• 更新日 : 2024年6月21日

メンタリングとは?コーチングとの違い・目的・導入方法を解説!

メンタリングとは、先輩社員と、新入社員・若手社員がそれぞれメンター・メンティとして双方向の対話を行い、成長を支援する人材育成の手法です。

変化に対応できる人材の育成や離職防止などを目的に、制度として導入する企業も増えています。

本記事では、メンタリングの意味や目的、進め方、注意点などを紹介します。

メンタリングとは

メンタリングとは、対話を重ねて成長を支援する人材育成の手法です。豊富な知識と職業経験を持つ先輩社員がメンターとなり、後輩社員であるメンティと1対1の対話を行い、キャリアに関する課題や悩みを解決しながら成長を促します。

先輩社員であるメンターは、基本的にメンティと年齢や立場の近い社員が選ばれます。

メンタリングとコーチングとの違い

メンタリングは、コーチングとは異なります。コーチングとは、 コミュニケーションを通じて対象者の自発的な気づきや行動を促す人材育成の手法です。対話を重ねながら気づきを促すという点で両者は似ていますが、目的や対話の内容が異なります。コーチングは、主に実務に関する目的達成のために技術的な支援を行うのに対し、メンタリングはキャリアや人間関係の悩みなどテーマが多岐にわたり、アドバイスや経験のシェアも行います。

メンタリングではメンターが人生の先輩・ロールモデルとなり、メンティの課題に対してアドバイスや精神的なサポートを行うという点もコーチングと異なる特徴です。

OJTとの違い

OJTとは「On-the-Job Training」の略で、実務を行いながら知識やノウハウを習得させる人材育成の手法です。新入社員や新しく配属された社員に対し、直属の上司や先輩が指導役となってマンツーマンによる業務指導を行います。実務の手順を短期間で習得し、即戦力となる人材へ育てることを目的としています。

一方、メンタリングは年齢の近い先輩社員と1対1の対話を繰り返し、社会人として自発的な成長を促すもので、目的や指導方法が異なります。

メンタリングマネジメントの意味

組織にメンタリングの手法を制度として取り入れることを「メンタリングマネジメント」といいます。メンタリングマネジメントは主に新入社員への教育の一環として導入されますが、近年では管理職やリーダーの育成でも導入されるケースが増えています。

メンタリングマネジメントでは管理体制を構築し、メンターとメンティの準備やメンタリングを計画的に行う運用プロセスの整理が必要です。

メンタリングが注目されている背景・歴史

メンタリングの本格的な導入が始まったのは2010年代で、女性の管理職登用など女性の活躍を推進する目的で活用されるようになりました。厚生労働省もメンター制度導入マニュアルを公表して普及に努め、多くの企業でメンター制度が導入されるようになったという経緯があります。

また、変化が激しく先が見えない現代のビジネスシーンでは、社員にも変化に対応できる自律的・主体的な対応が求められます。そのような人材を育成するために注目されているのが、メンタリングです。

近年は多くの企業が深刻な人手不足に悩み、新入社員の早期離職も問題になっています。そのため、若手社員の離職を防止し、定着を目的としてメンタリングを実施する企業も増えている状況です。

メンターになる上でのポイント

メンターは、先輩社員として後輩社員であるメンティのロールモデルとなり、アドバイスしたり相談にのったりする役割があります。

対話を通じてメンティの自発的な行動や成長を促し、精神面でのサポートも行います。

ここでは、メンターになる上で特別な資格やスキルは必要なのか、向いているのはどのような人材かをみていきましょう。

メンターになるうえで資格は必要?

メンターには特別な資格は必要ありません。ただし、メンティと信頼関係を築くため、話に耳を傾け、しっかりと受け止める傾聴力が求められます。また、精神的なケアや成長のサポートを行う指導力も必要です。

また、資格の取得は必須ではないものの、民間資格の取得やセミナーを受講するなど、メンターとして求められる一定のスキルを身につけることが望ましいといえるでしょう。

メンターに向いている人材の特徴

メンターは後輩社員と対話を繰り返し、メンティの成長を支援する役割があります。信頼関係の構築が不可欠であり、コミュニケーション能力が必要です。

また、親身になって相談にのれる面倒見の良さや、変化に気づく観察力、視線や仕草などからも気持ちを読み取る力などのスキルも求められます。メンティの置かれた状況や悩みを把握し、共感を示すスキルも必要になるでしょう。

人材育成への意欲や責任感も必要とされる要素です。メンティからは仕事以外にもさまざまな悩みの相談を受けることもあり、知り得た内容を口外しない守秘義務への意識も求められます。

メンタリングの目的

メンタリングの主な目的は、対話を通じてメンティの自発的な行動や成長を促すことにあります。また、若手社員の離職を防止することも目的のひとつです。

ここでは、メンタリングの目的を解説します。

自律的・主体的な人材の育成

メンタリングの目的は、自律的・主体的に行動できる人材を育成することです。

変化が激しいビジネスの世界で生き残るためには、変化に対し臨機応変に対応しながら、目標達成に向けて仕事を進めていかなければなりません。

そこで働く社員も、上司からの指示を待たずに主体的に考え、行動できる人材が求められています。

メンタリングにより主体性を身につけた社員は、自ら積極的に業務に取り組み、生産性向上に貢献できるでしょう。

離職の防止

メンタリングの導入には、離職防止の目的もあります。新入社員にとって、社内になんでも相談できる先輩社員がいることは精神的な支えになり、心強く感じるでしょう。仕事や人間関係のストレスを緩和し、業務に集中できます。

定期的にコミュニケーションを行うことでメンティの変化にも気づきやすく、離職のサインを見つけて早期対応も可能です。メンタリングの制度が定着すれば働きやすい職場環境になり、離職率の低下に繋がるでしょう。

社員のモチベーション向上(職務遂行意欲と職務満足度を向上させる)

メンティはメンターとのコミュニケーションを深め、仕事に対する適切なアドバイスを受けることで、職務遂行の意欲や職務満足度を高めます。

そのため、メンティは早い段階から業務に慣れることができ、仕事へのモチベーションも向上するでしょう。モチベーションアップにより成長意欲も高まり、組織に貢献できる貴重な戦力となることができます。

チーム連携の強化・人間関係の構築

メンターと信頼関係を築き、相互理解を深めたメンティは、職場にも早く馴染めるようになります。

メンターは部署の異なる社員同士を組み合わせるため、メンターと同じ部署の社員など、メンターを通して部署を超えたつながりができます。これにより、社内全体のコミュニケーション活性化が期待できるでしょう。

コミュニケーションの活性化はチーム連携を強化し、業務を円滑にする効果もあります。

メンタリングの進め方・導入方法

実際にメンタリングを進めるには、課題の明確化やガイドラインの作成など、手順を踏む必要があります。

ここでは、メンタリングの進め方について、6つのステップに分けて説明します。

① 目的・解消したい課題の明確化

まず、メンタリングを導入する目的を明確にします。メンタリングを行う上で何を実現したいか、解消したい課題は何かを考え、目標を設定してください。

目標は「若手社員の離職率を下げる」「自主的に動く人材を育てたい」「キャリア形成の促進」「女性社員の活躍推進」など、企業の課題に応じてさまざまです。

設定する目標に合わせ、対象となるメンティも変わります。

② ガイドライン・運用ルールの作成

実際のメンタリングでは、多くをメンターとメンティに委ねることになります。しかし、制度として運用するため、ガイドラインとルールの作成が必要です。

一社員としてのメンターとメンティの活動が周囲にも理解してもらえるよう、運用ルールを決定し、社内に周知することが大切です。

運用ルールとして、次の点は最低限定めておきましょう。

  • 会話内容を誰にも口外しない
  • 不都合が生じたときの相談窓口を設ける
  • メンタリングも業務の一部と位置づけ、原則として就業時間内に行う

このほか、実施期間や面談の頻度・時間、面談方法、話し合うテーマなど、必要と思われる項目を定めてください。

③ メンター・メンティの選定・マッチング

メンター・メンティの選定は、メンタリングの目的によって異なります。

例えば、新入社員の主体性を促す目的の場合、メンティは新入社員です。女性の活躍推進が目的であれば、メンティは女性社員になるでしょう。一方、メンターは性別に関係なく、男性が担当する場合もあります。

それぞれの選定基準は、次のとおりです。

(メンター)

  • 高い能力と業務実績があり、経験が豊富
  • 人材育成の重要性を理解し、育成に熱意がある
  • 仕事の優先順位がつけられ、時間管理ができる
  • 信頼できる人物で、誠実である

(メンティ)

  • キャリア開発に意欲的で、実際に取り組んだ実績がある
  • メンターと信頼関係を築いてコミュニケーションできるスキルがある
  • 決めたことを実行できる行動力がある

選定は、自薦、もしくは上司・人事部門からの推薦により、候補者を集めて選考します。

④ 方法および目的をメンター・メンティに共有。事前研修の実施

メンターとメンティを選定したら、事前研修を行います。研修の実施は、メンタリングについて理解し、必要なスキルを身につけるために不可欠です。

研修の項目は、次のような内容があげられます。

  • メンタリングの目的
  • メンタリングの概要
  • 具体的な進め方
  • 話し合う内容
  • メンタリングの基本的スキル
  • 問題が起きた場合の対処法

研修の講師は、社内・社外を問わず、 メンタリングについて十分に理解し、豊富なメンタリングの経験を持つ人物が適しています。

⑤ スケジュールの設定

メンタリングの実施は、大きく初期段階・深化段階・解消段階の3段階に分けられます。実施期間は、半年から1年程度が一般的です。

そのため、最初の1ヶ月は初期段階、次の6ヶ月間は深化段階、残りの期間は解消段階など、期間を定めてスケジュールを組むとよいでしょう。

それぞれの段階についてスケジュールを設定し、効率的に進めてください。

初期段階は、目的を確認し、お互いを理解するステップです。次のような内容をスケジューリングします。

  • 自己紹介
  • メンティの目標設定
  • 会社が抱える課題や人生観、仕事観などをテーマにして進める

深化段階は、設定した目標を達成するための活動や支援を行うステップです。主に次のようなテーマを設定して進めます。

  • 自己啓発の進め方
  • 経営方針や経営戦略の捉え方
  • キャリア開発
  • 社内外の人脈構築
  • ワーク・ライフ・バランス

解消段階は、実践内容を振り返って今後の活動に活かすステップです。次のようなテーマで進めていきます。

  • 今後のキャリア形成をどのように考えるか
  • ライフイベントへの対応

初期段階では、担当部署がガイドラインを示してリードしましょう。メンターとメンティに対し、報告書の提出や意見交換会の参加を促すなどのサポートが必要です。

⑥ 効果測定・振り返り

メンタリングの終了後は、効果測定と振り返りを行います。メンタリングにより、仕事への取り組み方や意識にどのような変化や成長があったかを振り返ってください。

具体的には、メンター・メンティへのヒアリングやアンケート調査の実施、合同報告会の開催などを行います。効果測定の結果を分析して適宜改善策をとりながら、次のメンタリングに役立てましょう。

メンタリングを実施する上での注意点

メンタリングの実施にあたっては、いくつか注意したい点があります。メンタリングを成功させるために、次の内容を確認しておきましょう。

メンティが求めてきた場合にのみアドバイスを行う

メンターはメンティに指示・命令を行うのではなく、メンティからの相談を受けた場合のみアドバイスを行うという点を忘れないようにしてください。

メンタリングの目的は、対話を重ねてメンティの気づきを促し、自律的な行動を促すことです。メンティ自らが課題の解決に向けて意思決定し、行動できるようサポートします。

メンター・メンティの関係は、職場で自然に発生する先輩・後輩の人間関係を制度的に作り上げるものです。直属の上司のような、仕事の指示・命令をする関係ではありません。あくまで、メンティの自主性を尊重することが大切です。

話した内容は評価に考慮しない

会話の内容が人事評価と結びつかない仕組みにすることも大切です。メンターは基本的に異なる職場の先輩社員など人事評価とは関係ない人物を選びますが、対話の内容が直属の上司に漏れるなど、評価に影響する可能性はあります。

そのような事態が発生すると、メンターとメンティの信頼関係は崩れてしまいます。メンタリングの制度存続も危ぶまれるでしょう。メンタリングで話した内容が評価に影響しないためのルール設定と、その遵守が必要です。

話した内容は守秘義務を徹底する

メンタリングを成功させるためには、メンターとメンティの信頼関係の構築が不可欠です。そのためには、メンティが安心して自由に発言できるよう守秘義務の徹底が求められます。

守秘義務は制度の根幹につながる重要な事項であり、研修でしっかり伝えるとともに、守秘義務違反や情報漏洩が発生した場合にはメンター自身に懲罰が下されることを認識してもらう必要があります。

実際に、メンターが善意でメンティの現場指導者にメンティが悩んでいることを報告したところ、メンティと指導者の関係が悪くなり、メンティが職場に居づらくなったという事例もあります。

会話内容から社内への報告が必要になった場合でも、メンターが独断で口外することのないようにしてください。

本人から報告するよう促すか、メンターが報告する場合は必ずメンティの同意を得ることが必要です。

メンタリングで自律的・主体的な人材を育成しよう

メンタリングは、経験豊かな先輩社員であるメンターと後輩社員のメンティが双方向の対話を行い、キャリア形成の課題解決や悩みの解消をサポートする人材育成の手法です。

主に自律的・主体的な人材の育成や離職防止、社員のモチベーション向上などを目的に行います。

メンタリングを実施する際は目的や課題を明確にして、適切なマッチングを行い、スケジュールを組んで計画的に進めていきましょう。実施後は、効果測定や振り返りも大切です。


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