- 更新日 : 2024年4月19日
人事部とは?総務部との違い、仕事内容やきつい場面、向いている人を解説
本記事では、人事部の仕事について解説します。人事部に配属される人の特徴や人事部になるにはどうすればよいかも紹介しますので、人事部を目指す人は参考にしてください。
人事部とは?
人事部は全従業員の人事全般を管理するため、業務内容も多岐にわたります。そのため、まず人事部の役割と、一部業務が重複しがちな総務部との違いについて確認しておきましょう。
人事部の役割
人事部の主な役割は、会社組織を動かす従業員について次の通りです。
- 人材の採用と育成
- 人事評価と異動・配置転換
- 給与や人事評価に関する制度設計と運営
人材を採用・育成しながら有効活用して組織の活性化を図るとともに、労務管理や福利厚生の充実などにより従業員を支える役割も担っています。
総務部との違い
人事部と総務部は業務が重複する点もあるため、その違いについて確認しておきましょう。
人事部の英訳は「Human Resource(人的資源) Department」で、総務部は「General Affairs(全般的な業務) Department」です。つまり、「ヒト・モノ・カネ」という経営資源を全般的に管理するのが総務部、「ヒト」に限定しているのが人事部です。
規模の小さな企業では人事部がなく総務部が人事部の仕事をしていることもありますが、企業規模の拡大とともに総務部から人事部や経理部、法務部などが分離し役割分担するようになるのが一般的です。
人事部の仕事内容
人事部の主な仕事内容は次の通りです。
- 人材採用
- 人材育成やキャリア開発
- 給与規定や人事評価制度の設計
- 人事評価
- 異動・配置転換
- 労務管理や健康管理
- 社会保険や福利厚生 など
それぞれの仕事内容について解説します。
人材採用
人材採用の仕事は、次の通り多岐にわたります。
- 求人活動(求人広告の手配、求人サイトの作成)
- 会社説明会
- 採用試験・採用面接・選考
- 内定者のフォロー、入社準備 など
新卒採用や中途採用、派遣社員の受け入れなど採用対象者によって求人活動や選考方法・選考基準が異なるため、対象者ごとの対応が必要です。人手不足が深刻化する中、企業にとって必要な人材を確保できるかどうかが、企業の維持・成長に影響することもあります。
人材育成やキャリア開発
企業にとって必要な人材を育てることも、人事部の重要な仕事です。キャリアや職務内容に応じた集合研修のほか、オンライン研修やeラーニングの活用、従業員の自己研鑽に対する支援などを企画・実施します。
また、キャリアアップ、キャリア開発のために長期的な育成プランを考えることも必要です。従業員や上司とキャリアプランを共有することが、従業員のモチベーションアップや離職防止に役立ちます。
給与規定や人事評価制度の設計
人事部では、給与規定や人事評価制度など従業員個人に関わる諸制度の設計を行います。制度設計にあたっては、次の実現を目指しましょう。
- 従業員を企業の求める方向に導く
- 企業に貢献した人を適正に評価する
- 従業員の満足度やモチベーションを高める
専門的な知識や経験が必要とされる業務であり、また企業環境の変化に伴い必要な知識も変わるため、人事制度専門のコンサルタントに相談するという選択肢もあります。
人事評価
人事評価は、人事評価制度に基づいて上司などと連携して実施します。評価にあたっては、次の点に注意しましょう。
- 公平・適正に評価するために、客観的なデータに基づいて評価を行う
- 360度評価(上司や部下、同僚など複数人で評価)などさまざまな角度から評価を行う
- 納得感・やる気を高めるために、従業員の意見を聞いたり適切なフィードバックを行う
また、事前に評価制度を従業員に周知し目標を立てたり、評価期間の途中に上司が状況チェック・フォローしたりする仕組みを作ることで、従業員の人事評価への理解を高める効果が期待できます。
異動・配置転換
経営方針や各部署の状況に応じ人材を適正に配分するために、異動や配置転換を行います。異動や配置転換にあたっては、次の点に注意しましょう。
- 各部署の人材需要を満たす
- 能力や経験、スキルなどを考慮して適材適所の配分を行う
- 従業員のキャリアプランを考慮して配属を行う
また、従業員の配属希望や個人的な事情(介護で引っ越しを伴う転勤ができないなど)にも配慮が必要です。
労務管理や健康管理
労務管理の仕事は、次の通り多岐にわたります。
- 勤怠や休暇の管理
- 労働時間や残業時間の管理
- 給与・残業代や賞与の計算
- パワハラやセクハラなどの労務トラブルの解決 など
労働基準法などの法令を遵守し適切に管理することが求められます。働き方関連法など、法改正が頻繁に行われるため注意が必要です。
また、従業員の安全と健康を守るために次の対応も求められます。
- 長時間労働の是正
- メンタルヘルス対策
- 労災防止に向けた安全衛生対策
- 健康診断やストレスチェックの実施 など
社会保険や福利厚生
社会保険や福利厚生など、従業員の生活を守るための仕事もあります。社会保険に関する仕事には、次のようなものがあります。
- 入退職時の社会保険加入・脱退手続き
- 労災や傷病手当金(労災以外の休業に対する健康保険の給付)の手続き
- 出産や育児、介護に伴う給付金や休業制度の手続き
また、住宅手当・通勤手当の支給や、社員食堂・福利厚生施設の運用など、福利厚生に関する業務も人事部の仕事です。
人事部が「花形」と言われるワケ
人事部について、 「会社の花形」「出世が早い」などと言われることがあります。主な理由は次の通りです。
- 人事権を持っている
- 企業の経営戦略に関わる機会がある
- 企業幹部と関係が持てる
それぞれの理由について解説します。
人事権を持っている
人事部が花形と言われる理由の1つは、人事部が人事権という強い権限を持っているためです。従業員を評価して昇進・昇格させたり配属先を決めたりできるため、組織づくりの要とも言えます。
また、人事権を持つ人事部には専門的な知識や公正な判断力を持ち、企業組織にも精通した人材が求められるため、優秀な人材が集まっていると見られることもあります。
企業の経営戦略に関わる機会がある
人事部は企業組織づくりを行うため、企業の経営戦略に関わる機会も出てきます。新規事業を始めたり、経営目標を達成するために事業を強化したりするとき、経営資源としての「ヒト」の配分が重要になるためです。
経営戦略の目標を達成するために人材を有効活用することを「戦略人事」と呼び、企業経営の中で関心を集めるようになりました。
企業幹部と関係が持てる
企業の経営戦略に関わる機会を持つことにより、企業幹部とともに仕事をする機会も多くなります。社内で公表されていない情報をいち早く入手できたり、企業幹部に仕事が認められ出世したりする可能性もあります。
また、労使交渉では労働者代表と、人材育成や人事評価では多くの従業員と関わる機会が持てるため、社内での人脈が広がることも期待できます。
人事部の仕事がきついと感じるときは?
花形と言われることもある人事部ですが、仕事がきついと感じることもあります。主なケースは、次の通りです。
- 時期によって業務が多忙になる
- 人事評価などに対して人から恨まれることがある
- 専門性が高く学ぶことが多い
それぞれについて解説します。
時期によって業務が多忙になる
特定の時期に集中する業務があるため、時期によっては業務が多忙になることがあります。給与計算のように毎月一定の時期に業務が集中するケースや、採用活動や人事評価・人事発令のシーズンなど毎年一定の時期に多忙になるケースがあります。
他部署の従業員や採用候補者など業務に関係する人が多いため、頑張ってもスムーズに業務が進まないこともあります。
人事評価などに対して人から恨まれることがある
人事評価や異動・配置転換に対して、不満を感じる従業員は一定数います。不満の矛先が上司に向けられることもあれば、人事部に向けられることもあります。
また、パワハラやセクハラなどでトラブルが発生した場合、人事部が対応に当たることもありますが、トラブルへの対応について従業員が納得できず批判を受けることも考えられます。
専門性が高く学ぶことが多い
人事部には専門知識を要する仕事が多く、そのために自分で勉強することも必要です。法改正や働き方の多様化、社会の変化などにも対応しなければならないため、常に最新の知識や情報を求められることもあるでしょう。
また、複数の業務を掛け持ちすることも多いため、担当分野が多ければ専門知識を習得するための負担も大きくなります。
人事部に配属される人の特徴
人事部の仕事内容などについて解説しましたが、実際に人事部に配属される人はどのような人なのでしょうか。人事部に向いている人の特徴は次の通りです。
- 専門知識や事務能力がある
- コミュニケーション力がある
- 情報収集力がある
- 経営戦略を理解して仕事ができる
それぞれの特徴について解説します。
専門知識や事務能力がある
人事制度を設計したり労務管理や社会保険の手続きを行うには、それぞれについての専門的な知識が必要です。配属後に学ぶことも多いですが、社会保険労務士やキャリアコンサルタントなどの資格があれば人事部に配属される可能性は高まります。
また、採用活動や集合研修の手配、給与計算など、期限内に正確・効率的に処理しなければならない業務が多いため、事務能力がないと人事部の仕事は難しいでしょう。専門知識や事務能力など、実務を確実にこなす力のあることが人事部配属の前提となります。
コミュニケーション力がある
人事評価や人員配置などの業務では社内すべての部署、従業員に関係するため、コミュニケーション力が必要になります。採用面接や集合研修、トラブル対応などの場面でも同様です。
所属部署内や他部署、社外との仕事の中でコミュニケーション力を発揮して業務を円滑に進めたり、成果を上げてきた人は人事部の配属を検討するときに高く評価されるでしょう。
情報収集力がある
人事部の仕事では、以下のような情報が必要です。
- 能力やスキル、仕事への取り組む姿勢など、従業員に関する情報
- 長時間労働やコンプライアンス違反、パワハラ、セクハラなどのトラブルが予想される事項に関する情報
- 企業の経営戦略や取り組みに関する情報
- 法改正や人事評価方法や組織づくりなどに関する最新の情報
業務に必要な情報をいち早く収集できることも人事部向きの特徴と言えます。
経営戦略を理解して仕事ができる
人事部の仕事はルーチンワーク(定型業務)だけでなく、経営戦略に応じた組織づくりや人材育成・配置などの戦略人事が重要になってきています。
これからの人事部には、経営戦略を理解して社内の人材を有効に活用できる人がより強く求められるようになるでしょう。
人事部になるには?
人事部の仕事を理解して、人事部への配属を希望する人もいるでしょう。人事部に配属されるために、できることを考えてみましょう。主な方法は次の通りです。
- 人事部への配属希望を出す
- 現在の所属で人事部に求められる能力を発揮する
- 人事部で必要な専門知識を学ぶ
それぞれの方法について解説します。
人事部への配属希望を出す
人事部に配属されるために、まずは人事部への配属希望を出しましょう。会社から配属希望を聞かれるケースや、社内公募制度で人事部が対象になるケースなどがあります。どちらもない場合は、人事面談などの機会を捉えて上司に人事部への配属希望を伝えましょう。
人事部のほかにも企画部や開発部、営業部など会社によって花形部門があるため、優秀な人材だからといって人事部に配属されるとは限りません。自分が希望していることを、人事部に伝えることが重要です。
現在の所属で人事部に求められる能力を発揮する
人事部で求められる事務能力やコミュニケーション力、情報収集力などの能力は、現在の所属でも発揮できます。上司に認めてもらえれば、人事評価を通じて自分の能力を人事部にアピールできます。
次の配属先を考えることも大事ですが、まずは現在の仕事をしっかりやりきって評価してもらいましょう。
人事部で必要な専門知識を学ぶ
人事部で必要な専門知識を学ぶことも、人事部になるために有効です。人事評価制度の設計や労務管理、健康管理、社会保険の手続きなど、専門知識が求められる仕事が多くあるためです。
社会保険労務士やキャリアコンサルタントなどの資格取得もおすすめです。
人事部の仕事を正しく理解してチャレンジしてみましょう
人事部の主な仕事は、経営資源である「ヒト」の管理と有効活用です。経営戦略に沿って組織づくりや人材の育成・配置を行い、組織の活性化や経営戦略の目標達成に貢献することが求められます。
専門知識や高いスキルが求められる仕事が多いため、きついと感じられることもありますが、企業の経営戦略などに関われるやりがいのある仕事です。希望する人はチャレンジしてみましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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