• 更新日 : 2023年12月15日

自己都合退職で失業保険はもらえる?いつから、いくらもらえるかを解説

自己都合退職で失業保険はもらえる?いつから、いくらもらえるかを解説

自己都合退職でも失業保険を受給できます。自己都合退職は会社都合退職に比べて、最終的に受け取れる金額の総額や、必要な雇用保険加入期間(被保険者期間)などの点で差がある点が特長です。そのため、退職を検討している方は、自己都合退職のデメリットや失業保険をいつからもらえるかなどの点を理解して、事前の準備を進めておくとよいでしょう。

本記事では、自己都合退職の失業保険について詳しく解説します。

自己都合退職で失業保険はもらえる?

自己都合退職でも要件を満たしていれば失業保険(基本手当)を受け取れます。受給要件は、過去の2年間に雇用保険に加入していた期間(被保険者期間)が12ヶ月以上あることです。

なお、過去に複数の職場で働いていたとしても、それぞれの雇用保険加入期間を通算できます。ただし、前の職場から1年以上空白(雇用保険に加入していない)期間があったり、前の職場を退職した際、その加入期間によって失業保険などを受け取ったりしている場合は、通算できなくなります。気をつけましょう。

自己都合と会社都合退職で失業保険のもらい方は違う?

自己都合退職と会社都合退職では、失業保険のもらい方に違いがあります。

会社都合退職では、前述の雇用保険の加入期間が過去の1年間で6ヶ月間あれば受け取ることが可能です。望まない退職のため、受給の要件を緩和する措置が設けられています。また(後述の)給付制限期間が設けられておらず、速やかに失業保険を受給できるなど、自己都合退職に比べて優遇されているといえるでしょう。

ハローワークでの手続きなど基本的な部分は変わりませんが、自己都合退職は会社都合退職に比べて不利な点があることを把握しておく必要はあります。

自己都合退職での失業保険のデメリット

自己都合退職で失業保険を受け取る場合は、会社都合の退職に比べて、いくつかデメリットがあります。主なデメリットは、失業保険の受給開始が少し遅くなることと、受給できる日数が少なくなり、最終的に受け取れる金額が少なくなってしまうことです。

特に受給開始時期は生活に直結するため、必ず退職前に把握しておきましょう。

7日間の待機時間+2ヶ月の給付制限アリ

失業保険を受給するためには、ハローワークの窓口に求職の申し込みをしてから、7日間の待機期間(ハローワークでは「待期期間」という呼び方になります)を経なければなりません。これは、自己都合退職も会社都合退職も共通です。

しかし、自己都合退職の場合はこの待機期間が経過した後に、さらに2ヶ月間の給付制限期間が発生します。給付制限期間とは、失業給付(基本手当)が全く支払われない期間のことです(5年間のうち3ヶ月以上退職すると、給付制限期間が2ヶ月から3ヶ月となる場合がありますのでご注意ください。)。

給付日数が少ない

失業保険の給付日数(所定給付日数)は、退職理由と雇用保険の加入期間(被保険者期間)に応じて変化します。

自己都合退職の場合の給付日数は、雇用保険の加入期間に応じて90日〜150日の範囲で決定される点が特長です。これに対し、会社都合退職の場合は、最大で給付日数が330日となる場合があるなど大きく設定されているほか、加入期間が同じ場合でも、自己都合退職よりも給付日数が全体的に長く設定されています。

総支給額が少ない

失業保険の1日あたりの金額は、退職理由が異なっていても同じ金額となります。しかし前述の通り、給付日数は退職理由で差が設けられている点に注意しなくてはいけません。

失業保険の総支給額は、以下の計算で求めることが可能です。

1日あたりの失業保険の金額(基本手当日額)」×「給付日数(所定給付日数)

自己都合退職は会社都合退職と比べ、総支給額が少なくなってしまいます。

自己都合退職でも給付制限なしで失業保険がもらえるケース

自己都合退職の場合でも、2ヶ月の給付制限期間を経ずに失業保険をもらえる場合があります。具体的には「特定理由離職者」に該当した場合です。

特定理由離職者とは、有期雇用契約が更新されなかった場合や、自己都合退職でもやむを得ない理由により退職した場合の区分です。自己都合退職ではあるものの、比較的緊急性が高いためすぐに失業給付を受給できるようにしてくれます、

以下は、特定理由離職者の判定に用いられる大まかな区分です。

  1. 体力の不足や障害・疾病など、体の不調などにより離職した
  2. 妊娠、出産、育児等のため退職した(ただし、後述の失業保険の受給期間延長措置を受けていることが必要)
  3. 家庭の事情の急変があったため退職した(父母の扶養や親族の看護など)
  4. 配偶者や扶養親族と別居生活を続けることが困難になったため退職した
  5. 結婚による転居や会社移転などの理由により、通勤が不可能、または困難になったため離職した
  6. 希望退職者の募集に応じて離職した

特定理由離職者に該当するかを判断するのはハローワークですが、やむを得ない理由で離職された方は手続きの際に相談してみましょう。後述しますが、その他では公共職業訓練を受ける場合も給付制限期間が免除されます。金銭的余裕がない方は、退職前にこれらの制度を把握しておくとよいでしょう。

失業保険の給付額 – 計算方法について

失業保険の給付総額は、1日あたりの失業保険の金額(基本手当日額)と給付日数(所定給付日数)により決まります。このうち、1日あたりの失業保険の金額は、以下の手順で計算することが可能です。

  1. 「退職直前の6ヶ月に受け取っていた給与の総額 ÷ 180」を計算する
  2. 1で計算した金額に、50%~80%の割合(1の金額で変動)をかける

なお、1の計算にはボーナス(3ヶ月を超える期間ごとに支払われるもの)は含まれません。また、2で用いられる割合は、退職日の年齢が60歳以上65歳未満だと、45%~80%になります。

失業保険をもらえる期間

失業保険には受給期間という期間が設定されています。この受給期間は原則として退職した日の翌日から1年間です。この1年の間に、ハローワークへ求職の申し込みをすることで、給付日数分の失業保険が受給できます。

しかし、1年を経過してしまうと、たとえその他の要件を満たしていても、失業保険の受給ができなくなるため注意が必要です。なお、受給期間中に怪我や病気、出産・育児などの理由で30日以上働くことができない場合は、その期間分、受給期間を延長してもらえます(受給期間延長の申請)。

失業保険を受け取るための手続き方法

失業保険を受け取るためには、必要書類を持ってハローワークに求職の申し込みを行うことが必要です。ここでは、在職中から退職後までそれぞれの段階で必要な準備をお伝えします。

失業保険の受給開始日は、実際にハローワーク窓口で手続きを行った日によって決定することが一般的です。退職してから時間が経ってしまうと、その分受給開始も遅れてしまうため、事前に必要事項を把握しておきましょう。

① 雇用保険被保険者証をもらう

従業員が働き始めると、会社ではハローワークへ雇用保険の加入(被保険者資格取得)の手続きを行います。このとき、ハローワークからは雇用保険被保険者証が発行されます。会社は発行された雇用保険被保険者証を速やかに従業員へ渡します。

雇用保険被保険者証を渡されたら、退職まで大事に保管しておきましょう。退職後の失業保険の手続きで必要です。もし退職までに受けとった記憶がなければ、会社で保管している可能性もあります。必ず退職前に確認をしておきましょう。

➁ 離職票をもらう

退職が決定し、かつ離職票が必要となる場合は、必ず事前に会社に対して離職票の発行を依頼しておきましょう。

なお、離職票は退職後に郵送されてくることが一般的です。退職後2週間から3週間程度で届くことがほとんどですが、あまり遅くなるようでしたら会社に問い合わせてみましょう。

この他にも離職票には注意事項が多いため、気になる方は下記の記事を確認してください。

③ ハローワークで申込・離職票の提出

離職票を受け取ったら、必要事項を記載し、自分の住所を管轄するハローワークへ赴き窓口に提出します(求職の申し込み)。「離職票-1」と「離職票-2」の2枚セットとなっていますが、それぞれに必要事項をあらかじめ記載していくと窓口での対応がスムーズでしょう。

また、ハローワークに離職票を提出する際は、以下の書類も必要になるため、事前に準備することが大切です。

  • 個人番号確認書類(マイナンバーカード、通知カード、個人番号記載の住民票など)
  • 身元確認書類(免許証、マイナンバーカード、その他の官公署が発行した身分証明書など)
  • 写真(最近の写真、正面上三分身、縦3.0cm×横2.4cm)
  • 本人名義の預金通帳、またはキャッシュカード

④ 7日間の待機

ハローワークへ離職票を提出した日から7日間は待機期間とされ、失業保険を受け取れない期間になります。この期間にアルバイトなどを行うと、その日数分、待機期間が延長されてしまうため注意が必要です。

⑤ 雇用保険受給者説明会への出席

失業給付を受給するためには、ハローワークが開催する受給説明会に出席する必要があります。受給説明会は、あらかじめハローワークから日時を指定されるため、開催日には忘れずに出席しましょう。なお、指定された日付にどうしても出席することができない場合は、ハローワークと相談の上、別日程に変更してもらうことも可能です。

⑥ 1回目の失業認定日にハローワークへ行く

失業認定日とは、ハローワークにより失業していた事実を認定してもらう日のことです。失業認定日では、「失業認定申告書」という書類の提出と併せて就職活動の実績などを報告することになります。

原則として、4週間ごとに1日、指定された日が失業認定日です。ただし初回のみ、ハローワークへ離職票を提出した日から3週間後ころに設定されます。

⑥ 2回目の失業認定日にハローワークへ行く

失業給付を受給する間は、前述の通り4週間ごとに失業認定日にハローワークへ行く必要があります。失業認定では、転職活動の実績を見て認定がなされます。原則として、直前の失業認定日の翌日から4週間の期間に、2回以上の転職活動実績が必要です。

なお、自己都合退職で給付制限期間(通常2ヶ月)がある場合、この制限期間が終了した後に2回目の認定日が指定されます。

失業保険をもらっている際の注意点

ハローワークでの手続きを無事に完了すると、失業保険を受給できるようになります。ただし、失業保険の受給を検討しつつアルバイトも行う予定の方は注意が必要です。

また、自己都合で退職したとしても、特定の状況で2ヶ月の給付制限の経過を待たずに失業保険を受給できる場合があります。それぞれ見ていきましょう。

失業保険中のアルバイト

失業保険を受給するまでにはいくつかの段階があることをお伝えしましたが、中には、原則としてアルバイトを行えない期間が存在します。

待機期間中のアルバイト

ハローワークに離職票を提出してから7日間は待機期間(待期期間)となりますが、この期間は原則としてアルバイトをはじめとした仕事をすることが認められていません。この期間にアルバイトをしてしまうと、その分の待機期間が延長されてしまいます。

給付制限期間中のアルバイト

自己都合退職の場合は待期期間を経過した後に、2ヶ月の給付制限期間があります。この期間は、アルバイトをすることが認められています。自己都合とはいえ、退職してから2ヶ月間、収入が途絶えると生活に困ってしまうためですね。ただし、この場合には条件があります。

  • 「1週間の所定労働時間が20時間未満」
  • 「31日未満の雇用が見込み」

給付制限期間中のアルバイトは、上記2つの条件を満たさなければなりません。定められた条件を守れない場合、雇用保険の加入が必要と判断されてしまうためです。

アルバイトを始める場合は、雇用契約書などに上記の要件を満たすように記載してもらいましょう。実際に勤務する場合も、シフトで1週間20時間以上とならないように気をつけなければなりません。

失業保険受給中のアルバイト

給付制限期間が経過すると、晴れて失業保険の受給期間に移行します。失業保険の受給期間もアルバイトをすることは可能ですが、気をつけなければならないルールがいくつかあります。

1点目は、そのアルバイトが「1週間の所定労働時間が20時間未満」で「31日未満の雇用が見込み」の仕事であることです。給付制限期間と同様の条件となります。

2点目は、1日4時間以上の時間でアルバイトをしてしまうと、その分、失業保険の給付日数が先送りになってしまうことです。この場合、そのアルバイトを行った日は失業状態と認められず、失業保険は受給できません(先送りのため、給付日数の残日数は減少しません)。

最後は、上記2つの条件をクリアしていても、失業保険の金額が減額または不支給にされてしまうことがある点です。

A:アルバイトの1日あたりの収入 ー 控除額 +1日あたりの失業保険の金額

B:「退職直前6ヶ月に受け取った給与総額 ÷ 180 × 80%

Aの金額が、Bの金額よりも大きかった場合、そのアルバイトを行った日の分については失業保険が減額されてしまいます。なお、Aの計算式にある控除額は行政によって定められた金額で、変更されることがあるため注意は必要です。

気になる方は、ハローワーク窓口等で確認しましょう。また、アルバイト1日あたりの収入で、Bの金額を超えてしまう場合は、その日については失業保険は不支給となります。

職業訓練の活用により給付制限がなくなる

雇用保険には公共職業訓練という制度があります。これは、就職に必要な技能・知識の習得のため、国や都道府県が実施している職業訓練のことです。おもに失業保険を受給している方が対象です。自己都合で退職した場合でも、この公共職業訓練を受ける場合は給付制限期間を免除してもらえます。

また、公共職業訓練を受けると、失業給付の受給期間が延長されることがありますので覚えておきましょう。これは、失業保険の給付日数が上限に達した場合でも、公共職業訓練中であれば、訓練終了まで失業保険を受け続けられるためです。

なお、公共職業訓練を受けるには、ハローワークの職員に訓練などの支援が必要という認可が必要です。さらに、失業保険の受給期間の残りが一定以下(原則3分の1の日数)の状態だと、公共職業訓練を受けられません。受講を検討している場合は窓口などで相談してみましょう。

計画的で安心な転職活動へ

自己都合退職で失業保険を受給する場合の注意点はいくつかありますが、特に大きいのは2ヶ月の給付制限期間でしょう。金銭的余裕があれば心配はありませんが、貯金が少ないなどの場合はアルバイトで補う必要も出てきてしまいます。今回の記事を参考に計画や見込みを立てておきましょう。

また公共職業訓練など、ハローワークでは失業者をサポートする制度もあるため、使える制度は積極的に使い、安心できる環境で転職活動を行っていただければ何よりです。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事