- 更新日 : 2022年3月18日
年末調整ソフトとは? 給与計算ソフトとの違いも徹底解説

給与計算ソフトには、年末調整の機能を備えているものがあります。しかし年末調整に特化したソフトには、業務を効率化する機能を備えているほか、システム化の負荷が少ないといったメリットがあるのです。今回は、年末調整ソフトの種類や給与計算ソフトとの違いを紹介するとともに、マネーフォワード「クラウド年末調整」の機能をお伝えします。
目次
年末調整ソフトとは
年末調整ソフトとは、年末調整にまつわる一連の作業を電子化するソフトのことを指します。
年末調整では、まず必要な申告書を従業員に配布し、記入の上、期日までに回収します。その過程で発生する修正や確認のやり取りに加え、控除証明書のチェックや控除額の計算など、業務にかかる負担は非常に大きなものです。
さらに「源泉徴収」「扶養控除」「保険料控除」といった馴染みのない用語が頻出するため、「この書類に何を記入するの?」と記入に手間取る従業員も少なくありません。
こうした、配布準備、紙への記入、質問の対応、修正対応、給与・控除計算といった一連の年末調整の業務を、スムーズに行い負荷を減らすのが年末調整ソフトです。
年末調整ソフトと給与計算ソフトの違い
年末調整ソフトの導入を検討する際、年末調整の機能を備えた給与計算ソフトで十分ではないかと思う方もいるかもしれません。
給与計算ソフトは、毎月の給与計算を自動化する処理に特化し、従業員ごとに、基本給に加え諸手当や各種保険料、税額を算出するほか、労働時間や雇用形態にあわせ適切な割増賃金率の計算を行います。給与処理だけでなく、勤怠データとの連携、賞与処理、明細書の発行、社会保険・労働保険手続き、マイナンバー管理といった機能に加え、年末調整の機能を備えているものも数多くあります。
【給与計算ソフトの年末調整機能でできることの例】
- 各種書類の電子入力
- ソフト上で担当者が各従業員の入力内容を確認、修正依頼
- 年末調整の結果を計算、確認
- 年末調整の源泉徴収票等を発行
- 電子申告
こうしてみると年末調整ソフトで行うおおよそのことは、年末調整機能を備えた給与計算ソフトでも対応できることに気づくでしょう。しかし、年末調整ソフトには、年末調整に特化しているが故に感じられるメリットがあります。
年末調整の進捗把握やスケジュール管理が可能
年末調整業務は、書類を提出するべき期日が決まっています。年末調整ソフトでは、全体のスケジュールを引いた上で、各ステップごとに管理が可能です。個別の従業員の書類提出状況も把握できるため、業務を滞りなく進めることができます。
システム化の労力が少ない
年末調整機能を備えた給与計算ソフトを導入する場合、毎月の給与計算に連動した勤怠管理方法、給与明細書の発行方法、給与計算にあわせた業務フローなど、システム化に適応させる際の業務範囲が広くなります。変更箇所が多くなるほど、導入にかかる現場の負担は増えるでしょう。年末調整に特化したソフトであれば、年末調整業務のみをシステム化できるため、業務効率化に伴う負荷を最小限に抑えることができます。
ランニングコストが抑えられる
給与計算や勤怠管理、年末調整など、バックオフィス業務に関連するソフトは対応範囲が広がるほど利用料も高額になる傾向があります。年末調整業務のみをシステム化する方向で検討すれば、予算に見合ったソフトが見つけやすくなるでしょう。
機能やコストの比較に加え、給与計算ソフトと年末調整ソフトのどちらがより効率的で、企業の労務担当者の業務に適しているのかを考えることが重要です。
年末調整の電子化の流れ
マイナポータルを利用した年末調整や確定申告の電子化の流れは、行政も力を入れている分野です。
国税庁は、令和2年に年末調整の手続きを電子化する「年調ソフト」の無償提供を発表し、話題になりました。
国が無償提供する「年調ソフト」とは
年調ソフトとは、保険会社からの控除証明書の電子データに基づき、従業員の入力する項目を減らし、控除額と年税額の計算をよりスムーズに、確実に行うための国税庁が無償で提供するソフトです。
年調ソフトでは、契約先の保険会社がマイナポータルと連携している場合、控除証明書の電子データを一括取得することが可能です。取得したデータの控除対象保険料額などは年調ソフトに自動入力され、集計する必要はありません。入力項目を最小限に抑えたうえで簡単に年末調整に必要な申告書を作成することができます。従業員は、紙の書類のように控除額を計算する必要はなく、入力箇所も最小限ですみ、「なにをどう書いたらいいかわからない」といった状態を減らすことが可能です。
紙の年末調整 | 年調ソフト |
---|---|
保険会社等から控除証明書を郵送で受け取る。また企業から各種申告書の用紙を配布。 | マイポータルより控除証明書の電子データをダウンロード。用紙配布は不要。 |
控除証明書をもとに、従業員が各種申告書を記入 | 基礎項目のみ入力し、控除証明書のデータは自動入力。受けられる控除の種類が表示される。 |
控除額の計算 | 控除額の自動計算 |
各種申告書を勤務先に提出 | ボタン一つで勤務先にデータを提出 |
担当者が申告書の内容、控除額を確認し、年税額を計算する | 控除額等をシステムで自動チェック。給与システム等との連携も可能。 |
国が提供する「年調ソフト」と民間の年末調整ソフトの違い
年調ソフトは、年末調整の手続きを電子化できるという点では、民間の年末調整ソフトと同じ役割を果たします。しかし、年調ソフトの機能は、現時点では年末調整の電子手続きという点のみに特化されており、各従業員のやり取りを省力化させるという点では、民間の年末調整ソフトには及ばない点があります。
たとえば、家族構成など従業員の情報は、年調ソフトの場合個別に照合する必要がありますが、年末調整ソフトには他システムとの連携などで一元管理を行うことができ、わざわざ年末調整にあわせてチェックする必要がありません。
また、年末調整のスケジュールをもとに、各従業員の進捗を把握し、提出が遅れている従業員には個別にアラートを出す機能などもあります。さらに、年末調整ソフトでは、データをもとに、源泉徴収票や給与支払報告書といった帳票作成も可能です。
電子化といっても、「どの作業まで電子化をできるか」「どの作業が省略されるか」は使用するソフトによって異なるため、業務フローをイメージしつつ検討するのがいいでしょう。
年末調整ソフトを導入するメリット
年末調整ソフトの導入により、ペーパーレス、業務効率化といったメリットが期待できます。また、従業員ごとに必要な申告書が明確になり、入力するべき情報がわかりやすくなることは、企業の担当者だけではなく、従業員にもメリットがあります。
従業員のメリット
従業員が感じる最大のメリットは、「入力する手間が減る」「入力がわかりやすくなる」ことが挙げられます。
各種申告書の入力がしやすくなる
年末調整ソフトの従業員が入力する画面は、専門用語だけではなく、平易な言葉が多く用いられています。設問に回答することで、どの申告書に記入する必要があるかわかるなど、年末調整の手続きの煩雑さを軽減させます。
どこでも入力できる
年末調整ソフトは、パソコンだけではなくスマートフォンで使用することも可能です。移動時間といった隙間時間に入力できるため、期日までの提出もれを防ぎます。
提出がボタンひとつでできる
紙のように担当部署に赴く必要がありません。遠隔で企業担当者とやり取りが可能であり、在宅勤務の従業員も速やかに提出できます。
企業担当者のメリット
企業担当者にとっては、業務フローをシンプルにし、業務にかかる負荷を減らしたうえで、年末調整業務のスピードと正確性を向上させることができます。
業務を効率化できる
年末調整ソフトを使用することで、各種申告書の配布が不要になります。従業員の情報を一元管理したり、控除額を自動計算したりと、一つ一つの作業が短縮されるため、年末調整業務にかかる時間を削減できます。
情報管理がスムーズになる
年末調整ソフトでは、各従業員から提出された書類を確認する際、差し戻しや修正といった対応をスムーズに行えます。確認もれや回収ミスを防ぎます。
ペーパーレスにつながる
帳票などの作成や管理もデータで行えるため、書類の受け渡しの手間や保管場所の心配がなくなります。
年末調整ソフトのタイプ
年末調整ソフトには、「インストール型(オンプレミス型)」と「クラウド型」の二つにわけられます。それぞれに、ランニングコストやセキュリティ面での違いがあります。
インストール型(オンプレミス型)とは
インストール型(オンプレミス型)のソフトとは、ソフトをパソコンにインストールして使用する形態のものを指します。特定の端末や、社内のサーバーを経由して使用するためセキュリティにすぐれている点が特徴です。
後述するクラウド型が登場するまでは、自社サーバーやパソコンにソフトをインストールして利用するやり方が一般的な方法でした。パソコンではなく、自社の施設内でサーバーを保有しソフトをインストールした上で管理・運用する場合は、オンプレミス型とも呼ばれます。
クラウド型とは
クラウド型とは、オンライン上のサーバーにあるシステムを、インターネットを介して利用する形態です。インストール型のように、利用端末が限定されず、かつサーバーの保守・運用のコストがかかりません。リモートワークのように、社外からアクセスする場合も複雑な設定がなく、ID・パスワードを打ち込むだけで利用できます。
インストール型とクラウド型の比較
インストール型の場合、初期費用は高額になるものの、ランニングコストを抑えられるといった特徴があります。また、社内や使用する端末が限定されるため、情報漏えいのリスクが低くなります。ただし、在宅勤務などのリモート対応には適さない可能性が高いです。
一方、クラウド型では初期費用をおさえつつ、アカウント数にあわせて月額料金が変動するといった料金プランを設定している企業が多くみられます。たとえば、クラウド型の「マネーフォワード クラウド年末調整」は、従業員30名以下の企業であれば、基本料金が月2,980円から利用できます。そのため、少人数で使用する企業やスタートアップ、個人事業主でも導入のハードルが低くなっているのです。
バージョンアップやセキュリティにソフトを提供する企業が責任を持つ一方で、利用できる機能がオプションになっていたりと、多様なプランがあります。リモートワークに適している一方で、使用する側の適切なセキュリティ対策が求められます。
インストール型(オンプレミス型) | クラウド型 | |
---|---|---|
初期費用 | 高 | 低 |
ランニングコスト | 月額費用がかからないケースもある | 利用人数などにあわせて月額費用が発生 |
保守・メンテナンス | 自社対応 バージョンアップに別途費用がかかる | バージョンアップが自動対応 |
セキュリティ | 高 ただし企業がセキュリティ対策に大きな責任を負う | 一定のセキュリティをサービス提供会社が負う 外部からアクセスするため従業員に高いセキュリティ意識が求められる |
リモートワークでの使用 | 制限あり | 可能 |
マネーフォワード クラウド年末調整なら給与計算ソフトとの連携も簡単
「マネーフォワード クラウド年末調整」は、幅広い規模の事業主に適した年末調整ソフトです。WEB上で申告書を配布・記入・回収するといった一連の年末調整業務を電子化するほか、提出状況を一元管理し、大幅な業務効率化が期待できます。
また、各種帳票を電子作成し、オンラインで完結。さらに、給与計算ソフトとの連携も簡単に行えるため、給与総額の集計時間を短縮し間違いを防ぐことができます。
製品の詳しい機能や使い方については、企業担当者さま向けのオンライン個別説明会を行っておりますので、まずは気軽にお問い合わせください。
ソフトを利用して、効率的に年末調整を行いましょう
年末調整ソフトは、煩雑な業務を効率化するのに役立ち、企業にとっても働く従業員にとってもメリットがあります。ただ単に電子化するだけでなく、計算する手間を省いたり、入力項目が工夫されたりしていることで、従業員の入力のストレスを大幅に削減します。
ペーパーレス・業務効率化にもつながり、ミスのない年末調整を行うことができるでしょう。
よくある質問
年末調整ソフトとはなんですか?
年末調整業務を効率化させるソフトです。従業員とのやり取りを電子化し、書類交付の手間を削減するほか、わかりやすい入力画面や控除額の自動計算で申告書作成のストレスを軽減します。詳しくはこちらをご覧ください。
年末調整ソフトを導入するメリットについて解説してください。
従業員にとっては、基本情報を入力するだけで受けられる控除がわかるといった申告書作成の負担が軽減されます。また企業はペーパーレス化や年末調整業務の正確性の向上、業務時間の削減につながります。詳しくはこちらをご覧ください。
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