• 更新日 : 2024年12月27日

役員死亡退職金は規定がない場合でも支給される?従業員と兼務の場合や準備方法を解説

役員死亡退職金は、規定がない場合でも支給されます。しかし、規定が設けられていなければ、支給条件や金額などによりトラブルが発生する可能性が高まります。

また、役員が従業員を兼務している場合には、役員退職金と従業員退職金の区分が必要です。

本記事では、死亡退職金の詳細や規定作成、さらに退職金の準備方法について解説します。

役員死亡退職金とは

役員死亡退職金は、役員が在任中に死亡した場合に、遺族に支給される退職金です。一般的な退職金は役職を退いた後に支払われますが、死亡退職金は役員が亡くなった際に契約や規定に基づいて支給されます。

ただし、会社により死亡退職金に関する規定は異なり、支給額や条件が定められているため、注意が必要です。

下記では、役員死亡退職金について、さらに具体的に解説します。

生存退職金との違い

死亡退職金と生存退職金の違いは、支給されるタイミングと条件です。

役員死亡退職金は、役員が亡くなった際に遺族に支払われ、生活資金や相続税の納税資金などとして使用されます。支給額や条件は社内の規定により異なりますが、規定がない場合は税務署から否認される可能性もあります。

一方、生存退職金は、役員が退職する際に支給される退職金です。退職後でも生活に困らないことを目的に支給されます。退職金の金額については、業績や貢献度を考慮し、規定に基づいて支給額を定められることが一般的です。

上記のように、死亡退職金と生存退職金は支給タイミングや基準が異なるため、注意が必要です。

従業員の退職金との違い

役員死亡退職金と従業員の退職金の違いは、支給基準や目的などです。

前述したとおり、死亡退職金は通常の退職金とは異なり、役員が亡くなってから遺族に支給されることが一般的です。遺族の生活保障を目的に、遺族に支給されます。

一方、従業員の退職金は、社員の定着率を向上させたり、退職後の生活を保障したりすることが目的です。また、従業員の退職金は労働基準法や就業規則に基づいて、勤務年数や職務内容に応じて支給されます。

さらに、死亡退職金と従業員の退職金では、かかる税金の種類も異なるため注意が必要です。

通常の退職金は、従業員の所得のため、所得税がかかります。しかし、死亡退職金は遺族に支給されることにより、相続税がかかることを理解しておきましょう。

弔慰金との違い

死亡退職金と弔慰金は似たような制度ですが、性質や支給目的が異なります。

弔慰金は、亡くなった役員や遺族に対して弔う気持ちを示すために支給される金銭です。会社の慣習や役員契約に基づいて支給されることが一般的です。また、弔慰金は、企業においての功労者には、より大きい金額が支給される場合もあります。

さらに、弔慰金は、死亡退職金とは異なり相続税がかかりません。ただし、労働者が死亡した際に支給される金額が一定基準を超える場合、相続税がかかる可能性があるため注意が必要です。

国税庁の通達(退職手当金関係3−20)によると、以下の基準を超えると「退職手当金等」として課税対象となります。

  • 業務上の死亡の場合:普通給与の3年分を超える部分
  • 業務上以外の死亡の場合:普通給与の6ヶ月分を超える部分

上記の基準を上回る金額には、相続税が課される可能性があるため、注意が必要です。

金額の目安

役員死亡退職金の金額は、企業の規定に基づいて決定されます。

一般的には、勤続年数や役職、死亡時の状況を考慮し、通常の退職金算定方法を参考にされます。

通常の退職金は、退職時の基本給や勤務期間の平均賃金をもとに算出されることが一般的でです。しかし、企業によっては死亡の原因や役員としての貢献度を考慮して、金額を考慮する場合もあります。

死亡退職金の支給額を決定する際は、企業の財務状況や透明性を担保するために適切な規定作成が重要です。

役員死亡退職金を規定がない場合に支給するには

役員死亡退職金に関する規定がない場合、遺族に対して退職金を支給するためには、株主総会での決議が必要です。

株主総会で決議してから、退職金が支給されるまでの流れは下記のとおりです。

  1. 役員退職金規定を作成する
  2. 取締役会で詳細を決定する
  3. 議事録を作成する
  4. 死亡退職金の支給手続きを行う

役員死亡退職金に関する規定がない場合でも、株主総会の決議により支給を決定することが可能です。ただし、法律上、「役員死亡退職金」を支払う義務や根拠はありません。

そのため、まずは役員退職金規定の作成が必要です。

役員退職金規定を作成するには、株主総会と取締役会での決議が必要です。株主総会の決議では、出席した株主の議決権の過半数の賛成が求められます。

株主総会で方針が決定されれば、取締役会で具体的な支給金額や支給方法、支給時期などを具体的に決定します。

役員退職金は、株主総会や取締役会の議事録の作成が必要です。議事録は、後日証拠として利用されるため、詳細な内容を記載しておきましょう。

最後に、取締役会で決定した内容に基づいて、相続人に対して退職金が支給されます。支払い後は、税務処理や会計処理を適切に行い、必要な記録を保存する必要があります。

役員が従業員を兼ねていれば、規定がなくても支給される?

役員が従業員を兼ねている場合、退職金の支給については、役員としての退職金規定だけでなく、従業員としての就業規則も関わっています。

役員が従業員としての業務に従事している場合、就業規則に退職金規定があれば、役員でありながらも規則に従い退職金を受けることが可能です。

過去の裁判例では、役員が従業員として労務を提供していたかどうかが判断のポイントです。また、報酬が労務の対価として支払われているか、労働契約に基づいて従業員としての法的義務を果たしていたかについても、総合的な判断をされる傾向があります。

たとえば、役員報酬と従業員給与が分けられておらず、業務内容が実質的に従業員と同じであれば、従業員としての退職金を請求できる場合もあります。

そのため、役員が従業員と兼務している場合は、規則に基づいて退職金の受け取りを認められることもあることを覚えておきましょう。

ただし、役員の業務と従業員の業務が明確に区分されている場合は、退職金規定が適用されないこともあるため注意が必要です。

退職金規定の無料テンプレート

マネーフォワード クラウドでは、退職金規定の無料テンプレートをご用意しております。

無料でダウンロードできますので、ぜひお気軽にご利用ください。

退職金規定(エクセル)の無料テンプレートはこちら

退職金規定(ワード)の無料テンプレートはこちら

役員死亡退職金を準備しておく必要性

役員死亡退職金は、万が一の場合に備えて準備することが重要です。

通常の従業員とは異なり、役員は労災保険や公的保障の対象外となることがあるため、企業内で死亡後の生活支援を確保することが求められています。

役員死亡退職金は、遺族の生活費や子どもの教育費、さらには相続税の納税資金として活用されることが一般的です。とくに役員は自宅や事業用資産を所有している場合が多く、高額な相続税を課せられることがあります。

上記のような場合に、死亡退職金があれば、家族が相続税を支払うための資金源として役立ちます。役員が亡くなるタイミングは誰にも予測できません。そのため、事前準備が大切です。

生命保険を活用したり、規定を整備したりすることで、万が一の事態に備え、企業の安定性や遺族の生活支援を確実にできます。

役員退職金の準備方法

退職金の準備方法には、下記のような手段があります。

まず、預金は手間がなく確実な方法です。しかし、資金を増やす点では、金利が低いことによりメリットが感じられない場合もあります。

役員退職金を有価証券で用意するのは、損失リスクがあり、おすすめできる方法ではありません。

また、法人契約の生命保険により、解約編類金を退職金として準備する方法もあります。保険料の損金算入が可能で、税制面では有利ですが、保険商品により損金算入額が異なるため注意が必要です。

小規模企業共済は、経営者や役員が毎月積み立てる退職金制度です。掛金が全額所得控除されるため、節税効果があります。しかし、早期解約すると元本割れのリスクもあるため注意しなければいけません。

次に、中小企業倒産防止共済制度は、倒産リスクを避けるための共済で、掛金の全額算入と節税効果が期待できます。さらに、無担保で融資を受けることも可能ですが、解約金や手当金には上限が設けられています。

最後に、確定拠出年金は、掛金と運用成果に基づく退職金制度です。企業型と個人型の2種類があり、運用結果により支給額は変動するため注意が必要です。

上記のように、各準備方法にはメリットとデメリットがあるため、自社の状況や税務対策を考慮し、最適な手段を選択しましょう。

役員のために死亡退職金も準備しよう

役員死亡退職金は、役員が死亡した際に、遺族に支給される退職金です。規定がない場合でも支給されますが、規定がないと支給条件や金額などのトラブルにつながる可能性が高まるため注意が必要です。

支給額や条件を明確にするためにも、規定を作成することが推奨されます。役員死亡退職金の準備をご検討している方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事