- 更新日 : 2024年8月23日
パパママ育休プラスとは?制度概要や取得条件、育児休業給付金について解説!
パパママ育休プラスとは、特定の条件を満たした上で母親と父親が育休を取得することで、子どもが1歳2ヶ月になるまで育児休業の期間を伸ばせる制度です。
育児休業給付金の支給申請の際には、追加で書類が必要になるなど、手続きでは気をつけるべき点もあり、少し複雑な制度ですが、正しく理解することで、育児休業の柔軟な利用が可能になります。
目次
パパママ育休プラスとは?
パパ・ママ育休プラスとは、子どもが産まれた後、夫婦で育休を取得することで最長で子どもが1歳2ヶ月になるまで休業を取得できる制度です。2010年に男性の育児休業の取得を促す目的で定められました。
原則の育児休業期間は、子どもが1歳の誕生日を迎える前日までですが、本制度を利用することで育休取得可能期間を伸ばすことが可能です。
取得できる期間
パパ・ママ育休プラスにより子どもが1歳2ヶ月になるまで育児休業を取得できますが、実際に育児休業を取得できる期間自体は1年のままです。例えば、子どもの生後1ヶ月の時点で育休を取得しても、1歳1ヶ月になる日の前日で育児休業は終了となります。
なお、パパママ育休プラスを利用した場合でも、保育所に空きがなく子どもを預けられないなどの事情があれば、最大で2歳になるまで育児休業を取得できます。この点は通常の育児休業と同じです。
パパママ育休プラスの取得条件は?
パパママ育休プラスを取得するためにはいくつかの条件があります。また、同制度は育児休業を取得できる従業員を対象としているため、原則の育児休業の取得条件も満たしている必要があります。それぞれ確認しておきましょう。
原則となる育児休業の取得条件
原則として、期間の定めのない雇用契約で働く従業員(いわゆる「正社員」として雇用)は、会社に育児休業を申し出ることで取得が可能です。特別な条件はありません。
ただし勤め先で入社1年未満の労働者を、育休の対象から除外するための労使協定が締結されている場合は例外です。正社員であっても、会社は1年未満の従業員の育休の申し出を拒めます。
一方、期間の定めのある雇用契約を結ぶ従業員(いわゆる「契約社員」など)は条件付で育児休業を取得できます。その条件とは「子どもが1歳6ヶ月になるまでの間に契約が満了(終了)することが明らかでないこと」です。この条件を満たしていない場合は、会社は休業の申し出を拒めます。
なお、勤め先での育児休業の取得可否とは別に、ハローワークから育児休業給付金を受給するための条件が存在します。育児休業を取得する以前の2年間において、12ヶ月以上の雇用保険被保険者期間(賃金支払基礎日数が11日以上または労働時間が80時間以上の月をカウント)があることです。前職での被保険者期間も通算できるため、この条件を満たしているかも確認しておきましょう。
パパママ育休プラスの取得条件
パパママ育休プラスを取得するためには、育休取得の条件を満たした上で、以下の条件を満たす必要があります。
- 夫婦で育児休業を取得すること
- 夫婦のいずれかが、子どもの1歳の誕生日前日までに育児休業を取得していること
- 子どもの1歳の誕生日前に育児休業開始予定日が設定してあること
- パパ・ママ育休プラス取得者の育児休業開始予定日が、配偶者の取得した育児休業開始の初日以降になっていること
少々複雑に見えますが、まとめると「夫婦で揃って育休を取得した場合、後から育休を取得した方は子どもが1歳2ヶ月になるまで育休を取得できる」制度です。
パパママ育休プラスの申請方法は?
パパママ育休プラスは、育児休業の期間に関しての制度です。そのため、同制度を利用するためには、はじめに育児休業を取得したい旨を従業員から会社に申し出る必要があります。
その上で、育児休業開始後は育児休業給付金の受給のため、会社を通じてハローワークに各種申請を行います。
育児休業申出書の提出と通知書の交付
従業員が育児休業の取得を希望する場合は、会社に対して育児休業申出書を提出します。原則として、この申出は育児休業開始予定の1ヶ月前に行う必要があります。上記の申し出を受けた場合、会社は以下の事項について速やか(概ね2週間以内)に従業員へ通知しなければなりません。
- 育児休業の申出を受けた旨
- 育児休業の開始予定日(労働者からの申し出が遅れたため、会社が開始日の指定をする場合は、その指定日)
- 育児休業終了予定日
- (育児休業の申出を拒む場合は、その旨と理由)
なお、上記の通知は紙の書面だけではなく、FAXやメールでも可能です。
育児休業給付の申請書類
パパママ育休プラスを取得すると、ほとんどの場合、通常の育休同様に育児休業給付申請を行うことになるはずです。申請に関しては、会社を通じてハローワークに書類を提出することになりますが、育休開始直後は以下の書類提出が必要となります。
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 育児休業給付受給資格確認票・出生時育児休業給付金支給申請書
- 育児休業給付金支給申請書
- 育児休業を開始・終了した日、賃金の額と支払状況を証明できるもの
(例)賃金台帳、労働者名簿、出勤簿、タイムカードなど - 育児の事実、出産予定日及び出生日を確認できるもの
(例)母子健康手帳(出生届出済証明のページと分娩予定日が記載されたページ)など
上記は受給資格の確認と初回の申請を同時に行うための書類提出です。母子健康手帳などは本人から会社に提出してもらう必要があるため、あらかじめ必要書類としてお伝えしておくとスムーズに手続きが進むでしょう。
また、2回目以降の給付金申請の際は、以下の3点の書類提出が必要となります。
- 育児休業給付支給申請書
- 賃金台帳
- 出勤簿またはタイムカード
育児休業が終了するまでは、申請の都度、上記3点の書類提出が必要になります。
パパママ育休プラスのプラス期間に関する申請書類
パパママ育休プラスを利用した場合、子どもが1歳に達する日から1歳2ヶ月に達する日前日の期間(プラス期間)に対しても、育児休業給付金の申請を行う必要があります。この期間について申請する際は、通常の申請書類に加えて、特別に以下の2点の書類を添付して申請しなければなりません。
- 続柄が記載された世帯全員の住民票(写し)
- 配偶者の育児休業の取得を確認できる書類
(例)配偶者の育児休業取扱通知書(写し)など(ない場合は疎明書でも可)
(支給申請書に配偶者の雇用保険被保険者番号が記載され、育児休業給付受給の有無が確認できる場合は「配偶者の育児休業の取得を確認できる書類」は不要)
また上記の書類を添付した上で、育児休業給付金支給申請書には以下のそれぞれの欄に必要事項を記載しましょう。
- 19欄(配偶者の育児休業取得の有無)
- 20欄(配偶者の雇用保険被保険者番号)
パパママ育休プラスの具体例
パパママ育休プラスはさまざまなパターンで利用できます。少々複雑なようにも見えますが、正しく理解することで状況に対して柔軟に対応することが可能です。以下に具体例をあげますので、確認しておきましょう。
母親と父親の休業開始時期が重なるパターン
一番多く発生するパターンは、両親の育児休業期間が重なるケースです。ここでは母親の産後休業期間中に、父親が育児休業を取得した場合を例を紹介します。
子どもが1月1日に産まれた後、出産後8週間にわたる産後休業が2月26日に終了し、そのまま母親が2月27日から育児休業を取得するとしましょう。この場合、父親が2月26日以前に育児休業を取得していれば、母親は保育所が空いていないなどの理由がなくても、子どもが1歳2ヶ月となる日(翌年2月28日)まで、育児休業を取得できます。
なお、現在は育児休業を2回に分けて取得可能なため、子どもが1歳になるまで、父親も再度育休を取得することが可能です。
母親と父親で休業期間を交代するパターン
パパママ育休プラスは、母親と父親の育児休業取得時期に間が空いていても適用されます。
ここでは例として、子どもが6ヶ月になった時点で、両親に代わり祖父母に面倒を見てもらう場合を解説します。
育児休業を取得していた母親が、子どもが6ヶ月となった時点で仕事に復帰したとしましょう。しかし、父親も仕事が忙しくて育児休業を取得できるのは、それから1ヶ月後だったとします。この場合、その1ヶ月については子どもの祖父母に面倒を見てもらい、子どもが7ヶ月となった時点で父親が育児休業を取得することで、父親は子どもが1歳2ヶ月になるまで育児休業を取得することが可能です。
パパママ育休プラス期間に育児休業給付金は受け取れる?
パパママ育休プラス期間でも、子どもが1歳2ヶ月となるまで育児休業給付を受け取ることは可能です。子どもが産まれた後は、何かと出費がかかることが予想されます。安心して育児休業を取得するためにも、受け取れる金額をあらかじめ把握しておきましょう。
育児休業給付金の金額
両親それぞれについて、育休開始日から180日間は休業開始時賃金日額の67%、181日目から支給終了日までは50%と、通常の育児休業給付金と同じ金額が支給されます。つまり、通常の育児休業給付金と同様の金額を受け取ることが可能です。
休業開始時賃金日額とは、原則として育児休業を取得する前の6ヶ月間の給与を180で割った金額です。なお、育児休業期間中に出勤してしまった場合でも、1つの支給対象期間中の就業日数が10日以下(または就労時間が80時間以下)であれば給付金は支給されるため、柔軟に対応できます。
パパママ育休プラスを成功させるポイントは?
育休取得の促進に有効なパパママ育休プラスですが、従業員が制度をよく理解していなかったり、会社として後押しする体制が整っていなければ、効果を発揮しにくくなります。パパママ育休プラスに限らず、育児休業の制度利用自体でも重要な項目となるため、自社の状況を確認しつつ、何が必要なのかを判断しましょう。
育児休業を取得した従業員のフォロー
従業員が出産育児で職場を離れた場合、休業期間は比較的長期間となります。中には休業期間中は職場や業務の状況がわからずに不安となる方もいるかもしれません。人にもよりますが、休業中の従業員とのコミュニケーションの機会を設けることで、職場復帰の際の不安を払拭できる場合があります。
職場に対してのフォロー
長期間の休業を取得する場合、ためらいを感じる従業員もいるかもしれません。残された職場の同僚に負担がかかるのではないかという懸念があるためです。そのため、あらかじめ業務量や人員の最適化を行うことにより、残された従業員に負担が偏らないように配慮するなど、会社として育児休業取得をバックアップする姿勢を示すことが大切です。
パパママ育休プラスで柔軟な休業対応を
今回は、パパママ育休プラスについて解説しました。本来の育児休業の制度とあわせて考えると条件が複雑なように見えますが、落ち着いて1つずつ見ていけば実際の手続きでそこまで苦労することはないでしょう。
慢性的な人手不足の会社では、育児をきっかけに従業員が退職してしまう状況は避けたいもの。同制度を利用すれば、ある程度柔軟な育児休業取得も可能となるため、活用してみる価値はあると言えます。本記事の内容を参考に、ぜひご検討ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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