• 更新日 : 2021年12月7日

給与明細の保管期間と紛失時の対応

給与明細の保管期間と紛失時の対応

毎月、給与が支給されると会社から給与明細が発行されますが、この給与明細は保管する必要があるのでしょうか。複数年勤めている人ならば相当数たまってきているため、使い道もないし思い切って捨ててしまいたいと思っている人もいるではないでしょうか。

結論からいえば、法的には個人が保管しなければならないというルールはありません。しかし、保管していないと困ることがあります。

今回は、保管する場合の期間、保管しないと困るケース、保管方法、そして紛失してしまったときの対応について解説していきます。

給与明細は何年分まで保管が必要?

給与明細は、会社から支給されている給与や諸手当、源泉徴収された税金や社会保険料が記載された月ごとに発行される書面です。

月次の収入が記載されていますが、収入を証明する書類としては、ほかにも源泉徴収票確定申告書、住民税額決定通知書などがあるため、必ずしも給与明細を保管する必要はありません。

しかし場合によっては必要となることがあるため、一定期間、保管することをおすすめします。では、何年分、保管すべきなのでしょうか。

「給与明細の見方」については、以下の記事もご覧ください。

2年分の保管が一般的

収入証明書としての書類は、給与明細以外にもあります。源泉徴収票は毎年、発行されることから、給与明細の保管は1年にしている、という人も多いでしょう。

しかし、源泉徴収票に記載されている給与所得は1年間の総額であり、毎月の金額を確認することはできません。後述するように、毎月の給与支払額を確認しなければならない場合もあり、その際、重要な証明書類として給与明細が必要となります。

果たして実際にそうした事態になる可能性があるかどうかが、保管期間を判断するうえでポイントとなってきます。

例えば、会社を退職して専業主婦になった場合、雇用保険の被保険者であった人は2年間は失業給付(基本手当)を受けることができます。これはパートで被保険者であった人も同じです。

基本手当をもらっていなければ、さかのぼって支給申請できますが、その際、毎月の給与支払額の証明書類として給与明細が必要となるわけです。

こうしたことから、一般的に給与明細の推奨される保管期間は2年といわれています。

確定申告をする場合は5年分の保管が理想的

確定申告は、基本的に自営業や不動産収入などがある人が対象で、経費や赤字分を所得から控除し、納付済みの所得税を還付してもらう手続きです。

しかし、会社員でも副業などで給与以外に収入がある場合や、ふるさと納税や高額医療費控除など、控除や還付を受ける場合にも確定申告をする必要があります。

確定申告では、給与所得についても記入する必要があり、その確認に給与明細が必要になります。還付や控除の時効は5年であることから、給与明細の保管期間は5年分が望ましいということもいえるわけです。

給与明細が必要になるケース

前述したように給与明細が必要になるシーンとしては、退職して雇用保険の基本手当を受給する場合が考えられます。

退職時に会社が手続きをしてくれていなかった場合だけでなく、手続きをしてくれた場合でも基本手当を受給するために提出する「雇用保険被保険者離職証明書-2」に会社が記入した毎月の支払給与が正しいかどうか、確認が必要な場合もあるかもしれません。

また、2007年に年金記録問題があったことを覚えている人もいると思います。持ち主不明の年金記録が5,000万件も存在したことが明らかになって社会問題となりました。その対策として被保険者本人が年金記録を確認できる仕組みが設けられ、現在、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確かめることができます。厚生年金保険料が間違いなく納付されているか、確実に確かめるには源泉徴収での控除を確認できる給与明細が非常に重要です。

年金の支給開始年齢は65歳ですから、定期的に確認しないのであれば、長期間の保存が必要となります。その場合、紙ベースでなくてもよく、後述の電子化での保存方法を選択すればよいでしょう。

また給与明細が必要となる場合としては、会社が給与を支払ってくれないケースも考えられます。未払いの理由は、経営不振だけでなく、感情的なトラブル、意図的に支払わないブラック企業の場合など、さまざまな事情があります。

いずれにしても、未払い給与を請求するためには、事業主との間で所定の賃金を支払うことを内容とした労働契約が締結されていたことを立証しなければなりません。この場合、契約締結時に交付された労働条件通知書などが該当しますが、長年勤務しているような場合は毎月の給与が記載されている給与明細が重要な証拠となります。

仮に給与が支払われていても、振り込まれた給与が給与明細の額面よりも少ないケースもありえます。その未払い分を立証するためにも給与明細が重要な役割を果たします。

この場合、労働基準法では未払い分の給与を請求できる時効が2020年に法改正によって3年から5年に延長されました(ただし、当分の間、消滅時効期間は3年)。こうしたケースを想定すれば、保管期間は5年が望ましいということになります。

参考:2020年4月1日から未払賃金が請求できる期間などが延長されます(労働基準法の一部改正)|厚生労働省

転職活動において前の会社の給与明細の提出を求められることも少なくありません。履歴書に書かれた元勤務先で確かに働いていたかどうかを確認するためです。特に退職後にブランクがある場合、スムーズに転職を成功させるためにも、要望通りに提出したほうがよいでしょう。

給与明細の保管方法について

給与明細を保管したほうがよいということは、おわかりいただけたかと思います。しかし、数年間も書類を保管するのは、もともと几帳面な人であれば別ですが、なかなか簡単なことではありません。オーソドックスな方法も含めて、給与明細の保管方法についてご紹介しましょう。

ファイルやバインダーに保管する

最も一般的な保管方法は、給与明細そのものをクリアファイルやレバー式バインダーで挟んで保管するというやり方です。

年度別にファイルしておけば、必要な期間の給与明細を取り出すことが容易になります。ファイルの背表紙には、年度などの期間を明記しておくとよいでしょう。

給与明細自体は、通常1枚の書類にすぎないため、本棚などに専用のスペースを設けても、場所を取り過ぎて困るということはないと考えます。

電子化して保管する

給与明細が必要になって提出する場合でも、通常、原本ではなく、写しで支障がないケースが一般的です。保存スペースだけでなく、手軽さという点からも、電子化して保管する方法は几帳面でない方にとっても負荷は少ないでしょう。

パソコンをお持ちの方であれば、スキャンして写真のまま保管してもかまいませんし、PDFファイルに変換して保管することもできます。

モバイル携帯をお持ちの方は、写真やスキャンのアプリが利用できるはずですから、利用しない手はないと思います。普通に写真やスキャン機能を利用しているのであれば、手軽に作業ができるでしょう。毎月、継続していくことに精神的な負担がなく、おすすめです。

デジタル化した給与明細のデータは、携帯で保管するだけでなく、パソコンでフォルダー管理するほか、クラウドサービスにアップロードして保管しておく方法もあります。さらに専用のUSBメモリにバックアップしておくと、データ喪失のリスクは防ぐことができます。

もし給与明細を紛失してしまったら?

給与明細を紛失してしまうリスクはゼロではありません。あるいはすでに紛失してしまった方もいることでしょう。

会社によっては、気持ちよくすぐに再発行してくれることもありますが、法的に再発行は義務づけられていないこともあり、申請しても応じてくれないケースがあります。事業主には給与支払日までに給与明細を交付するよう定められていますが、再発行はあくまでも任意ということです。

とは言え、労働基準法では賃金台帳の作成と、その3年間の保管が義務づけられていますので、この期間内であれば再発行は可能なはずです。給与担当の方に相談すれば、よほどのことがない限り、応じてもらえるのではないでしょうか。

なお、会社が給与明細電子化サービスを導入している場合は、もともと紙ベースの発行ではなく、データで閲覧できるシステムとなっているため、紛失というリスクはありません。

給与明細は大切に保管しておこう!

給与明細について、保管期間、保管しないと困るケース、保管方法、そして紛失してしまったときの対応などについて解説してしてきました。もちろん、同じ会社に長く勤めることもすばらしいことですが、働き方の多様化が進むこれからの時代は、さまざまな働き方を選ぶことができ、以前に比べて転職する可能性は大きくなってきたといえます。また、自分の身を守るという観点からも、給与明細が役立つ場合もあります。

給与明細を毎月、無意識的にポイッと捨てていた方は、まずは給与明細が重要な書類であるという認識を持つようにしましょう。そしてできる限り、定期的に電子化するなど自分でしっかりと保管・管理するように心がけてください。

よくある質問

給与明細は何年分まで保管すればよいですか

一般的には2年から5年ですが、年金記録の確認のためには、もっと長期間の保管が望ましいでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。

もし給与明細を紛失してしまった場合どうすればよいですか

事業主に再発行の義務はありませんが、労働基準法で賃金台帳は3年間の保管義務があるため、通常は再発行してくれるでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。


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