• 作成日 : 2021年12月21日

個人事業主と会社員の社会保険の違い

個人事業主と会社員の社会保険の違い

現在、会社勤めをしているけれど、開業したいと考えている方は、不安と楽しみでいっぱいだと思います。起業後はこれまで会社と折半していた社会保険料などをご自身で全額支払わなければならなくなりますし、そもそも会社で加入していた健康保険も国民健康保険に、厚生年金も国民年金に原則として変更となります。

会社勤めしているときと個人事業主になった場合とでは、どのように社会保険の取り扱い方などに違いが出てくるのか解説してきます。

加入する健康保険はこう変わる

加入する保険は、基本的に会社勤めの時の健康保険から、個人事業主の場合には国民健康保険に変更になります。

健康保険

会社勤めをしている方は、基本的に全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入し、会社と折半で毎月の保険料を納付しています。企業によっては、企業グループで独自に設立した組合管掌健康保険に加入され、同じく会社と折半で毎月の健康保険料を納付することになっています。

国民健康保険

個人事業主の方は、市区町村が運営する国民健康保険に加入しています。健康保険に加入していない場合は、手続きを行っていない場合でも自動的に国民健康保険に加入しているものとみなされます。しかし、市役所や町役場で手続きを行わないと国民健康保険の保険証を発行してもらえないので、退職後は速やかに加入手続きをすべきです。

それぞれの違い

健康保険は、毎月の給与等の額に応じて保険料が算出されます。一方で、国民健康保険の場合は前年の世帯の所得に応じて保険料が算出されます。つまり、起業した初年度は会社勤めをしていた前年の所得をベースに保険料が計算されるので、事業が軌道に乗るまでは負担が重く感じられるかもしれません。

さらに、健康保険の場合には配偶者やお子さんなどが、扶養の要件に該当する場合は扶養人数にかかわらず金額が決定されています。一方で、国民健康保険の場合は、原則として対象となる配偶者やお子さんそれぞれに関して保険料が計算され、世帯全体の保険料が世帯主から徴収されるようになります(国民健康保険料の計算詳細は、お住まいの自治体のHP等をご参照ください)。

年金も変更に


Photo by David Hilowitz

健康保険と同様に、年金も会社勤めのときの厚生年金から、国民年金に変更となります。それぞれに関して紹介していきます。

厚生年金

会社員の方は、勤務先が加入する厚生年金保険料を毎月納付しています。

国民年金

国民年金は「基礎年金」と呼ばれるもので、厚生年金に加入していない日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する年金です。このうち、個人事業主は「国民年金第1号被保険者」といって、市町村が発行する納付書又は口座振替にて保険料を納付します。こちらも国民健康保険と同様に、退職後速やかに市役所や町役場で手続きが必要です。会社勤めの人は「国民年金第2号被保険者」といいますが、その場合は「国民年金保険料」としての保険料の納付は発生しません。

それぞれの違い

厚生年金は2段階部分の年金といわれます。厚生年金に加入している方が、「厚生年金保険料」として国民年金保険料に相当する金額と厚生年金保険料に相当する金額の両方を支払っているためにこう呼ばれています。厚生年金の保険料は、会社と折半になります。さらに、会社員や公務員(第2号被保険者)の配偶者が専業主婦等(主夫)の扶養の要件に該当する場合、国民年金の第3号被保険者(いわゆる主婦年金)になるため保険料の納付は不要になります。

一方で、国民年金は、原則として、毎月16,490円(平成29年度)の保険料を全額自己負担で納めなければなりません。※平成30年度は16,340円
配偶者がいる場合、配偶者分も保険料を負担しなければならないため、会社員時代よりも年金保険料の負担が増えることがあります。

個人事業主が人を雇う場合の注意点

ここまで個人事業主の方自身に関する社会保険をみてきました。ここから先は個人事業主の方が従業員を雇用する場合の注意点をみていきます。

労災保険

アルバイトやパートタイマーの方であっても、従業員を雇用している場合は労災保険の対象となります。労災保険料は、全額事業主が負担すると定められています。例えば、小売業を営む事業者の場合の負担料率は、従業員に支払う給与等の1000分の3.5(平成29年度)となっています。※平成30年度は1000分の3

労災保険はただ負担が増えるだけのものではありません。労災保険に加入するメリットとして、少ない保険料で従業員の通勤中や勤務中の事故による従業員の傷病を補償できるという点があります。従業員が労災保険に未加入の状態で、労災が適用されるべき勤務中・通勤中の事故が発生した場合、事業主は遡って保険料を徴収される他、従業員に支払われる給付額の全額又は40%の負担が求められてしまう場合があるので、注意が必要です。

雇用保険

週所定労働時間が20時間以上、かつ31日以上引き続き雇用される見込みの従業員を1人でも雇った場合は雇用保険への加入が必要です。~。雇用保険料の料率は、一般事業を営む場合、労働者負担が給与等の1000分の3、事業者負担が1000分の6となっています(平成29年度)。※平成30年度も同じ

雇用保険に加入するメリットとしては以下を挙げることができます。

  • 高年齢雇用継続給付を活用できる
  • ※60歳以上65歳未満で賃金が60歳到達時に比べ75%未満に低下した場合、高年齢雇用継続給付を受けることにより、手取り給与の減少を軽減することができます。

  • 育児休業やその後職場復帰した場合に給付が受けられる
  • 介護休業をした場合に給付が受けられる
  • 労働関係の各種助成金を受けられる可能性がある

まとめ

会社勤めのときと個人事業主になったときの社会保険の違いについて理解していただけたでしょうか。

個人で起業する際は、会社勤めの時のように会社から保険料を折半してもらえるなどの支援がなく、扶養家族の分を含め、全額自己負担が原則であることを理解しておく必要があります。

本記事を参考にぜひ会社勤めの場合と個人事業主になった場合での社会保険に関する違いについて理解を深めてください。

よくある質問

会社員と個人事業主では加入する健康保険はどう違う?

加入する保険は、基本的に会社勤めの時は健康保険、個人事業主の場合には国民健康保険となります。詳しくはこちらをご覧ください。

会社員から個人事業主になった場合、年金はどう変わる?

会社勤めのときの厚生年金から、国民年金に変更となります。詳しくはこちらをご覧ください。


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