- 更新日 : 2026年4月8日
扶養内で月8万8千円を超えたらどうなる?社会保険と年収の壁をわかりやすく整理
短時間労働者の社会保険の加入要件には、「月額賃金8万8千円以上」という基準があり、これを超えるかどうかで、配偶者や親の扶養を外れて自分で社会保険料を負担するかが決まります。ただし、この8万8千円の計算方法や、1ヶ月だけ超えた場合の取り扱いにはルールがあります。
この記事では、扶養内で働く方が月8万8千円を超えた場合にどうなるのか、社会保険加入のタイミング、年収の壁との関係、具体的な計算方法、パート主婦や学生のケース別の影響までをわかりやすく解説します。
目次
月8万8千円は社会保険加入の目安のひとつ
月額8万8千円という基準は、パート・アルバイトなどの短時間労働者が社会保険に加入するかどうかを判断する要件のひとつです。
ただし、月8万8千円だけを見ればよいわけではなく、加入要件は全部で4つあります。また、企業規模によって適用対象かどうかも変わります。まずは加入条件の全体像を確認しましょう。
社会保険(健康保険・厚生年金)の加入条件
社会保険の加入条件は、正社員(フルタイム)と、パート・アルバイトなどの短時間労働者で異なります。
正社員などフルタイムで働く方は原則として社会保険に加入します。一方、パート・アルバイトなど短時間で働く方の場合は、勤務先の企業規模に応じて、以下の要件をすべて満たすかどうかで加入の必要性が判断されます。
- 週の所定労働時間が20時間以上であること(残業時間は原則含まない)
- 月額賃金が8万8千円以上であること
- 2ヶ月を超える雇用の見込みがあること
- 学生ではないこと(ただし、休学中の学生や夜間・通信制の学生は加入対象になることがある)
この要件は、適用拡大の対象となる企業(2027年9月まで:従業員51人以上)で働く場合にあてはまります。
特に企業側は、短時間労働者の雇用契約を結ぶ際や、賃金が変動した際に、これら4つの要件を満たすかどうかを常に確認する必要があります。
月額88,000円に含まれる給与と含まれない給与
「月額88,000円」の判定に用いられるのは、残業代や交通費などを除いた「所定内賃金」です。
一方で、臨時に支払われるものや、労働と直接関係のない費用は含まれません。
具体的には、以下の賃金が計算から除外されます。
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当等)
- 1月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
- 時間外労働に対して支払われる賃金、休日労働および深夜労働に対して支払われる賃金(割増賃金等)
- 最低賃金において算入しないことを定める賃金(精皆勤手当、通勤手当及び家族手当)
つまり、残業代や交通費は8万8千円の計算には含まれないため、残業で一時的に月収が10万円になっても、所定内賃金が8万円であれば加入要件は満たさないことになります。
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扶養内で月8万8千円を超えたらどうなる?
月8万8千円を超えた場合、パート・アルバイトの方は短時間労働者として社会保険(健康保険・厚生年金)に加入する必要が生じます。
社会保険に加入すると、それまで配偶者や親の扶養に入って支払いが免除されていた保険料を、自分で負担することになります。その結果、収入が増えても手取りが一時的に減る「働き損」のような状態が発生する点に注意が必要です。
社会保険の扶養から外れる
社会保険上の扶養から外れ、短時間労働者として社会保険に加入する必要が生じるタイミングは、雇用契約や実際の賃金が社会保険の加入要件を満たしたときです。
直近2ヶ月の実績が8万8千円を超えており、今後も超える見込みがある場合などに、事業主は社会保険の加入手続きを行う必要があります。1ヶ月だけ一時的に超えただけでは、すぐに加入となるわけではありませんが、継続的に超える見込みがあるかどうかが焦点になります。
税法上の扶養控除への影響は限定的
月8万8千円を超えたとしても、ただちに配偶者や親の「税法上の扶養控除」に影響が出るわけではありません。
令和8年分の所得税から、扶養親族の合計所得金額の要件が62万円以下(給与収入のみの場合:136万円以下)に引き上げられました。月8万8千円(所定内賃金)を12ヶ月働いた場合の年収は約105万6千円であり、この水準では配偶者や親の扶養控除への影響は生じません。
なお、年収が136万円を超えた場合も、年収201万円までは配偶者特別控除が段階的に適用されるため、急に配偶者や親の税負担が大きく増えるわけではありません。
1ヶ月だけ超えても即加入にはならない
1ヶ月だけ月8万8千円を超えた場合、原則としてすぐに社会保険に加入する必要は生じません。
社会保険の加入判定は、継続的な収入見込みにもとづいて行われます。具体的には、直近の賃金実績が8万8千円を超えたとしても、その後の契約内容や勤務実態から判断して、今後も継続的に8万8千円を超えると見込まれるかどうかが重要です。
しかし、契約自体が変更になったり、3ヶ月連続など継続的に超える実績ができたりした場合は、加入の検討が必要です。
年収の壁と月8万8千円の関係
月8万8千円の壁は「社会保険の扶養」に関するルールですが、扶養内で働く方には他にも年収ごとの「壁」が存在します。
これらの壁はそれぞれ異なる制度に関するものであり、税金と社会保険の2つの側面から扶養への影響を判断します。月8万8千円の壁が106万円の壁と連動しているように、各々の壁を理解し、現在の自分の働き方がどの壁に該当するかを把握することが大切です。
それぞれの年収の壁
扶養内で働く人がとくに意識すべき「年収の壁」には、主に以下のラインがあります。
| 年収の壁 (年間総収入) |
影響する制度 | 概要 |
|---|---|---|
| 106万円の壁 | 扶養控除 | 短時間労働者が社会保険(健康保険・厚生年金)に加入するライン(月8万8千円が目安) |
| 130万円の壁 | 社会保険の扶養 | 企業規模や労働時間に関係なく社会保険に加入するライン(通勤手当含む)。ただし、人手不足による一時的な収入増の場合は事業主の証明により被扶養者認定が継続できる特例あり |
| 136万円の壁 | 扶養控除 | 配偶者や親の所得税の扶養控除がなくなる(令和8年分の所得税から適用。改正前は123万円) |
| 150万円の壁 | 特定親族特別控除 |
|
| 160万円の壁 | 配偶者特別控除 |
|
| 178万円の壁 | 所得税 | 本人に所得税がかかり始めるライン(課税最低限)。令和8年・9年の特例により、基礎控除(最大104万円)と給与所得控除(最低保障74万円)の合計として178万円まで非課税となる(改正前は103万円) |
月額8万8千円という基準は、年間で考えると年収およそ106万円にあたります。
この105万6千円という金額が、社会保険適用拡大の対象となる短時間労働者にとっての「106万円の壁」の目安となります。
一方で、「130万円の壁」は、月収に換算するとおよそ10万8千円(130万円 ÷12ヶ月)です。130万円の壁の場合は、通勤手当(交通費)も含めた総支給額で判断されるため、8万8千円の壁よりも算定基準が異なる点に注意しましょう。
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人手不足への対応などで労働時間が一時的に延び、年収が130万円以上となった場合でも、勤務先の事業主が「一時的な収入変動である」旨を証明することで、引き続き被扶養者として認定される仕組みがあります(厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ」)。
- 対象となるのは、職場の人手不足に対応するために労働時間を延ばしたことなどによる一時的な収入変動の場合です。
- この特例は、同一人について原則として連続2回までが上限となります。
- 2社以上で働いている場合も対象となりますが、証明は実際に勤務時間を延ばした事業主から取得する必要があります。
この特例はあくまでも一時的な措置です。収入増が恒常的になった場合は、被扶養者の認定が外れる可能性があります。詳しくはご加入の健康保険組合等にご相談ください。
手取りへの影響はシミュレーションで確認を
扶養内で働く場合、社会保険加入の有無は手取りに大きく影響します。そのため、月8万8千円を超えた場合のシミュレーションを行うことが大切です。
社会保険に加入すると、一般的に月収の約14〜15%程度が社会保険料として控除されます。
| 月額賃金(所定内賃金) | 年収(目安) | 社会保険加入の必要性 | 手取り額の変化 |
|---|---|---|---|
| 87,000円 | 104万円未満 | なし(扶養内) | 保険料の自己負担なし |
| 88,000円 | 105万6千円 | あり(106万円の壁) | 社会保険料の自己負担が発生 |
| 100,000円 | 120万円 | あり(106万円の壁) | 社会保険料の自己負担が発生 |
| 108,000円 | 130万円 | あり(130万円の壁) | 社会保険料の自己負担が発生 |
月8万8千円を超えて社会保険に加入すると、たとえば月収10万円の場合、約1万4千円の保険料(東京都・40歳未満)が引かれ、手取りは約8万6千円になり、扶養内の月収8万7千円よりも一時的に手取りが下がる時期が生じます。
パート・アルバイトが月8万8千円を超えたときの影響は?
月8万8千円の壁を超えることは、パート主婦(夫)、学生アルバイト、ダブルワーカーなど属性によって影響の出方が異なります。ご自身の状況に合わせて、社会保険加入によるメリットとデメリットを比較し、最適な働き方を判断しましょう。
扶養内パートは手取りが一時的に減る
扶養内のパート主婦(夫)が月8万8千円を超えて社会保険に加入した場合、社会保険料の自己負担が発生するため、一時的に手取りが減少します。
具体的には、月額8万8千円から10万6千円程度のゾーンで、手取りが扶養内のときよりも少なくなります。
しかし、加入することで将来の老齢厚生年金が増えるだけでなく、万一の病気やケガで休んだ際の傷病手当金、出産時の出産手当金などが受け取れるようになります。手取り額の短期間の減少だけでなく、将来の安心もふまえて検討することが大切です。
学生アルバイトは原則として加入対象外
学生アルバイトが月8万8千円を超えた場合、原則として社会保険の加入要件を満たしても「学生ではないこと」という要件を満たさないため、社会保険加入の対象外となります。
ただし、この「学生」には、夜間学生や通信制の学生、休学中の学生などは含まれません。これらの学生は、一般の短時間労働者と同様に、月8万8千円や週20時間などの要件を満たせば、社会保険の加入対象となります。また、学生であっても原則として年収130万円を超えた場合は、親の健康保険の扶養を外れることになります。
ダブルワークは会社ごとに判定される
ダブルワーク(掛け持ち)をしている場合、複数社の月収を合算して8万8千円の壁を判断することはありません。
短時間労働者の社会保険加入の判定は、それぞれの勤務先ごとに行われます。
したがって、A社で月収5万円、B社で月収5万円の場合でも、どちらの会社も月8万8千円未満であれば、社会保険の加入要件は満たさないことになります。ただし、年収130万円の壁については、全事業所の収入を合算して判断されるため、ダブルワークの方はとくに注意が必要です。
短時間労働者への社会保険適用拡大とは?
短時間労働者の社会保険加入要件は、企業の従業員数によって異なり、2024年10月には適用が拡大されます。
この社会保険の適用拡大は、より多くの短時間労働者に厚生年金や健康保険への加入機会を提供し、将来の保障を手厚くすることを目的としています。とくに、企業の経営者や人事労務担当者は、自社の従業員数と今後のスケジュールを正確にふまえて対応する必要があります。
2024年10月から従業員51人以上の企業が対象
2024年10月1日には、適用拡大の次のステップとして、従業員(社会保険の被保険者)の数が51人以上の企業が対象となりました。
また、この従業員数の要件は、2027年10月以降段階的な緩和が予定されており、2035年10月には撤廃される見込みです。
これにより、さらに多くの中小企業で働く短時間労働者が社会保険の加入対象となります。企業側は、さらなる適用拡大に向けて対象となる従業員を洗い出し、加入に必要な手続きや、従業員への説明を事前に進める必要があります。
今後は対象企業の拡大と賃金要件の撤廃が予定されている
現在のところ、従業員50人以下の企業で働く短時間労働者は、原則として社会保険適用拡大の対象外です。
しかし、社会保険の適用拡大は今後も段階的に進む予定であり、月額賃金要件の撤廃も予定されています。
今後の主なスケジュールは以下のとおりです。
- 2026年10月:月額8万8千円の賃金要件を撤廃予定。最低賃金以上で週20時間以上働く方はすべて加入対象となる見込み
- 2027年10月:従業員36人以上の企業が対象
- 2029年10月:従業員21人以上の企業が対象
- 2032年10月:従業員11人以上の企業が対象
- 2035年10月:従業員10人以下の企業も対象(事実上すべての企業)
出典:社会保険加入の要件|社会保険適用拡大特設サイト|厚生労働省
月8万8千円を超え扶養から外れる手続きは?
月8万8千円の壁を超えて社会保険に加入する場合、会社と従業員本人の双方で適切な手続きを行う必要があります。
実務対応を整理することで、手続きの漏れを防ぎ、従業員との不要なトラブルを避けることができます。とくに、短時間労働者の社会保険加入判定は複雑なため、給与計算システムなどを活用して管理することも有効です。
会社は資格取得届の提出が必要
短時間労働者が社会保険の加入要件(月8万8千円を含む4要件)を満たした場合、会社(事業主)は社会保険の加入手続きを行う必要があります。
- 年金事務所や健康保険組合への「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」の提出
- 従業員に対して社会保険加入の背景や、保険料の自己負担が発生すること、そのメリットなどを丁寧に説明し、理解を得る
従業員本人は扶養から外れる手続きが必要
従業員本人が社会保険に加入した場合、配偶者(または親)の健康保険の扶養から外れる手続きが必要になります。
- 配偶者の勤務先に対し、本人が健康保険の扶養から外れる旨を連絡し、「健康保険被扶養者(異動)届」などを提出するす。
- 加入していた配偶者の健康保険から、本人が加入する新しい健康保険(勤務先の健康保険)への切り替え手続きを行う
この手続きを怠ると、扶養から外れた期間の医療費をさかのぼって請求されるなどのトラブルにつながるため、速やかに配偶者や親の勤務先に連絡をとり、必要な書類を確認することが大切です。
給与計算システムの活用が管理を効率化する
月8万8千円の壁ラインでの煩雑な管理や調整を効率的に行うためには、給与計算システムなどを活用することが有効です。
多くの給与計算ソフトでは、短時間労働者の社会保険加入判定ロジックが組み込まれており、従業員の賃金や労働時間データをもとに、加入が必要かどうかを自動で判定できます。また、会社として「扶養内で働きたい従業員」の労働時間の上限をはっきりと定めるなど、就業契約やシフト管理のルールを見直すことも、実務をスムーズに進める一助となります。
扶養内で月8万8千円を超えたら社会保険の加入が必要
扶養内で月8万8千円を超えた場合、原則として社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が必要となります。
この「月8万8千円の壁」は継続的に超える見込みがある場合に適用されます。社会保険に加入すると、一時的に手取りは減少しますが、老後の年金が増えたり、病気や怪我の際の保障が手厚くなったりするなど、将来の安心につながります。
なお、月額8万8千円の賃金要件は2026年10月に撤廃される予定です。撤廃後は、最低賃金以上で週20時間以上働く方はすべて加入対象となるため、今後の動向にも注意が必要です。
扶養内で働くパート主婦や学生の方は、136万円(令和8年分以後の所得税から)、106万円、130万円など、それぞれの年収の壁が持つ意味を正しく理解することが大切です。なお、130万円の壁については、一時的な収入増であれば事業主の証明により被扶養者として認定が継続される特例もあります。ご自身の働き方と企業規模をふまえて、最適な働き方を検討しましょう。
よくある質問
社会保険の加入条件である月額賃金8万8,000円とは何ですか?
社会保険加入となる金額で、基本給や諸手当が算入されます。 詳しくはこちらをご覧ください。
残業代や通勤手当は月額賃金に含まれますか?
残業代のような時間外労働に対する割増賃金や、通勤手当のような最低賃金に算入されない賃金は月額賃金に含まれません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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