• 作成日 : 2022年7月29日

テレワーク導入に必要な準備 – 企業が行うこと

テレワーク導入に必要な準備 – 企業が行うこと

近年、導入が進んでいるテレワークは、通勤時間の軽減など従業員にメリットがある一方で、スムーズなテレワークの実施には事前準備が重要です。ここでは、企業がテレワークを導入する上で必要となる環境整備や制度について解説します。セキュリティ対策や勤怠管理、導入後の従業員ケアを行う上での参考にしてください。

テレワークの導入で企業が準備すべきこと – 環境整備など

従業員が生産性を保ったまま、テレワークに移行するには、事前の環境整備が重要です。ネット環境の構築や、パソコンや机など必要なハード設備の手配、テレワークで重要なセキュリティ対策など、テレワークを導入する上で企業がするべき準備は多岐に渡ります。以下にポイントを紹介します。

ネット環境の構築

生産性の高いテレワークのためには、従業員の自宅のインターネット環境を整えることが重要です。まずは対象となる従業員の自宅にネット環境があるかどうかを確認しましょう。

すでにネット回線が引かれている場合でも、業務を行う上で通信速度に問題がある場合があります。メールなどのデータのやり取り以外に、WEB会議など複数のサービスを同時進行で扱うと、通信速度が不十分な環境では画面がフリーズするなどの弊害が起こります。

安定性に優れているのは光回線ですが、従業員の自宅の状況によっては、モバイルWi-Fiを貸与する選択肢もあります。

PCやモニターなどの手配

テレワークで使用するパソコンなどのデバイスを準備します。会社が貸与する場合は、テレワークの業務開始日までに届くように手配しましょう。

近年、急速に普及するテレワークで懸念されているのが、個人デバイス利用によるセキュリティ対策です。個人端末利用(BYOD:Bring Your Own Device)と呼ばれる、私用PC等を業務で利用する方式は、企業の経費削減につながるメリットもあり、多くのテレワークを実施している企業で採用されています。

しかし、個人端末を業務用にすることのセキュリティリスクも無視できません。たとえば、私用パソコンやタブレットでOSの最新アップデートを怠っていたり、ウイルス対策ソフトをインストールしていなかったりする場合、マルウェアなどのウイルスに感染するリスクが高まります。同じ端末で、プライベートでWEBサービスを利用した際、ネットワークから機密情報が漏洩する可能性も考えられます。自宅に設置しているホームルーターやパソコン周辺機器から、ウイルスに侵入されると社内ネットワークがセキュリティの危機にさらされます。

こうしたリスクを抑えるには、会社で許可したデバイスのみを使用するか、運用ルールを徹底するなどの対策が求められます。

コミュニケーションツールの導入

テレワークでは、「どのようにコミュニケーションを図るか」が重要なポイントです。ビジネスのコミュニケーションツールといえば、かつては「メールと電話」でしたが、遠隔地にいる者同士で仕事をする場合、それだけでは十分とはいえません。

「気軽に連絡ができること」「相手の状況がわかること」「連絡にすぐに気づけること」など、テレワークだからこそのポイントを押さえたコミュニケーションツールが求められます。

まず、メールと異なり誤送信のリスクもなく、気軽に連絡ができるという点では、チャット機能を活用することが有効です。メールのように形式的な挨拶が不要なため、「気になる点を質問する」「短時間の打ち合わせを打診する」というやり取りを手短に行うことができます。

離れた場所にいるメンバーの状況把握は、スケジュール管理機能のついたツールを活用しましょう。誰がどの時間に打ち合わせに入っているのか、一目で確認できます。スケジュールが可視化されていれば、ミーティングの日時の検討もスムーズに行えます。

また、上述したチャット機能を備えたツールでは、連絡先の相手方に通知が飛ぶのが一般的であり、情報の一元管理に適しています。

リモートワークの情報可視化や業務効率化を目的としたコミュニケーションツールは、世界的に活用されるものから、日本企業の特性に適したものまで、さまざまなサービスが提供されています。自社の必要な機能を検討しつつ、導入するといいでしょう。

セキュリティ対策

テレワークは、自社の情報を外部に持ち出すため、ウイルス感染や情報漏洩などさまざまなセキュリティリスクが高まります。そこで重要となるのが「運用ルール」の策定です。

個別の事象一つひとつに、IT部門の担当者が対策を講じるのは現実的ではありません。組織として統一がとれ、個人が「これをすればセキュリティが保たれる」という行動をとるためには、セキュリティガイドラインの策定が必要です。

セキュリティガイドラインは、データの持ち出し方法や各種ツールのアクセス制限、緊急時の対応など、業務で必要なポリシーについて定めるとともに、セキュリティ対策についての基本方針を明記します。セキュリティガイドラインで、テレワーク時の具体的な行動がルール化されれば、クラウドサービスの使用やデータダウンロードなど、個人の行動に一定の安全性を担保することが可能です。

また、ガイドラインを作成しただけで終わりにせず、定期的に従業員のセキュリティ意識を高めるための研修やチェックテストを行うことが重要です。

勤怠管理システムの導入

テレワークに適した勤怠管理システムや制度の導入を行いましょう。自宅が作業場となる場合、勤務時間の概念が薄れてしまい、始業と終業の区切りがあいまいになってしまうケースがあります。そのため、システムで全社的に管理をし、勤務時間を明確に把握することが重要です。

パソコンやスマホで打刻可能な勤怠管理システムも多く、オフィス勤務と併用が可能なサービスも登場しているため、自社のスタイルにあったものを選択しましょう。

勤務時間の明確化

テレワークでは、長時間労働を引き起こしやすいとの指摘もあります。勤務時間、休憩時間を明確にするとともに、中抜けなどの連絡をルール化しましょう。

近年では、通勤のいらないテレワークの利便性を活かし、働き方の柔軟性を高めるため、フレックス制を導入する企業も増えています。

フレックス制の場合、始業と終業時間を労働者が決めることができますが、休憩時間や時間外労働、深夜労働の取り扱いについての制限が必要となり、管理者・労働者ともに正しく理解することが重要です。

テレワーク下においても労働基準法や労働安全衛生法などの労働関係法令が適用されるため、就業規則の整備や労働契約の変更など、適切な対応が必要です。労働時間に関する制度、就業場所、休憩、費用の負担や手当の創設など、テレワーク実施時と通常勤務時とでは働くためのルールが異なるため、「テレワーク規程」を作成するのもよいでしょう。

厚生労働省が公開している『テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン』では、労働時間制度の注意点や休憩時間、中抜け時間の取扱いについて説明していますので、活用するとよいでしょう。

報連相の徹底

テレワークでは社内での情報共有が欠かせません。業務報告や進捗連絡など、どれくらいの頻度で、どのような形で行うのか、メンバー間ですり合わせを行いましょう。

なかには、こまめな情報共有のため、チームで朝会・夕会を設定したり、出入り自由なランチミーティングを設定したりする企業もあります。しかし、こうした情報共有の場がたくさんあると、気軽に参加できる半面、業務の一貫として参加する意味が薄れてしまう恐れがあります。

そのため、「進捗確認のための日報」や「情報共有のための週1のチームミーティング」のように、報連相の場にそれぞれ役割を設定しましょう。その場がどのような機能を持つかを明確にすることで、さまざまな立場の人々も参加しやすくなります。

テレワークの導入後に行ったほうがよいこと

環境や制度を整え、無事にテレワークを導入できたとしても、運用中にさまざまな課題が生じる可能性があります。一人で業務を行うテレワークは、オフィスにいるときよりもタイムマネジメントスキルや自律性が求められるほか、意識的に他者とコミュニケーションの機会を増やす必要があります。

顔が見えないため、「相手の様子がわかりづらい」という点は、マネジメント側と従業員側の双方にとってマイナスの影響を与えかねません。アンケートやミーティングを活用し、テレワークに従事する人のケアに務めましょう。

従業員のケア・アンケート

従業員のメンタル不調を早期に発見する一次予防の手段として、メンタルヘルスチェックなどのアンケートが活用できます。

テレワークは、通勤のストレス軽減、働き方の柔軟性向上につながる一方で、コミュニケーションの低下等を原因としたメンタル面でのストレスを引き起こすことが指摘されています。令和3年に厚生労働省が公開した『テレワークにおけるメンタルヘルス対策のための手引き』では、テレワークでのストレス要因が分類されています。

  • 対人関係
    上司や同僚との何気ない会話が少なくなり、孤立感を覚える。新入社員など業務に慣れていない従業員は、一人で仕事を行うことに強い不安を感じる等。
  • 職場環境
    自宅の作業環境が整っておらず、強いストレスを感じる。ネットワーク環境やパソコンのスペックが十分でなく、作業効率の低下を招く等。
  • 仕事の量的な負担
    メンバー同士の働き方が見えづらくなり、役割分担や業務分担に偏りが生じる。管理者にとっても労務管理が難しくなり、長時間労働を引き起こしてしまう等。
  • 適性度
    デジタルツールに苦手意識のある人が、テレワーク自体にストレスを感じる等。

参考:テレワークにおけるメンタルヘルス対策のための手引き|厚生労働省

従業員へアンケートを実施することで、それぞれがテレワーク下でどんなことにストレスを感じているのか、その要因を把握することができます。定期的な状況把握を通じて、改善を行うことで、テレワークに適した労務管理の体制や人材育成の制度を整えることが可能です。

定期的な対面ミーティング

社内研修や面談をオンラインで実施することも、従業員のケアや人材育成に有効です。オンラインの会議ツールや、研修資料の共有方法を整えておけば、新入社員研修等をオンラインでスムーズに実施できます。

上司との面談もオンラインで実施できますが、実際に顔を合わせる対面スタイルと比較して、オンラインでは受け取れる情報量が少ないという欠点があります。そのため、従業員が出社可能な距離に居住しており、オフィスがある場合は、オフィス出社とテレワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」と呼ばれる勤務体制を導入するのも一つの方法です。

テレワークでは、オフィス勤務よりも自律的な働き方が求められます。従業員が自発的に自分の職務を遂行できるよう人材育成に取り組むほか、管理職に対してもテレワークに適したマネジメント手法が学習できる研修を実施するのが望ましいといえるでしょう。

テレワークは導入前準備と導入後のケアが重要

テレワークの導入にあたっては、必要な環境や制度を洗い出し準備を進めましょう。離れて業務を遂行するという特性を踏まえ、勤怠管理の方法、就業規則や労働契約、メンタル対策、セキュリティ対策、コミュニケーションツールを整備することが、スムーズなテレワークを助けます。

また、テレワークのメリットだけに目を向けるのではなく、課題としてあげられている点を踏まえた上で、導入後の従業員ケアやマネジメント研修、人材育成の体制を整えることが重要です。

よくある質問

テレワークの導入で企業が準備すべきことを教えてください

まずは従業員がテレワークを実施できるよう、ネット環境やパソコンなどのデバイスを整えましょう。その上で、セキュリティ対策を検討するとともに、テレワーク下での勤怠管理、コミュニケーション方法を整えます。 詳しくはこちらをご覧ください。

テレワーク導入後に行ったほうがよいことはありますか?

テレワークではコミュニケーション量の低下から孤立感を覚えたり、業務の生産性が下がる課題が指摘されています。定期的な面談やストレスチェックを実施して従業員の状態を把握するのがよいでしょう。 詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事