• 更新日 : 2024年1月17日

インポスター症候群とは?症状や人事業務に関わる点を解説!

人事労務に携わっている方なら一度は耳にしたことがあるであろう「インポスター症候群」。ですが、改めてその意味を聞かれるとよく分からないという方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、そもそもインポスター症候群の概要から、その傾向や症状、原因、対策について順を追って解説します。ぜひ参考にしてみてください。

インポスター症候群とは?

インポスター症候群とは、実力があって実績や評価も伴っているにも関わらず、自分の実力や能力を過小評価してしまう心理傾向のことです。よい評価や実績は運か周囲のおかげと思い込んでしまい、仕事では常に自分のキャリアを信じることができず不安を抱えてしまいます。

インポスター症候群は正式な病気ではなく、心理傾向や気質です。しかし、人によってはこのような心理傾向が大きな負担となり、ひどくなると精神的に限界を迎え仕事や生活に支障がでるケースもあります。

Among Usや人狼などのゲームで言われるインポスターとの違い

Among Usや人狼などのゲームで役割分担されるインポスターは、「うまく騙す」といった意図をもってわざと騙します。それに対して、インポスター症候群の人は、成功や実績は実力によるものにも関わらず「本当は自分はできない人間なのに評価されてしまっている」と考え、「周囲を騙している」と思ってしまう心理傾向のことを指します。

つまり、ゲームで言われるインポスターは「意図的に騙している」一方、インポスター症候群は「騙していないのに騙していると思ってしまう」という違いがあるのです。

インポスター症候群の傾向や症状

続いて、インポスター症候群の人が陥りやすい傾向と症状について解説します。

自己評価が低い

インポスター症候群の傾向や症状に、自己評価が低いことが挙げられます。よい評価や実績を実力ではなく運や周囲のおかげと考えてしまうため、実力があったとしても自信に繋げることができません。また、常に他人のことを意識し、他人と比較して自分の方が評価が低いと感じてしまいます。結果的に自己評価が低くなり、他人から評価された際さらに運や周囲のおかげと考えることで、インポスター症候群がどんどん深まってしまいます。

女性に多いと言われている

インポスター症候群は、日本では男性よりも女性がなりやすいと言われています。まだまだ男性が優位な役割を持つ職場や社会において、女性は少数派であることが多いのが実情です。そのため、自分が今の立場に不相応だと感じてしまうという社会的な要因が背景の一つです。加えて、性差に基づく認知の違いも関係しているとも言われており、女性は自己評価が低く自分の能力を過小評価する傾向があるとされています。

保守的になりがち・変化を嫌う

その他にも、保守的になりがちで変化を嫌う傾向・症状があります。自分自身に自信が持てず、自分への良い評価は周囲を騙しているうえで成り立っていると感じているため、上司などから期待をされてもそれに応えることができないと考えてしまうのです。また、周囲を騙していることが発覚するのを恐れるので、過度に失敗を恐れる傾向もあります。中には、無意識に自分が変わらない=成長しないことで心理的安全が守られると思っている人もいます。

本当の実力が周りに伝わっていないという意識

証拠がないのに「自分はそれほど有能ではないといつか誰かに見抜かれる」という意識がついてまわります。常に実績や評価は運か周囲のおかげなのに自分の実績として扱われてしまっている=騙していると思っているため、本人は「本当の実力が周りに伝わっていない」と思い込んでいます。どれだけよい評価を受けてもその意識が消えることはないので、よい評価を受ければ受けるほど心の内との間に乖離ができてしまい、精神的な負担になってしまいます。

インポスター症候群になってしまう原因

インポスター症候群になってしまう原因は、大きく3つあると言われています。続いて、原因とされている要因を解説します。

心理的要因

インポスター症候群の原因と言われている要因の1つに、心理的要因が挙げられます。インポスター症候群に陥る人の心理的背景には、何らかの理由で無意識に「自分は変化してはいけない=成長してはいけない」と思い込んでしまうということがあります。「自分は変わらなければ大丈夫」と思い込むことでストレスや不安から心を守ろうとしている傾向があるのです。成功体験や周囲からの自分の評価が変化することを恐れることで、インポスター症候群になりやすいと考えられています。

人間関係の要因

インポスター症候群の原因と言われている要因の2つ目は、人間関係の要因です。インポスター症候群になる人は、他人から褒められたり期待されたりした時に、その裏側を意識してしまいプレッシャーを強く感じてしまうのです。周囲は応援や励ましのつもりでかけた何気ない一言でも、プレッシャーに感じてしまうので、できるだけ目立たないことを意識するためさらに自信をなくしていくというサイクルへ陥ってしまいます。

家庭環境の要因

インポスター症候群の原因と言われている要因の3つ目は、家庭環境の要因が挙げられます。兄弟や姉妹がいる家庭において、常に優劣を比較されて発育してきた場合にはインポスター症候群に陥りやすいと考えられています。また、同調要素を重要視するように教育されてきたケースでは、必要以上に両親や周囲の目を伺い過ぎてしまうため自己肯定感が低くなります。そのため、自分の実力を周囲のおかげと錯覚してしまうことでインポスター症候群になりやすいとも考えられています。

インポスター症候群にならないための対策・個々人の対策

そんな個人の可能性を狭めてしまうインポスター症候群にならないためには対策があります。続いて、インポスター症候群にならないための対策の中でも、個々人でできることを解説します。

自分を肯定的に評価する

インポスター症候群ならないためには、自分を肯定的に評価すること、つまり自分を褒めることが有効です。インポスター症候群は、自己肯定感が低いことで周囲からの良い評価とのギャップに苦しむことを指します。自分自身を褒めることで「自分は褒められるようなことをやった」と思い自己肯定感を高めることに繋がるのです。その結果、他人から褒められた際も素直に受け止められるようになります。褒める内容を文字に書き起こして残したり、賞状などをもらった場合にはそれを飾ったりすると良いでしょう。

完璧主義を避ける

「何事もきちんと完璧でなくてはならない」というプレッシャーを手放しましょう。インポスター症候群の人は、思い描く理想の自分と自信が持てない現実の自分とのギャップに悩まされる傾向があります。そのため、現状の自分を否定し「完璧にならなくては」と思い込んでいまう人も少なくありません。さらに、その完璧主義の価値観を他人にしいることでトラブルの原因となってしまうこともあります。自分も他人もプレッシャーで追い込まないように、ほどほどを目指すように心がけましょう。

過去の経験を洗い出して振り返る

インポスター症候群に陥る人の中には、自分の能力を否定されるような経験や言動を受けたという人が一定数います。そのような場合は、その過去の経験が本当にそうだったのか振り返ると良いでしょう。当時のことを思い出して客観的に見つめ直すことで、本当に自分の能力や実力が不足していたのかなどを冷静に考えることができます。振り返りという自分自身との対話を通して、メタ認知能力も磨かれていきます。メタ認知とは自分の活動を客観的に捉えることを指し、自己肯定に有効な手段になります。

SNSを控える

SNSを見ないようにする・SNSと距離をおく、というのも対策の1つです。SNSを開くと、成功者や自分を派手に表現している人の情報が自然と入ってきます。すると、ついそのような情報をもとに他者と自分を比較しがちになり、元々自信を持ちにくい気質に拍車がかかってさらに自己肯定感を下げることに繋がってしまいます。他者との比較を避けて自分を見つめ直すという観点からも、SNSを控えることはインポスター症候群対策の有効手段になります。SNSにはのめり込み過ぎないように注意しましょう。

人事からできる従業員のインポスター症候群対策

続いて、インポスター症候群にならないための対策の中でも、人事としてできる対策を解説します。

肯定的な評価をする仕組み作り

本人の能力があれば失敗する可能性が低い仕事を任せてきちんと評価をする仕組みをつくると良いでしょう。それは、インポスター症候群に陥る理由の1つである「失敗することへの不安」を取り除くためです。小さな成功体験を積むことで少しずつ自信が持てるようになるので、インポスター症候群の対策に繋がります。

否定的なことを言わない社内文化を推進

社員の言動に対して頭ごなしに否定せずに、まずは肯定する社内文化を醸成しましょう。インポスター症候群になりやすい人は、否定されることでさらに自信をなくし自己評価を下げてしまいます。そのため、まずは相手を肯定し、間違いがあればその後に別の方法や意見があることを伝えるようにすることが大切です。

1 on 1ミーティングを定期的に行う

週もしくは月に1回、上司との1on1ミーティングを実施するようにしましょう。人は1人に対して複数人から話をされると、責められていると感じてしまいがちです。定期的にマンツーマンで話す機会を作ることで、心理的安全を守りながら精神状態を把握することができるうえに、信頼関係を築くこともできます。

インポスター症候群は個々人・周囲で対策を

以上、今回はインポスター症候群の概要から、インポスター症候群の傾向や症状、原因、対策について順を追って解説しました。インポスター症候群になるには複数要因はありますが、真面目で謙虚に仕事に取り組んでいる人であれば誰しも陥る可能性がある心理傾向であること、ご理解いただけたのではないでしょうか。
ですが、個々人でできる対策も企業が人事を通してできる対策もあります。自己肯定感の低さが話題になる昨今、個々人でも企業でも対策をして、誰もがイキイキ働けるようぜひこの記事を参考にしてみてください。


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