• 更新日 : 2024年5月10日

家族手当とは?金額の相場や支給条件の例、導入・廃止の手続きを解説

家族手当とは、扶養家族がいる従業員の経済的な負担軽減を目的とした福利厚生の一種として支給される手当のことです。特に家族手当の一種である配偶者手当は、近年103万円や130万円などの年収の壁の問題もあって、廃止するケースが増えています。

ここでは、家族手当の金額の相場や支給条件、導入・廃止の手続きについて解説します。

家族手当とは?

家族手当とは、従業員に配偶者や子供などの扶養家族がいる場合に支給される手当のことです。家族手当を導入している企業では、従業員の経済的な負担軽減を目的に、福利厚生の一環として企業で定めた一定の金額が支給されます。

家族手当は法的に定められた手当ではないため、支給のルールは就業規則や雇用契約書などで定めるのが一般的です。手当の金額や支給条件は企業によって異なり、なかには家族手当を支給しない企業も多くあります。

家族手当の導入割合

人事院の発表した「令和5年職種別民間給与実態調査」の結果では、家族手当の制度がある企業の割合は75.5%となっています。なかでも配偶者がいる場合に家族手当を支給する企業の割合は56.2%となっており、家族手当の中でも配偶者手当が大きな割合を占めています。

また、従業員数500人規模の企業では76.3%の企業に家族手当の制度がありますが、50人以上100人未満の企業では68.6%となっており、企業規模が小さくなるほど家族手当がある企業の割合が低くなる傾向にあります。

参考:令和5年職種別民間給与実態調査の結果 |人事院

家族手当の税金上の扱い

家族手当は給与所得に該当するため所得税の対象になります。家族手当は健康保険や厚生年金保険標準報酬月額を決める際の報酬にも含まれ、雇用保険の保険料を計算する際の賃金にも含まれます。

扶養手当との違い

家族手当は不要の有無と関係なく支給されるケースもあり、必ずしも扶養していることを条件としているとはかぎりません。一方、扶養手当は、扶養している家族がいることを条件として支給するのが一般的です。

手当の名称は企業によって様々であり、従業員に扶養する配偶者がいる場合に支払う手当を「配偶者手当」、扶養する子供がいる場合に支払う手当を「子供手当」などと呼ぶケースも多くあり、扶養している家族がいる場合に支払われる「扶養手当」も家族手当の一種といえるでしょう。

扶養手当の場合、その家族に一定額以上の収入要件を設けて、所得税法上の扶養や健康保険など社会保険の扶養から外れている場合には手当を支給しないなどとするケースが一般的です。

家族手当の金額の相場

厚生労働省が発表した「令和2年就労条件総合調査」の結果では、家族手当・扶養手当・育児支援手当などの平均金額は、17,600円となっています。従業員1,000人以上の規模の企業では22,200円、300~999人の規模の企業では16,000円、100~299人の規模の企業では15,300円、30~99人の規模の企業では12,800円となっており、企業の規模が小さくなるほど金額が低下する傾向にあります。

東京都産業労働局が発表した「中小企業の賃金・退職金事情(令和5年版)」では、家族別に支給される平均額が掲載されています。その中では、配偶者10,914円、第一子5,884円、第二子5,191円、第三子5,160円となっています。

手当の対象となる家族の人数にもよりますが、具体的には、これらの金額を参考に、配偶者は10,000円、子供は1人あたり6,000円などと対象となる家族によって具体的な金額を決めるのがよいでしょう。

参考:
令和2年就労条件総合調査 結果の概況|厚生労働省
中小企業の賃金事情(令和5年版)|東京都産業労働局

家族手当の支給条件の例

配偶者がいる場合でも共働きで配偶者に収入があるケースが多くあります。また、子供がいても就職をしていれば収入があるでしょう。家族手当は家族を養う従業員の経済的な負担軽減を目的とした福利厚生の制度の一種であり、対象となる家族に一定の収入がある場合には支給しないのが一般的です。

税制上の「103万円の壁」があるように、給与収入が103万円を超えると所得税が課税されます。そのため、家族手当の支給条件に所得制限を設けて、所得税が課税される程度の収入がある場合には、支給をしない企業も多いでしょう。家族手当の支給ルールは企業で任意で決めることができるため、所得制限を103万円に設定することや、健康保険の扶養から外れる130万円に設定することも可能です。
家族手当を導入する際には支給条件を明確に定める必要があります。以下の点を参考にして条件を設定するのがよいでしょう。

【家族手当の支給条件の例】

  • 家族の範囲(3親等内の家族、6親等内の家族など)
  • 家族の年齢(18歳未満の子供、60歳以上の両親など)
  • 家族の収入条件(税法上の103万円の扶養の範囲、社会保険上の130万円の扶養の範囲など)
  • 家族の同居の有無(生計を同一にする扶養家族、同居の扶養家族など)

家族手当の支給条件を設ける際には、「扶養する家族の人数や扶養家族の有無にかかわらず一律に支給する」といった取り扱いとしないように注意しましょう。

家族手当は、原則として時間外労働・休日労働・深夜労働をした際に支払わなければならない割増賃金の基礎となる賃金から除かれます。しかし、一律に定額で支給される手当は割増賃金の基礎となる賃金に含めて計算しなければなりません。「配偶者は〇〇円」「子供は1人あたり△△円」などと、家族1人あたりの金額を明確に定めることが必要です。

家族手当を導入する流れや手続き

家族手当を導入する際には、就業規則に家族手当の金額や支給条件を定める必要があります。以下の手順で進めるのがよいでしょう。

1. 導入する目的を明確にし、該当する従業員の手当の金額を計算する

子供がいる従業員の福利厚生を手厚くするため、子供手当のみ導入するケースもあります。企業の経営方針・理念を踏まえ、手当を設ける目的を明確にします。家族手当を支給する家族の範囲によってコストが大きく異なるため、必要なコストをあらかじめ計算しておく必要があります。

2. 支払う範囲・金額・支給条件を決定する

家族手当の対象となる範囲、金額、支給条件を決定します。

3. 導入の目的を社内に周知し、意見を募る

独身の従業員が多い場合には、不公平感から従業員に不満が生じることがあります。従業員の意見を取り入れ、理解を得ることが重要です。

4. 就業規則の賃金規程等に定める

家族手当の支給範囲・金額・支給条件を就業規則に定め、意見書を添付して就業規則を労働基準監督署に届け出ます(労働者10人以上の場合)。就業規則は、従業員がいつでも見られるように周知することで効力が生まれます。

家族手当を廃止する企業が増えている理由

家族手当を導入している企業は減少傾向にあると言われます。近年、配偶者手当を中心に家族手当廃止の流れもあって、家族手当の見直しや廃止をする企業が増えています。なぜ企業が家族手当を廃止するのか、その理由について解説します。

働く従業員のライフスタイルの変化

昭和の高度経済成長期の時代は、「女性が家庭に入る」「子供の世話は母親がする」という考え方があり、家族手当が支給されるのが当たり前のような感覚がありました。現在は、共働き世帯・単身世帯の増加、女性社会進出、働き方改革、ワーク・ライフ・バランスの実現、人手不足など、働く従業員の意識やライフスタイルが大きく変化しています。

多種多様な働き方が求められる時代となり、共働きで働く世帯が増え、賃金体系も職能型から成果型への変化しつつあり、家族手当の必要性を感じられなくなっています。家族手当の必要性が見直しされて廃止するケースが増えている理由には、こうしたライフスタイルの変化の影響が考えられます。

配偶者控除の改正や社会保険の適用拡大による106万円の壁の問題

所得税法には、配偶者の給与収入が一定以下の場合に受けられる配偶者(特別)控除の制度があります。法改正によって103万円までだった配偶者(特別)控除が150万円に引き上げられ、201万円まで収入に応じた控除を受けることが可能です。企業が家族手当の範囲を所得税法の改正に合わせて広げると、人件費にかかるコストが増加します。

近年では社会保険の適用拡大により、社会保険に加入しなければならないパートやアルバイトの労働者が増え、年収を一定以下に抑える就業調整が社会問題になっています。これが「106万円の壁」です。就業調整をすることがないようにするため、配偶者手当を中心とした家族手当の見直しの議論が進んでいます。

非正規社員の待遇差の解消(同一労働同一賃金)

働き方改革による同一労働同一賃金も家族手当の見直しのきっかけになっていると考えられます。非正規の従業員に家族手当を支給しないのは、パートターム・有期雇用労働法では不合理な待遇差に該当する可能性が出てきます。

同じ仕事で正社員にだけ家族手当を支給することが、必ずしも同一労働同一賃金の考え方に反するとはかぎりません。しかし、家族手当を非正規の従業員に支給しない理由が説明できないと、なかには不満を感じる従業員が出てきてトラブルが発生する可能性があります。同一労働同一賃金を踏まえた賃金体系の変更により、家族手当の見直しをする企業もあるでしょう。

家族手当を廃止(見直し)する場合の流れや手続き

家族手当の廃止・見直しは従業員にとって不利益につながるケースが多いため注意が必要です。労働契約法では、就業規則を変更するケースでも、労働者の合意なく労働条件を不利益に変更することはできないと定めています。

例外的に就業規則の変更により労働条件を変更する際には、不利益の程度、変更の必要性、変更後の内容の相当性、労働組合や従業員への交渉や説明の経緯などから、その有効性が判断されます。つまり、企業が一方的に家族手当を廃止・見直ししても、変更の内容に合理的で妥当な内容できちんとした説明をして従業員が納得できなければ、無効となる恐れがあるのです。

家族手当を廃止(見直し)の流れ

家族手当を見直しする際に注意すべき点を手順に沿って解説します。

1. 家族手当の見直し案を検討する

現在家族手当を支給している従業員や対象家族の人数、家族手当の金額を把握して、変更案を策定します。廃止・見直し後の代替の手当や経過措置についても検討する必要があります。

2. 見直し案・代替案・経過措置を従業員に説明し、ヒアリングやアンケートで従業員の意見を募る

従業員からのヒアリングやアンケートを踏まえて見直し案を再検討します。変更によって不利益を受ける従業員の具体的な金額を計算するとともに、変更前・変更後のコストを計算し、対比できるようにするのがよいでしょう。

3. 見直しの内容・代替手当・経過措置を決定する

家族手当を見直しする目的や代替手当・経過措置の詳細を従業員に丁寧に説明し、合意が得られることが重要です。不利益を受ける従業員の個々の合意が得られないと、変更しても無効となる可能性があるので注意しましょう。

4. 就業規則の賃金規程等に定め、就業規則を労働基準監督署に届け出る

就業規則は、従業員がいつでも見られるように周知することで効力が生まれます。相談窓口を設けることも検討しましょう。

参考:企業の配偶者手当の在り方の検討 |厚生労働省

家族手当に代わる新たな手当や制度

家族手当の廃止・見直しをする際には、従業員の不利益を軽減するために、代替となる手当の創設や経過措置を設けることも検討しなければなりません。家族手当の代わりとなる手当があれば、従業員も納得しやすいでしょう。また、家族手当がなくなり急激に賃金が減少する従業員がでないように、5年から10年程度で段階的に減額・ 廃止する経過措置を設けることも重要です。
家族手当に代わる新たな手当や制度の一部を紹介します。

育児・介護手当

育児をしながら働く従業員や介護が必要な家族がいる従業員に対して支払う手当です。育児や介護は従業員にとって深刻な問題です。経済的な支援を目的とする家族手当と似ていますが、育児や介護に限定しているところに特徴があります。

子育て支援手当

就学する子供がいると何かと教育費用がかかるため、子供が18歳以下など養育する子供がいる従業員に支給する手当です。手当の金額や支給条件は企業で任意に決定することができます。一子目の子供には月5,000円、二子目は月7,500円、三子目は月10,000円などと、金額に差を設けるのもよいでしょう。

リフレッシュ休暇制度

従業員ならだれでも取得できるリフレッシュを目的とした特別休暇です。年次有給休暇とは別に取得できるため、家族手当に代わる企業の福利厚生とすることが可能です。法律を上回る有給の休暇であり、取得条件は企業で任意に決定することができます。家族手当と異なり従業員が平等に取得できるため、導入している企業は多いでしょう。

リカレント教育制度

リカレント教育とは、就職して学校教育から一度離れたあとでも、社会人が自由なタイミングで学び直し、業務で求められる能力を磨き続けていくことを指します。ライフステージごとに必要に応じた学びの機会が得られることで「生涯現役」を可能とするため、現在注目を集めています。

企業の福利厚生としてリカレント教育を支援する制度を設けることは、従業員だけではなく企業にもメリットをもたらします。

家族手当の見直しは経費削減ではなく配分の変更と考える

家族手当は、配偶者や子供などの扶養家族がいる従業員の経済的な負担を軽減するために支給する手当です。しかし、単身世帯や共働き世帯が増え、その必要性が薄れてきているのは確かでしょう。

配偶手当を廃止し、子供を持つ従業員に支給する子供手当を増額する企業もあります。家族手当の見直しは、経費削減ではなく、時代の変化・従業員のニーズに合わせて、原資の総額は減らさずに配分の方法を変えるという考え方が重要です。自社独自のオリジナリティーがある新たな制度を導入することは、企業価値を高めることにもつながるでしょう。


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