• 作成日 : 2022年2月15日

国民年金保険料が免除される年収はいくら?申請に伴う注意点も解説!

収入の減少や失業、産前産後といった理由により国民年金保険料の支払いが困難になった場合には、免除や猶予を受けることができます。前年の年収(所得)が基準の範囲内である場合に対象になりますが、収入の見込額を用いる新型コロナウイルスの特例も設けられています。申請方法に従った手続きが必要で、年金額が減るといった注意点もあります。国民年金保険料が免除される場合の条件や申請時の注意点などについて解説します。

国民年金保険料の免除および納付猶予になる年収(所得)は?

国民年金保険料の納付には支払いが困難である場合に受けられる、免除や納付猶予の制度が設けられています。失業などの理由により所得が下がったといった場合に対象となる制度で、前年の所得が基準の範囲内であるといった要件を満たしていることが必要です。

免除と納付猶予の違い

国民年金保険料の免除と納付猶予は、どちらも保険料支払いが困難な人のために設けられている制度です。収入が減少するなどした場合でも未納にせず、必要になった際に確実な年金受給につなげることを目的にしています。ただし内容や対象者などに、次のような点に違いがあります。

免除制度納付猶予制度
内容国民年金保険料の支払いが免除される国民年金保険料の支払いを遅らせることができる
対象年齢60才未満50才未満
受給額影響があり、減額される影響はなく、減額されない

免除になる年収

国民年金保険料の免除は、前年の所得が基準の範囲内である場合に受けることができます。免除の種類と基準となる所得額は以下の表の通りです。

基準となる前年の所得額
免除の割合令和3年度以降令和2年度以前
全額免除(扶養親族等の人数+1)×35万円+32万円(※)(※)22万円
3/4免除88万円(※)+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等(※)78万円
1/2(半額)免除128万円(※)+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等(※)118万円
1/4免除168万円(※)+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等(※)158万円

猶予になる年収

国民年金保険料の納付猶予は、前年の所得が基準の範囲内である場合に受けることができます。基準となる所得額は以下の表の通りです。

基準となる前年の所得額
令和3年度以降令和3年度以降
納付猶予(扶養親族等の人数+1)×35万円+32万円(※)(※)22万円

国民年金保険料免除・納付猶予の対象となる方

国民年金保険料の納付・猶予制度には、いくつかの特例が設けられています。要件に該当した場合には申請により、一定期間の保険料免除・猶予を受けることができます。

失業した方

失業や廃業で職を失った方は、国民年金保険料の免除を受けることができます。

要件本人・世帯主・配偶者のいずれかが失業などをしたこと
保険料免除期間失業などのあった月の前月から翌々年6月まで

申請書が受け付けられた月から2年1カ月前までの未納期間についても申請できます。

新型コロナの影響により経済困難に陥った方

新型コロナウイルス感染症の影響を受けた場合の臨時特例措置です。国民年金保険料の納付が困難な場合に所得見込額を用いて、簡易な手続きで免除を受けることができます。

要件新型コロナウイルス感染症の影響により収入が減少し、所得が相当程度まで下がったこと
保険料免除期間1. 令和元年度分として令和2年2月分から令和2年6月分まで
2. 令和2年度分として令和2年7月分から令和3年6月分まで
3. 令和3年度分として令和3年7月分から令和4年6月分まで

学生の方

学生の方は、国民年金保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」の対象となります。

要件1. 前年所得が基準以下の大学院 / 大学 / 短大 / 高等学校 / 高等専門学校 / 専修学校 / 各種学校に在籍していること
2. 基準となる前年所得の目安は128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等
保険料免除期間10年間

配属者からのDVにより配属者と住居が異なる方

暴行を受けるなどの配偶者によるDV被害を受けた場合は、配偶者の所得にかかわらず、本人の所得によって国民年金保険料の免除を受けることができます。

要件DV被害により配偶者と住居を別にしていること
保険料免除期間毎年7月から翌年6月まで

産前・産後の方

産前産後の方は、国民年金保険料の免除を受けることができます。

通常妊娠の場合多胎妊娠の場合
保険料免除期間出産予定日か出産日の月の前月から4カ月間出産予定日か出産日の月の3カ月前から最大6カ月間

国民年金保険料の免除もしくは猶予を受ける際の注意点

国民年金保険料の免除を受けると、毎月16,610円(令和3年度)を支払わなくて済むようになります。決して少なくはない金額のため、負担を大きく軽減することができます。要件を満たしていなければなりませんが、対象者となる場合は利用を考えたい制度でしょう。

しかし、国民年金保険料の免除・猶予制度にはデメリットもあります。また気をつけなければならない点もあるため、利用する際は十分に制度を理解し、納得してからにしなければなりません。事前に考慮すべき注意点についてみていきます。

【注意点①】年金の受給額が減額される

国民年金保険料の免除を受けると、年金の受給額が減額されます。一定の年齢を迎えると老齢基礎年金の支給対象となりますが、加入期間が短いといった場合には受給の権利が付与されません。

また、国民年金保険料を支払わなければならない第一号被保険者が未納している場合も、受給権に影響したり受給額が減額されたりします。未納ではなく、きちんと手続きをして免除を受けている場合には、受給権については納付したものとして取り扱われますが、老齢基礎年金支給額は免除の割合や期間によって減額されます。

国民保険料の免除を受けた場合の免除率と減額率との関係は以下の通りです。

減額率2009年3月までの減額率
全額免除1/21/3
3/4免除8/31/2
1/2免除6/82/3
1/4免除7/85/6

ただし、免除を受けても追納した場合には減額されません。納付済みとして取り扱われ、満額を受け取ることができます。

【注意点➁】年収(所得)は世帯単位が基準になる

国民年金保険料の免除・納付猶予を受けるための年収(所得)が基準の範囲内であるかどうかは、世帯単位で審査されます。夫婦や親子など、家族で一世帯を形成している場合は、全員の年収(所得)を合算して、基準内である必要があります。

国民年金保険料を納付しなければならない本人の年収(所得)が減少しても、世帯として基準内の金額にならなければ免除・猶予を受けることはできません。成人して収入を得ている独身者であっても親の世帯から抜けていない場合や、一人暮らしをしていても住まいが別と言うだけで世帯としては独立していない場合なども、国民年金保険料の免除・猶予を受ける際の要件は、世帯を単位として考える必要があります。

【注意点③】付加年金や国民年金基金は利用できない

国民年金保険料の免除を受けると、付加年金や国民年金基金は利用できません。付加年金や国民年金基金は次のような制度です。

付加年金とは?

第一号被保険者が国民年金保険料に付加保険料を上乗せして支払うことで、受給する年金額を増やすことができる制度。付加保険料は月額200円

国民年金基金とは?

第一号被保険者が加入し、掛金に応じた終身年金を受け取ることができる制度

どちらも将来の年金の受取額を増やすことができる制度ですが、付加年金保険料や国民年金基金掛金の支払いは単独で行うことはできません。国民年金保険料を支払っていることを前提としているため、免除や猶予を受けると付加年金や国民年金基金は利用できなくなります。ただし、産前産後の免除については付加保険料を納付することができます。

国民年金保険料の免除もしくは猶予の申請方法

国民年金保険料の免除・猶予を受けるには、申請手続きが必要です。申請方法は、以下の通りです。

[提出書類]申請書
年金担当窓口で受け取るか、ダウンロードして入手します。
>ダウンロード先:国民年金関係届書・申請書一覧

[添付書類]年金手帳か基礎年金番号通知書

  • 場合によっては前年か前々年の所得を証明する書類
  • 失業の場合は雇用保険受給資格者証の写しか雇用保険被保険者離職票等の写し
  • 廃業等の場合は厚生労働省による総合支援資金貸付の貸付決定通知書の写し等

[申請先]市役所や区役所、町(村)役場の年金担当窓口

問い合わせは、近くの年金事務所に行います。

年収によっては国民年金保険料の免除を活用しよう!

国民年金保険料の支払いが困難な場合には、免除や納付猶予を受けることができます。収入が大きく減少したり、失業・廃業、学生、DV被害、産前・産後という状況であったりという場合に活用できます。新型コロナウイルス感染症の影響があった方も対象とされています。年収などの要件を確認し、活用を検討しましょう。

社会保険料全般については、以下の記事を参考にしてください。

よくある質問

国民年金保険料が免除される年収はいくらですか?

免除割合(全額・3/4・1/2・1/4)によって異なりますが、全額免除は「(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円」です。詳しくはこちらをご覧ください。

免除を受けるうえでの注意点を教えてください。

受け取る年金額が少なくなる、世帯単位の年収で判断される、付加年金や国民年金基金が利用できなくなる、という点です。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事