- 更新日 : 2023年9月8日
リファレンスチェックとは?メリットや質問内容、拒否された時の対応
リファレンスチェックとは、中途採用を行う企業が、応募者の以前の勤め先での実績や勤務状況などを、前職の上司や同僚に確認するための調査のことです。本記事では、リファレンスチェックの意味や実施の流れ・タイミングのほか、実施を拒否された場合の対処法などを解説します。
目次
リファレンスチェックとは?
リファレンスチェックとは、経歴照会や身元照会を意味する言葉で、英語では「Reference Check」と表記します。中途採用を行う企業が、応募者の前の勤め先での実績や勤務状況などを、前職の上司や同僚に確認することです。面接や履歴書などの書類では確認しきれなかった項目について、調べる目的もあります。
リファレンスチェックを行うこと自体は、法律では禁止されていません。 しかし、応募者に関する情報は、個人情報保護法における個人データに該当します。そのため、必ず本人の同意を得たうえで実施する必要があります。本人の同意を得ることなく実施した場合は、違法となることに注意しましょう。
リファレンスチェックは、もともとは、外資系企業などを中心に導入されていましたが、近年では業種を問わず実施されています。ただし、すべての企業で行われているわけではありません。
リファレンスチェックの方法
リファレンスチェックでは、応募者の前職の上司や同僚などに、書面や面談、電話などでヒアリングを行います。Zoomやスカイプなどのビデオチャット形式で行うケースも増えています。
リファレンスチェック先を確保する方法は、主に以下の2つです。
- 応募者がリファレンス先を紹介する
- 採用した企業側がリファレンス先を探す
それぞれの方法を解説します。
応募者がリファレンス先を紹介する
1つ目は、中途採用を行う企業が応募者に対して、リファレンス先を紹介してもらう方法です。この場合、応募者の前職の業務や人柄を理解する上司や同僚を、2人以上紹介してもらいます。応募者が管理職の立場だった場合は、部下だった方を紹介してもらうこともあります。
事前に求職者からリファレンス先に対して、実施目的などを伝えておいてもらうとスムーズに理解を得られるでしょう。リファレンス先に、依頼の連絡や質問を代行してくれるサービスを利用することもできます。
採用した企業側がリファレンス先を探す
2つ目は、応募者の同意を得たうえで、採用担当者がリファレンス先を探す方法です。リファレンスチェックを代行する調査会社や転職会社に委託するのが、一般的です。同じ業界であれば、業界内のつながりを通じてリファレンス先を見つけられることもあります。
ただし、応募者の前職の会社から理解を得られなかったり、個人情報の取り扱いが厳しかったりする場合は、リファレンスチェックを行なえない可能性もあります。
リファレンスチェックのタイミング
リファレンスチェックは、基本的に内定を出す前のタイミングで実施します。内定を出した後に、リファレンスチェックの結果を踏まえて取り消しをするのは、法的リスクがあるためです。
また、実施コストの観点から最終面接の前、つまり内定を出す直前にリファレンスチェックを行うのが一般的です。
そのほか「一次面接の後」「二次面接後から最終面接の間」に、リファレンスチェックを行う企業もあります。選考の早い段階で実施するメリットは、リファレンスチェックの調査結果をもとにした面接を行なえることです。しかし、実施するタイミングが早ければ早いほど、対象者数が多くなるため、実施コストがかかる点はデメリットです。
前職調査との違い
リファレンスチェックと前職調査は、調査内容が異なります。前職調査の主な調査項目は、経歴詐称がないかどうか、あるいは前職で金銭トラブルがなかったかどうかなどです。一方、リファレンスチェックは、以前の勤め先での実績や働きぶりなどを確認する調査です。
個人情報保護法の厳格化に伴い、前職調査を実施するのが困難になったため、継続して行っている企業は減少傾向にあります。
参考:e-Gov法令検索(個人情報の保護に関する法律)|デジタル庁
6-1「解雇」に関する具体的な裁判例の骨子と基本的な方向性|厚生労働省
リファレンスチェックを企業が行う理由
企業がリファレンスチェックを行う理由としてまず挙げられるのは、採用のミスマッチの防止です。応募者のスキルや能力が、採用側が期待するレベルに至らなかった場合、業務の引継ぎができない、あるいは日常の業務がうまく回らないといった影響が出ます。
採用コストをかけても得られるリターンが低いため、企業として痛手を負うでしょう。応募者側も職場に居づらくなり、早期離職を選択せざるを得なくなるなど、不利益を被ります。このような状況を避けるため、応募者が実際に持つスキルや実績などを確認する必要があります。
また、応募者の人柄や前職での働き方などについて、面接や履歴書だけでは正確に確認しきれないことも、リファレンスチェックを実施する理由の1つです。面接は限られた時間内に行わなければならないため、表面的な会話に終始してしまうことは、少なくありません。応募者の人となりや、前職での働き方を詳細まで探ることは難しいため、リファレンスチェックを実施して情報を補います。
リファレンスチェックを行うメリット
企業がリファレンスチェックを行うメリットは、主に次の4点です。
- 書類・面接以外の部分を補完できる
- 採用のミスマッチを防ぐ
- 適切な人材配置ができる
- コンプライアンスリスクを回避できる
メリットについて、1つずつ確認しましょう。
書類・面接以外の部分を補完できる
リファレンスチェックによって、書類や面接からは把握できない応募者の情報を補完できます。応募者が、自分では当たり前だと認識していてアピールをしてこない面など、思わぬ長所を知る可能性がある点は、メリットの1つです。
また、前職でトラブルを起こしていたり、能力やスキルが問題視されていたりしたなど、面接では確認しきれない応募者のネガティブな情報も把握できます。
採用のミスマッチを防ぐ
採用のミスマッチを防ぐ観点からも、リファレンスチェックは有効な方法です。たとえば、英語で高いレベルのコミュニケーションが取れる人材を採用したい場合、応募者の申告のみでは、実際の英語力を判断するのが難しいことはあります。英語を使っていたのはメールだけで、会話をする機会はなかったというケースも考えられます。
リファレンスチェックによって、このようなスキルや経験に関する、企業の求めるレベルと応募者の申告との細かいギャップを埋められるでしょう。
適切な人材配置ができる
リファレンスチェックを行うことで、あらかじめ応募者のスキルや性格などを把握できるため、適切な人材配置ができる点も、メリットです。入社後にパフォーマンスを発揮するためには、本人に合った部署に配置されることが大切です。
しかし、適切な人事配置は、入社前に適性を把握していないと困難といえるでしょう。リファレンスチェックの実施は、中途入社した人材の即戦力化につながります。
コンプライアンスリスクを回避できる
コンプライアンスリスクの回避する効果も見込める点も、リファレンスチェックのメリットといえるでしょう。採用側の企業は、応募者が過去に不祥事や不正を起こしていないかという点についても、確認する必要があります。リファレンスチェックを行い、応募者の前職の上司や同僚に話を聞くことで、これらの情報も確認できるでしょう。それにより、コンプライアンスリスクを未然に回避できます。
リファレンスチェックを行う流れ
リファレンスチェックは、通常、以下のような流れで実施します。
- リファレンスチェック実施の説明をする
- インタビューの日程を決める
- 質問内容を決める
- インタビューを実施する
- 回答をレポートにまとめる
順番にみていきましょう。
リファレンスチェック実施の説明をする
最初に、応募者に対してリファレンスチェックを実施する旨を説明します。応募者の同意を得ておかなければならない点に、注意しましょう。
説明を行ったら、求職者からリファレンス先を紹介してもらいます。採用側の企業が、リファレンス先を確保するケースもあります。
インタビューの日程を決める
次に、インタビューを実施する日程を、リファレンス先と調整して決めましょう。通常、リファレンス先の勤務時間内に行うため、長くても30分程度が目安です。
リファレンス先の都合や希望に応じて、対面方式や電話、ビデオチャットなど、インタビューの方法も決めておきましょう。
質問内容を決める
リファレンスチェック当日までに、質問内容を決めます。一般的には、働きぶりや周囲とのコミュニケーションの取り方、勤務状況などを質問します。ただし、応募者によってフォーカスする部分が異なるため、応募者やリファレンス先に応じて質問項目を用意しましょう。
インタビューを実施する
インタビューの実施に際して、事前にレファレンス先と質問内容を共有しておくと、ヒアリングがスムーズに進むでしょう。リファレンス先の負担を考慮し、追加で質問内容が出てきて時間を延長するといった状況は避けましょう。
回答をレポートにまとめる
リファレンス先へのインタビューで得た情報と、採用担当者の総評などをまとめ、選考に関わるメンバーと共有します。
リファレンスチェックの注意点
個人情報保護法によって、応募者本人の同意が得られないのに、個人情報を提供することは禁止されています。そのため、リファレンスチェックを本人の同意なしで行うと、個人情報保護法に抵触することに十分注意しなければなりません。
また、リファレンスチェック後の不採用は、慎重に伝えましょう。リファレンスチェックの結果が原因であることを伝える必要はありません。しかし、不採用の原因がリファレンスチェックであると、応募者が感じ取る可能性はあります。それによって、リファレンス先と応募者の関係が悪化してしまうリスクを避けなくてはいけません。
基本的に、リファレンスチェックの内容を理由とした内定の取り消しは行なえない点にも、注意が必要です。最終面接後にリファレンスチェックを行う場合は、必ずリファレンスチェックの終了後に内定を伝えましょう。
参考:e-Gov法令検索(個人情報の保護に関する法律)|デジタル庁
リファレンスチェックを拒否された場合の対応
ここからは、リファレンスチェックを拒否された場合に求められる対応や、拒否されたことを理由とする内定取り消しが可能であるかという点について、解説します。
リファレンスチェックを拒否されたら
個人情報保護法の観点から、リファレンスチェックを行うことを応募者に拒否された場合は、実施を見送らざるを得ません。当然、調査会社を使い、無許可に調べることも違法にあたります。SNSを使って応募者の知人などに接触し、情報を引き出すこともプライバシーの侵害に該当する可能性が高いため、避けましょう。
リファレンスチェックを拒否されたものの、面接や筆記試験以外で応募者のスキルや能力を確認したいという場合は、ワークサンプルテストや体験入社を行うのも1つの方法です。
ワークサンプルテストとは、入社後に携わる予定の業務に近い課題を行ってもらい、業務遂行能力を測る採用手法です。ワークサンプルテストや体験入社によって、応募者のスキルや能力を見極め、自社とのマッチ度を判断できます。
リファレンスチェックの拒否を理由に内定取り消しはできない
内定通知書は民法において労働契約とみなされるため、正当な理由がないのに内定を取り消した場合、権利の乱用とみなされ無効になります。内定通知書および内定承諾書の取り交わしが行われている場合は、リファレンスチェックの拒否を理由とする、内定の取り消しはできないと考えましょう。
参考:6-1「解雇」に関する具体的な裁判例の骨子と基本的な方向性|厚生労働省
リファレンスチェックはメリットや注意点を十分に理解して実施する
リファレンスチェックとは、中途採用を行う企業が、応募者の以前の勤め先での実績や勤務状況などを、前職の上司や同僚に確認するための調査のことです。
リファレンスチェックには、書類や面接以外の部分を補完できる、採用のミスマッチを防止できる、適切な人材配置が可能になるなどのさまざまなメリットがあります。しかし、個人情報保護法の観点から、必ず本人の同意を得てから実施する必要があります。
リファレンスチェックは、メリットと注意点をそれぞれ十分に理解したうえで、適切に実施しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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