- 更新日 : 2023年10月13日
ハンズオンとは?意味は?支援の仕方・形式を解説!
ハンズオンとは、投資やM&Aなどで投資先・買収先に役員などを派遣し、マネジメントに深く関与することです。このほか、IT分野でエンジニアが実際に体験しながら学習することを指す場合もあります。
本記事では投資・M&Aの場面におけるハンズオンについて説明し、行政のハンズオン支援や具体的事例を紹介します。
目次
ハンズオンとは?
ハンズオンとは、M&Aや投資の場面で、経営マネジメントの業務に深く関与することです。投資先やM&Aの相手先企業に経営陣や社外取締役を派遣し、実際に経営に関わるスタイルを指します。
また、ハンズオンは英語で「手を動かすこと」という意味で、IT分野では実際に体験する学習という意味でも使われます。
ここでは、M&Aや投資、IT分野におけるハンズオンについて解説します。
M&Aや投資におけるハンズオン
M&Aや投資におけるハンズオンとは、その後のマネジメントに深く関与することです。社外取締役などを派遣し、経営改善や新規事業の開拓などを支援します。
例えば、ベンチャーキャピタルなど投資会社が投資先企業に経営陣を送ってマネジメントを行ったり、M&Aで買収した企業に取締役を派遣して経営にかかわったりすることです。
これに対し、自社は関与せず、投資先の経営陣に任せることを「ハンズオフ」と呼びます。
IT分野におけるハンズオン
IT分野におけるハンズオンは、実践的な学習方法を指します。エンジニアの勉強会や講習会などに取り入れられる方法で、講師が操作方法を教えながら自分でも実際に操作をして覚えます。
本や講義で理論を学ぶだけでなく、実際に操作して体験しながら理解を深める方法です。例えば、プログラミングを学ぶ際には、実際にコードを書いて学習します。自分の手で体験することにより記憶に残りやすく、実践的なスキルを習得できます。
ハンズオンのやり方
ハンズオンは、投資先やM&Aで買収した企業の経営に直接関わることです。役員派遣や経営会議への参加などを通して投資先企業の経営に直接関与し、意思決定に関わる権限を持ちます。
ハンズオンの目的は、大きく分けて新規事業開拓と経営基盤の改善の2つに分けられます。新規事業開拓は新たな市場への参入や新商品の販売を推進するために行われ、ハンズオンの支援により市場開拓や新商品の開発・販売がスムーズになるのがメリットです。
経営基盤の改善は、業務課題の解決を行うために実施するハンズオンです。課題の解決に必要なスキルを持つ人材やシステムを取り入れ、課題解決を図ります。
これらの実現のために行うハンズオンの内容は、戦略策定や資金提供などのファイナンス支援、人材の斡旋など人材支援、経営へのコンサルティングなど、多岐にわたります。
ハンズオンのメリット
投資やM&Aにおいてハンズオンを利用することで、素早い経営の変革などのメリットがあります。詳しくみていきましょう。
出資者と投資先の経営を素早く変革できる
ハンズオンでは、出資・買収した企業が経営に対して強い発言力や決定権を持ちます。そのため、迅速な変革を図れるのがメリットです。
また、直接的に経営やマネジメントに対して指示を出せるため、現場の業務改善もスピーディに行えます。経営が悪化している事業でも、専門的なスキルを持つ人材を派遣することで業務プロセスを効率化し、素早く立て直すことが可能です。
投資の回収を再生ファンドでとりわけ有効
ハンズオンは投資先企業の経営を迅速に変革できるため、投資の回収を急ぐ再生ファンドでは特に有効な方法です。
投資先企業の経営状況が悪い場合、ハンズオンによって優秀な人材を派遣し、早期に経営改善を行うことで、事業の立て直しがスピーディに進むでしょう。
投資先が利益を生み出せる企業になることで、投資回収の目的を達成できます。
ハンズオンのデメリット
ハンズオンにはデメリットな側面もあります。特にM&Aの買収後、買収先の企業と対立するリスクがある点です。
ここでは、ハンズオンのデメリットを解説します。
買収後に対立が生じるリスクがある
ハンズオンは経営を迅速に変革できるというメリットがある一方、対立が生じるリスクはあります。変革を急ぐあまり、派遣された役員と現場の従業員との間で、経営に対しての見解の相違が生まれやすいためです。
ハンズオンを行う前に方向性を統一し、達成目標を提示して理解を求めるなど、買収された企業が変革を受け入れられるよう事前準備を行うことが大切です。
ハンズオンを成功させるための支援方法
ハンズオンを成功させるためには、ゴールを明確にするなどいくつか押さえるべきポイントがあります。
ここでは、成功のための支援方法を紹介します。
ゴールを明確にする
ハンズオンを行う前に、まずゴールを設定します。ゴールはできるだけわかりやすく明確に設定することがポイントです。何を最終的な目標とするかを具体的に示すことで、現場の社員も納得して業務にあたれます。
目標が曖昧な状態では、事業の変革や再生がうまく進まず、派遣された役員と現場社員との間に無用な対立を引き起こすでしょう。明確な目標と今後の方針を打ち立て、浸透させることが大切です。
ビジネスパートナー・支援の立場として参与する
投資先・買収企業は相手企業のビジネスパートナー・支援する立場として事業に参与する姿勢が大切です。出資を受ける企業・買収された企業はさまざまな経営課題を抱えています。
派遣される役員はビジネスパートナーとして良き相談相手となり、経営課題の解決に向けて支援していくことで、お互いに信頼関係を構築できるでしょう。
密にコミュニケーションを行う
ハンズオンでは買収先企業・投資先企業の経営に深く関わるため、対立を起こさないよう、密にコミュニケーションを行うことが大切です。経営の変革には社員の協力が不可欠であり、十分なコミュニケーションをとれないまま経営改善を行っても、社員の協力を得られず思うような効果を得られません。
対立を未然に防ぐためにも、円滑なコミュニケーションが必要です。コミュニケーションが活発になれば意見の交換もスムーズになり、相互理解を深められます。
組織改革は期日を決める
組織改革は期限を決めることも重要です。組織改革の目的を明確にし、達成するための期限を決めておくことで、迅速な改革を実現できます。
期限設定にはしっかりした計画の立案が必要であり、目的を達成するために必要な組織の定義と、組織の実装に必要な人材の選定も不可欠です。計画の立案には、買収先企業・投資先企業の経営状況をしっかり把握することも求められます。
ハンズオンは完了したら終わりではなく、効果を検証して不具合のある部分を改善していくことも大切です。
ハンズオン以外の手段が使えないか検討する
ハンズオンは投資やM&Aにおけるひとつの手法であり、買収先企業・投資先企業にとって最適な方法とは限りません。経営には直接関与せず、自主的な改革に任せるハンズオフの方法が適している場合もあります。
特に経営に直接関わる必要がなく、変革を急ぐわけでもない場合は、あえてハンズオンを選ぶ必要はないでしょう。ハンズオフを選択した方が、投資先・買収先にとって効率的ともいえます。どちらが最適な方法かをよく検討することも必要です。
ハンズオンについて使える行政支援
国の中小企業政策の実施機関である独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では、経営課題の解決に取り組む中小企業を対象にハンズオンの支援を実施しています。事情に合わせて多様な支援テーマを提案し、課題解決のサポートを行う取り組みです。
さまざまな経営課題に対し、中小機構に所属する専門家のなかから企業のニーズに応じた最適な人材を選出します。アドバイザーとして数ヶ月〜10ヶ月程度の期間、派遣されるという仕組みです。
案件ごとに専門家と中小機構の職員が支援チームを作り、支援企業で結成されたプロジェクトチームと一体となって目的の達成を目指します。
ここでは、4つの行政支援を紹介します。
専門家継続派遣事業
専門家を数ヶ月〜10ヶ月程度の期間にわたり、継続して派遣するメニューです。経営や財務・法律などの専門家が、企業の発展段階に応じて適切なアドバイスを行い、その成長・発展をサポートします。
派遣されるのは大手企業経営幹部など経営経験の豊富な人材や、中小企業支援の実績がある中小企業診断士などの専門家です。経営戦略の策定や、新事業開拓などのサポートを行います。
戦略的CIO育成支援事業
企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、IT導入・運用の支援を行うハンズオンです。さらに、企業内のCIO候補者の育成もサポートします。CIOとは「Chief Information Officer」の略で、「情報統括役員」や「最高情報責任者」と訳されるポジションです。企業経営における情報技術の活用と管理を行うとともに、企業の経営理念に合わせた情報化戦略を立案・実行する役割を担います。
戦略的CIO育成支援事業には、専門家を数ヶ月〜10ヶ月程度継続して派遣するメニューと、4ヶ月程度の短期間派遣するメニューがあります。
経営実務支援事業
企業の抱える課題について、経営における実務経験が豊富な専門家を派遣し、課題解決や人材育成をサポートするメニューです。
事業計画を実行のための行動計画作成や、新規事業展開のための営業体制の構築、業務フローの策定などを支援します。
5ヶ月以内の短期に実施され、大手・中堅企業で実務経験を持つ専門家が派遣されます。
販路開拓コーディネート事業
新商品や新技術など新たな市場開拓に向け、販路開拓のサポートをするメニューです。
以下の3つの内容から選べます。
- 新事業展開・新規顧客開拓による売上拡大を目指す
- 売上拡大を目指し、新市場にテストマーケティングする
- 販路開拓のための営業体制構築など営業力・販売力強化をサポートする
実施期間は4ヶ月〜5ヶ月程度で、実務経験を持つ専門家などが支援にあたります。
ハンズオンを活用している事例
中小機構のハンズオン支援を活用し、経営の変革を実現した事例を紹介します。ぜひ参考にしてください。
2年で黒字化を実現
関東地方にある電子部品メーカーは、主要取引メーカーの工場閉鎖により一気に業績を悪化させ、売り上げが激減しました。経営を立て直すため、活用したのが中小機構のハンズオン支援です。
それまで外部の人間から支援を受けることがなく、当初は幹部をはじめ社員には拒絶感がありました。しかし、アドバイザーが熱意を示すと、社員も変わっていったということです。
経営再建では、事業計画が守られているかしっかり管理することと生産効率を良くすることをテーマに進めていったところ、半年を過ぎたころには月の早い段階で目標の売上予測を立てていく「攻めの管理」「攻めの経営」に変わっていきました。それにより、目標を達成しようという社員のモチベーションが高まり、一人ひとりのミッションも明確化されたということです。結果として、目標の2年で黒字化を達成できました。
商品の知名度向上と新たな収益の獲得
東北にある酒造メーカーは、東日本大震災による仕込蔵の全壊といった被害からの復興を経た後、事業承継した社長の新体制のもとでさまざまな経営課題を抱えていました。
そこで、ハンズオン支援の専門家継続派遣事業を活用し、計画経営の導入と生産管理の強化による経営基盤の構築を図ることにしました。ハンズオンでは新商品開発や 販路開拓、新分野への挑戦をサポートし、 経営戦略と生産管理に加え、マーケティングの支援によりブランディングと直販の強化を行ったということです。
インターネット販売と直売所の両面から直販を強化することで収益の2本柱化を図ったところ、商品の知名度が向上して販路が拡大し、総資本経常利益率が増加するという結果を得ています。
ハンズオンの理解を深めよう
ハンズオンはM&Aや投資を行う際、マネジメントに深く関与する取り組みです。役員などを派遣し、経営再建や新規事業の開拓などをサポートします。ハンズオンを行うことでスピーディな経営改革を実現し、経営改善で投資回収ができるなどのメリットがあります。
中小機構ではハンズオン支援で専門家派遣のサービスを提供しており、支援を受けて経営変革に成功している事例も少なくありません。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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