- 更新日 : 2024年12月3日
一人親方は厚生年金に加入できない?適用除外の理由や加入すべき制度を解説
一人親方は厚生年金には加入できません。老後に受給できる年金は、基本的に国民年金のみです。そのため、国民年金基金やidecoと呼ばれる個人型確定拠出年金への加入を検討しましょう。本記事では一人親方の年金制度を解説します。受け取れる年金額のシミュレーションや国民年金と厚生年金の違いにも触れますので、ぜひ参考にしてください。
目次
一人親方は厚生年金に加入できない?
労働者を使用せずに特定の事業を行う「一人親方」は、厚生年金には加入できず、国民年金にのみ加入します。厚生年金は会社員や公務員が加入する公的年金であり、個人事業主に含まれる一人親方は加入対象から外れるためです。
ここでは年金制度の二階建ての仕組みのほか、国民年金と厚生年金の違いについても解説します。
年金制度は国民年金と厚生年金の二階建ての仕組み
日本の公的年金は、簡単にいうと二階建ての仕組みであると聞いたことがある方は少なくないでしょう。1階部分は国民年金、2階部分が厚生年金にあたります。
そのほか企業が任意で設立する企業年金や、国民年金の第1号被保険者が任意で加入できる国民年金基金などもあります。
国民年金と厚生年金の違いは?
国民年金は、職業や経歴にかかわらず20歳以上の日本国民であれば加入しなくてはならない年金です。一方、厚生年金は企業に勤務する会社員や公務員が加入する年金制度であり、保険料は国民年金の保険料に加算して支払います。
そのほかの国民年金と厚生年金の制度上の主な違いは、下記表のとおりです。
国民年金 | 厚生年金 | |
---|---|---|
保険料 | 給与額によって金額が異なる | 一律の金額 |
保険料の負担 | 加入者がすべて負担 | 労使で折半 |
免除・猶予制度 | あり | なし |
なおそれぞれの年金額(月額)は、令和2年度末の平均額が国民年金が約5万6,000円、厚生年金が約14万6,000円です。
国民年金と厚生年金の違いに関する詳細は、以下の記事をご参照ください。
一人親方は厚生年金の適用除外!
前述のとおり、一人親方は個人事業主の括りに入るため、厚生年金の適用除外となります。厚生年金以外にも、健康保険や労災保険、雇用保険も基本的に適用されません。
一人親方は厚生年金に加入できないことを踏まえ、必要な制度への加入を検討し、老後に備えるとよいでしょう。
一人親方が老後に受給できる年金額は?
厚生労働省の「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和2年度末の国民年金の平均年金月額は約5万6,000円、厚生年金(第1号)受給者の平均年金月額は、14万6,000円です。
すでにお伝えのとおり、一人親方は厚生年金には加入できず国民年金のみを受給するため、毎月の年金額は6万円に満たない金額であることがわかります。一般的に、この金額だけで生活を成り立たせるのは困難だといえるでしょう。
これに対して、会社員や公務員は国民年金と厚生年金を受給できるため、毎月平均で20万2,000円程度を受給できます。
一人親方が厚生年金の代わりに加入できる制度は?
一人親方は公的年金には国民年金にしか加入できないため、老後に備えるために資産を用意しておく必要があります。そのため、一人親方が加入できる制度を以下にまとめました。
- 国民年金
- 国民年金基金
- 個人型確定拠出年金(iDeCo)
- 民間の個人年金
- 小規模企業共済
順番に、制度の概要を確認していきましょう。
国民年金
国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満の全員が加入の義務がある公的年金で、一人親方の老後の支えの柱は基本的にこの国民年金といえるでしょう。基礎年金とも呼ばれ、前述のとおり2階建ての1階部分にあたります。会社員や公務員などが加入する厚生年金は、この基礎年金に上乗せして支給されるしくみです。
国民年金の被保険者は職業などによって次の3種類に分けられており、一人親方は第1号被保険者に該当します。
第1号被保険者 | 自営業や学生など |
第2号被保険者 | 会社員や公務員など |
第3号被保険者 | 第2号被保険者に扶養されている配偶者 |
受け取れる年金額は加入期間が長いほど増え、40年間すべての期間を納めた場合に満額支給となり、その場合の令和4年度の支給額は年額777,800円です。
なお、老後に受け取る年金というイメージがありますが、障害や死亡でも支給されます。
国民年金基金
国民年金基金は、一人親方をはじめとする国民年金の第1号被保険者が加入できる私的年金の一種です。私的年金とは、公的年金の上乗せの給付を保障する制度のことです。国民年金基金は、第1号被検者がより豊かな老後を送れることを目的に設けられました。
掛金の上限は月額6万8,000円で、給付の型、及び加入口数において受け取れる年金額は、掛金月額6万8,000円以内で選択が可能です。受け取れる年金額は、掛金の金額に応じて決まります。
掛金の支払いだけでなく、受け取る年金も社会保険料控除の対象であり、節税効果が見込める点もポイントです。国民年金だけでは心もとないと感じる場合は、まずは利用を検討したい制度といえるでしょう。
国民年金基金制度についての詳細は、こちらの記事をご参照ください。
個人型確定拠出年金(iDeCo)
iDeCoと呼ばれる個人型確定拠出年金も、私的年金の1つです。日本在住の20歳から60歳までの方が対象の、月額5,000円から毎月一定額を積み立て、自分で運用商品や配分を選択し、運用したお金を60歳以降に受け取るしくみです。
受け取り方法も一括受け取りのほか、分割受け取りも選択でき、積み立ても受け取りも自由度が高いことは特徴といえるでしょう。また、税制優遇されるため、節税効果もあります。
ただしiDeCoで積み立てたお金は、60歳になるまで引き出せない点に注意しましょう。
確定拠出年金制度に関する詳細は、こちらの記事をご参照ください。
民間の個人年金
厚生年金の代わりに民間の個人年金に加入して、老後の備えを準備するという選択肢もあるでしょう。各会社によって内容はさまざまですが、そのほとんどが預貯金に比べるとリターンが大きくなる傾向にあります。
税制上のメリットに加え、制度の柔軟性に優れている点も魅力です。たとえば積立期間を自由に選択できたり、途中解約した場合でも解約返戻金を受け取ったりできます。
民間の個人年金には、主に「確定年金」「有期年金」「終身年金」の3種類があります。それぞれ特徴やメリットが異なるため、自分のライフプランや家族構成に応じて選択しましょう。
小規模企業共済
小規模起業共済は一言でいうと、個人事業主などの退職金を積み立てる制度です。中小企業基盤整備機構が運営しており、手続きは商工会議所や事業協同組合など委託期間の窓口で行えます。月々の掛金の上限は7万円で、500円単位で選択できます。
また、掛金は課税対象所得から、共済金(受け取るお金)は受け取り方法に応じて退職所得扱いもしくは公的年金等の雑所得扱いとなるため、節税効果も期待できるでしょう。
小規模企業共済についての詳細はこちらの記事をご覧ください。
参考:日本年金機構 知っておきたい年金のはなし|厚生労働省
令和4年度の年金額改定について|厚生労働省
国民年金基金制度とは?|国民年金基金
小規模企業共済制度とは|東京商工会議所
一人親方は厚生年金に入れない!その他の制度で老後に備えよう
一人親方が加入できるのは国民年金のみであり、会社員や公務員が加入する厚生年金には加入できません。老後の生活を支えるのは基本的に国民年金となりますが「それだけでは心もとないのでは……」と不安を覚える方もいるでしょう。
より豊かな老後を送るために、厚生年金に加入できない一人親方は、国民年金基金やiDeCo、小規模企業共済といった私的年金への加入を検討することをおすすめします。民間の個人年金を契約するという選択肢もあるでしょう。
自分から積極的に情報収集を行い、これらの制度を活用することで、老後への不安を少しでも解消しましょう。
よくある質問
一人親方は厚生年金に加入できない?
一人親方は、厚生年金の加入対象ではありません。詳しくはこちらをご覧ください。
一人親方が厚生年金の代わりに加入できる制度は?
国民年金基金やideco、小規模企業共済のほか、民間の個人年金などに加入できます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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