• 更新日 : 2024年2月9日

くるみん認定とは?マークの種類や認定基準、申請方法を解説!

くるみん認定とは、仕事と子育ての両立をサポートする企業に対し、厚生労働省が与える証です。くるみん認定を受けると、自社HPや求人広告にくるみんマークが表示できるほか、さまざまな利点があります。本記事では、くるみん認定の概要や認定を受けるメリット、3種類のくるみんマークと認定基準、認定申請の段取りについて解説します。

くるみん認定とは?

くるみん認定は、我が国の深刻な少子化を背景に、仕事と子育ての両立をサポートするため、2007年に始まった制度です。ここでは、くるみん認定がどのようなものかを解説します。

くるみん認定の概要

「くるみん」とは、従業員の子育てサポートを行う企業に対する厚生労働省の認定制度です。次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、一定条件を満たすことにより、くるみん認定が受けられます。

くるみん認定を受けた企業は、くるみんマークを自社HPや自社商品、広告、求人広告に表示し「子育てサポート企業」であるとアピールできます。

くるみんという愛称は一般公募により決定されました。赤ちゃんを包む「おくるみ」と「職場ぐるみ・会社ぐるみ」を掛け合わせた言葉で、「職場ぐるみ・会社ぐるみで仕事と子育ての両立に取り組んでいこう」という意味が込められています。

くるみん認定制度ができた背景

くるみん認定制度ができた背景には、日本の深刻な少子化問題があります。この問題に対応し、次代の社会を担う子どもの健全な育成を目的として、2005年に次世代育成支援対策推進法が施行されました。

次世代育成支援対策推進法では、仕事と子育てを両立しやすい雇用環境を計画的に整えていくよう、企業に「一般事業主行動計画」の策定義務を課しています。(2024年2月現在、常時使用労働者100人以下の企業は努力義務)

くるみん認定制度は、一般事業主行動計画を策定した企業のうち、一定要件を満たした企業を「子育てサポート企業」として証明するものです。2007年に始まったくるみん認定制度は、改正を経て現在の形になりました。2023年12月現在、くるみん認定を受けた企業は、全国で4,400社以上にのぼっています。

くるみん認定を受けるメリットは?

くるみん認定を受けると、企業イメージが向上するだけでなく、助成金、低利融資、公共調達時の加点評価のメリットがあります。ここでは、おもなメリットをご紹介します。

企業イメージのアップ

くるみん認定を受けた企業は、くるみんマークを自社HPや自社製品に表示できます。くるみんマークのある企業は「従業員の子育てに理解のある会社」として、周囲に好印象を与えられるでしょう。

また、くるみんマークは求人広告にも貼り付けられるため「この会社なら安心して長く働けそう」と、優秀な人材の獲得につながりやすいといえます。

従業員定着率の向上

くるみん認定に取り組む過程で、会社は仕事と子育てを両立しやすい雇用環境を整えていきます。

時間外労働の削減、年次有給休暇の取得促進、短時間勤務制度の整備といった雇用環境が整備されていくことで、出産や育児により離職する従業員が減少し、定着率の向上が期待できるでしょう。

助成金を申請できる

常時使用労働者300人以下の企業がくるみん・くるみんプラス・プラチナくるみん・プラチナくるみんプラスの認定を受けた場合は、くるみん助成金の申請ができます。

この助成金は、育児休業者の職場復帰支援やフレックスタイム制の導入など、仕事と子育ての両立を目指す雇用環境整備の費用について、50万円を上限に支給されるものです。

低利融資を受けられる

日本政策金融公庫の「働き方改革推進支援資金」を利用する際、一般事業主行動計画の策定・届出をしている企業のうち常時使用労働者100人以下の企業(一般事業主行動計画の策定・届出義務がない企業)が一定要件を満たした場合は、特別利率で融資が受けられます。

公共調達で加点評価される

くるみん認定企業・プラチナくるみん認定企業は、公共調達の入札をする際、加点評価を受けられます。これは、ワーク・ライフ・バランスを推進する企業を積極的に評価するよう定められたことによります。

くるみんマークの種類と認定基準

くるみんには3種類のマークがあります。ここでは「くるみん」「プラチナくるみん」「トライくるみん」それぞれのマークと認定基準の概要に加え、「プラス」の要件についても説明します。

くるみんマーク

最もオーソドックスな「くるみん」マークです。マークの上部には認定年度が、左右にある星の数は認定を受けた回数を表示しています。

くるみんマーク

出典:くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて|厚生労働省

くるみんマークを受けるためには、次表の10項目をすべてクリアする必要があります。なお2022年4月に認定基準が一部引き上げられたため、注意が必要です。

1行動計画策定指針に照らし、適切な行動計画を策定した
2計画期間が2年以上5年以下
3行動計画を実施し、計画に定めた目標を達成した
4策定(変更を含む)した行動計画は、適切に公表・周知している
5下記1または2のどちらかに該当している

  1. 計画期間内の男性従業員の育児休業等取得率が10%以上

※育児休業等取得率を「両立支援のひろば」で公表している必要あり

  1. 計画期間内の男性従業員の育児休業等取得率と企業独自の育児目的休暇制度の利用率が合計で20%以上、かつ育児休業等を取得した従業員が1人以上

※育児休業等取得率を「両立支援のひろば」で公表している必要あり

6計画期間内の女性従業員の育児休業等取得率が75%以上
※育児休業等取得率を「両立支援のひろば」で公表している必要あり
73歳~小学校就学前の子を養育する従業員のために、育児休業に関する制度、所定外労働の制限など必要な措置を講じている
8計画期間終了日の属する事業年度において、下記1および2の両方に該当している

  1. フルタイム従業員の法定時間外・休日労働の平均が、各月45時間未満
  2. 月平均の法定時間外労働が60時間以上の従業員がいない
9下記3つのいずれかについて、具体的な目標を決めて実行している

  • 所定外労働の削減
  • 年次有給休暇の取得促進
  • 短時間正社員制度、テレワーク制度など多様な労働条件の整備
10法令違反がない

参考:一般事業主行動計画を策定し、くるみん認定・トライくるみん認定・プラチナくるみん認定を目指しましょう|厚生労働省

詳細な認定基準については、厚生労働省のサイトをご参照ください。

プラチナくるみんマーク

くるみん認定、トライくるみん認定を受けた企業のうち、子育てサポートについてより高い水準の取り組みを行った場合は、プラチナくるみん認定(特例認定)を受けられます。

トライくるみん認定を受けた企業は、くるみん認定を経ることなく、直接プラチナくるみん認定を申請することが可能です。プラチナくるみんマークは王冠とマントをつけていますが、マントの色は12色あり、認定を受けた企業はどの色でも表示できます。

プラチナくるみんマーク

出典:くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて|厚生労働省

プラチナくるみんの認定には、下表の12項目をすべて満たさなければなりません。なお2022年4月に認定基準が一部引き上げられました。

1行動計画策定指針に照らし、適切な行動計画を策定した
2計画期間が2年以上5年以下
3行動計画を実施し、計画に定めた目標を達成した
4策定(変更を含む)した行動計画を適切に公表・周知している
5下記1または2のどちらかに該当している

  1. 計画期間内の男性従業員の育児休業等取得率が30%以上
  2. 計画期間内の男性従業員の育児休業等取得率と企業独自の育児目的休暇制度利用率が合計50%以上、かつ育児休業等を取得した従業員が1人以上
6計画期間内の女性従業員の育児休業等取得率が75%以上
73歳~小学校就学前の子どもを養育する従業員のために、育児休業に関する制度、所定外労働の制限など必要な措置を講じている
8計画期間終了日の属する事業年度において、下記1および2の両方に該当している

  1. フルタイム従業員の法定時間外・休日労働の平均が各月45時間未満
  2. 月平均法定時間外労働が60時間以上ある従業員がいない
9下記3つの全てについて、具体的な目標を定めて実施
※1または2の少なくとも一方について、目標を達成していることが必要

  1. 所定外労働の削減
  2. 年次有給休暇の取得促進
  3. 短時間正社員制度、テレワーク制度など多様な労働条件の整備
10下記のいずれかに該当している

  • 出産した女性従業員のうち子の1歳誕生日までの継続在籍者が90%以上
  • 出産した女性従業員と出産予定だったが退職した女性従業員の合計人数のうち、子の1歳誕生日までの継続在籍者が70%以上
11育児休業等を取得し、または育児を行う女性従業員について、能力向上やキャリア形成支援に関する措置を計画し、実行している
12法令違反がない

参考:一般事業主行動計画を策定し、くるみん認定・トライくるみん認定・プラチナくるみん認定を目指しましょう|厚生労働省

詳細な認定基準については、厚生労働省のサイトをご参照ください。

トライくるみんマーク

2022年4月、くるみんの認定基準が引き上げられたことに伴い、トライくるみんマークが新設されました。

トライくるみんマーク

出典:くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて|厚生労働省

トライくるみんの認定基準は改正前のくるみん認定基準と同じ内容で、下表のとおりです。

1行動計画策定指針に照らし、適切な行動計画を策定した
2計画期間が2年以上5年以下
3行動計画を実施し、計画に定めた目標を達成した
4策定・変更した行動計画を適切に公表・周知している
5下記1または2のどちらかに該当している

  1. 計画期間内の男性従業員の育児休業等取得率が7%以上
  2. 計画期間内の男性従業員の育児休業等取得率と企業独自の育児目的休暇制度利用率が合計15%以上、かつ育児休業等を取得した従業員が1人以上
6計画期間内の女性労働者の育児休業等取得率が75%以上
73歳~小学校就学前の子どもを養育する従業員のために、育児休業に関する制度、所定外労働の制限など必要な措置を講じている
8計画期間の終了日の属する事業年度において、下記1および2の両方に該当している

  1. フルタイム従業員等の法定時間外・休日労働時間の平均が各月45時間未満
  2. 月平均の法定時間外労働が60時間以上の従業員がいない
9下記いずれかの措置について、具体的な目標を決めて実施している

  • 所定外労働の削減
  • 年次有給休暇の取得促進
  • 短時間正社員制度、在宅勤務など多様な労働条件の整備
10法令違反がない

参考:一般事業主行動計画を策定し、くるみん認定・トライくるみん認定・プラチナくるみん認定を目指しましょう|厚生労働省

詳細な認定基準については、厚生労働省のサイトをご参照ください。

プラス認定とは

プラス認定とは、仕事と不妊治療の両立をサポートする企業を認定する制度で、2022年4月に開始されました。

プラス認定を受けると、くるみんプラス・プラチナくるみんプラス・トライくるみんプラスの認定マークを、自社サイトや製品、広告に表示できます。

なおプラス認定の申請ができるのは、くるみん・プラチナくるみん・トライくるみんのいずれかの認定を受けている企業に限られます。

プラス認定

出典:プラス認定とは|厚生労働省

プラス認定を受けるためには、下表の4つすべてをクリアしなければなりません。

1下記1および2を両方とも設けている

  1. 不妊治療のための休暇制度
  2. 不妊治療のために利用できる半日単位や時間単位の年次有給休暇などの制度
2不妊治療と仕事の両立に関する方針と措置の内容を、社内に周知している
3不妊治療と仕事の両立についての研修などを行い、当該両立に関する従業員の理解を深める措置を講じている
4両立支援担当者(不妊治療を受ける従業員からの相談担当者)を選任し、社内に周知している

参考:プラス認定とは|厚生労働省

詳細な認定基準については、厚生労働省のサイトをご参照ください。

くるみん認定の申請方法・手続き

くるみん認定申請をするためには、一般事業主行動計画の策定・届出、従業員への周知、行動計画の実施といった、さまざまな準備が必要です。ここでは、くるみん認定の申請方法・手続きについて解説します。

一般事業主行動計画を策定する

最初に、厚生労働省の行動計画策定指針に沿って一般事業主行動計画を策定します。策定の前段階として、自社の現状、仕事と子育ての妨げになっている事項、従業員が会社に望む制度などについて調査し、解決すべき問題点を洗い出しましょう。

行動計画には、次の事項を記載します。

  • 計画期間(2~5年)
  • 目標
  • 目標達成のための対策と実施時期

目標や目標達成のための対策は、できる限り具体的なものにしましょう。なおくるみん認定やプラチナくるみん認定を申請予定の場合は、各認定基準を満たすように、行動計画を策定する必要があります。

行動計画を公表・周知する

策定した行動計画は、策定日からおおむね3ヶ月以内に、社外に公表しなければなりません。公表の方法は「両立支援のひろば」や自社サイトへの掲載、広報誌への掲載が考えられます。

また行動計画は、社内にも周知する必要があります。社内周知の方法は、見やすい場所への掲示や回覧、各従業員への配布やメール送信、イントラネットへの掲載になるでしょう。

なお、くるみん認定申請の際には、行動計画を社外に公表した日付や社内に周知した日付が必要になるため、公表や周知の日付のわかる書類を保存しておきましょう。

行動計画策定を労働局に届け出る

行動計画の策定日からおおむね3ヶ月以内に「一般事業主行動計画策定・変更届」(様式第一号)を届け出ます。届出先は、都道府県労働局雇用環境均等部(室)です。

届出は、持参・郵送・電子申請のいずれでも構いません。持参や郵送をする場合「一般事業主行動計画策定・変更届」の用紙は、厚生労働省のサイトからダウンロードできます。

行動計画を実施する

届け出た一般事業主行動計画の内容を実施します。行動計画に定めた目標を達成していることが、くるみん認定の要件の1つとされるため、目標達成に向け、雇用環境を整備していきましょう。

認定申請する

一般事業主行動計画策定届に定めた期間の終了後に、くるみん認定申請をします。申請前には、再度自社の状況をチェックし、行動計画に定めた目標を達成しているか、またくるみん認定基準を満たしているかを確認しましょう。

認定申請は、必要書類を添付し、持参・郵送・電子申請のいずれかで行います。なお提出先は、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)です。

くるみん認定企業の取り組み事例

くるみん認定企業は、具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか。ここでは、くるみん認定を受けた企業の雇用環境整備の取り組み事例をご紹介します。

株式会社シニアライフアシスト(香川県高松市)

介護付有料老人ホームを経営する株式会社シニアライフアシスト (従業員数99人、うち女性74人)では、男性の育児休業取得を促す社内研修を開催しています。また小学生以上の子連れ出勤を可能とする制度や、子どもの看護休暇を7日まで取得可能にするなど、子育てがしやすい環境を設け、従業員の定着を図っています。

取得マーク:くるみん、プラチナくるみん

参考:女性の活躍・両立支援総合サイト|厚生労働省

株式会社ラーンズ(岡山県岡山市)

中学・高校向けの教材を販売する株式会社ラーンズ(従業員数108人、うち女性55人)は、コアタイムのないスーパーフレックスタイム制度を導入し、柔軟な働き方を可能としました。また看護休暇の時間単位での取得や在宅勤務制度を取り入れ、仕事と子育てを両立しやすい環境を整備しています。

取得マーク:くるみん

参考:女性の活躍・両立支援総合サイト|厚生労働省

くるみん認定は日々の積み重ねが大切

くるみん認定とは「子育てサポート企業」であることを厚生労働省が認定する制度です。認定には、くるみん・プラチナくるみん・トライくるみんの要件に沿い、雇用環境を整備していかなければなりません。

また、雇用環境は短期間で整えられるものではなく、企業の実情に合わせながら調整していく必要があるため、くるみん認定は毎日の積み重ねの結果だといえます。

本記事の内容を参考に、取得を目指してみてはいかがでしょう。


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