• 作成日 : 2022年12月23日

飲食店も労災保険・雇用保険の加入義務がある?手続きもわかりやすく解説!

飲食店も労災保険・雇用保険の加入義務がある?手続きもわかりやすく解説!

飲食店を開業し、従業員を雇用する場合は労災保険・雇用保険に必ず加入しましょう。労災保険・雇用保険への加入手続きを怠ると、のちに多額の徴収が行われる可能性があるので注意が必要です。この記事では、飲食店の労災保険・雇用保険の加入義務や、飲食店における労災保険・雇用保険、加入しなかった場合の処遇について解説します。

飲食店も労災保険・雇用保険の加入義務がある?

飲食店も、1人でも労働者を雇ったら労働保険に加入する義務があります。労働保険とは、労災保険(労働者災害補償保険)と雇用保険を総称した言葉です。農林水産省の一部事業を除き、パート・アルバイトを含めた労働者を1日・1人でも雇っていれば、その事業主は必ず労働保険へ加入しなければなりません。

参考:ひとりでも労働者を雇ったら、労働保険(労災・雇用)に入る義務があります。|(一社)全国労働保険事務組合連合会広島支部・労働保険事務組合

飲食店における労災保険とは?

労災保険は、飲食店で働く労働者が、就業中や通勤中にケガをしたり、仕事が原因で病気を患ってしまったりした場合に必要な給付を行う制度です。ここでは、飲食店における労災保険の概要について解説します。

労災保険の詳細について、詳しくはこちらの記事をご参照ください。

労災保険の加入義務

労災保険は、労働者を対象とした労災事故発生時などに必要な給付を行う社会保険制度です。前述のとおり、飲食店も雇用形態にかかわらず1人でも労働者を雇用したら労災保険に加入しなければなりません。労災保険から保険給付を受けられるのは労働者のみで、事業主や役員は原則として労災保険の対象にはならないことに留意しましょう。

労災保険の適用範囲

労災保険は業務災害・通勤災害による疾病に適用されます。具体的には、業務上の事由または通勤によって負傷したり、病気に見舞われたりした場合などです。労働者が死亡した場合は遺族に必要な給付が行われます。

業務災害・通勤災害による傷病に対して行われる給付は以下のとおりです。

  • 療養(補償)給付
    労災病院や労災指定医療機関等で療養を受けるときに療養のための給付や療養費用の補償が行われます。
  • 休業(補償)給付
    傷病のために働けず、給与をもらえないときに行われる給付や補償です。
  • 傷病(補償)年金
    療養を開始してから1年6か月経過しても傷病が治らないで傷病等級に該当するときに給付や補償が行われます。
  • 障害(補償)給付
    傷病が治って障害等級が第8級から14級までに該当する身体障害が残ったときに一時金と給付金が支払われます。
  • 介護(補償)給付
    障害(補償)年金または傷病(補償)年金の一定の障害によって介護を受けている場合に給付や補償が行われます。
  • 遺族(補償)給付
    労働者が死亡したときに遺族が受け取れる年金です。労働者が死亡し、遺族(補償)年金を受けられる遺族がいないときは一時金が支払われます。
  • 葬祭料(葬祭給付)
    労働者が死亡したときの葬儀にかかる費用が支払われます。

このほかに、事業所が実施する定期健康診断の結果、血圧や血中脂質、血糖、BMIのすべてに異常が認められる場合は「二次健康診断等給付」が行われます。

参考:ひとりでも労働者を雇ったら、労働保険(労災・雇用)に入る義務があります。|(一社)全国労働保険事務組合連合会広島支部・労働保険事務組合

労災保険の保険金負担割合

労災保険料の負担割合は以下のとおりです。

賃金総額(労働者に支払った賞与・通勤手当を含む)×労災保険率

飲食店の労災保険率は3.5/1000で、事業主が全額を負担します。

参考:ひとりでも労働者を雇ったら、労働保険(労災・雇用)に入る義務があります。|(一社)全国労働保険事務組合連合会広島支部・労働保険事務組合

労災保険の加入手続き

労働保険に加入するためには以下の手続きが必要です。

  • 保険関係成立届の提出
    保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内に所轄の労働基準監督署またはハローワークに保険関係成立届を提出します。
  • 概算保険料申告書の提出
    保険関係が成立した日の翌日から起算して50日以内に所轄の労働基準監督署またはハローワーク、日本銀行に概算保険料申告書を提出します。

手続きに必要となる専用の用紙は労働基準監督署またはハローワークの窓口にて受け取るか郵送してもらいましょう。

参考:労働保険の成立手続|厚生労働省

飲食店における雇用保険とは?

労災保険とあわせて、従業員を1人でも雇い加入義務の要件を満たす場合は、雇用保険も必ず加入しなければなりません。ここでは、飲食店における雇用保険について解説します。

雇用保険の詳細について、詳しくはこちらの記事をご参照ください。

雇用保険の加入義務

雇用保険とは、労働者が失業した場合や、労働者を雇い続けることが困難な状況に陥った場合に行われる給付です。労働者の生活および雇用の安定を図るとともに、再就職を促すことを目的としています。飲食店で従業員を1人でも雇い加入義務の要件を満たす場合は、労災保険とあわせて雇用保険にも加入しなければなりません。雇用保険は給付だけでなく、失業の予防や労働者の能力開発、能力向上を図るための事業も行っています。対象となる被保険者は、事業主・労働者の意思にかかわらず、適用事業に雇用されるすべての労働者です。

被保険者の種類は以下になります。

  • 一般被保険者(65歳未満の常用労働者)
  • 高年齢被保険者(65歳以上の常用労働者)
  • 短期雇用特例被保険者(季節的に雇用される労働者)
  • 日雇労働被保険者(日々雇用される労働者や、30日以内の期間雇用される労働者)

パートタイム労働者(短時間就労者)が被保険者となる要件は以下のとおりです。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上
  • 31日以上継続して雇用が見込まれる
  • 要件を満たしていれば、社会保険の加入の有無を問わず、被保険者となります。

参考:ひとりでも労働者を雇ったら、労働保険(労災・雇用)に入る義務があります。|(一社)全国労働保険事務組合連合会広島支部・労働保険事務組合

雇用保険の適用範囲

雇用保険に加入することで労働者は「失業給付金」を、事業主は助成金を受け取れる可能性があります。

労働者が受け取れる失業給付金は以下のとおりです。

  • 求職者給付
    基本手当、技能習得手当(受講手当・通所手当)、寄宿手当、傷病手当、高年齢求職者給付金、特例一時金、日雇労働求職者給付金
  • 就職促進給付
    就職促進手当(就業手当、再就職手当、就業促進定着手当、常用就職支度手当)、移転費、求職活動支援費
  • 教育訓練給付
    教育訓練給付金、教育訓練支援給付金
  • 雇用継続給付
    高年齢雇用継続給付金、育児休業給付金、介護休業給付金

企業向けの助成金・補助金は以下のとおりです。

  • 雇用調整助成金
    事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が従業員の雇用維持を図るために「雇用調整(休業)」を実施する場合、休業手当などの一部を助成するものです。
  • 業務改善助成金
    小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内最低賃金の引上げを図るためのものです。
  • 既存不適合機械等更新支援補助金
    安全性の高い機械等に買い替えに伴う経費の一部を負担してくれる補助金です。
  • 産業保健関係助成金
    ストレスチェック助成金、職場環境改善計画助成金、心の健康づくり計画助成金、小規模事業場産業医活動助成金などが挙げられます。
  • 人材確保等支援助成金
    労働環境の向上等を図る事業主や事業協同組合等に対して交付されるものです。
  • 時間外労働等改善助成金
    時間外労働の上限設定に取り組む中小企業・小規模事業者に対し、実施内容の結果に応じて費用の一部を助成するものです。

参考:第13章 失業等給付について|厚生労働省
参考:各種助成金・奨励金等の制度|厚生労働省

雇用保険の保険金負担割合

雇用保険料は以下の式で算出されます。

賃金総額(労働者に支払った賞与・通勤手当を含む)×雇用保険率

飲食店の保険率は13.5/1000、事業主負担率が8/1000、被保険者負担率が5/1000です(2022年12月現在)。

参考:ひとりでも労働者を雇ったら、労働保険(労災・雇用)に入る義務があります。|(一社)全国労働保険事務組合連合会広島支部・労働保険事務組合

雇用保険の加入手続き

前述した労働保険に加入するために必要な「保険関係成立届」と「概算保険料申告書」を提出したあと、以下の届出を提出します。

  • 雇用保険適用事業所設置届
    事業所の設置日の翌日から起算して10日以内に所轄のハローワークに提出します。
  • 雇用保険被保険者資格取得届
    資格取得の事実があった日の翌月10日までに所轄のハローワークに提出します。

以下の4つの書類を提出することで労働保険の加入手続きが完了します。

  • 保険関係成立届
  • 概算保険料申告書
  • 雇用保険適用事業所設置届
  • 雇用保険被保険者資格取得届

参考:労働保険の成立手続|厚生労働省

飲食店が労災保険・雇用保険に加入しないとどうなる?

労災保険・雇用保険は政府が管理運営している強制的な保険です。労働者を1人でも雇用している場合は、原則として、事業主は労働保険の加入手続きを行い、保険料を納める義務があります。加入手続きを行うよう指導を受けても加入しない事業主は、職権により強制的に加入手続きを実行し、遡った分の保険料に加え、追徴金を徴収されます。万が一、加入手続きを怠っている期間中に労働災害が発生し、労災保険給付を実施した場合は、遡った分の保険料と追徴金に加え、労災保険給付に要した費用の100%または40%を徴収されるので労働保険の加入は必ず済ませておきましょう。

参考:ひとりでも労働者を雇ったら、労働保険(労災・雇用)に入る義務があります。|(一社)全国労働保険事務組合連合会広島支部・労働保険事務組合

飲食店で従業員を1人でも雇う場合は労働保険に加入しましょう

飲食店で労働者を1人でも雇う場合は労災保険・雇用保険に必ず加入しなければなりません。加入を怠った場合は、これまで支払わなかった分の保険料と追徴金が徴収されるので注意が必要です。また、労働保険に加入していない期間に労災が発生して保険給付を行った場合、保険給付に要した費用の100%または40%を徴収される可能性があります。労災保険と雇用保険の保険料の申告・納付は必ず行いましょう。

よくある質問

飲食店では労災保険・雇用保険の加入義務がある?

1人でも労働者を雇ったら労災保険・雇用保険に加入する義務が発生します。詳しくはこちらをご覧ください。

飲食店が労災保険・雇用保険に加入しないとどうなる?

強制的に加入手続きが実行され、これまで支払いを怠った分の保険料と追徴金を徴収されます。詳しくはこちらをご覧ください。


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