• 更新日 : 2024年11月1日

源泉徴収票はペーパーレス化できる?進めるメリット・流れを解説

企業にとって、源泉徴収票の発行業務は毎年欠かせない手続きの1つです。しかし、従来の紙による発行は、印刷や郵送に時間とコストがかかる上、保管スペースの確保も必要です。近年では、こうした業務をデジタル化する取り組みが進んでおり、ペーパーレス化の実現により、業務効率化やコスト削減が期待されています。

この記事では、源泉徴収票のペーパーレス化を進めるメリットと、その導入プロセスについて詳しく解説します。また、実施にあたっての注意点についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

源泉徴収票のペーパーレス化は可能?

2019年度税制改正等によって2019年4月以降に給与所得者が確定申告書を提出する際には、紙の源泉徴収票の添付が不要になりました。企業が従業員の同意を得れば、源泉徴収票のペーパーレス化が可能です。

以下は、源泉徴収票をペーパーレス化した場合の代表的な電子交付方法を示します。

・電子メールで送信する

・社内ネットワークやインターネットを介して開示する

・USBメモリーなどの媒体に記録して交付する

実務的には上記のうち、電子メールで送信する方法もしくは社内ネットワークやインターネットを介して開示する方法が選択されます。

出典:「国税庁」平成31年4月1日以後の申告書の提出の際、源泉徴収票等の添付が不要となりました

出典:「国税庁」給与所得の源泉徴収票等の電磁的方法による提供(電子交付)に係るQ&A

出典:「国税庁」1.基本的な事項

ただし、源泉徴収票は、住宅ローンや教育ローンの審査のように確定申告以外の場面でも使用する書類です。源泉徴収票をペーパーレス化する際には、従業員から紙で発行を依頼された場合に備えて、対応できる体制を整備しておきましょう。

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源泉徴収票のペーパーレス化を進めるメリット

源泉徴収票のペーパーレス化は、労使の双方にメリットが期待される取り組みです。

以下では、源泉徴収票をペーパーレス化するメリットについて企業側・従業員側に分けて、解説します。

企業側のメリット

源泉徴収票をペーパーレス化すると、年末調整時の事務コストを削減できる上、人事労務担当者の業務負担を軽減できます。紙の源泉徴収票を印刷して郵送する際には、印刷代・インク代・人件費などのコストが必要です。源泉徴収票をペーパーレス化するとPC上ですべての作業を行え、郵送作業が不要になることから、コスト削減や業務効率化が可能です。

以下では、その他の企業側の源泉徴収票をペーパーレス化するメリットを示します。

・印刷や郵送時の人的ミスを抑制できる

・過去の源泉徴収データを検索しやすくなる

・源泉徴収票関係書類の保管スペースを節約できる

源泉徴収票をペーパーレス化して書類の作成や交付作業をPC上で行えば、印字や封入ミスが発生しません。退職者から源泉徴収票に関する問い合わせを受けた際には必要なデータを検索し、スムーズな対応が可能です。

源泉徴収票の作成作業に使用したデータをデータベースに保存すると、保管スペースを節約できます。データベースのバックアップを取得するなどの対策を取れば、紛失リスクの軽減も可能です。

従業員側のメリット

従業員は電子交付された源泉徴収票を時間や場所を問わずに確認でき、利便性が向上します。外出や出張の多い人は、自身のスマホを使用して電子データの確認も可能です。在宅勤務の従業員は、仕事用PCを使用して自宅から源泉徴収票を確認できます。

従業員が紙の源泉徴収票を紛失した状態で、確定申告したり転職したりする際には、企業側への再発行依頼が必要です。担当部署が多忙な場合は再発行を依頼しても、スムーズな対応を受けられるとは限りません。源泉徴収票がペーパーレス化されていると、従業員は自分自身で必要な電子データにアクセスし、内容の確認や印刷が可能です。

源泉徴収票のテンプレート(無料)

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源泉徴収票のペーパーレス化を進める場合の流れ

源泉徴収票のペーパーレス化を進める際には関連法律を理解した後に従業員の同意を得て、自社に合うソフトやツールを導入する必要があります。各ステップのポイントやペーパーレス化に使用するツールの選び方は、以下の通りです。

関連法律を理解する

源泉徴収票のペーパーレス化には所得税法や租税特別措置法が関係するため、内容をよく読み、電子交付の条件を理解しておきましょう。

国税庁が公表している源泉徴収票の電子交付の主な条件は、以下3点です。

・事前に従業員の同意を得ていること

・PCなどでの表示や書面への出力ができること

・電子交付した旨を通知すること(従業員のPCに直接送信する場合などは不要)

出典:「国税庁」1.基本的な事項

上記の他、従業員から紙で発行を依頼された場合、対応できる環境を整備することも必要です。

ペーパーレス化の範囲を決定する

国税庁では源泉徴収票以外に、給与明細書も電子交付することを認めています。

出典:「国税庁」1.基本的な事項

源泉徴収票をペーパーレス化する際には、給与明細書も対応するかを検討しましょう。

主に業務効率化の目的で源泉徴収票をペーパーレス化する場合、給与計算システムや勤怠管理システムも同時に見直したほうが、高い効果を狙えるケースもあります。費用対効果をよく考えて、状況によっては、システム全体を入れ替える選択肢も検討してください。

従業員の同意を得る

源泉徴収票の電子交付方法・交付予定日・交付開始日・閲覧方法・セキュリティ対策などを従業員に説明し、同意を得ます。同意を得る方法について法的なルールはないものの、社内ネットワークなどを介して同意書を配布し、以下の内容を入力させる方法が一般的です。

・電子交付に承諾する旨

・承諾日

・氏名

源泉徴収票の場合、事前に「期限内に回答しない場合は同意と判断する」ことを従業員へ説明し、その通りに対応する方法も許可されています。

出典:「国税庁」1.基本的な事項

専用ソフトやツールを導入する

源泉徴収票のペーパーレス化に対応したツールには、給与計算システム・年末調整システム・人事労務管理システムなどの種類があります。以下の点に注目して自社に合うツールを選択し、導入しましょう。

・ランニングコスト

・サポート体制の充実度

・操作性の高さ

・機能の豊富さ

ペーパーレス化に対応できるツールは通常、発行する源泉徴収票の枚数でランニングコストが変動します。自社の従業員数に応じてランニングコストを試算し、予算内で継続できるツールを選択しましょう。

電子化による交付を実施する

導入したツールを活用して所定の期限までに源泉徴収票を作成し、事前に同意を得た方法で交付しましょう。「従業員がスムーズに源泉徴収票を確認できるか」を不安に感じている場合には、事前に説明会や研修会を実施し、画面の操作方法や印刷方法を解説することで不安を解消できます。もしくは、操作マニュアルを作成して配布する・「よくある質問・回答」ページを公開するなどの方法で、利用を促進してください。

源泉徴収票をペーパーレス化する場合の注意点

源泉徴収票をペーパーレス化する際には、十分なセキュリティ対策を取ること・既存システムと相性の良いツールを導入することが必要です。以下では、ペーパーレス化に伴う注意点に関してより詳しく解説します。

セキュリティ対策を強化・徹底する

源泉徴収票は従業員の個人情報が記載された書類であるため、セキュリティ対策を強化し、情報漏洩を防止しましょう。合わせて従業員のセキュリティ教育も徹底し、十分な安全管理体制のもとで運用を行うことが重要です。

源泉徴収票のペーパーレス化で使用するツールには通常、アクセス制御・ファイル暗号化などのセキュリティ対策が取られています。安全にペーパーレス化を実現するためにはツール自体のセキュリティ対策を事前に確認し、信頼度を見極めることも必要です。

既存のシステムとの相性を確認する

ツールを利用して源泉徴収票をペーパーレス化する場合には、既存のシステムとの相性を確認しましょう。相性の悪いソフトやツールを導入すると、給与情報をスムーズに取り込めず、業務の効率性に影響するケースがあるためです。

可能であれば、既存のシステムと同一企業の提供しているツールを選択すると、スムーズに連携できます。別の企業の製品を導入する場合には、無料のトライアル期間に相性を確認してください。

源泉徴収票のペーパーレス化を円滑に進めよう

源泉徴収票のペーパーレス化は、企業と従業員の双方にとって、業務効率化やコスト削減といった多くのメリットをもたらします。具体的には、印刷・郵送の手間を省くことで企業側の負担が減り、従業員にとっても必要な時に電子的に確認できる利便性が高まります。

また、導入に際しては関連法律の理解や、従業員の同意を得ることが重要です。さらに、セキュリティ対策を徹底することで、安全に電子化を進められます。これらのポイントを押さえた上で、ペーパーレス化を検討することが大切です。


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