• 更新日 : 2022年12月6日

年末調整とは?手順の流れや全体像を解説!

年末調整とは?手順の流れや全体像を解説!

会社は毎年、従業員の年末調整の手続きを行います。従業員からは、年末調整に関する申告書や保険料控除証明書などの各種証明書類が提出されます。皆さんは、この提出された書類を処理する手順や確認するポイント、最終的に作成する書類などについてご存じでしょうか?今回は年末調整の手順や流れ、税務署には何を提出するかなどを解説します。

年末調整とは

年末調整とは、会社が従業員に支払った給料や賞与から源泉徴収した税額の年間の合計額と本来徴収するべき所得税の一年間の総額を再計算し、過不足金額を調整して年税額を一致させる精算の手続きです。

年末調整と混同しがちなのが「確定申告」です。確定申告は、個人事業主やフリーランスの方が、毎年2月から3月の期間に、自分で前年の所得を申告する手続きを指します。基本的に、会社員は自分で確定申告をする必要はありません。

しかし、一定額の医療費を支払ったため医療費控除が受けられる場合や副業収入を申告しなければならない場合は会社で行う年末調整とあわせて、自分で確定申告を行います。

基本的に、年末調整は原則として会社に在籍する従業員すべてが対象となります。しかし、給与等が2,000万円を超える従業員は年末調整の対象から外れることを覚えておきましょう。その場合、確定申告が必要になります。

また、以下に一つでも該当した場合は、年の途中で行う年末調整の対象となることに注意しましょう。

  • 海外支店などに転勤したことにより非居住者になった方
  • 死亡により退職した方
  • 著しい心身の不調により退職し、年内に再就職しないことが明らかな方
  • 12月の給与等の支払を受けた後に退職した方
  • パートタイマーとして働いており、その年に支払われる給与総額が103万円以下の方が退職し、年内に再就職しないことが明らかな場合

年末調整を行わず従業員から正確な所得税を徴収しなかった場合は「1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金」というペナルティが課せられます。また、所得税を従業員から源泉徴収したが納付しなかった場合は「10年以下の懲役か200万円以下の罰金、またはその両方」などの罰則があることを頭に入れておきましょう。

ただし、企業側に要因があるのではなく、従業員による必要書類の紛失や提出の遅れが原因の場合は、従業員本人が3月15日までに確定申告をすることで対応可能です。

とはいえ、本来は年末調整で行う煩雑な税額計算などを従業員が自分でしなければならないため、非常に手間がかかります。そのため、従業員に対して必ず年末調整を行うようにしてください。

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年末調整と確定申告の違い

年末調整と確定申告は申告する対象者は異なりますが、1年間で国に納付する所得税を納めるという点では同じような手続きになります。

年末調整と確定申告の違いについては、こちらの記事で詳細に説明していますので参考にしてください。

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年末調整のスケジュール

年末調整のスケジュールについて、一般的な流れを見ていきましょう。

10月下旬から11月中旬にかけて行うこと

  1. 年末調整対象者を確認
  2. 必要な書類を従業員に配布
  3. 従業員から書類を回収
    • 上記書類
    • 保険料控除証明書などの証明書類
  4. 書類の内容をチェック

11月下旬から12月にかけて行うこと

  1. 従業員ごとの年間給与・賞与を確定
  2. 給与所得に対応する源泉徴収簿を作成
  3. 支払調書のデータを作成

翌年1月に行うこと

  1. 関係行政機関に各書類を提出
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年末調整の手続きの流れ

年末調整は、必要な書類を従業員に配布し、書類を回収することからスタートします。10月中旬頃から通知し、11月中旬には回収が完了するようにスケジューリングしましょう。従業員は、10月頃から自宅に届く年末調整で必要になる保険料控除証明書などの証明書類を保管しておき、いつでも提出できるように準備しておきます。

年末調整の流れについて、文字ではなく動画で学びたいという方は、以下の動画も参考にしてください。

また、年末調整を実施するには、会社が従業員に支払った1年間の給料や賞与を確定させておかなければなりません。たとえば給与の締め日が月末締め、支払いが翌月25日という場合、12月25日に支払う11月分の給与を確定させておきます。

年間で支払う給与、賞与の金額が確定し、さらに従業員からの必要書類を集めたら、その年の所得税を計算します。年末調整の年税額の計算は、下記のイメージ図をご参照ください。

年末調整の流れ

毎月の源泉徴収税額、つまり1月から12月までに支払った給料および賞与から天引きした所得税の合計額と、本来徴収するべき所得税の年税額の差額を計算しましょう。年税額が少ない場合は12月に支払う給与に上乗せして還付し、多ければ追加徴収すれば完了です。

年末調整によって確定した所得税は、原則、翌年1月10日までに納付します。納期の特例を受けて半年ごとに納付する場合は、翌年1月20日が納期です。

年間の給与・賞与総額や所得税額等が確定したら、翌年1月末までに、従業員の居住地である自治体に給与支払報告書を提出しましょう。内容は源泉徴収票とほぼ同じであるため、年末調整を終えていれば比較的容易に作成できるはずです。

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年末調整において提出が必要な書類

年末調整において、必要書類を提出する場面は大きく次の3つです。

  • 従業員からの提出書類
  • 会社から税務署に提出する書類
  • 会社から市区町村に提出する書類

従業員からの提出が必要な書類は、主に3つあります。

  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  • 給与所得者の保険料控除申告書
  • 給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書

このほか、該当する従業員は「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」を提出する必要があります。

会社から税務署に提出する書類は、以下の3つです。

  • 給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表
  • 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
  • 給与所得の源泉徴収票

法定調書合計表は、年間の給与額の合計や徴収した所得税額、外部に支払った報酬金額などを会社としてまとめて作成した書類です。支払調書は弁護士や税理士などに支払った報酬を記載した書類で、源泉徴収票は年間に支払った金額を従業員ごとにまとめた帳票のことを指します。

なお、源泉徴収票は、交付自体は従業員全員に行いますが、その年の主たる給与等の額が2,000万円を超えるために年末調整をしなかった従業員など、全員ではなく一部のみ提出が必要です。

会社から市区町村に提出する書類は、主に次の2つです。

  • 給与支払報告書(総括表)
  • 給与支払報告書(個人別明細書)

源泉徴収票は複写の形態で、1枚目と2枚目が市区町村に提出する給与支払報告書になっています。提出は従業員の居住地のすべての市区町村に対しておこなうため、市区町村ごとに分けておく必要があります。

年末調整において、提出が必要な書類に関する詳細については、以下の記事を参考にしてください。

年末調整の手続きを忘れてしまった場合

年末調整の手続きは会社で行いますが、従業員が配偶者控除や保険料控除に関する書類を提出しないと手続きを行うことができません。それを、そのままにしてしまうと年末調整の手続きを忘れた(行わない)ことになってしまいます。

年末調整を忘れた場合どうなるかについては、こちらの記事で詳細に説明していますので参考にしてください。

年末調整の全体感を掴んでスムーズに実施しよう

年末調整とは、仮払いした所得税と本来の所得税の過不足を精算するための手続きのことです。毎月の源泉徴収額と年末調整で計算した年税額を比較し、年税額のほうが少なければ所得税を還付し、多ければ追加徴収をします。

年末調整における申告内容は、年々複雑化している傾向があります。そのため、担当者にかかる負荷も大きくなってきているといえるでしょう。滞りなく行うためには、年末調整の手続きの全体感を掴むことが重要です。

年末調整は従業員から必要な書類を収集することから始まりますが、これが遅れてしまうとその後の手続きもすべて後ろ倒しになってしまいます。11月中旬には収集が完了するように、余裕をもってスケジューリングすることをおすすめします。

よくある質問

年末調整の流れについて概要を教えてください

毎月の源泉徴収額と年末調整で計算した年税額を比較し、差額を計算します。年税額のほ うが少なければ12月の給与に上乗せして所得税を還付し、多ければ給与から差し引き、追加徴収します。詳しくはこちらをご覧ください。

年末調整において提出が必要な書類を教えてください

従業員から提出する書類は「扶養控除等申告書」「保険料控除申告書」など、税務署に提 出する書類は「法定調書合計表」「支払調書」「源泉徴収票」です。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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