- 更新日 : 2025年2月3日
入社前に行っておく入社手続きは?作成書類のテンプレートやチェックリストとあわせて解説
従業員を採用した際、入社後だけでなく入社前にも入社手続きが必要です。スムーズに手続きを進めるには、入社手続きで何をするべきかを把握しておく必要があります。
本記事では、入社前に行う入社手続きについて、書類作成の流れや入社時に提出してもらう書類とあわせて解説します。書類のテンプレートや手続きのチェックリストも紹介するため、入社手続きを行う際の参考にしてください。
目次
入社前に行う入社手続き
入社手続きとは、従業員が入社する際に必要な手続きの総称です。書類の作成や社会保険の手続きなどの対応を、所定の期日までに完了させなければなりません。
入社手続きは入社前に行うものと入社後に行うものに分けられますが、本記事では入社前に行う手続きについて解説します。
内定通知書の作成・送付
採用選考が終了したら、相手に採用の意思を伝えるために内定通知書を作成・送付します。内定を通知した時点で労働契約が成立するため、内定取り消し事由や内定辞退に関する項目を盛り込んで、書面で作成しましょう。
また、送付の際は本人以外が開封しないよう「親展」と封筒に記すのが一般的です。
入社誓約書の作成・送付
入社誓約書は、入社意思の確認や企業のルールに同意したことを確認するために、作成・送付する必要があります。従業員に特に遵守させたい事項を記載しましょう。基本的に、内定通知書や労働条件通知書といっしょに送付します。
また、他の書類を同封する際は、同封書類の概要を記載した「添え状」を同封しましょう。
労働条件通知書の作成・送付
労働条件通知書は、労働条件を明示した書類です。労働条件通知書を送付し、企業と従業員間における労働条件の認識のずれを防止すれば、透明性のある雇用関係を築けます。
また、従業員本人が希望すれば、労働条件通知書を電子化して送付することも可能です。ただし、その際は従業員本人が確認できる形式で送付する必要があります。
雇用契約書の作成・送付
雇用契約書は、労働条件契約書と同じく、労働条件を明示するために作成・送付する書類です。記載事項がほぼ同じこともあり、労働条件通知書と兼用して作成する場合もあります。
基本的に2部作成し、企業と従業員双方が署名・押印することで雇用契約が締結されます。
備品の準備や社内環境の整備
入社後に従業員がスムーズに業務をこなせるよう、必要な備品を準備しておきましょう。業種によって異なりますが、基本的には以下のような備品が必要です。
- 制服
- デスク
- 社員証
- パソコン
- ロッカー
また、備品の準備とあわせて社内環境も整備しておきましょう。例えば給与計算ソフトや人事システムを導入している場合、あらかじめ新入社員の情報を入力しておくことをおすすめします。
入社当日の流れや必要書類の案内
入社当日は、さまざまな手続きによって相応の時間がかかり、多くの書類が必要です。そのため、入社当日の流れや必要書類について、事前に案内しておきましょう。事前に案内しておけば、入社当日に何をするのか、入社までに何を準備するべきなのかを内定者が把握できます。
また、必要書類の中には役所での手続きが必要なものもあるため、事前に案内することが大切です。
内定通知書の作成・送付の流れ
ここからは、内定通知書を作成・送付する際の目的や記載事項、注意点などについて解説します。
目的
内定通知書の目的は、内定者に対して「正式に内定を知らせる」ことです。「あなたを弊社に迎え入れたい」という明確な意思を示す意味合いもあります。
詳しくは後述しますが、基本的に内定通知書発行後に内定を取り消すことはできません。
法的作成義務の有無
内定通知書は、法的作成義務はありません。後述する記載事項も、企業が自由に決められます。
しかし「内定を通知した証拠になる」「優秀な人材の入社を促せる」などのメリットがあるため、作成する意味合いは大きいでしょう。内定通知書に詳細な情報を記載し、誠実に対応していることを示せば、企業の信頼性も高められます。
記載事項
内定通知書の記載事項は、企業が自由に設定可能です。多くの企業は、以下のような記載事項を盛り込んでいます。
- 挨拶やお礼
- 入社予定日
- 内定が決定した旨の通知
- 入社日までに用意するもの
- 内定取り消し事由
- 連絡先
入社予定日が未定の場合は、別途連絡する旨を伝えておきましょう。連絡先は、電話番号だけでなく担当者名も記載しておくとよいでしょう。
注意点
先述したように、内定通知書自体には法的作成義務はありません。ただし、成立した労働契約には法的効力が発生します。
そのため、内定通知書発行後に企業側の都合で内定を取り消すことはできません。内定の取り消しは「解雇」に準じると考えられているからです。そのため、内定を取り消すには合理的な理由がある、もしくは社会通念上相当であると認められる必要があります。
利用できるテンプレート
内定通知書をどのように作成するべきか迷ってしまう場合は「マネーフォワード クラウド」の内定通知書テンプレートがおすすめです。今すぐ実務で利用できるテンプレートを、ワード・エクセル形式でダウンロードできます。
無料でダウンロードできますので、ぜひお気軽にご活用ください。
入社誓約書の作成・送付の流れ
ここからは、入社成約書を作成・送付する際の目的や記載事項、注意点などについて解説します。
目的
入社誓約書の目的は「従業員が企業のルールに同意したことを確認する」ことです。就業規則や人事方針など、従業員に遵守してもらいたいルールを記載することで、これらを守る責任と義務があることを認識させる意味があります。
また、入社前に入社の意思を確認することも入社誓約書の目的の一つです。
法的作成義務の有無
入社誓約書に法的作成義務はありません。しかし、入社誓約書には就業規則を遵守してもらう役割があります。そのため、入社誓約書を作成しなかった場合、就業規則を守らない従業員との間でトラブルに発展する可能性があります。
トラブルを回避しつつ、従業員に就業規則の遵守を意識づけできるため、基本的には入社誓約書を作成するべきです。
記載事項
入社誓約書には法的作成義務がないため、記載事項は明確に定まっていません。多くの企業は、以下のように企業ルールに関連した項目を記載しています。
- 就業規則を遵守すること
- 経歴に偽りがないこと
- 人事方針を遵守すること
- 秘密保持義務を負うこと
- 競業避止義務を負うこと
就業規則を遵守する旨の項目は、必ず記載するようにしましょう。この項目を記載しておけば、就業規則を守らない従業員がいたとしても、入社誓約書の存在によってトラブルを防止できます。
採用決定後に経歴詐称が発覚すると、採用取り消しや解雇をしなくてはならない場合があるため、経歴に偽りがないことを確認する項目も必要です。
注意点
入社誓約書の記載事項は、事業内容や職種によって変わります。例えば「経理」の場合、「防犯カメラ設置への事前了承」を記載しておくと、不正の疑いが生じた際に円滑に調査できます。
また、入社誓約書の提出は従業員の義務ではありません。そのため、入社誓約書の提出を拒否される場合があります。このようなケースを回避したい場合は、就業規則に「入社誓約書の提出を義務づける」文言を記載しておきましょう。
利用できるテンプレート
入社誓約書をどのように作成するべきか迷ってしまう場合は、「マネーフォワード クラウド」の入社誓約書テンプレートがおすすめです。今すぐ実務で利用できるテンプレートを、ワード・エクセル形式でダウンロードできます。
無料でダウンロードできますので、ぜひお気軽にご活用ください。
労働条件通知書の作成・送付の流れ
ここからは、労働条件通知書を作成・送付する際の目的や記載事項、注意点などについて解説します。
目的
労働条件通知書の目的は、「労働条件を明示する」ことです。労働条件を書面で明示することで、従業員とのトラブルを防止できます。入社後に、従業員と企業との間で労働条件の認識に齟齬があった場合でも、労働条件通知書があればそれに則って対処可能です。
従業員とのトラブルを防止できるため、効果的な労働環境の構築や従業員のモチベーション向上といった効果も期待できるでしょう。
法的作成義務の有無
労働条件通知書は、法律で作成・交付が義務づけられています。労働基準法第15条第1項に基づき、契約期間や就業場所などの労働条件を書面で明示しなくてはなりません。ただし、労働者が希望した場合は、FAXやWebメールなど書面として出力できるもので明示することも可能です。
また、後述する雇用契約書と兼用して「労働条件通知書兼雇用契約書」として交付することもできます。
記載事項
労働条件通知書で必ず明示しなければならない記載事項は以下の通りです。ただし、昇給に関する事項については、書面でなく口頭での明示でも足ります。
契約期間に関すること
期間の定めがある契約を更新する場合の基準に関すること
就業場所・従事する業務に関すること
始業・終業時刻、休憩、休日などに関すること
賃金の決定方法、支払時期などに関すること
退職に関すること
昇給に関すること
また、2024年4月の改正により、以下の4項目も明示が必要となりました。
対象者 | 記載事項 |
---|---|
すべての労働者 | 就業場所・業務の変更の範囲 |
有期契約労働者 | 更新上限の有無と内容 無期転換申込機会 無期転換後の労働条件 |
新たに追加された記載事項は、労働条件通知書だけでなく、求人票や募集要項でも明示しなくてはなりません。
参考:令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます|厚生労働省
注意点
パートタイム・有期雇用労働法第6条第1項に基づき、短時間・有期雇用労働者の場合は、以下の事項も書面で明示しなくてはなりません。
- 昇給の有無
- 退職手当の有無
- 賞与の有無
- 相談窓口
また、以下のような項目は、関連する定めがある場合に明示する必要があります。
- 退職手当に関すること
- 賞与などに関すること
- 安全衛生に関すること
- 負担させるべき食費や作業用品等に関すること
- 負担させるべき食費や作業用品等に関すること
- 災害補償などに関すること
- 表彰や制裁に関すること
- 休職に関すること
これらの項目の明示は書面でなくともかまいませんが、トラブルを避けるという意味でも、できる限り労働条件通知書に記載するとよいでしょう。
利用できるテンプレート
労働条件通知書をどのように作成するべきか迷ってしまう場合は、「マネーフォワード クラウド」の労働条件通知書テンプレートがおすすめです。契約期間や就業場所など、労働条件通知書に必要な事項が網羅されたテンプレートを、ワード形式でダウンロードできます。
無料でダウンロードできますので、ぜひお気軽にご活用ください。
雇用契約書の作成・送付の流れ
ここからは、雇用契約書を作成・送付する際の目的や記載事項、注意点などについて解説します。
目的
雇用契約書の目的は、「企業と従業員の間の雇用契約の内容を明らかにする」ことです。雇用契約の内容を明らかにすることで、企業と従業員の間に雇用条件の齟齬が発生したとしても、雇用条件を再確認できます。
また、従業員が雇用契約に合意したことを証明する書類でもあり、先述したように労働条件通知書を兼ねることも可能です。
法的作成義務の有無
雇用契約書に法的作成義務はありません。そのため、雇用契約自体は口頭での契約でも成立します。しかし、口頭での契約は証明が難しく、トラブルに発展する可能性が考えられます。
特に複雑な労働条件がある場合は、従業員が誤解を招く可能性があるため、トラブルを避けるためにも雇用契約書を作成したほうがよいでしょう。
記載事項
雇用契約書には法的作成義務がないため、記載事項も法律で定められていません。しかし、実務上では労働条件通知書と雇用契約書を兼ねるケースが多いため、労働条件通知書と同様の項目を記載しておくとよいでしょう。
なお、雇用契約書には署名捺印欄が必要です。契約締結を証明するために、企業と従業員双方が署名する必要があります。
注意点
雇用契約書を作成する際は、記載する労働条件が「最低条件」を下回らないように注意しましょう。労働条件は法律によって最低条件が定められており、法律に違反する条件を定めたとしても、その部分は無効となってしまいます。そのため、雇用契約書は最低条件を意識して作成することが大切です。
また、雇用契約書の内容を変更する場合は、企業と従業員双方の合意が必要になります。合意なしに一方的に変更することはできないため、注意してください。
利用できるテンプレート
雇用契約書をどのように作成するべきか迷ってしまう場合は「マネーフォワード クラウド」の雇用契約書テンプレートがおすすめです。雇用期間や勤務時間などが記載された今すぐ利用できるテンプレートを、ワード形式でダウンロードできます。
無料でダウンロードできますので、ぜひお気軽にご活用ください。
提出書類は入社前に伝えておくとスムーズ
入社時に従業員から回収する提出書類は、入社前に伝えておくとスムーズです。どのような書類を提出してもらう必要があるのか、詳しく見ていきましょう。
入社時に従業員に提出してもらう書類
入社時に従業員に提出してもらう書類は以下の通りです。
また、場合によっては以下のような書類の提出を求めることもあります。
- 免許・資格関係の書類
- 健康診断書
- 入社誓約書
- 雇用契約書
- 卒業証明書
- 退職証明書
年金手帳に記載された基礎年金番号は、厚生年金の加入手続きの際に必要です。マイナンバーは、雇用保険や年末調整などさまざまな手続きで必要になります。マイナンバーを提出してもらう際は、必ず使用目的を伝えるようにしましょう。
入社前の手続きチェックリスト
最後に、ここまでの内容を踏まえた入社前の手続きチェックリストを紹介します。
確認内容 | チェック |
---|---|
内定通知書を作成・送付する | |
入社誓約書を作成・送付する | |
労働条件通知書を作成・送付する | |
雇用契約書を作成・送付する | |
必要な備品を準備する | |
社内環境を整備する | |
入社当日の流れを案内する | |
必要書類を案内する |
入社手続きではさまざまな手続きを行う必要があるため、担当者の負担が軽減されるよう、今回紹介するようなチェックリストを準備しておきましょう。
入社前に行う手続きを把握してスムーズに入社手続きを進めよう
入社手続きとは、従業員が入社する際に必要な手続きの総称です。入社前に必要な手続きは、書類の作成・送付や備品の準備、必要書類の案内など多岐に渡ります。
今回入社手続きで紹介した書類のうち、法的作成義務があるのは労働条件通知書のみです。しかし、その他の書類にも作成するメリットが存在するため、基本的には作成をおすすめします。書類を作成する際は、書類ごとの注意点を把握したうえで作成しましょう。
また、入社時には年金手帳や雇用保険被保険者証などを提出してもらう必要があります。これらの書類は入社手続きで必要なため、事前に提出書類を伝えておきましょう。
今回解説した内容やチェックリストによって、入社手続きがスムーズに進められれば幸いです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
休職中に転職活動は法的にOK?バレる理由は?
休職中の転職活動は法的には問題ありません。しかし、就業規則違反や信義則違反となる可能性があります。多くの人が「休職中に転職活動をしてもバレないのでは?」と考えますが、実際にはSNSや知人のネットワークを通じて企業側に情報が伝わることがありま…
詳しくみる人材開発と人材育成の違いは?目的は導入における注意点を解説
企業間での競争力の差は、人材によるパフォーマンスによって生まれると言っても過言ではありません。そのため、企業は人材の育成に力を入れる必要があります。さらに、人材の育成は、組織的、計画的に行うのが効果的です。本記事では、組織的、計画的に人材を…
詳しくみる262の法則とは?人材育成での活用ポイントや343の法則との違い
262の法則とは、どの組織でも人材の比率が「優秀な2割「普通の6割」「貢献度の低い2割」で構成されるという考え方です。階層ごとに適切なマネジメントや人材育成を行うことで、組織全体の成長に役立ちます。 本記事では262の法則の意味や343の法…
詳しくみるバランススコアカード(BSC)とは?4つの視点や効果、作成方法まで解説
企業が業績を伸ばし、継続的な成長を続けるためには、複数の観点による多面的な状況把握が必要です。財務や顧客など、ひとつの観点からの評価のみでは正確に状況を把握することは困難でしょう。 当記事では、経営戦略を効率的に推進するために役立つバランス…
詳しくみるチームワークとは?なぜ必要?高める方法やメリットを解説!
近年、ビジネスを取り巻く環境の変化によりチームワークを高めることが重視されるようになりました。チームワークを強化することで「個人ではできないこと」を成し遂げられるようになるほか、モチベーションも向上などの組織的なメリットもあります。適材適所…
詳しくみる育休中は無給?給付金の2年目は?もらえるお金や年末調整を解説
育休中は原則無給ですが、育児休業給付金などの制度を活用すれば、無給期間中の収入を確保できます。 本記事では、育休中に支給される給付金や支援制度について詳しく解説します。 合わせて、2年目以降の給付はどうなるか、さらには年末調整の手続きなど、…
詳しくみる