• 更新日 : 2024年9月6日

ハラハラ(ハラスメントハラスメント)とは?具体例や職場での対策を解説

ハラハラとは、正当な行為に対して「ハラスメントだ」と主張する嫌がらせ行為のことです。ハラハラは企業活動に悪影響を与えることもあるため、企業として対応に苦慮することもあるでしょう。

本記事では、ハラハラの具体的事例や防止策について解説します。ハラハラの原因や悪影響についても解説しますので、自社のハラハラ対策に役立ててください。

ハラハラ(ハラスメントハラスメント)とは?

ハラハラ(ハラスメントハラスメント)とは、正当な行為に対して過剰に反応し「ハラスメントだ」と主張して相手を困らせる嫌がらせ行為のことです。近年、ハラハラへの対応に苦慮する会社や上司が増えています。

最初に、ハラハラが生まれた背景とハラハラが増えている理由について解説します。

ハラハラが生まれた背景

ハラハラが生まれた背景には、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントなどハラスメントを防止するための国の法改正や企業の対策が進み、労働者にハラスメントが広く認識されるようになったことがあります。

(ハラスメント防止の為の主な法改正)

  • 1999年4月:男女雇用機会均等法改正(女性へのセクハラ防止)
  • 2007年4月:男女雇用機会均等法改正(男性・女性へのセクハラ防止)
  • 2017年1月:育児・介護休業法改正など(マタハラ防止)
  • 2022年6月:女性活躍推進法や労働施策総合推進法の改正など(パワハラ防止など)

法改正などにより雇用管理上の義務を負った企業がハラスメント防止対策を策定し社内に周知したことで、従業員はハラスメントの内容や企業責任を認識するようになりました。その結果、ハラスメントを訴える労働者が増えるとともに、ハラハラが発生しました。

ハラハラが増えている理由

ハラハラが増えている理由の1つは、ハラスメントに関する理解不足です。例えば、「本人が不快に感じたらハラスメント」という言葉を耳にしますが、ハラスメントの定義をしては不十分です。業務上必要な言動は、ハラスメントに該当しない可能性が高いためです。

また、ハラスメントに該当するかどうか判断が難しいケースもあるため、会社や上司が従業員によるハラハラの訴えに対して的確に対応できず、ハラハラを助長している面もあります。

ハラスメントに関する話題や情報が急増する中で、ハラハラを行う従業員と訴えを受ける会社や上司などがともに、ハラスメントを正確に定義づけできていないことがハラハラ増加の要因といえるでしょう。

会社への帰属意識の希薄化や従業員の権利意識の高まりが、上記状況に拍車をかけています。会社や上司に不満を持つ従業員が、ハラスメントを口実に会社や上司を攻撃するケースも考えられます。

ハラハラになりやすいシーンや具体例

ハラハラになりやすい主なシーンは次の通りです。

  • 進捗確認や修正依頼
  • 遅刻に対する注意
  • ノルマの設定
  • プライベートな会話

それぞれのシーンについて具体的に見ていきましょう。

進捗確認や修正依頼

上司が部下に仕事の進捗確認をしたり、修正を依頼したりした場合、ハラハラが発生するケースがあります。

例えば、「仕事は順調に進んでいるか?」という上司の発言に対し、部下が「仕事を急がされている」「仕事が遅いことを非難されている」とハラスメントを訴えるケースです。上司が仕事の進捗確認を行うことは職務上当然であり、部下の訴えはハラハラと言えます。

また、上司からの修正依頼を、部下が嫌がらせやいじめと思い込みハラスメントを訴えるケースもあるでしょう。業務を監督する立場から必要な指示に、部下が不快を感じたり、反発したりしたときに発生します。

遅刻に対する注意

部下が遅刻したとき上司が注意したことを、パワハラだと訴える従業員もいます。自分のミスを棚に上げて「言い方が厳しかった」「注意によって落ち込んだ」ことなどを、パワハラの根拠とすることが考えられます。

大声で怒鳴ったり、何度も繰り返し注意したりする場合は、パワハラに該当する可能性もありますが、遅刻を注意することは業務上必要な行為と考えて問題ありません。

ノルマの設定

部下の成長を期待して高めのノルマを設定した場合、パワハラの類型の1つである「過重な要求」を受けたとして訴えられるケースもあります。過重かどうかの判断は難しい面もありますが、部下の能力に応じた仕事の割り振りは上司の権限の1つであるといえます。

逆に、仕事ができない従業員の仕事の負担を減らした場合は、「過小な要求」として従業員がハラハラをするケースも考えられます。このケースでも、仕事の割り振りが妥当ならパワハラには該当しません。

プライベートな会話

部下とコミュニケーションを図るために「休日は何をしてるの?」「趣味は?」などと聞いただけで、「プライバシーの侵害」だとしてハラハラする従業員もいます。

プライベートに過度に立ち入るとパワハラに該当することもありますが、職場でも通常に行われる会話なら問題ありません。

ハラハラがもたらす職場への悪影響

ハラスメントだけでなく、ハラハラも職場に悪い影響を与えます。主な悪影響は次の通りです。

  • 上司の指導能力の低下
  • 部下に仕事を頼みづらくなる
  • 上司の業務負担の増大
  • コミュニケーションの阻害
  • モチベーションの低下

以下で、それぞれの悪影響について解説します。

上司の指導能力の低下

悪影響の1つが、上司の指導力の低下です。上司がハラハラを恐れて、部下に対して適切な指導ができなくなるためです。ハラハラを警戒すると、従業員から反発を買いやすい次の行為がやりにくくなります。

  • 従業員のレベルアップを目的とした叱咤激励
  • 仕事の品質アップのための指摘や修正依頼
  • 失敗したときやサボったときの注意 など

上司の指導力の低下によって、従業員は必要な教育を受けられず成長が妨げられます。また、組織の業務遂行に悪影響が出ることも考えられます。

部下に仕事を頼みづらくなる

ハラハラが横行すると、上司が部下に仕事を頼みづらくなる影響も考えられます。仕事が増えたことに不満を感じる従業員から、以下のようなハラハラの訴えが想定されるためです。

  • 仕事が増えて残業せざるを得なくなった
  • 自分にばかり仕事を押しつけられた
  • 職務にない仕事をさせられた など

業務上必要な仕事の割り振りを「不当な労働の強制」と訴える従業員に遠慮していると、円滑な業務運営ができなくなることが懸念されます。

上司の業務負担の増大

ハラハラを避けようとすると、上司の業務負担が増えることになります。指導不足によって従業員の成長が阻害されたり、部下に仕事を振り分けられなくなったりすることによって、部下の仕事が減り、上司がカバーしなければならなくなるからです。

本来部下がやるべき仕事を上司が肩代わりするようになると、組織の運営・管理など上司の本来業務が疎かになる可能性があります。また、上司が部下に遠慮したり、自分の仕事で忙しくしていると、組織の活力が失われることも考えられます。

コミュニケーションの阻害

ハラハラは、組織内のコミュニケーションを阻害する可能性もあります。自分の言動がハラスメントと受け取られることを警戒すると、必要事項以外をあまり話さなくなるためです。

本来業務上必要な指導やアドバイス、業務の依頼も、ハラハラが気になると言えなかったり、伝え方に気を遣ったりします。仕事以外の話でも、「プライベートの侵害」だと言われることを恐れると話しづらくなるでしょう。

必要なこと以外話さない、必要なことも話しづらい、という状況になると組織内の円滑なコミュニケーションは期待できません。

モチベーションの低下

ハラハラによって組織内のコミュニケーションがうまく取れなくなると、従業員のモチベーションも低下します。組織内のコミュニケーションによって、業務が円滑に進み連帯感や目標達成意欲が高まるためです。

ハラハラを気にする上司が特定の従業員に遠慮していたり、職場内で従業員同士が話しづらい雰囲気があったりすると、ストレスを感じたりやる気を無くす従業員もいるでしょう。従業員のモチベーション低下が続くと、業務遂行に悪影響を及ぼします。

ハラハラがひどいときの対応法

上司や同僚などに対するハラハラがひどい場合、問題の解決を上司任せにせず、会社(人事などの担当部署)が対応することも必要です。当事者同士のやり取りの場合、お互いの主張が平行線のまま続く可能性が高いため、第3者の立場から客観的な判断を下す必要があります。

具体策の1つは、ハラハラの訴えを調査し担当部署が客観的にハラスメントの有無を判定することです。例えば、「遅刻で厳しく注意された、パワハラだ」という部下の訴えに対して、担当部署は次の手順で対応します。

  • 遅刻の有無、時間、理由、過去の勤務状況等を確認する
  • 注意したときの上司の言動を確認する(上司や当事者の部下、同僚など)
  • 上司の言動に問題がないかを客観的に判断する
  • 上司に問題がなければ訴えた従業員に対し判断結果や根拠を伝える

判断結果を伝えるとき、業務上の注意・指導の必要性やハラスメントの判断基準などを従業員に理解してもらうように努めましょう。きちんと対応したうえでハラハラが継続し企業活動に悪影響を及ぼした場合、就業規則などに基づいて懲戒措置が必要なケースもあります。

ハラハラを防止するための対策

ハラハラが発生したときの対応について述べましたが、ハラハラによる悪影響を避けるために企業は問題が発生する前にハラハラ防止策をきちんと行うことが大切です。主な防止策は次の通りです。

  • ハラスメントの基準を明確にする
  • 従業員に対して周知・啓発する
  • ハラスメント相談窓口を設置する
  • ハラハラをする従業員への対応体制を整備する
  • 社内研修を実施する
  • ハラハラを処罰の対象にする

それぞれについて解説します。

ハラスメントの基準を明確にする

防止策の1つは、ハラスメントの基準を明確にすることです。ハラスメントの基準を理解していない従業員が、上司の言動などに過剰に反応してハラハラを引き起こします。

ハラスメントの定義や具体例などを記載したガイドラインを策定すれば、従業員がハラスメントに該当するかどうかを正しく判断できるようになります。また、ハラハラを行う従業員に対しては、ガイドラインに沿ってハラスメントに該当しないことを説明できます。

従業員に対して周知・啓発する

従業員に対してハラスメントの基準を周知・啓発することも、防止対策として必要です。ガイドラインを策定しても、従業員が十分理解していなければハラハラを事前に防げません。
また、ハラスメントに対する理解を深めることは、ハラスメントの防止にも役立ちます。ハラスメントに対する認識を上司や従業員が共有し、ハラスメントやハラハラのない職場づくりを目指しましょう。

ハラスメント相談窓口を設置する

社内にハラスメント相談窓口を設けて、ハラスメント情報をキャッチすることもハラハラ防止に役立ちます。ハラスメントに対する知識を持った担当者がハラスメントに該当するかどうかを客観的に判断し、問題が大きくなる前に対応できるからです。

窓口の担当者が第三者的立場で相談に応じることで、相談者も安心して話ができ冷静に考えられるようになります。相談者が納得できない場合は、人事担当者や相談者の上司などと連携して対応を図りましょう。

ハラハラをする従業員への対応体制を整備する

ハラハラ問題が発生した場合、ハラハラをする従業員への対応体制を整えることも防止策の1つです。当事者同士や所属部署の責任者任せでは、ハラスメントに該当するかどうかを正しく判断し適切に解決できない可能性があります。

対応体制とは、ハラスメントについて知識や経験のある担当者(または担当部署)を置くことや、ハラスメントの訴えがあった場合の対応手順(状況確認やハラスメントの判定など)をマニュアル化することです。

社内研修を実施する

ハラスメントの定義や具体例、ガイドラインなどを周知するために、社内研修を実施することも必要です。ハラスメントを正しく理解することが、ハラハラの発生を防ぐからです。

従業員を対象とした研修のほか、ハラスメントの発生防止や問題発生した場合の解決を担当する可能性のある管理者に対する研修も検討してみましょう。適切な研修担当者がいない場合、社外から講師を招いて実施する方法もあります。

ハラハラを処罰の対象にする

ハラハラを処罰の対象にすることも、ハラハラ防止策として効果的です。処罰を恐れて従業員が行き過ぎたハラハラを自重する可能性が高くなります。前述の通り、ハラハラは企業活動に悪影響を及ぼすこともあるため、処罰の内容が適切なら可能です。

処罰の対象にする場合、懲戒規定などに明記し従業員に周知しなければなりません。処罰規定を設けるときの法律上の決まりであるだけでなく、ハラハラ防止に役立つためです。

ハラハラに関連する法律

セクハラやパワハラ、マタハラについては男女雇用機会均等法や女性活躍推進法、労働施策総合推進法などで企業の義務が定められていますが、ハラハラに関連する法律はありません。

ただし、暴力や恐喝を伴う場合は刑法に触れるなど、パワハラの内容によっては法律にていしょくすることもあります。また、前述の通り、懲戒規定を設けてハラハラを行った従業員を処罰する方法もあります。

ハラスメント相談窓口案内のテンプレート(無料)

以下より無料のテンプレートをダウンロードしていただけますので、ご活用ください。

ハラスメントへの理解を深めてハラハラを防止

ハラハラとは、正当な行為に対して「ハラスメントだ」と、主張する嫌がらせ行為のことです。上司が部下を指導したり、注意したりすることに対して、部下がハラスメントだと訴えるケースなどが該当します。

ハラハラの主な原因は、ハラスメントに関する理解不足です。ハラスメント・ガイドラインを設けて従業員に周知するなど、ハラスメントへの理解を深め、ハラハラを防止しましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事