- 更新日 : 2024年12月27日
2025年問題とは?高齢化社会や人材不足の課題、企業ができる対策を解説
2025年に、団塊の世代全員が75歳以上となります。それにより、日本は国民の4人に1人が後期高齢者となり、人材不足が今以上に深刻化することが想定されます。企業は、自社にどのような影響が生じるのかを認識した上で、2025年問題に備えた準備を加速させる必要があるでしょう。
目次
2025年問題とは?
2025年問題とは、団塊の世代全員が75歳以上の後期高齢者となることで、日本が超高齢化社会に突入することです。
第一次ベビーブームの時代に生まれた団塊の世代は、人口数も多いです。そのため、社会保障費の増大に伴う現役世代の負担向上や労働力不足といった日本にとって深刻な事態を引き起こすリスクが格段に高まることが想定されます。
2025年の崖との違い
2025年問題と2025年の崖の違いは、社会生活に対して影響を与える対象にあります。
2025年問題は、国家を存続させていくために必要な社会的基盤に関して、危機的な状況を迎えることを意味します。その中のIT活用に関して、2025年の崖というものが経済産業省より指摘されています。
日本企業のDX化の推進が進まなかった場合、世界市場におけるデジタル競争に負けてしまいます。そうなることで、2025年からの5年間で毎年最大12兆円の経済損失が生じる可能性が指摘されているのです。
2025年問題の背景
2025年問題の背景にあるものは、超高齢化社会の到来と、生産年齢人口の減少による労働力の減少、医療・介護人材の減少です。
超高齢化社会
2025年問題を迎えることで、日本は、国民の4人に1人が75歳以上の後期高齢者となる超高齢化社会を迎えます。それにより、認知症患者数や年間死亡者数の増大などといった社会的に影響の大きな問題が生じてしまいます。
労働力の減少・医療や介護の課題
日本は、年々現役世代の人口が減少していく危機に見舞われています。総務省の調査によると、日本の生産年齢人口(15〜64歳)は1995年をピークに減少し続けています。このことが、労働力の減少、医療・介護人材の減少という事態を引き起こしています。
参考:国勢調査(年齢別人口推計の推移/第2-1-9図)|総務省
現役世代の人口が減少することで年金・医療・介護からなる社会保障制度を維持することが難しくなります。医療・介護人材が減少することで、国民が医療や介護に関する必要なサービスを受けられなくなるリスクが生じてしまうのです。
2025年問題に向けて国から出されている対策
2025年問題に対して、国は以下のような取り組みを行っています。
公費負担を変更
政府は、超高齢化社会の到来に向けた社会保障の在り方を検討する会議「全世代型社会保障検討会議」を設置し、定期的に議論を行っています。
超高齢化社会を支えていくためには高齢者も応分の負担をする必要があります。その一環として、2022年10月より一定額以上の収入のある後期高齢者の医療機関窓口での負担割合が1割から2割に引き上げられました。
医療・介護人材の増加
政府は、医療・介護人材の増加に向けたさまざまな対策を打ち出しています。医療に関しては、大学医学部との連携や地域・診療科による偏りの是正などによる医師不足の解消、看護師等養成所の整備・運営に対する補助、復職支援の強化などによる看護師人材の増加を推進しています。
介護に関しては、処遇や労働環境の改善などへの支援を行うことによる介護人材の増加を推進しています。
地域包括ケアシステム
地域包括ケアシステムとは、高齢者が住み慣れた地域で生活を続けることを目的としたシステムです。自治体単位で、住まいや医療、介護、介護予防、その他生活支援のためのサービスを一体的に提供するシステムの構築を推進しています。
2025年問題が企業に与える影響
2025年問題が、人材不足から生じる事業承継や業績悪化への不安という面で企業に対する影響を与えます。
事業承継・会社の後継者への影響
子どもなどの親族に事業承継を行うことが難しい企業は、従業員や外部から招へいした人材などへの事業承継を考えなくてはなりません。
しかし、超高齢化社会の進展により、企業が後継候補者となる人材を確保することが難しくなり、事業承継を円滑に進めることができなくなるでしょう。
人材不足
企業は、働き手を確保できないと事業活動を継続していくことができません。働き手の確保に関して、2025年に505万人の人手不足が生じるという研究結果があります。
企業が必要な働き手の確保ができなくなることで正常な事業活動を行うことが難しくなり、業績が悪化してしまいます。
2025年問題に備えて企業が準備できること
2025年問題を迎えるにあたって、企業は、人材不足の解消に向けた対策を徹底する必要があります。そして、早期に事業承継の体制を確立し、事業存続の礎を築いていくことが望ましいです。
ライフスタイルに合わせた勤務体制の構築
従業員が働きやすい労働環境を企業が提供することで、従業員の定着化が進み、企業が人材不足に陥るリスクを低減できます。働きやすい労働環境の整備に関しては、従業員のライフスタイルに合わせた勤務体制を構築することが効果的です。
例えば、子育てや介護を担う者やワーク・ライフ・バランスを重視したい者であっても心置きなく働くことができる、フレックスタイム制度や時短勤務制度、在宅勤務制度、週休三日制度などの勤務体制を導入するといった対応が考えられます。
高齢者・女性・障害者・外国人などの雇用検討
フルタイムでの就労にこだわらずに多様な人材を受け入れることで、従業員の雇用がしやすくなり、企業が人材不足に陥るリスクを低減できます。
例えば、高齢者や子育て中の女性、障害者、外国人などの雇用に目を向けるなどの対応が考えられるでしょう。そのような対応を行うことで、「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値の創造につなげている」ダイバーシティ経営を実践していくことも可能になります。
離職防止策を行う
既存の従業員の離職防止策を徹底することで、従業員の定着化が進み、企業が人材不足に陥るリスクを低減できます。
例えば、従業員の健康管理を戦略的に実践する健康経営、従業員のキャリア形成の推進、ハラスメントの防止や有給休暇の取得率向上といった労働環境の改善などの対応が考えられます。そのような対応を行うことが企業イメージの向上につながり、人材採用に対しても良い影響をもたらすでしょう。
生産性の向上
業務の生産性向上を徹底することで、今よりも短い労働時間で事業を遂行することが可能となり、企業が人材不足に陥るリスクを低減できます。
例えば、ITやAIの技術、ロボットなどの活用により業務の自動化や省力化を推進する、業務の見直しや無駄を省くことにより業務効率を高めるなどの対応が考えられるでしょう。そのような対応を行うことで、多様な人材の雇用や労働環境の改善などの対策も進めやすくなります。
事業承継に関する公的支援の活用
早期に事業承継の体制を確立することで、人材不足が原因で事業承継の目途が立たなくなり事業の存続が危ぶまれてしまうリスクを低減できます。
事業承継体制の確立に関しては、公的支援を活用することで事業承継の負担を軽減させることが効果的です。例えば、経営承継円滑化法の認定を受けることによる支援策の活用が考えられます。具体的には、以下の支援が受けられます。
①税制支援
株式や事業用資産の贈与・相続に関わる贈与税、相続税の納税が猶予もしくは免除されます。それにより、後継者の税負担が重たくなることで事業承継が難しくなるリスクを回避できます。
②金融支援
政府系金融機関による融資や信用保証の特例を受けることができます。それにより、事業承継のための事業の再構築などがしやすくなり、事業承継の負担が軽減されます。
③遺留分に関する民法の特例
事業後継者に対する生前贈与について、相続時の遺留分の対象から外れる特例を受けることができます。それにより、後継者が相続人とのトラブルに巻き込まれるリスクを回避できます。
④所在不明株主に関する会社法の特例
事業後継者が所在不明株主の保有する株式を買い取りやすくなる特例を受けることができます。それにより、事業承継後に後継者の経営権が不安定化するリスクを回避できます。
2025年問題は人材不足に直面する企業に対して警鐘を鳴らしている
2025年問題は、人材不足により企業の存続が危ぶまれることに対して警鐘を鳴らしているのだと考えることができます。
少子高齢化に伴う総人口の減少に歯止めが掛からない現代社会において、人材不足はどの企業も抱えている構造的な問題です。世の中の企業は、それに対する抜本的な解決策を明らかにした上で実践していかなければならない事態に直面しています。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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