- 更新日 : 2025年3月4日
公務員の退職手続きの流れや注意点は?退職後に必要な手続きも解説
公務員の退職は民間企業と比べて手続きが複雑で、提出書類も多岐にわたります。退職金や年金、健康保険など、退職後の生活に関わる重要な手続きも必要となるため、計画的に準備を進めることが大切です。
本記事では、退職手続きの具体的な流れから、退職のベストタイミング、注意点まで詳しく解説します。
目次
公務員の退職手続きの流れとスケジュール
公務員がトラブルなくスムーズに退職するための、一般的な手続きの流れとスケジュール感を紹介します。
上司に退職の意思を伝える
退職の意思表示は、退職予定日の3ヶ月前までに直属の上司へ伝えることが望ましいでしょう。ある程度期間に余裕をもって退職の意思を伝えることで、後任者の手配や引継ぎ計画の策定に十分な時間を確保できます。
服務規程がある場合、1ヶ月前程度前までに申し出ればよいとされていることがほとんどですが、立場やその時の状況によっては1ヶ月では時間的余裕がなく、引継ぎが十分にできないまま退職することになります。周囲に負担をかけたり、業務に支障を生じたりなどスムーズな退職が難しくなる可能性が否定できません。
そのためやむを得ない場合を除き、3ヶ月程度前には退職を希望する意向を直属の上司に申し出ましょう。
上司との面談では、退職理由や希望する退職時期について明確に説明する必要があります。
退職願を提出する
公務員においては、退職届の提出時期について明確な規定はありません。地方公務員の場合は自治体によって異なるため、事前に確認しておく必要があります。
遅すぎるのは問題がありますが、早すぎても職場の人間関係に影響があることもあるため、時期の見極めが重要です。上司と退職についても面談を行う際などに、いつ頃提出すればよいかを相談したうえで提出時期を決めることをおすすめします。
ただし、遅くとも退職の1ヶ月前までには提出しましょう。
引継ぎ
引継ぎ作業は退職が決定した直後から開始し、遅くとも退職日の3日前までには完了させる必要があります。行政文書の適切な管理・移管、継続案件の詳細な説明、業務マニュアルの更新など、公務の継続性を確保するための作業を丁寧に行いましょう。
特に、予算執行や契約関連の業務、住民サービスに直結する業務については、後任者が支障なく業務を遂行できるよう、詳細な引継ぎ資料を作成します。また、外部機関との連絡調整事項や年間スケジュールなども漏れなく引き継ぐことが求められます。
退職日の調整・必要書類の提出
退職が決定したら退職の際に必要な提出書類の指示があるため、それぞれの提出期限を確認し遅延のないように提出します。
一連の流れの中で正式な退職日が決定するため、決定した退職日に合わせて引継ぎスケジュールなどを再調整しましょう。
関係者への挨拶
退職日の2~3週間前から、関係者への挨拶回りを開始します。内部の関係部署だけでなく、日常的に連携している外部機関や関係団体にも適切な引き継ぎと挨拶が必要です。関係性や状況によっては、メールによる退職挨拶も検討します。
必要があれば後任者にも同行してもらい、後任者の紹介も含めた引継ぎ挨拶を行いましょう。
最終出勤
最終出勤日には、備品の返却や各種アカウントの解除などの手続きを行います。また、上司や同僚などにも退職の挨拶を忘れないようにしましょう。
公務員の退職におすすめのタイミング
公務員の退職では、経済的メリットと円滑な引き継ぎの両面から、適切な退職時期を選択することが重要です。以下、おすすめの退職時期について解説します。
年度末(3月末)での退職
年度末での退職は、組織運営の観点から最も理想的な退職時期といえます。4月の人事異動に合わせることで、後任者の配置がスムーズに行え、業務の引き継ぎも計画的に進められるでしょう。
退職する公務員にとっても、年度初めは区切りが良く、次の職場でのキャリアの空白期間を作らずに転職することが可能です。
ボーナス支給月(6月・12月)での退職
公務員のボーナス支給月は6月・12月です。経済的なメリットを重視するのであれば、ボーナスを受け取ってから退職するのが理想的ではあります。特に転職先が決まっていない状態で退職する場合、支給を受けてから退職することで、転職活動期間中の生活資金を確保できるでしょう。
ただし年度の途中での退職になるため、3月末での退職よりも周囲に与える影響は大きくなる可能性があります。そのあたりの配慮も必要になってくる点には注意しましょう。
勤続年数の節目での退職
退職金の計算において、勤続年数は1年未満の端数が切り捨てられます。例えば、10年11ヶ月での退職と11年での退職では、受け取れる退職金に大きな差が生じます。このため、勤続年数の節目に合わせた退職を検討することもひとつの方法です。
公務員が退職する場合の注意点
公務員が退職する際には、民間企業では一般的ではない規制や手続きが求められる場合があります。特に国家公務員の場合、退職後の活動に対する制限や届出制度が設けられており、これらを理解したうえで対応することが大切です。
再就職に関する規制
公務員、とりわけ課長補佐級以上の役職者は、再就職に関して厳格な規制を受けます。この規制は、公務員として培った職務上の影響力を不正に利用することを防ぐ目的で設定されており、以下の3つの行為規制があります。
- 求職活動規制:本省課長補佐級以上の現職公務員が、利害関係のある企業等に対して行う求職活動の禁止。自己の情報提供や再就職の約束などが規制対象
- あっせん規制:現職の公務員が、営利企業等に対して他の職員や元職員の再就職をあっせんすることの禁止。情報提供や再就職の依頼などが規制対象
- 働きかけ規制:営利企業等に再就職した元職員が、離職後2年間元の職場に対して契約や処分に関する働きかけを行うことの禁止
再就職情報の届出義務
管理職職員であった元職員は、退職後2年間にわたり再就職情報の届出が必要です。これは、公務の公正性と透明性を確保するための制度として設けられています。特に、営利企業等に再就職した場合は、より厳格な届出義務が課されます。
届出には、氏名、生年月日、連絡先といった基本情報に加え、退職時の職位、退職日、再就職先の名称、再就職先での地位、業務内容などの詳細な情報を含めなければなりません。これらの情報は、退職時の任命権者に提出することになり、実務的には退職時に在籍していた部署の人事担当課を通じて提出します。
公務員が退職後に行う手続き
公務員が退職後に行う手続きは、社会保険や年金の切り替えが中心になります。それぞれの手続きには期限や必要書類が定められているため、計画的に進めることが重要です。以下、具体的な内容を解説します。
社会保険の手続き
公務員として加入していた共済組合などの健康保険資格は、退職に伴い喪失します。そのため、新たに以下のいずれかの医療保険制度に加入する必要があります。
転職先の健康保険に加入する
再就職が決まっている場合、再就職先の制度に応じて健康保険に加入します。再就職先が民間企業の場合は健康保険組合または協会けんぽに、公務員の場合は各種共済組合に加入します。
ただし、勤務条件によっては加入できない場合もあるため、その際は他の手続きが必要です。
共済組合の任意継続組合員制度
退職前に1年以上共済組合に加入していた場合、退職後も最長2年間、同じ共済組合を継続することが可能です。この手続きを行うには、退職日の翌日から20日以内に申請を行い、掛金(保険料)を納付する必要があります。
国民健康保険への加入
共済組合の任意継続を選択しない場合は、国民健康保険に切り替える方法もあります。国民健康保険に加入するには、退職日の翌日から14日以内に申請を行わなければなりません。
申請時には、「資格喪失証明書」や本人確認書類などが必要です。国民健康保険料は前年度の所得に基づいて計算されるため、任意継続と比較して費用面で有利な場合もあります。
配偶者の扶養に入る
配偶者が勤務先で健康保険に加入している場合、その扶養家族として加入することも可能です。この場合、配偶者の勤務先で手続きを行います。扶養条件は収入要件などがあるため、事前に確認することが重要です。
年金の手続き
公務員として加入していた共済年金や厚生年金から国民年金への切り替えも重要な手続きです。以下のポイントを押さえておきましょう。
国民年金への切り替え
退職後すぐに転職せず、無職になる場合や自営業を始める場合などは、60歳未満の人は第1号被保険者として国民年金に加入しなければなりません。
市区町村の年金担当課または年金事務所で切り替え手続きを行いましょう。
厚生年金へ加入
民間企業に再就職する場合は、その企業の厚生年金に加入します。加入手続きは事業者側が行うため、特段の切り替え手続きは必要ありません。
公務員は退職後に失業給付をもらえる?
公務員は雇用保険法の適用対象外のため、失業給付は受給できません。その代わりとして「失業者の退職手当」という制度が設けられており、一定の条件を満たせば給付を受けることが可能です。
失業者の退職手当を受け取るためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 勤続期間が原則12ヶ月以上であること
- 退職手当の額が雇用保険法の失業等給付相当額に満たないこと
- 退職日の翌日から1年以内に失業していること
受給手続きは失業保険と同様、ハローワークで行います。
退職までの手順を確実に押さえよう
公務員の退職は、一般企業とは異なる独自の規制や手続きがあるため、事前によく確認し手順を把握しておきましょう。
また退職手続きだけではなく、再就職についても注意すべき点があります。不安な点があれば人事部門に相談し、周囲への影響も考慮しつつ必要な手続きを確実に進めていくことをおすすめします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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