- 更新日 : 2024年8月21日
働き方改革で残業が規制される?時間外労働の上限規制改正について解説!
時間外労働の上限規制は、働き方改革の推進により2019年4月(中小企業は2020年4月)から設けられました。特別条項付きの36協定を締結した場合でも無制限に労働者に時間外労働をさせることはできず、これに違反すると法律違反となります。規制内での時間外労働となるよう、労働時間を適正に管理しなければならなくなりました。
目次
働き方改革で残業が規制される?
働き方改革は、働く人がそれぞれの事情に合わせて多様な働き方を選択できる社会を目指して行われる取り組みです。日本では少子高齢化により労働人口が減少することから、労働力不足を解消する施策として、様々な取り組みが行われています。2019年に労働関連法が改正され、労働時間をはじめとする規制が強化されました。
残業時間に関する規制もその一環であり、健康への悪影響をはじめとして多くの問題を引き起こす長時間労働の是正・改善を図る施策です。時間外労働の上限規制が設けられ、これを遵守することが義務付けられました。
時間外労働の上限規制とは?
働き方改革による長時間労働の是正・改善策として、時間外労働の上限規制が設けられました。時間外労働として従業員を就業させる時間に、法的根拠に基づいて強制力のある上限を設定し、労働時間の適正化を図ります。以前にも時間外労働時間に上限は設けられていましたが、大臣告示であったために強制力はありませんでした。
働き方改革によって関連法案が整備された時間外労働上限規制には法的な強制力があり、違反すると法律により罰せられます。
内容は以下の通りです。
- 時間外労働の上限は月45時間・年360時間
- 臨時的な特別な事情があり、かつ労使が合意する場合でも時間外労働は年720時間時間外労働+休日労働は月100時間未満、2~6ヵ月平均80時間以内月45時間を超えられるのは年6ヵ月まで
大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から適用されています。
改正前と改正後の変更点は?
時間外労働は法改正前は大臣告示によって基準が設けられているのみに留まっていました。
これを超える場合は、時間外労働に関する協定の届出(36協定)が必要
大臣告示による上限の基準として法改正後と同内容の基準が設けられていましたが、特別条項付きの36協定を締結した場合には、限度時間を超えて時間外労働をさせることが可能でした。
・特別条項付きの36協定とは?
臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない特段の事情が予想される場合に、特別条項付き36協定を締結すれば限度時間を超える時間まで時間外労働を行わせることが可能でした。
法改正後は時間外労働の上限規制が法律で定められ、違反すると罰則が科せられます。特別条項付きの36協定を締結した場合も、以下の基準を遵守する必要があります。
- 時間外労働は年720時間以内
- 月45時間超が可能なのは年に6ヵ月まで
- 時間外労働と休日労働の合計は月100時間以内
- 2・3・4・5・6ヵ月それぞれの平均は月80時間以内
法改正によって罰則も設けられました。時間外労働の上限規制に違反すると、次の処罰を受ける場合があります。
・時間外労働時間の上限規制違反に対する罰則
6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金
時間外手当の割増賃金率も変更に!
長時間労働の是正・改善を目的に、時間外労働に上限が設けられるとともに割増賃金の引き上げも行われました。時間外労働にかかる費用を高くし、抑制することが狙いです。
時間外労働の割増賃金率は以下の通りです。
- 時間外労働 2割5分以上
- 休日労働 3割5分以上
- 深夜労働 2割5分以上
1時間あたりの賃金が1,800円の労働者の時間外労働時間に対する割増賃金は、次のように計算します。
60時間の時間外労働をした場合の割増賃金
1,800×1.25×60=135,000(円)
働き方改革により時間外労働に上限規制が設けられたのと同時に、1ヵ月あたり一定時間を超える時間外労働に対する割増賃金率の引き上げも行われました。1ヵ月に60時間を越える時間外労働時間の割増賃金率は5割以上でなければなりません。
70時間の時間外労働をした場合の割増賃金
(1,800×1.25×60)+(1,800×1.5×10)=162,000(円)
働き方改革で企業が注意すべきポイントは?
労働時間の上限規制違反を防ぎ、割増賃金の支払いを減額するには、働き方改革を進めて労働時間を短くすることが重要です。働き方改革は従業員の意見を積極的に取り入れることでスムーズに進められます。多くの施策の中から何を選び、どのように導入するのかについて、従業員の要望を反映させることが大切です。必要な環境整備も十分に行いましょう。
働き方改革の一層の推進を図り労働時間の短縮を目指そう
2019年4月(中小企業は2020年4月)から、時間外労働時間に上限規制が設けられています。以前の大臣告示による規制ではなく、法律に定められた、罰則付きの規制です。抵触すると法律違反となり、処罰を受ける恐れもあります。時間外労働時間を規制内にするため、企業は労働時間を適正に管理しなければなりません。
規制に関わらずとも、長時間労働は割増賃金の支払いが増え、人件費がかさむことにも繋がるため、経営圧迫につながります。何より従業員の健康への悪影響、モチベーションの低下も引き起こす、大きな問題です。働き方改革を一層推し進め、長時間労働のさらなる是正・改善を目指しましょう。
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