• 更新日 : 2024年2月16日

ジェンダーフリーとは?ジェンダーレスとの違いや行き過ぎなどの課題を解説!

ここ数年、「ジェンダーフリー」という言葉をメディアで見聞きする機会が増えてきました。では、改めて「ジェンダーフリー」とは何かと聞かれると、即答できない方が多いのではないでしょうか。欧米では、すでに社会的に認知され、企業においても「ジェンダーフリー」に対する制度が浸透しています。

本稿では、こうした事情を踏まえて「ジェンダーフリー」の基本、企業における対応策、取り組み事例などについて詳しく解説します。

ジェンダーフリーとは?

ジェンダーフリーは近年、耳にすることが多い言葉ですが、何を指すのでしょうか?意味や、ジェンダーレスとの違いを説明します。

ジェンダーフリーの意味

ジェンダーフリーとは、性別に基づく固定的な役割分担をなくし、個人の多様性を尊重することを指します。人間には生物学的な性別の他に、社会的な性別があります。先天的や身体的な性別に対して、文化などの影響を受けて社会的に作り上げられた性別がジェンダーです。この社会的な性別によって取扱いを変えたり役割を押し付けたりすることをやめ、一人ひとりを尊重していこうとする意味がジェンダーフリーにはあります。

ジェンダーレスとの違い

ジェンダーレスは、性別に基づく職業名の使用を避け、性別による役務の強制を排除することを意味します。組織における具体的な取り組みとしては、看護婦から看護師、保母から保育士へと名称を変更することや、女性社員だけに強制的にお茶くみなどの雑用をさせないようにするなど、性差をなくすことなどが挙げられます。

ジェンダーギャップ指数とは?

ジェンダーフリーに取り組むためには、社会・組織における現状をあらかじめ認識しておく必要があります。今の状況を数値で表したものが、ジェンダーギャップ指数です。世界経済フォーラム(WEF)は毎年各国のジェンダーギャップ指数を計算し、公表しています。この指数は、「経済」「政治」「教育」「健康」の4つの分野のデータから算出し、1に近いほどジェンダーギャップが少ないことを表します。日本のジェンダーギャップ指数は低く、先進国中、最下位です。女性の国会議員や閣僚が少ないといった、政治分野での女性進出が進んでいない点が、とくに問題視されています。

ジェンダーフリーの課題は?

ジェンダーフリーの代表的な課題を3つ、説明します。

教育格差の問題がある

ジェンダーフリーは性別での差別を廃止する取り組みです。しかし、従業員一人ひとりが受けた教育や社会経験により、ジェンダーに基づいた固定観念や役割分担が生まれることがあります。ジェンダーの差はこうした教育の差と密接に関連しており、ジェンダーフリーへの取り組みが教育格差によって阻まれるという問題があります。

行き過ぎに注意が必要

行き過ぎたジェンダーフリーは男性と女性どちらに対しても、負担になる恐れがあります。生物学的に男性と女性に違いがあることは否定できません。例えば、女性が生理日に就業が困難だとして生理休暇を請求する権利を有し、会社はこれを認めなくてはならないことは労働基準法で明らかにされています。行き過ぎたジェンダーフリーはこうした男女差を否定する可能性があるため、注意が必要です。

反対意見も根強い

社員の中にはジェンダーフリーの推進に違和感を持つ人もいる可能性があり、適切な対応が必要です。「性別の違い=役割の違い」と家庭や地域社会で教え込まれてきた層では、性差で担う仕事や期待される働きに違いがあって当然という根強い考えを持つ人が少なくありません。こうした一定の社員の意見を無視して、押し切る形で無理やりジェンダーフリーを進めてもうまくは進まないでしょう。反対意見があることを十分に理解し、軋轢を生まないような推進の取り組みが求められます。

ジェンダーフリーに関する企業の取り組み事例

近年は企業の多くがジェンダーフリーに高い関心を持ち、実際にさまざまな取り組みも行われています。以下に2社の取り組み事例を紹介します。

ドン・キホーテ渋谷店にジェンダーフリートイレ設置

ドン・キホーテ株式会社(現在は株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)は2017年5月12日にリニューアルオープンしたMEGAドン・キホーテ渋谷本店に、ジェンダーフリートイレを設置しました。性自認のいかんにかかわらず誰でも利用できるトイレを設置することで、多様性を重視する社会の実現に寄与する、としています。

成田空港第1ターミナルビルにオールジェンダートイレ設置

成田空港株式会社は2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた空港整備において、成田空港第1ターミナルビルにオールジェンダートイレを設置しました。すべての人が性自認にかかわらず気軽に利用できることを目的としています。

ジェンダーフリーに取り組むポイントは?

企業がジェンダーフリーに取り組む際、どのように進めれば効果的でしょうか?ポイントを5つ、説明します。

積極的に意識改革する

企業がジェンダーフリーへの取り組みを効果的に推進するには、社員の意識を積極的に改革する必要があります。性別による差別は潜在的に植え付けられている部分が大きく、働きかけがなければジェンダーフリーは進みません。社員全員に対して積極的にアプローチし、意識改革を行っていくことが大切です。意識改革の方法には社内報での呼びかけや研修会の実施、ジェンダーフリーに反する行動の具体例の提示などが挙げられます。

女性のみの制服を廃止する

男性には制服が準備されていないのに女性は会社指定の服装に着替えて就業しなければならないルールは、ジェンダーフリーに反しています。すべての社員が同じ条件で服装を選べるよう、制服の廃止が求められます。

男性でも育児休業取得を可能にする

育児休業も男性と女性で、同じ条件で取得できるようにしなければなりません。男性社員の育児休業取得に関して女性とは違う、厳しい条件を設けることはジェンダーフリーの概念から許されません。男性・女性に関係なく、要件を満たしている場合は問題なく育児休業が取得できるよう、人事制度を整備しておくことが重要です。

男女による昇給や昇格の格差をなくす

男性しか昇格試験を受けられない、昇格までの勤務年数が男性と女性で異なる、同じ資格を取得しているのに女性は昇給や昇格の対象となっていない、といった格差も、ジェンダーフリーの立場ではなくす必要があります。

手当支給を男女平等にする

給与での手当支給条件を男女の不公平をなくすことも、ジェンダーフリーで行うべき取り組みの1つに挙げられます。扶養手当や家族手当、単身赴任手当などの支給対象を男性のみと限定することはジェンダーフリーに反します。夫婦で勤務している社員のどちらか1人のみに支給したい場合は、給与支給額が大きい方や税法上で子どもを扶養家族としている方とすることが望まれます。

積極的に社員の意識改革に取り組んでジェンダーフリーを推進しよう

ジェンダーフリーは生物学的な性の違いで、異なる取扱いをしないようにすることを指します。「男性だから」「女性だから」といった決めつけをやめ、個人を尊重するようにする考え方・取り組みがジェンダーフリーと呼ばれます。日本は世界の中でもジェンダーギャップ指数が低い方のため、社会全体でジェンダーフリーに取り組まなければなりません。

企業におけるジェンダーフリーへの取り組みには、意識改革や制服の廃止があります。また、育児休業取得や昇給・昇格、手当支給での男女の格差をなくし、平等にすることも大切です。社員の中には男女の差を当たり前のことと捉え、ジェンダーフリーを否定的に考える者もいるでしょう。意識改革に積極的に取り組むことで、ジェンダーフリーを推進しましょう。


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