• 更新日 : 2026年3月31日

役員死亡退職金は規定がない場合でも支給される?従業員と兼務の場合や準備方法を解説

PDFダウンロード
Point役員死亡退職金は規定なしでも支給できる?

役員死亡退職金は規定がなくても株主総会の決議があれば支給可能ですが、金額の妥当性や受取人を巡るトラブルを防ぐため、規定の整備が推奨されます。

  • 基準:功績倍率法(最終報酬×在任年数×功績倍率)で算出
  • 手続:株主総会の決議と詳細な議事録の作成が必須
  • 注意:規定がないと遺産分割協議が必要になり揉めやすい

規定がないと争族の原因になるため、早めに受取人を指定した規定を作成し、議事録を確実に保管しておきましょう。

役員死亡退職金は、規定がない場合でも株主総会の決議があれば支給可能です。しかし、明確な規定(ルール)がない状態での支給は、税務調査での否認リスクや、支給額の相場を巡る遺族間トラブルを招く原因となります。

また、役員が従業員を兼務している場合には、役員退職金と従業員退職金の区分が必要です。

本記事では、規定がない場合の手続き手順や、適正な金額の計算方法(功績倍率法)、さらに従業員兼務役員の注意点などについて、わかりやすく解説します。

役員死亡退職金とは?

役員死亡退職金は、役員が在任中に死亡した場合に、遺族に支給される退職金です。一般的な退職金は役職を退いた後に支払われますが、死亡退職金は役員が亡くなった際に契約や規定に基づいて支給されます。

ただし、会社により死亡退職金に関する規定は異なり、支給額や条件が定められているため、注意が必要です。

下記では、役員死亡退職金について、さらに具体的に解説します。

生存退職金との違い

死亡退職金と生存退職金の違いは、支給されるタイミングと条件です。

役員死亡退職金は、役員が亡くなった際に遺族に支払われ、生活資金や相続税の納税資金などとして使用されます。支給額や条件は社内の規定により異なりますが、規定がない場合は税務署から否認される可能性もあります。

一方、生存退職金は、役員が退職する際に支給される退職金です。退職後でも生活に困らないことを目的に支給されます。退職金の金額については、業績や貢献度を考慮し、規定に基づいて支給額を定められることが一般的です。

上記のように、死亡退職金と生存退職金は支給タイミングや基準が異なるため、注意が必要です。

従業員の退職金との違い

役員死亡退職金と従業員の退職金の違いは、支給基準や目的などです。

前述したとおり、死亡退職金は通常の退職金とは異なり、役員が亡くなってから遺族に支給されることが一般的です。遺族の生活保障を目的に、遺族に支給されます。

一方、従業員の退職金は、社員の定着率を向上させたり、退職後の生活を保障したりすることが目的です。また、従業員の退職金は労働基準法や就業規則に基づいて、勤務年数や職務内容に応じて支給されます。

さらに、死亡退職金と従業員の退職金では、かかる税金の種類も異なるため注意が必要です。

通常の退職金は、従業員の所得のため、所得税がかかります。しかし、死亡退職金は遺族に支給されることにより、相続税がかかることを理解しておきましょう。

参考:No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金|国税庁

弔慰金との違い

死亡退職金と弔慰金は似たような制度ですが、性質や支給目的が異なります。

弔慰金は、亡くなった役員や遺族に対して弔う気持ちを示すために支給される金銭です。会社の慣習や役員契約に基づいて支給されることが一般的です。また、弔慰金は、企業においての功労者には、より大きい金額が支給される場合もあります。

さらに、弔慰金は、死亡退職金とは異なり相続税がかかりません。ただし、労働者が死亡した際に支給される金額が一定基準を超える場合、相続税がかかる可能性があるため注意が必要です。

弔慰金は、以下の基準内であれば相続税がかからず(非課税)、全額損金算入が可能です。国税庁の通達に基づき、以下の枠を超えた部分のみが「退職手当金等」として課税対象となります。

【弔慰金の非課税枠(相続税法基本通達3-20)】

死亡の原因非課税となる金額の上限
業務上の死亡死亡時の普通給与の 3年分 相当額
業務外の死亡死亡時の普通給与の 6ヶ月分 相当額

業務外での死亡(病気や事故など)であっても、半年分の給与相当額までは非課税で遺族に渡せるため、死亡退職金とは別に規定を設けておくメリットは大きいです。

参考:No.4120 弔慰金を受け取ったときの取扱い|国税庁

金額の目安

役員死亡退職金の適正な金額は、一般的に以下の計算式(功績倍率法)で算出されます。

死亡退職金 = 最終報酬月額 × 役員在任年数 × 功績倍率

税務上、過大な役員退職金は損金(経費)として認められません。そのため、同業種・同規模の他社事例と比較して妥当な「功績倍率」を用いるのが一般的です。

【功績倍率の一般的な目安】
  • 社長: 3.0倍
  • 専務: 2.4倍
  • 常務: 2.2倍
  • 取締役:1.8倍
  • 監査役: 1.6倍

例として、月額報酬100万円、在任20年の社長の場合、「100万円 × 20年 × 3.0倍 = 6,000万円」が目安となります。これに加え、死亡退職の場合は「功労加算金(10〜30%程度)」を上乗せすることもあります。

相続税の非課税枠

役員死亡退職金には、遺族の生活を守るために相続税の非課税枠が設けられています。 死亡退職金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象となりますが、全額に課税されるわけではありません。一定の計算式に基づいた金額までは、相続税がかからずに受け取ることが可能です。

非課税となる限度額の計算式は、下記のとおりです。

非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数

例えば、法定相続人が3人(配偶者と子供2人)の場合、「500万円 × 3人 = 1,500万円」までは非課税となります。 現金をそのまま相続する場合に比べて大きな節税効果が期待できるため、支給額を決定する際は、この非課税枠を考慮に入れることが一般的です。

参考:No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金|国税庁

広告

この記事をお読みの方におすすめのガイド4選

続いてこちらのセクションでは、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを簡単に紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。

※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。

給与計算の「確認作業」を効率化する5つのポイント

給与計算の確認作業をゼロにすることはできませんが、いくつかの工夫により効率化は可能です。

この資料では、給与計算の確認でよくあるお悩みと効率化のポイント、マネーフォワード クラウド給与を導入した場合の活用例をまとめました。

無料ダウンロードはこちら

給与規程(ワード)

こちらは、給与規程のひな形(テンプレート)です。 ファイルはWord形式ですので、貴社の実情に合わせて編集いただけます。

規程の新規作成や見直しの際のたたき台として、ぜひご活用ください。

無料ダウンロードはこちら

給与計算 端数処理ガイドブック

給与計算において端数処理へのルール理解が曖昧だと、計算結果のミスに気づけないことがあります。

本資料では、端数処理の基本ルールをわかりやすくまとめ、実務で参照できるよう具体的な計算例も掲載しています。

無料ダウンロードはこちら

給与計算がよくわかるガイド

人事労務を初めて担当される方にも、給与計算や労務管理についてわかりやすく紹介している、必携のガイドです。

複雑なバックオフィス業務に悩まれている方に、ぜひご覧いただきたい入門編の資料となっています。

無料ダウンロードはこちら

役員死亡退職金を規定がない場合に支給するには?

規定がなくても株主総会の決議があれば支給可能です。ただし、トラブル防止のため、支給前に規定を整備するか、議事録で詳細を固める必要があります。

規定がない状態での支給は、以下の手順で進めますが、遺族間の争いを避けるために受取人の順位には特に注意が必要です。

支給手順:株主総会の決議と議事録の作成

規定がない場合、社長の一存や取締役会だけで支給を決定することはできません。必ず以下のステップを踏んで法的根拠を作ります。

  1. 取締役会での原案決定:支給額や方法の案を作成する。
  2. 株主総会の開催・決議:出席株主の過半数の賛成を得る。
  3. 議事録の作成:決定内容を記録し、証拠として残す。
  4. 支給の実行:源泉徴収などの税務処理を行い、遺族へ支払う。

特に重要なのが議事録です。税務調査では「いつ、誰が、どのような根拠(功績倍率など)で決めたか」が厳しくチェックされるため、詳細な記載が必須です。 後日証拠として利用できるよう、取締役会と株主総会の両方で議事録を残し、適切に保管してください。

注意点:規定がないと受取人で揉めるリスクがある

規定がない場合、誰が退職金を受け取るかで遺族間トラブル(争族)に発展するケースがあります。

規定がないと「遺産分割協議」の対象になり、全員の合意が必要になります。

  • 規定がある場合: 規定で「受取人は配偶者、次は子」と順位を定めておけば、退職金は受取人固有の財産となり、遺産分割協議を経ずに会社から直接支払うことができます。
  • 規定がない場合: 退職金は「相続財産」とみなされ、遺族全員で分け方を話し合う「遺産分割協議」が必要になります。協議がまとまるまで会社は支払いができず、遺族の生活費や納税資金の確保が遅れる原因となります。

こうした事態を防ぐためにも、今回の支給に合わせて「役員退職金規定」を新規に作成し、受取人の順位を明確にしておくことが推奨されます。

役員が従業員を兼ねていれば、規定がなくても支給される?

役員が従業員を兼ねている場合、退職金の支給については、役員としての退職金規定だけでなく、従業員としての就業規則も関わっています。

役員が従業員としての業務に従事している場合、就業規則に退職金規定があれば、役員でありながらも規則に従い退職金を受けることが可能です。

過去の裁判例では、役員が従業員として労務を提供していたかどうかが判断のポイントです。また、報酬が労務の対価として支払われているか、労働契約に基づいて従業員としての法的義務を果たしていたかについても、総合的な判断をされる傾向があります。

たとえば、役員報酬と従業員給与が分けられておらず、業務内容が実質的に従業員と同じであれば、従業員としての退職金を請求できる場合もあります。

そのため、役員が従業員と兼務している場合は、規則に基づいて退職金の受け取りを認められることもあることを覚えておきましょう。

ただし、役員の業務と従業員の業務が明確に区分されている場合は、退職金規定が適用されないこともあるため注意が必要です。

退職金規定の無料テンプレート

マネーフォワード クラウドでは、退職金規定の無料テンプレートをご用意しております。

無料でダウンロードできますので、ぜひお気軽にご利用ください。

退職金規定(エクセル)の無料テンプレートはこちら

退職金規定(ワード)の無料テンプレートはこちら

役員死亡退職金を準備しておく必要性とは?

役員死亡退職金は、万が一の場合に備えて準備することが重要です。

通常の従業員とは異なり、役員は労災保険や公的保障の対象外となることがあるため、企業内で死亡後の生活支援を確保することが求められています。

役員死亡退職金は、遺族の生活費や子どもの教育費、さらには相続税の納税資金として活用されることが一般的です。とくに役員は自宅や事業用資産を所有している場合が多く、高額な相続税を課せられることがあります。

上記のような場合に、死亡退職金があれば、家族が相続税を支払うための資金源として役立ちます。役員が亡くなるタイミングは誰にも予測できません。そのため、事前準備が大切です。

生命保険を活用したり、規定を整備したりすることで、万が一の事態に備え、企業の安定性や遺族の生活支援を確実にできます。

役員退職金の準備方法は?

退職金の準備は、それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社のキャッシュフローに合わせて組み合わせることが重要です。主に以下の5つの手段があります。

預金・有価証券

最も手軽ですが、資金増加のメリットは限定的です。 預金は流動性が高く、最も確実な方法ですが、低金利下では資金を増やす効果はほとんど期待できません。

また、株式などの有価証券で運用する方法もありますが、元本割れのリスクがあるため、退職金のような「支払時期と金額が決まっている資金」の準備には不向きな側面があります。

法人保険(生命保険)

死亡時の保障と資金確保を同時に行える手段です。 役員を被保険者とし、死亡時に会社が保険金を受け取る契約にすることで、手元資金が不足していても死亡退職金を支払うことができます。

現在は税制改正により全額損金算入できる商品は減っていますが、万が一の際の即時の資金確保(流動性の確保)という点では、依然として有効な選択肢です。

小規模企業共済制度

役員個人の節税メリットが大きい公的な積み立て制度です。 国の機関(中小機構)が運営する制度で、経営者や役員が個人で加入します。

最大のメリットは、掛金が全額「個人の所得控除」になる点です。会社が支払う退職金とは別に、役員個人が受け取る「第二の退職金」として準備できるため、税制面で非常に有利です。

参考:小規模企業共済とは|独立行政法人中小企業基盤整備機構

中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)

掛金を全額損金にしつつ、簿外で資金を積み立てられます。 本来は取引先の倒産に備える制度ですが、解約手当金(掛金納付月数40ヶ月以上で100%戻る)を退職金原資として活用するケースが多くあります。

ただし、「解約後2年間は再加入時の掛金を損金算入できない」という制限(2024年改正)があるため、解約のタイミングには計画性が必要です。

参考:経営セーフティ共済とは|独立行政法人中小企業基盤整備機構

確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)

運用成果によって受取額が変動する年金制度です。 掛金を企業が拠出する「企業型」と、個人が拠出する「個人型(iDeCo)」があります。

税制優遇を受けながら老後資金を作れますが、原則60歳まで引き出せない点や、運用実績によって最終的な受取額が増減する点に注意が必要です。

参考:確定拠出年金制度の概要|厚生労働省

役員死亡退職金の支給や従業員兼務の退職手続きに向けた事前の準備

役員死亡退職金の支給においては、規定がないと遺族間でのトラブルにつながるリスクが高まります。また、役員が従業員を兼務している場合を含め、退職時の手続きでは様々なトラブルが発生する傾向にあります。

マネーフォワードでは、入退社手続きに関する調査を実施しました。本調査において、書類の不備や回収の遅延などのトラブルが「頻繁にある(18.8%)」「時々ある(41.2%)」と回答した割合を合わせると、60.0%が定期的に手続き上のトラブルに直面していることがわかりました。

退職手続きで発生しやすいトラブルと対策の実態

退職手続きにおいて特にトラブルや苦労が発生しやすい項目について、最も多いのは「離職票の発行手続き(賃金台帳の集計等)」で、31.7%でした。次いで「健康保険証の回収」が29.1%、「退職届の受理と退職日の合意」が26.8%と続いています。

また、こうしたトラブルを減らすために導入・検討している対策について、最も多いのは「チェックリストの徹底」で、31.8%でした。次いで「手続きマニュアルの作成・整備」が31.3%となっています。

役員死亡退職金の支給や兼務役員の退職手続きを円滑に進めるためには、事前の規定の整備やマニュアル化による準備が重要であることがうかがえます。

出典: マネーフォワード クラウド、トラブルの発生頻度・退職手続きにおいてトラブルが発生しやすい項目・トラブル削減のために導入・検討している対策【入退社に関する調査データ】(回答者:入退社に伴う書類手続きの実務または管理・承認に携わった経験がある628名および597名、集計期間:2026年2月実施)

役員のために死亡退職金も準備しよう

役員死亡退職金は、役員が死亡した際に、遺族に支給される退職金です。規定がない場合でも支給されますが、規定がないと支給条件や金額などのトラブルにつながる可能性が高まるため注意が必要です。

支給額や条件を明確にするためにも、規定を作成することが推奨されます。役員死亡退職金の準備をご検討している方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。

PDFダウンロード

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事