- 更新日 : 2024年7月26日
従業員エンゲージメントとは?低い企業のデメリットや高める方法を解説
従業員エンゲージメントを向上させることが会社の発展には有効だと知り、高める方法が気になっている人事担当者もいるでしょう。従業員エンゲージメントが低いと生産性の低下したり優秀な人材の確保が難しくなったりするため、あらかじめ従業員エンゲージメントについて理解を深めておくことが大切です。
従業員エンゲージメントを向上させるうえで必要なこと、従業員エンゲージメント向上に努める企業事例などについてもくわしく解説します。
目次
従業員エンゲージメントとは?
従業員エンゲージメントとは、従業員が会社の方向性(=企業理念)に共感し、「会社に貢献したい」という従業員の自発的な意欲のことです。「愛着心」「愛社精神」とも訳されます。一言で言い表すとしたら、従業員の企業に対する信頼の度合い、従業員と企業とのつながりの強さと言い換えられるでしょう。
従業員エンゲージメントと従業員満足度の違い
従業員エンゲージメントと似た用語に、従業員満足度という言葉があります。従業員満足度とは、従業員が自社に対してどの程度満足しているかを示すものです。
言い換えると、従業員側の会社から与えられたものに対する評価が従業員満足度といえます。たとえば、職場の人間関係が良く働きやすい、仕事内容が自分に合っている、といった職場環境に対する満足度のほか、給与や福利厚生など待遇面での満足度などが従業員満足度に関連する事項です。従業員満足度は従業員からの一方的な評価であるといえます。
一方で、従業員エンゲージメントは、前述したように双方向的な評価でした。つまり、一方的な評価なのか、双方向の評価なのかという点が、両者の相違点です。
日本の従業員エンゲージメントが低い理由
日本の従業員エンゲージメントは、世界的に見て低いのが現状です。米国ギャラップ社「グローバルワークプレイスの現状2024年版」によると、「熱意にあふれる社員」の割合は6%程度で、139ヶ国中最低レベルでした。
日本の従業員エンゲージメントが低い理由として、以下のような問題が指摘されています。
- 日本型雇用(年功序列・終身雇用など)の影響
- 個々の多様性を重視しない傾向
- ジェネラリストを育成する環境
現代では能力を重視する価値観や転職をする傾向が高まってきています。しかし、年功序列や終身雇用など、従来の日本の雇用システムでは、従業員の能動性を抑制する障害になっており、そのことがエンゲージメント低下の原因として考えられています。
また、個々の多様性を重視しない傾向も従業員エンゲージメントが低いことの一因です。企業が個々の多様性を重視しなければ、従業員の貢献意欲は上がりません。そのためにも、希望や適性に応じて配置や勤務地などを選択でき、能動的に働けるようになることが望ましいでしょう。
さらに、日本ではジェネラリストを育成する環境が確立されていることも影響を及ぼしています。ジェネラリストの弱みは、突出したスキルを獲得しづらいことです。必要なスキルはその企業に特有のものが多いため、日本ではエンゲージメントが醸成されにくい傾向にあるといえます。
参考:State of the Global Workplace|GALLUP
従業員エンゲージメントが低い企業のデメリット
従業員エンゲージメントが低い企業のデメリットを3つ紹介します。
生産性の低下
従業員エンゲージメントが低下すると、モチベーションの低下につながります。従業員エンゲージメントを重視しないと、モチベーションは低下の一途を辿るだけです。
モチベーションが低いと生産性も上がらず、結果的には品質にも影響を及ぼしかねません。従業員の抱く不満や企業への不信感などを放置しておくと、企業の生産性は低下し、業績の低下という悪循環を生み出すことにもなるため、注意が必要です。
顧客サービスの質の低下
従業員エンゲージメントが低い結果、品質に影響が及ぶと顧客サービスの質の低下を引き起こす要因になりかねません。不平不満を抱えた従業員が業務に対して熱心に取り組まないと、顧客へのサービスの質が下がり、最後は顧客の不満にもつながります。
優秀な人材の確保が難しくなる
従業員エンゲージメントの低下は、離職率の上昇や優秀な人材の確保を難しくします。従業員エンゲージメントが低いということは、仕事に対するやりがいのなさ、働きにくさなどを従業員が感じている状態です。
このような状況下では、転職を検討する社員も出てきてしまいます。とくに、優秀な人材は向上心が高く、顕著に表れるため、注意が必要です。
従業員エンゲージメントが高い企業とは
では、従業員エンゲージメントが高い企業はどういった特徴をもっているのでしょうか。従業員エンゲージメントが高い企業の特徴について解説します。
自社のビジョン・ミッションに共感している
エンゲージメントが高い企業では、企業が目指す方向性(ビジョン・ミッション)に対して社員から共感を得られているのが特徴です。社員が共感できる明確なビジョンがあると、経営陣だけでなく社員全員が同じ方向を向き、社内の一体感を生み出すのに役立ちます。
従業員が自発的に行動している
従業員エンゲージメントは、そもそも従業員の企業への信頼を意味する言葉で、会社に自発的に貢献したいと思う意欲のことです。そのため、従業員エンゲージメントが高いということは、企業に対して自発的に行動していることの表れともいえます。
深い信頼関係が築かれている
従業員エンゲージメントは、企業と従業員との相互の結びつきを示す指標でもあります。そのため、従業員エンゲージメントが高い企業ではコミュニケーションが取れていて、企業と従業員間の信頼関係が構築されている状況にあります。
企業に愛着心を持っている
従業員エンゲージメントとは「愛着心」「愛社精神」とも訳されるように、従業員エンゲージメントが高い企業では、従業員が企業に対して愛着心を持っています。
従業員は自社に対して愛着心や自発的な貢献意欲を持ち、対して企業は従業員の働きに報いるため、相互に良い関係が構築されているといえるでしょう。
従業員エンゲージメントの3つの構成要素
従業員エンゲージメントを構成する要素について詳しく解説します。
理解度
理解度とは、従業員がどれだけ組織の理念やビジョンを理解しているかということです。互いの理想が合致することで、理想実現のための意識が高まります。
共感度
共感度とは、従業員が会社に対してどれだけ共感しているかです。従業員が会社に共感すればするほど、仕事に対して主体性をもって臨むようになります。
行動意欲
行動意欲とは、組織のために貢献しようと従業員それぞれが自主的に行動しようとする意欲・姿勢などのことです。自分の行動によって業績の向上や企業の成長につながっていると実感できるほど、自発的な行動をとるようになります。
従業員エンゲージメントを高める方法
従業員エンゲージメントを高めるには、どうしたらよいのでしょうか。ここでは、従業員エンゲージメントを高める方法を解説します。
企業理念や目的を明確に示す
従業員エンゲージメントを向上させるには、会社の理念や目的を明確に示すことがポイントです。会社の思いや考え、将来の展望などに従業員が理解し共感できれば、会社の業績をあげたいという思いも高まります。
ミーティングや社内報などを活用し、企業理念や方針を提示して従業員へ広く周知させましょう。
適切な人事評価を行う
従業員エンゲージメントを向上させるには、基準を明確にした公平で適切な人事制度の採用が重要です。評価制度があいまいだと、従業員が公正に評価されていないと感じてしまい、会社に貢献する気持ちも薄れてしまうでしょう。
社内の評価制度を整えたり、従業員の能力に合った役割を与えたりして、貢献度に応じたボーナスや報奨金を与えることも有効です。
1on1でサポートする
従業員が適切に評価されていると実感できる状況を作ることも、従業員エンゲージメントを高めるためには欠かせません。正当な評価をされていると感じる従業員の場合は、会社に貢献したい気持ちが強くなるものです。1on1を開いて従業員の声を聞き、価値を認めているということをしっかり伝えるようにしましょう。
社内コミュニケーションを活性化する
コミュニケーションを活性化すると、従業員同士の結束が高まるため、従業員エンゲージメントが向上します。
また、活発なコミュニケーションは、従業員のストレス軽減やハラスメント防止につながります。社内にリラックスして会話ができるようなスペースを設けたり、気軽に利用できるコーヒーサーバーを設置したりして社内環境の改善にも努めましょう。
社員のキャリア形成をサポートする
従業員が自らの成長を感じられれば、組織にもっと貢献したいという意欲も高まるため、従業員のキャリア形成をサポートできるような施策を取り入れることも、従業員エンゲージメント向上には効果的です。
たとえば、従業員に今後のキャリア設計を促すためにキャリアデザイン研修を実施したり、管理職研修・中堅社員向け研修など階層別のOff-JTを手厚くしたりする方法が挙げられます。
従業員エンゲージメント向上の企業事例
従業員エンゲージメント向上に努めている企業を3つ紹介します。
双日株式会社
双日株式会社では、 意欲のある社員が活躍できる職場にしたいと考え、データ活用によるエンゲージメント向上に向けた取り組みを行っています。
社員の本音を理解するために利用しているのが、エンゲージメントサーベイと360度サーベイです。社員と組織に関する質問を行うエンゲージメントサーベイでは、組織や働く環境、会社の文化に対する満足度を把握しています。
一方の360度サーベイでは、管理職1人に対して、上司以外にも部下や同僚も評価を行います。管理職のマネジメント方法や日々の行動について「気づき」を与える位置づけです。
これらの施策を通して少しずつ会社全体が変わっている実感も持てているように、双日株式会社では意欲のある社員が活躍できる職場を目指して日々挑戦し続けています。
参考:「社員が組織を変える」データ活用によるエンゲージメント向上に向けた取り組み|双日株式会社
株式会社サイバーエージェント
株式会社サイバーエージェントでは、87%の社員が「働きがいがある」と答える環境構築を実現しました。社員のコンディション把握ツール「GEPPO」や社内異動公募制度などを活用し、社員の能力を引き出し働きやすい環境を目指したそうです。
出社の曜日を固定にしたことで互いの関係性づくりに役立ったり、業務配分を見直すことで無駄な会議が減って時間の短縮化が進んだりと、さまざまな効果が得られているそうです。
参考:87%の社員が「働きがいがある」と答える環境を実現ーーCHO曽山が語るエンゲージメントを高める人事施策|株式会社サイバーエージェント
アステラス製薬株式会社
アステラス製薬株式会社では、人種や国籍、性別、年齢を問わずさまざまな人材が活躍できるよう、ダイバーシティの推進に取り組んでいます。多様な価値観の尊重や多様な視点を事業活動に反映することは、優秀な人材の確保や競争力の向上につながるためです。
なかでも、エンゲージメントにおいては、社員一人ひとりの価値観や存在目的に関して内省と対話の機会を設け、それぞれが受け入れられ、活かし合える企業文化を目指して日々取り組んでいます。
参考:エンゲージメント、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン|アステラス製薬株式会社
従業員エンゲージメントと混同しやすい言葉との違い
最後に 従業員エンゲージメントと混同しやすい言葉との違いについて解説します。
従業員エンゲージメントと従業員満足度
前述したように、従業員満足度とは、従業員が自社に対してどの程度満足しているかを示すものです。従業員満足度では、居心地の良さに重きが置かれています。
従業員エンゲージメントが双方向的な評価であるのに対し、従業員満足度が一方的な評価であるという点が、相違点です。
従業員エンゲージメントとワークエンゲージメント
ワークエンゲージメントとは、従業員の精神面での健康度を表したものです。熱意や没頭、活力の3つの要素が満たされている心理状態と定義されています。つまり、ワークエンゲージメントは仕事に対するポジティブな意欲のことです。
一方で従業員エンゲージメントは明確な定義がなく、仕事への意欲以外にも愛着心、仕事に対する満足感、貢献など、自発的に企業に役立とうとする気持ちを意味します。
定義された言葉なのか、行動がどこから発生するものか、という点が相違点です。
従業員エンゲージメントとロイヤリティ
ロイヤリティとは、忠誠心のことで、従業員だけではなく顧客ロイヤリティのように顧客に対しても使われる用語です。それぞれでは、企業と従業員の立場の見方が異なります。
従業員エンゲージメントは、企業に対する従業員の愛着心のことです。そのため、企業と従業員の立場は対等といえます。
一方でロイヤリティは、従業員の忠誠心です。そのため、エンゲージメントよりも主従関係が強いといえます。
従業員エンゲージメントを高めて企業の成長につなげよう
従業員エンゲージメントとは、従業員が会社の方向性(=企業理念)に共感し、「会社に貢献したい」という従業員の自発的な意欲のことです。日本では、日本型雇用(年功序列・終身雇用など)の影響や個々の多様性を重視しない傾向から、世界的に見て従業員エンゲージメントが低い傾向にあります。
従業員エンゲージメントが低いと、生産性の低下や顧客サービスの質の低下などを招いてしまうため、高める努力が必要です。ここで紹介した企業事例を参考に、自社でも従業員エンゲージメント向上に取り組んでみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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