• 作成日 : 2022年1月21日

年金払い退職給付とは?公務員が押さえておくべき制度を解説

公務員は平成27年9月末で共済年金の職域加算部分が廃止になり、平成27年10月から新たな公務員共済制度年金の「年金払い退職給付」が創設されました。

この年金払い退職給付には「退職年金」、「公務障害年金」、「公務遺族年金」の3種類があります。

今回は、年金払い退職給付の仕組みや給付の仕組み、給付額について解説していきます。

年金払い退職給付とは?

年金払い退職給付は、平成27年10月1日から施行された被用者年金制度の一元化によって、それまで公務員独自に加算されていた共済年金独自の職域加算という年金の上乗せ制度が廃止。新たに民間の企業年金に相当する年金として設けられました。

年金払い退職給付の種類

年金払い退職給付には、「退職年金」、「公務障害年金」、「公務遺族年金」の3種類の給付があります。

それぞれの年金の詳細について見ていきましょう。

退職年金

【受給要件】

1年以上継続して組合員だった人が、退職後に65歳になるか、または65歳になった後に退職したときに、その人の請求によって支給される年金が退職年金です。

厚生年金保険・国民年金で言う「老齢年金」にあたる年金です。

【年金額】

退職年金における終身退職年金額、有期退職年金額は、それぞれ次の計算方法により求められます。

終身退職年金

a)給付事由が生じた日の属する年の決定額

終身退職年金額 = 終身退職年金算定基礎額 ÷ 受給権者の年齢区分による終身年金現価率

b)翌年以降の決定額

各年の10/1から翌年の9/30までの
終身退職年金額 = 終身退職年金算定基礎額 ÷ 各年の10/1の受給権者の年齢区分に応じた終身年金現価率

有期退職年金

a)給付事由が生じた日の属する年の決定額

有期退職年金額 = 有期退職年金算定基礎額 ÷ 受給残月数の区分による有期年金現価率

b)翌年以降の決定額

各年の10/1から翌年の9/30までにおける
有期退職年金額 = 有期退職年金算定基礎額 ÷ 各年の10/1の受給残月数に応じた有期年金現価率

【給付の概要】

退職年金の半分は支給期間を有期の「有期退職年金」として、半分は支給期間を終身の「終身退職年金」として支給されます。

有期退職年金は支給期間が20年間ですが、年金請求時に10年間または一時金の選択も可能です。

また、受給者が亡くなられた場合は、終身退職年金部分の支給は終了し、有期退職年金の残余年月分は遺族の方に一時金として支給されます。

なお、在職中の組合員である間、退職年金は全額支給停止になりますのでご注意ください。

公務障害年金

【受給要件】

公務遺族年金は、次のいずれかの要件に該当した場合に、受給権のある遺族からの請求により支給されます。

次に挙げる全ての要件を満たしている場合に、当該者の請求により支給されるのが公務障害年金です。

  • 公務により病気になったり負傷したりした人であること
  • その病気や負傷のための傷病について、初めて医師や歯科医師の診療を受けた日(初診日)に組合員であったこと。(ただし、その初診日は平成27年10月1日以降に限る)
  • 障害認定日に、その公務による傷病が原因で、障害等級1級から3級の障害状態であること

【年金額】

公務遺族年金の年金額は、次のような計算方法で求められます。

公務遺族年金額 = 公務遺族年金算定基礎額÷死亡日の年齢区分による終身年金現価率 × 調整率

上記で計算した金額が次の障害等級に応じて計算された金額より少ない場合は、それぞれの金額が最低保障として年金額になります。

上記の計算結果が次の障害等級に応じた計算結果より金額が少ない場合は、それぞれの金額が最低保障となります。

  • 障害等級1級:4,152,600円×各年度の国民年金法の改訂率-厚生年金相当額
  • 障害等級2級:2,564,800円×各年度の国民年金法の改訂率-厚生年金相当額
  • 障害等級3級:2,320,600円×各年度の国民年金法の改訂率-厚生年金相当額

【給付の概要】

公務障害年金の給付は、その全額が終身年金として支給されます。また、障害の程度が変わった場合には、年金額が見直され改定されます。

ただし、組合員である間は、公務障害年金は全額支給停止になります。

公務遺族年金

【受給要件】

公務遺族年金は、次のいずれかの要件に該当した場合に、受給権のある遺族からの請求により支給されます。

  • 組合員が公務による病気や負傷のための傷病により亡くなったとき
  • 組合員だった人が退職後、その組合員だった間に初診日がある公務の傷病が原因で初診日から5年以内に死亡したとき(ただし、その初診日は平成27年10月1日以降に限る)
  • 障害等級1級または2級の公務障害年金の受給権者が、その原因となった公務による傷病が原因で亡くなったとき

【年金額】

公務遺族年金の年金額は、次のような計算方法で求められます。

公務遺族年金額 = 公務遺族年金算定基礎額 ÷ 死亡日の年齢区分による終身年金現価率 × 調整率

上記で計算した金額が次の障害等級に応じて計算された金額より少ない場合は、それぞれの金額が最低保障として年金額になります。

  • 1,038,100円×各年度の国民年金法の改訂率-厚生年金相当額

【給付の概要】

公務遺族年金は、全額が終身年金として支給されます。

年金払い退職給付の仕組み

年金払い退職給付は、将来受け取ることができる年金の給付に必要な原資を保険料(掛金)で積み立てていく「積立方式」による給付になります。
また、年金の給付額は国債の利回り等によって変動させることで、保険料を追加拠出する可能性を抑制します。

具体的に「組合員期間中」「受給待機期間中」「年金受給中」に分けて説明します。

組合員期間中

組合員が毎月の保険料を積み立てることにより、毎月の報酬に付与率を乗じた付与額を、これに対する利子とともに毎月積み立てます。

利子については、国債の利回り等に連動した基準利率を適用して算出されます。

この積み立ては退職等の事由により終了し、それまでに積み立てられた金額は「給付算定基礎額残高」になります。

受給待機期間中

積み立てが終了した後も、年金の支給開始年齢になるまでは、組合員期間終了時の給付算定基礎額残高に対応する利子も積み立てられていきます。

これが年金の原資となる「給付算定基礎額」になります。

年金受給中

給付算定基礎額を基にして実際の給付額を算出します。

原則として支給開始年齢は「65歳から」になります。支給開始年齢は60歳から繰り上げて受給したり、70歳まで繰り下げて受給することも可能です。

ただし、繰り上げ請求した場合には、給付算定基礎額残高の利息が請求時点までで止まるため、繰り上げ請求しない場合と比較して給付算定基礎額が少なくなり年金額も少なくなります。

逆に、繰り下げ請求した場合には、給付算定基礎額残高の利息が65歳以降も付与されるため、繰り下げ請求しない場合と比較して給付算定基礎額が多くなり年金額も多くなります。

年金受給の際は、給付算定基礎額の1/2は有期退職年金、1/2は終身退職年金として支給されます。

寿命の延びや基準利率の変動などの状況を踏まえて、有期退職年金および終身退職年金それぞれに毎年改定される原価率を設定し、年金額の改定を行います。

年金払い退職給付の相場は?いくら受給できる?

年金払い退職給付で受給できる金額がどのくらいなのか、国家公務員共済組合連合会が発行している「退職等年金給付制度の平成30年財政再計算および財政検証(平成29年度末)の結果について」の退職年金のモデル年金ケースを参考に見てみましょう。

退職等年金給付制度の平成30年財政再計算および財政検証(平成29年度末)の結果について
引用:退職等年金給付制度の平成30年財政再計算および財政検証(平成29年度末)の結果について|国家公務員共済組合連合会

前提条件

前提条件は次の通りとします。
・平均標準報酬月額:40.5万円
(平成30年3月末の国共済および地共済の全組合員の標準報酬月額の平均値)
・組合員期間:40年
・年金受給開始年齢:65歳
・有期退職年金:受給期間20年選択
・毎月積み立てる付与額を算出するための率は1.50%と設定
・利子を計算するための基準利率は0.20%と設定
・年金現価率は、
終身年金現価率:65歳の場合       22.435798
有期年金現価率:支給残日数20年の場合  19.602405

モデル年金額

◆標準報酬月額が41万円の場合
掛金額=41万円×0.75%=3,075円(月額)
付与額=41万円×1.50%=6,150円(月額)

◆65歳時点の給付算定基礎額:402万円
(内訳)
付与額:384.4万円、利子:17.6万円

◆終身退職年金算定基礎額、有期退職年金算定基礎額ともに給付基礎日額の1/2なので、計算式は以下のようになります。

終身退職年金月額

終身退職年金額 = 終身退職年金算定基礎額(402万円÷2=201万円)
÷ 終身年金現価率(22.435798)= 89,588.968円 ≒ 89,600円

よって、終身退職年金月額 = 89,600円 ÷ 12= 7,466.666円 ≒ 7,466円

有期退職年金月額

有期退職年金額 = 有期退職年金算定基礎額(402万円÷2=201万円)
÷ 有期年金現価率(19.602405)= 102,538.438円 ≒ 102,500円

よって、有期退職年金月額 = 102,500円 ÷ 12= 8,541.666円 ≒8,541円

年金払い退職給付をうまく活用しよう!

年金払い退職給付は、労使折半で積み立てた掛け金を原資として年金を受け取る「積み立て方式」を採用していますので、積立金の運用収入を活用できます。
さて、ここまで年金払い退職給付の仕組みや種類、年金額について見てきました。

公務員の3階建年金の3階部分にあたる年金払い退職給付、その制度をしっかり確認して、皆さんが将来の受給時にうまく活用できるように再確認しておきましょう。

よくある質問

年金払い退職給付とはなんですか?

平成27年10月1日から施行された被用者年金制度の一元化により、改正前の共済年金の職域加算部分が廃止されました。それに伴い、公務員の退職給付の一部として新たに設けられた制度になります。詳しくはこちらをご覧ください。

年金払い退職給付の種類にはどういったものがありますか?

年金払い退職給付は、平成27年10月1日以後の組合員期間について適用され、老齢に関する給付「退職年金」、障害に関する給付「公務障害年金」、死亡に関する給付「公務遺族年金」の3種類の給付があります。詳しくはこちらをご覧ください。


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