• 更新日 : 2023年11月6日

令和6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き⽅をわかりやすく解説!

令和6年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き⽅をわかりやすく解説!

企業は、毎年12月頃(新規採用者の場合は最初の給与を支払うとき)までには、翌年分の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を従業員からもらいます。

この申告書をもらっておかないと、毎月の給与から源泉徴収する際の諸控除ができないばかりか、年末調整もできません。扶養控除等(異動)申告書の書き方について見ていきましょう。

マル扶こと「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」とは?

マル扶とは「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」(以下、「扶養控除等申告書」)のことをいいます。この書類は、企業がその年の最初の給与を支給するときまでに従業員からもらっておかなければならない書類で、毎年の年末調整を行う際にも必要です。

従業員の家族に扶養している親族がいる場合、従業員はさまざまな控除を受けられる可能性があります。その控除を受けるために必要な情報を記入する書類の1つが扶養控除等申告書です。

ここで確認できる控除の種類には、配偶者控除、扶養控除、障害者控除寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除などがあり、所得税に関することを記載するほか、住民税に関する扶養控除申告書も兼ねています。

扶養控除申告書の提出が必要な人は?

扶養控除申告書は、従業員が各種控除を必要とするかを確認する書類です。したがって、企業は扶養控除申告書の提出を受けていないと、年末調整ができないことになります。

副業・複業している人の場合は、年末調整は主たる給与の支払を受けている企業で行います。複数の企業で同じ扶養控除を重複して受けることはできませんので、原則として年末調整を行う方の企業が扶養控除申告書の提出を受けます。

扶養控除申告書を提出しないとどうなる?

扶養控除申告書は、扶養控除の有無以外に毎月の給与から控除する源泉徴収税額の計算方法を決めるためにも使用します。

扶養控除申告書を提出している場合は、毎月の給与から社会保険料の控除を行うとともに、扶養家族の人数に応じた一定の控除を受けることができるため、源泉徴収税額が低くなります。一方、提出していない場合は、扶養家族の人数に応じた控除がないため、通常よりも源泉徴収額が高く計算されます。

扶養控除等申告書の書き方は?

扶養控除等申告書の書き方

出典:各種申告書・記載例(扶養控除等申告書など)|国税庁
「令和6年分扶養控除等(異動)申告書」 を加工して作成

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の記入方法について解説します。項目をいくつかに分けて順番に見ていきましょう。

基本情報

給与の支払者と給与所得者自身の基本的な情報を記入する欄です。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の記入方法

引用:《記載例》令和6年分扶養控除等申告書|国税庁

「所轄税務署長等」の「税務署長」の欄には企業などの給与支払者の所在地等の所轄税務署の名称を、「市区町村長」の欄には給与所得者の住所地等の名称を記入します。

「給与の支払者の名称(氏名)」には企業の名前を書き、「給与の支払者の所在地」を記載してもらいます。

また「給与支払者の法人(個人)番号」と「あなたの個人番号」は原則として記入する必要がありますが、給与の支払者が従業員やその配偶者、扶養親族のマイナンバーを記載した帳簿を備え付けていれば省略することができます。
なお給与の支払者が法人の場合は、その法人番号をあらかじめ記載(または印字)して給与所得者に渡すのがよいでしょう。

一番右にある「従たる給与についての扶養控除等申告書の提出」の欄は、2カ所以上から給与の支払を受けている人が、他の給与の支払者に対して「従たる給与についての扶養控除等申告書」を提出している場合に○をつける欄です。

「従たる給与についての扶養控除等申告書」として提出するのは、主たる給与からだけでは配偶者控除、扶養控除、障害者控除などの所得控除を全額控除することができないと考えられるケースです。このような場合のみ提出します。

なお、扶養控除等申告書を提出した会社から支払われた給与を「主たる給与」、それ以外の給与を「従たる給与」と呼びます。

源泉控除対象配偶者

源泉控除対象配偶者

引用:《記載例》令和6年分扶養控除等申告書|国税庁

源泉控除対象配偶者とは、配偶者控除の対象となる配偶者です。次の4つ全てに当てはまる場合に、控除対象配偶者となることができます。

  1. 民法上の配偶者であること(したがって内縁関係にある人は該当しません)
  2. 納税者と生計を一にしていること
  3. 年間の合計所得金額が48万円以下(所得が給与のみの場合は給与収入が103万円以下)であること
  4. 青色事業専従者給与をその年を通じて一度も受け取っていないことまたは白色申告の事業専従者でないこと

また、合計所得金額が48万円超133万円以下の場合は、配偶者特別控除の対象配偶者となります。配偶者特別控除を申告する場合には、別途「給与所得者の配偶者控除等申告書」の提出が必要です。

控除対象扶養親族

控除対象扶養親族

引用:《記載例》令和6年分扶養控除等申告書|国税庁

控除対象扶養親族とは扶養親族のうち、16歳以上の年齢の人を指します。さらにこのうち次の4つの条件を全て満たしている必要があります。

  • 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること
  • 納税者と生計を一にしていること
  • 年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること
  • 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと

引用:扶養控除とは|国税庁

控除対象となる扶養親族には4種類あります。

  1. 一般の扶養控除対象扶養親族…16歳以上の人
  2. 特定扶養親族…上記1.のうち19歳以上23歳未満の人
  3. 老人扶養親族…70歳以上の人
  4. 同居老親等…上記3.のうち同居している人

同居老親等とは納税者またはその配偶者の父母や祖父母などの直系尊属のうち、納税者(またはその配偶者)と日常的に同居している人のことです。

ここでいう「同居」とは、「同居を常況としている」ことが要件になります。

例えば、ケガや病気のため一時的に入院し納税者等と別居している場合は、その期間が1年以上の長期にわたるケースであっても、同居しているものとして取り扱います。

また、老人ホーム等へ入所し住民票も移しているようなケースは、老人ホームが居所となりますので、同居しているとはいえません。

控除対象扶養親族の種類条件
一般の扶養親族16歳以上
特定扶養親族19歳以上23歳未満
同居老親等70歳以上で、かつ納税者またはその配偶者の父母や祖父母などの直系尊属のうち、納税者(またはその配偶者)と常に同居している人
同居老親等以外の者70歳以上で、
同居老親等ではない控除対象扶養親族

障害者

令和6年分扶養控除等申告書|国税庁 障害者

引用:《記載例》令和6年分扶養控除等申告書|国税庁

本人、同一生計配偶者、扶養親族に障害者がいる場合に記入する欄です。障害者控除の対象となる人の範囲は、次のいずれかに当てはまる人です。

  1. 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人
    この人は、特別障害者になります。
  2. 児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医の判定により、知的障害者と判定された人
    このうち重度の知的障害者と判定された人は、特別障害者になります。
  3. 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人
    このうち障害等級が1級と記載されている人は、特別障害者になります。
  4. 身体障害者福祉法の規定により交付を受けた身体障害者手帳に、身体上の障害がある人として記載されている人
    このうち障害の程度が1級または2級と記載されている人は、特別障害者になります。
  5. 精神または身体に障害のある年齢が満65歳以上の人で、その障害の程度が1.2.または4.に掲げる人に準ずるものとして市町村長等や福祉事務所長の認定を受けている人
    このうち特別障害者に準ずるものとして市町村長、特別区区長や福祉事務所長の認定を受けている人は特別障害者になります。
  6. 戦傷病者特別援護法の規定により戦傷病者手帳の交付を受けている人
    このうち障害の程度が恩給法に定める特別項症から第3項症までの人は、特別障害者となります。
  7. 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の規定により厚生労働大臣の認定を受けている人
    この人は、特別障害者となります。
  8. その年の12月31日の現況で引き続き6ヶ月以上にわたって身体の障害により寝たきりの状態で、複雑な介護を必要とする(介護を受けなければ自ら排便等をすることができない程度の状態にあると認められる)人
    この人は、特別障害者となります。

引用:No.1160 障害者控除|国税庁

寡婦

本人の所得額が500万円以下(給与所得のみの場合は収入額が6,777,778円以下)で、かつ、ひとり親に該当しない場合に対象となります。事実上の婚姻関係と認められる人がいる場合には、寡婦控除の対象になりません。次のいずれかに該当する人が記入します。

  • 夫と離婚した後婚姻をしておらず、扶養親族がいる人で、合計所得金額が500万円以下の人
  • 夫と死別した後婚姻をしていない人または夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人

引用:No.1170 寡婦控除|国税庁

ひとり親

本人の合計所得額が500万円以下で、かつ、事実上婚姻関係と同様と認められる人がいない人に限られます。次のすべてに該当する人が記入します。

  • 現在、婚姻していない人、または、配偶者の生死不明な人
  • 本人と生計を一にする子(所得額が48万円以下の子に限る)を有する人

勤労学⽣

次のすべてに該当する人が記入する欄です。

  • 大学、高等学校などの学生や生徒、一定の要件を備えた専修学校、各種学校の生徒または職業訓練法人の行う認定職業訓練を受ける訓練生であること
  • 自分の勤労に基づいて得た事業所得、給与所得、退職所得または雑所得(以下「給与所得等」といいます)があること
  • 令和6年中の所得の見積額が75万円以下(給与所得だけの場合は、給与の収入金額が130万円以下)であって、そのうち給与所得等以外の所得が10万円以下であること

引用:令和6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(裏面)|国税庁

他の所有者が控除を受ける扶養親族等

他の所有者が控除を受ける扶養親族等

引用:《記載例》令和6年分扶養控除等申告書|国税庁

自分と同一生計内に所得者が2人以上いる場合、下記に該当するときは、その扶養親族等の名前を記入する欄です。

  • 控除対象配偶者等、自分の扶養親族等を他の所得者の扶養親族等とする場合
  • その生計内の扶養親族等を分けて控除を受ける場合

住民税に関する事項

住民税に関する事項

引用:《記載例》令和6年分扶養控除等申告書|国税庁

下記のような人がいる場合に記入する欄です。

  • 扶養親族のうち、年齢16歳未満の人がいる場合
  • 退職手当等の支払いがある配偶者、または扶養親族がいる場合
  • 寡婦、または、ひとり親に該当する場合

参考:令和6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(裏面)|国税庁

扶養控除申告書の提出方法は?

扶養控除申告書は、従業員が自身に関係する項目を記入した後、企業(給与の支払者)で保管します。

該当の年の最初の給与の支払いを受ける日の前日まで(中途入社の場合は、入社後最初の給与の支払いを受ける日の前日まで)に書いてもらいましょう。

提出した同じ年の間に記入した内容に変更があった場合は、その変更の日後、最初に給与の支払いを受ける日の前日までに修正してもらうことも忘れてはなりません。

扶養控除申告書の記載ミスを防ぐには?

扶養控除申告書は、日頃見慣れない項目が多いため人事労務担当者でも記載ミスが発生することがあります。

これを防ぐために、次のようなことに注意しましょう。

  • 記載ミスや記載漏れがないように記入時には注意しながら記入する
  • 扶養親族について、年収や障害の状況を把握しておく
  • わからないことは本人に問い合わせ、速やかに修正する

手続きは1年に1回しか行いませんので、マニュアルのような物が準備できるとよいでしょう。

所得控除の正しい知識を身につけ、法改正の情報に気をつけよう

従業員の家族の中に扶養している親族がいる場合には、従業員はさまざまな所得控除が受けられる可能性があります。その控除を受けるために必要な情報を記入する書類の1つが扶養控除等申告書です。

人事労務担当者は、毎月の給与計算や年末調整の手続きで、従業員の所得税を正確に計算できるスキルと知識が求められます。特に年末調整は、従業員ごとにさまざまな所得控除が適用されるケースがあるため、初めて見かける所得控除に出くわすこともあるでしょう。

人事労務担当者でも、法改正の情報などを知らずに記載ミスが発生することがあります。法改正の情報に留意し、各種所得控除の知識を深め、ミスが起こらない工夫が必要です。

よくある質問

扶養控除申告書の提出が必要な人は?

扶養控除申告書は、各種控除の確認書類ですので会社で年末調整を行う人は提出が必要です。副業・複業している人は年末調整を主たる給与の支払先で行いますので、年末調整を行う方の会社に提出してください。詳しくはこちらをご覧ください。

扶養控除申告書を提出しないとどうなりますか?

扶養控除申告書を提出していない場合は、通常の課税計算になりますので、源泉徴収額は申告書提出時よりも高額になります。詳しくはこちらをご覧ください。

扶養控除申告書の提出方法は?

扶養控除申告書は、該当の年の最初の給与の支払いを受ける日の前日まで(中途入社の場合は、入社後最初の給与の支払いを受ける日の前日まで)に関係する項目を記入した後、給与の支払者に提出してください。詳しくはこちらをご覧ください。


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