• 更新日 : 2025年2月17日

逆パワハラとは? 3つの要件と事例、チェックリスト・対処法!

逆パワハラとは、上司が部下から受けるパワーハラスメントのことです。部下が上司からの注意や指導に反発して仕事をしない、あるいは過剰な反発をするといった行為が該当します。今回は、逆パワハラの意味や該当しているかどうかを判断する3つの要件のほか、具体例、対象法などを解説します。

逆パワハラとは?

逆パワハラとは、部下から上司に対して行われるパワーハラスメントのことです。

通常のパワーハラスメントは、上司から部下に対して社内での優越的地位を背景に行われることが多いといえるでしょう。

そのため逆パワーハラスメントは、行う者が通常のケースとは「逆」であるパワーハラスメントを指します。

逆パワハラが増加している背景

ハラスメントに関する教育が徹底されていないことが、逆パワハラが増加している主な原因と考えられます。

逆パワハラを行う部下は、上司に対する自分の発言や言動が、逆パワハラに該当するという認識を持てていない可能性が高いです。

また、上司から部下への通常の指導とパワーハラスメントの違いを理解できておらず、注意指導されたことに対して「パワハラだ!」などと責めたてる部下もいます。その結果、上司が部下への指導を躊躇してしまい、毅然とした態度で注意・指導できないために、上司と部下の立場が逆転してしまうことも珍しくありません。

逆パワハラの3つの要件

逆パワハラは、パワーハラスメントを行う者が部下である点が通常のパワーハラスメントと異なるものの、大枠の内容としては通常のケースと同じです。

以下の3つの要件をすべて満たした場合、逆パワハラを含めたパワーハラスメントとみなされます。1つずつ確認しましょう。

優越的な関係を背景とした言動であること

「優越的な関係を背景とした言動」とは、業務を遂行するにあたって、パワーハラスメントを受ける者が抵抗しにくい関係性を背景にしていることを指します。例えば、逆パワハラであれば部下のほうが上司よりも豊富な知識や経験を保有しており、部下の協力を得なければ業務をスムーズに行えない状況などが該当します。

業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること

「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」とされるのは、業務を行う上で明らかに必要のない言動や、業務の目的から逸脱した言動、業務を行うための手段としてふさわしくない言動などです。

労働者の就業環境が害されるものであること

「労働者の職場環境が害される」とは、その言動により、従業員が身体的または精神的に苦痛を感じ、職場環境が不快なものになっていることを指します。本来の能力を十分に発揮できないなど、能力の発揮に影響を及ぼすほどの言動が該当します。

参考:職場におけるハラスメントの防止のために|厚生労働省

参考:事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)|厚生労働省

逆パワハラの具体例・事例

逆パワハラの具体例・事例は、以下のとおりです。

  • 注意や指導に対する過剰な反応
  • 上司の解雇や配置転換の要求
  • 人間関係からの切り離し

それぞれの内容をみていきましょう。

注意や指導に対する過剰な反応

上司からの業務内容に関する注意や指導に対して「パワハラだ」と過剰に反応したり、「訴えてやる」などと脅し、指示や指導を受け入れないケースです。反発をするだけでなく職場放棄や欠勤をしたり、パワハラを受けたとしてSNSに投稿したりするケースもみられます。

上司の解雇や配置転換の要求

上司からの指導や注意への反発などから、上司の解雇や配置転換を要求するケースもあります。それにより、上司が心身の不調を訴え休職してしまったというような場合は、逆パワハラに該当する可能性が高いといえるでしょう。

人間関係からの切り離し

部下がほかの従業員を扇動し、集団で上司の指示や存在を無視することで、人間関係からの切り離しを図るケースです。「〇〇の言うことなんて聞かなくていい」などと周囲に吹き込み、上司を無視し孤立させます。

逆パワハラが発生する原因

逆パワハラが発生する原因としては、主に以下の原因が考えられます。

  • 逆パワハラという認識がない
  • 上司のマネジメント不足
  • 部下の経験値や能力の逆転
  • 逆パワハラ被害を訴えにくい雰囲気

1つずつ確認していきましょう。

逆パワハラという認識がない

その行為が逆パワハラに該当する認識を持てていないことが、逆パワハラの原因となっている場合があります。

多くの企業で管理職を対象としたパワハラ研修を実施している一方で、一般の社員に対しての逆パワハラに関する教育は十分に行われていないのが実態です。それにより、どのような行為が逆パワハラに該当するか判断できず、逆パワハラをしているケースが散見されます。

上司のマネジメント不足

上司のマネジメント不足により、逆パワハラが起きている場合も少なくありません。上司は本来、部下の管理や指導をする責任を負います。しかし、上司が部下の問題行動に対して目をつぶっていると、それがエスカレートしていく可能性があります。

部下の経験値や能力の逆転

上司よりも、部下のほうが経験値や能力が高いことも、逆パワハラが起きる原因の1つです。

若い正社員に対し、高齢の非正規雇用の従業員などが「上司なのにこの程度のことをもできないのか?」などと言う、ITスキルに長けた若い社員が、それらが苦手な年上の上司を軽んじるケースなどが該当します。

逆パワハラ被害を訴えにくい雰囲気

逆パワハラ被害を訴えにくい雰囲気が社内にあることも、逆パワハラの原因となり得ます。

人手不足が慢性化していると、部下に退職されたら困るという心理が働きやすくなるでしょう。また会社は管理職層に対して、部下へのハラスメント行為や従業員の過重労働を防ぐための教育や対策など行い、さまざまな面で従業員への配慮を義務付けています。

このような従業員の立場が強い雇用環境も、逆パワハラが生まれる背景になっていると考えられます。

逆パワハラを防ぐための対策

逆パワハラを防ぐためには、以下のような対策が有効です。

  • ハラスメント禁止の周知徹底
  • マネジメント研修の実施
  • 就業規則に盛り込む
  • 相談窓口の設置と整備

各対策について解説します。

ハラスメント禁止の周知徹底

新人研修などの人材教育のプロセスに、逆パワハラを含めたハラスメントの禁止を周知徹底させる内容を組み込むことが大切です。その際、被害者や加害者、目撃者などの具体的な役割を設定したロールプレイングを実施するなど、実践的な教育を行うと効果が見込めるでしょう。

マネジメント研修の実施

マネジメント研修によって、管理職のマネジメント力の向上を図ることも効果的です。上司が部下をマネジメントしきれていないと、逆パワハラが生まれやすくなるためです。管理職のマネジメント力の向上は、逆パワハラの防止につながることはもちろん、生産性の向上にも寄与すると考えられます。

就業規則に盛り込む

就業規則に、逆パワハラを含むパワハラを禁止する項目や、行った者への懲戒規定を盛り込むことも重要です。これにより、逆パワハラを含むパワハラを行った者に対して厳正に処分を行うという企業の姿勢を、従業員に対して周知することが可能になります。

相談窓口の設置と整備

相談窓口の設置と整備を行うことも、逆パワハラを含めたパワハラの防止には不可欠です。気軽に相談できる窓口の存在を周知することで、パワハラや逆パワハラに悩む従業員や上司に安心感を与えられます。また、社外に対してもコンプライアンス意識の高さをアピールできます。

逆パワハラが発生した場合の対処法

逆パワハラが発生した場合における、企業としての一般的な対処法の流れは以下のとおりで
す。

  1. 速やかに事実関係を確認する
  2. 逆パワハラの有無を判断する
  3. 調査報告書を作成する
  4. 被害者である上司への配慮措置を取る
  5. 加害者である部下に対する処分などの検討・措置を行う
  6. 再発防止措置を実施する

逆パワハラを行う従業員の中には、その深刻性を認識せずに「上司に従わなくても働き続けられる」「処分や罰則を受けるほどではない」と考えている方もいます。企業が逆パワハラに対して毅然とした態度で対応することで、問題の大きさや深刻さの理解を促しましょう。

指導を繰り返しても改善がみられないような場合は、書面による改善命令を出す、あるいは懲戒処分を出すことも検討する必要があります。また、被害者の上司が加害者の部下をマネジメントし続けることが困難な場合は、両者を遠ざけるための配置転換を行います。

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逆パワハラの周知徹底を行い防止策を講じよう

逆パワハラとは、部下から上司に対して行われるパワーハラスメントのことです。パワーハラスメントへの理解が進みつつある一方で、逆パワハラに関する認知度はそこまで高くないのが現状といえます。

企業として、逆パワハラの周知徹底を行うなどの防止策を講じることが大切です。また、逆パワハラが起きた場合は、毅然とした姿勢で対処する必要があります。逆パワハラを防止し、働きやすい職場環境作りに努めましょう。


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