届・労働保険関係書類・月額変更届の提出

年末調整では、1年間で支払った雇用保険・健康保険・厚生年金保険などの社会保険料を正確に計算する必要があり、この基礎となるのが算定基礎届や月額変更届です。

算定基礎届や月額変更届によって社会保険料が変更される月は法律で定められています。ルールを理解したうえで毎月の給料を正確に計算していなければ、年末調整の数字も合いません。提出を忘れると後日給与の変更対応が必要になるため注意が必要です。

雇用保険の保険料率は業種によって異なり、毎年見直しが行われます。社労士が算定基礎届や月額変更届、労働保険関係書類をチェックし、社会保険料控除を正しく計算すること自体は問題ありません。

給与計算や社会保険料の算定

毎月の給与計算は資格を必要としない業務のため、税理士・社労士のどちらでも対応可能です。ただし勤怠管理や労務管理と密接に関わる業務であるため、専門知識を持つ社労士に依頼する企業が多いのが実情です。

給与計算には所得税などの税金計算も伴います。年末調整は社会保険料控除の金額が税額に影響するため、年末調整に必要な給与や社会保険料の算定を社労士が行うこと自体は問題ありません。

年末調整に関して税理士が担当できる業務範囲は?

源泉徴収票の作成・提出、および年末調整に伴う法定調書の提出は税理士業務に該当し、税理士が行う必要があります。税務判断を要するこれらの手続きは、社労士が行うと税理士法違反となる可能性があります。

源泉徴収票の作成と提出および法定調書等の提出

年末調整に必要な書類は、例年11月上旬から準備を始めます。従業員に記載してもらう主な書類は次のとおりです。

  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  • 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書
  • 給与所得者の保険料控除申告書

令和7年分以降は税制改正により基礎控除額が見直され、令和7年分は合計所得金額に応じて最大95万円となりました。さらに令和8年度税制改正により、令和8年分から基礎控除額が引き上げられ、合計所得金額132万円以下の場合は104万円となるなど、所得金額に応じて控除額が定められています。

また、19歳以上23歳未満の親族を扶養する世帯を対象とする特定親族特別控除が新設され、申告書の様式にも反映されています。これらは所得税を計算するうえで必要な書類であるため、税理士に正しく作成されているかチェックしてもらうと安心です。

所得税は上記の書類をもとに計算し、過不足を清算したうえで源泉徴収票を作成します。給与所得の源泉徴収票は、翌年1月31日までに税務署長への提出が必要です。提出の際は「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」の作成・添付に加え、「給与支払報告書(個人別明細書)」「給与支払報告書(総括表)」を従業員が住む市区町村へ提出しなければなりません。

万が一、年末調整の計算誤りを税務調査で指摘された場合、税理士に立ち会ってもらうのが確実です。税務相談は税理士にしかできない業務であるため、源泉徴収票の作成・提出および法定調書等の提出は税理士に依頼するのが適しています。

参考:年末調整がよくわかるページ(令和7年分)|国税庁

年末調整を社外の専門家に依頼する場合の注意点は?

年末調整や雇用調整助成金の手続きをアウトソーシングする際は、独占業務を無資格者に依頼しないことが最大の注意点です。税理士業務と社労士業務、それぞれの独占業務を混同しないようにしましょう。

アウトソーシングをする場合の注意点

税理士や税理士法人ではない者は税理士業務を行うことができません。アウトソーシング先が税理士法人でなければ税務相談もできない点に注意が必要です。

同様に、雇用保険・健康保険・厚生年金保険などの社会保険に関する申請書類や帳簿書類の作成・提出は、社労士または社会保険労務士法人にしかできません。無資格の業者に労働保険や社会保険の手続きを依頼することはできません。

雇用関係助成金の申請について

雇用調整助成金は、景気の変動や自然災害などの事情により事業活動の縮小を余儀なくされた企業が、休業・教育訓練・出向にかかる費用の一部について国から助成を受けられる制度です。新型コロナウイルス特例は令和5年3月31日をもって経過措置も含めて終了しており、2026年現在は通常制度として運用されています。

雇用調整助成金の申請書の作成と提出は、労働社会保険諸法令に基づく申請書に該当するため、社労士にしかできない業務です。ただし、助成金申請には売上減少を疎明する資料が必要となる場合があり、税理士の協力も欠かせません。

雇用関係助成金の申請は、社労士と税理士の両方が関わる業務であり、両者の連携が求められます。給与計算や年末調整についても同様で、企業にとって士業は経営のアドバイスを受けられる貴重な専門家です。

参考:事業主の方のための雇用関係助成金|厚生労働省

年末調整は社労士と税理士の業務範囲を理解して適切に依頼しよう

税理士も社労士も、法律によって業務の範囲が定められています。税理士や税理士法人でない者は税理士業務を行うことができず、社労士や社労士法人でない者は労働保険・社会保険に関する申請書類の作成・提出を行うことができません。

年末調整に際して、社労士が算定基礎届や月額変更届、労働保険関係書類をチェックし、社会保険料控除を正しく計算することは問題ありません。一方、源泉徴収票やそれに伴う法定調書の作成・提出は税理士が行う必要があります。給与計算自体は資格を要する業務ではないため、税理士・社労士のどちらが担当しても問題ありませんが、無資格の業者に税理士業務や社会保険関係の手続きを委託することがないよう注意しましょう。

自社の税理士・社労士が連携できる関係を築くことで、企業は年末調整をはじめとした多くの実務で有益なアドバイスを受けられます。

よくある質問

年末調整を社労士の方に依頼しても問題ないですか?

税理士業務である税務書類の作成や税務相談に該当しなければ、社労士が社会保険や労働保険に関わる書類をチェックし、給与や社会保険料を算定し、適切に計算することは問題ありません。詳しくはこちらをご覧ください。

年末調整をアウトソーシングする場合、誰に依頼すればよいですか?

税金、社会保険の両者に関わりがある業務です。社労士が給与や社会保険料を算定することは問題ありませんが、源泉徴収票やそれに伴う法定調書の作成・提出は、税理士に依頼する必要があります。 詳しくはこちらをご覧ください。


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