• 更新日 : 2023年8月10日

リーダーシップとは?関連理論の種類や具体的な行動指針

リーダーシップとは?関連理論の種類や具体的な行動指針

企業がその組織の機能を生かし継続的に成長していくために大切なことは、リーダーシップを発揮する優れた社員を育成することです。しかし、優れたリーダーの育成には時間がかかります。

リーダーシップとは、組織をまとめ上げるために必要となる資質や能力を指します。リーダーシップの種類や理論を考察するとともに、具体例をあげて解説します。

リーダーシップとは?

リーダーシップを発揮するためには、組織をまとめ、組織やチームのメンバーを引っ張っていくために必要な能力や資質を必要とします。したがって、組織やチームのリーダーが、目的を遂行するためにメンバーに影響を与えることをリーダーシップと呼んでいます。

企業の代表者もリーダーであり、会社という大きな組織を統率するためにはリーダーシップが必要です。ビジネスでは、支店や営業所、部署、係など、大小いくつもの組織単位で活動し、ときには、企画開発やプロジェクトなど、少人数でチームを作ることもあります。これらの組織やチームを統率するのがリーダーであり、リーダーが組織をまとめ上げるためにはリーダーシップが必要となります。

リーダーシップの種類・関連理論

リーダーシップに関連する理論はさまざまなものが提唱されています。しかし、リーダーシップの定義は研究者の間でも議論が多く、統一されたものはありません。ここでは、代表的なリーダーシップの種類や理論を紹介します。

PM理論

PM理論は、社会心理学者の三隅二不二氏が1966年に発表した行動理論の1つです。リーダーが取るべき行動に視点を置き、リーダーシップ行動をPとMの2つの軸で定義することで、リーダーの行動理論を4つのパターンに分けて考えていきます。

P:目標達成機能(Performance)

M:集団維持機能(Maintenance)

目標達成機能と集団維持機能の強さをそれぞれ大文字と小文字で組み合わせて、PM型、Pm型、pM型、pm型の4つに分けてリーダーシップ像を分類しています。リーダー候補者の強みと弱みを整理し、理想的なリーダーシップ像であるPM型に近づけることで、能力を伸ばすことができます。

「Pm型」は、目標達成機能は高いものの、集団維持機能が低いリーダーシップ像となります。短期的には成果を上げられるかもしれませんが、長期的にはメンバーのモチベーションの低下やパフォーマンスの低下をもたらす可能性があります。

「pM型」は、目標達成機能は低いが集団維持機能が高いリーダーシップ像となります。チームワークは保たれやすいとしても、目標達成に向けてチームを引っ張ることは難しいことがあります。

「PM型」はPとMの両方が強いため、目標達成機能も集団維持機能も高く、理想的なリーダーシップ像といえます。一方、「pm型」は目標達成機能も集団維持機能も弱いため、目標達成・課題解決するための力や、集団をまとめる力を伸ばすための取り組みが必要となるでしょう。

コンセプト理論

コンセプト理論は、条件適合理論を継承しているといわれています。ビジネスの環境・組織・メンバーの状況から、リーダーシップの取り方を「リーダー」と「リーダーをとりまく環境」の関連性に焦点を当てて議論したものです。 代表的なリーダーシップのタイプには以下の5つがあります。

  • カリスマ型リーダーシップ
    突出した行動力・発想で組織やチームを牽引するタイプ
    • 変革型リーダーシップ
      経営方針の抜本的な見直しを行い、大きな改革を推進するタイプ
    • EQ型リーダーシップ
      人間関係を適切に管理し、職場環境改善やメンバーのモチベーション維持などに細かく配慮するタイプ
    • ファシリテーション型リーダーシップ
      民主主義的な組織づくりにより、自発性を尊重することで成長を促すタイプ
    • サーバント型リーダーシップ
      リーダーがメンバーの業務を上手くサポートし、メンバーを動きやすくすることで能力を引き出すタイプ

    クルト・レヴィンの理論

    アメリカの心理学者クルト・レヴィン氏が、アイオワ大学で行った実験で分類した3つのリーダーシップのタイプのことです。立ち上げ当初は専制型のリーダーシップ、安定期は民主型のリーダーシップ、研究開発部門や専門性が高い集団のような高レベルの組織では放任型のリーダーシップなどと、特徴が異なる3つのタイプを状況に合わせて使い分けるのが良いといわれています。

    • 専制型のリーダーシップ
      作業手順や意思決定はすべてリーダーが考え指示するため、高い生産性が得られます。しかし、長期的な視点で見ると、反感・不信感が生まれやすいといわれます。
    • 民主型のリーダーシップ
      専制型リーダーシップと放任型のリーダーシップの中間に位置します。メンバーが中心となって方針を考えるため、最終的にはリーダーが決定するものの、有効的な関係が生まれやすく、長期的な視点で見ると、高い生産性が期待できます。
    • 放任型のリーダーシップ
      メンバーがすべて作業手順を考えて決定するため、メンバーの自由度が高く、専門家集団や研究開発部門などで能力が発揮しやすいといわれます。ただし、組織のまとまりがなくなると、仕事の量・質、メンバーの士気が低くなりやすいという欠点があります。

    ダニエル・ゴールマンの理論

    ダニエル・ゴールマンの理論は、1995年発表された「EQこころの知能指数」で発表されたコンセプト理論の1つである「EQ型リーダーシップ」のことです。「EQ(Emotional Intelligence Quotient)」とは「心の知能指数」などと呼ばれています。

    EQは、知能指数を意味する「IQ(Intelligence Quotient)」に対して作られた言葉です。これまでは知能指数が高い人ほどビジネスに成功するというのが通説でしたが、実際に調べてみると、知能指数が高くてもビジネスに失敗している人はたくさんいました。そこで、ビジネスで成功している人は「対人関係に優れていること」が共通点としてあげられることがわかったのです。

    EQ型リーダーシップのポイントには以下の4つがあり、この4つのステップは最終的なフェーズである「人間関係を適切に管理する」という考え方に向かうためのステップとされています。4つのステップを段階的にクリアしていくことで、EQ型リーダーシップが発揮されると考えられています。

    1. 自己認識:自分の感情を認識し評価
    2. 自己管理:自分の感情をコントロールし対応する
    3. 社会認識:他人の気持ちを汲む
    4. 人間関係の管理:求心力や問題処理能力、協調性

    特性理論

    1940年代までは、「リーダーは生まれながらの資質」という考え方が主流であったため、その資質・特性は何かというアプローチで研究されていました。これが特性理論です。

    しかし、リーダーには決まった資質はなく、その特性は抽象的であったり、曖昧であったりと測定が困難で、リーダーシップを特性で説明することが難しくなり、研究に行き詰まることになります。

    行動理論

    1950年代に入ると、リーダーの行動に着目したアプローチが盛んになります。リーダーとリーダーではない人との行動の違いを比較して、行動を類型化した研究が行動理論です。

    PM理論やクルト・レヴィンの理論は、行動理論の代表的なリーダーシップの理論となります。

    条件適合理論

    1960年代に入ると、特性理論や行動理論から条件適合理論が出てきます。どのような状況下であればリーダーの行動が有効になるのかという理論が、条件適合理論です。

    条件適合理論は状況適合理論などとも呼ばれ、リーダーの行動は条件によって変わることから、リーダーシップのスタイルは状況に応じて異なるという考え方をするようになります。

    リーダーシップを発揮できる人の特徴

    さまざまなリーダーシップの理論を説明してきましたが、リーダーシップを発揮できる人には共通の特徴があります。これらの特徴について見ていきましょう。

    1.コミュニケーションのスキルが高い

    リーダーは、業務を遂行する上でチームのメンバーから意見が出やすいように、コミュニケーションを活発にし、意思疎通を図ることが必要になります。それには、自分だけが話すのではなく、傾聴力や共感する力も必要となるでしょう。また、自分と異なる意見、メンバーからのアイデアを取り入れることもできます。自己中心的で他人の意見が聞けない人は、チーム内で信用を得ることができません。

    2.洞察力と観察力がある

    優れたリーダーは、洞察力と観察力に優れ、メンバー一人ひとりの長所・短所を見抜くことができます。メンバーの長所と短所がわかれば、適材適所に配置することも可能となり、メンバーが能力を発揮しやすくなるでしょう。視野が広く、周りの人に気配りができるのも、リーダーに求められるスキルです。メンバーのモチベーションが低下していることにすぐ気がつけば、タイムリーにフォローすることも可能となります。

    3.行動力と決断力がある

    任務遂行には困難がつきものです。そのようなときにリーダーが迷って決断もせず、行動もしないでいると、メンバーが不安となってパフォーマンスが低下します。難しい局面でも決断が早く、直ぐに行動に移せるリーダーは、メンバーから信頼されることでしょう。

    4.コーチングのスキル

    組織やチームを率いるリーダーには、メンバーを育成する役割も担います。リーダーのコーチングのスキルが高ければ、メンバーのやる気を上手く引き出し、モチベーションも向上します。引っ張るだけではなくメンバーを後ろから支えることも、ときには必要です。

    5.ビジョンメイキング

    ビジョンメイキングとは、チームや組織の進むべき方向性を示すことです。チームや組織のメンバーが同じ目標を持っていることで協調性が生まれます。高いモチベーション業務ができれば、チームのパフォーマンスも向上するでしょう。

    リーダーシップのスタイル

    リーダーシップのスタイルは、状況に応じて使い分けることが必要です。5つのリーダーシップのスタイルを紹介します。

    ビジョン型

    チームが目指すビジョンの方向性を示し、明確にすることで、チームや組織が進む方向を導くことができます。メンバーの感情を上向きにし、良い方向へ導いていくリーダーシップのスタイルです。チームの結束力を生みやすい効果があります。

    親和型

    チームや組織のメンバー全員の人間関係を良好にし、信頼関係を構築するリーダーシップのスタイルです。 やる気が維持できるため、トラブルもなく気持ちよくみんなが働くことができます。 ただし、成果よりもコミュニケーションを重視されやすいため、責任の所在が曖昧になったり、成果が思うように上がらなかったりすることがあります。

    コーチ型

    メンバーの能力を尊重し、対話を通じてメンバーの長所や短所などを引き出し、自発的に行動目標を設定するためのサポートをするリーダーシップのスタイルです。メンバーの適性を自覚させ、能力向上を促し、モチベーションを引き出す特徴があるため、メンバーのパフォーマンスを向上させる効果があります。

    ベースセッター型

    リーダーがメンバーに難しい課題を設定し、実際にやって見せてできることをメンバーに示すリーダーシップのスタイルです。短期間で集中的に成果を出したいときや、メンバーの能力とモチベーションが高い組織やチームでは、大きな効果が期待できます。

    変革型

    経営方針やチームの方針を抜本的に見直し、大きな改革を推進する姿勢を示すことで、メンバーの自発的な行動を促すリーダーシップのスタイルです。チームや組織のメンバー全体のパフォーマンスの向上を意識したスタイルであり、会社が経営難にある場合など、危機的な状況や抜本的な改善が必要なときに行うと効果があります。

    リーダーシップを発揮するために必要な能力

    リーダーシップを発揮するためには、リーダー個人の能力を伸ばす必要があります。リーダーに必要となる能力を取り上げて解説します。

    1.コミュニケーションのスキル

    メンバーにチームや組織の任務や役割を説明し、情報を共有するためには、コミュニケーションのスキルが必要です。意見やアイデアを取り入れ、業務に活かすことも重要となり、そのためには、良好な人間関係を築くことが大切です。

    2.決断力と行動力

    任務の遂行が困難な場面では、リーダーの決断力や行動力が求められます。チームのメンバーが不安な状態では、パフォーマンスが低下します。ビジネスでは、決断力と行動力が必要となる場面が多くあります。

    3.統率力

    チーム全体をまとめて目標達成に向けて引っ張っていくのがリーダーの役割です。それには、チーム全体からの信頼を得て統率する力が必要となるでしょう。チームのメンバーが失敗したときにもフォローをし、信頼を得るためにメンバーの目標や手本となるように行動しなければなりません。

    4.洞察力と観察力

    広い視野を持って、メンバーの長所と短所を見抜き、適正を見極める能力が必要となります。それには、洞察力と観察力が必要です。メンバーのモチベーション低下に気づけば、チームのパフォーマンスを向上させる対策を講じることが可能になります。

    5.誠実さと粘り強さ

    ビジネスでは想定外の事態が起きることが多くあります。そのようなときでも誠実に業務を遂行し、諦めずに粘り強く業務目標を達成する姿勢が必要です。

    6.育成能力

    メンバーの育成もリーダーに必要なスキルです。チームのメンバー個々の能力が上がれば、チーム全体のパフォーマンスが向上します。また、リーダーの業務をフォローできる、いわゆる、右腕となる者、リーダーがいなくても変わりができるサブリーダーを育てることも、組織を円滑に運営するには必要です。

    7.ストレスやプレッシャーに強い

    正しい指示をしていても、反感を買うことや反対意見を主張されることがあります。また、時間が足りず成果が上がらないなど、目標達成が困難な局面でも冷静に対処し、任務を成し遂げる強さが必要となります。ストレスやプレッシャーがかかる場面で力を発揮できれば、メンバーの信頼を得ることができるでしょう。

    8.学習能力と業務経験

    リーダーは、その業務の分野に精通していることが必要です。メンバーの教育、スキル向上、コーチングなど、多くの場面で業務知識と経験が必要となるでしょう。

    人事労務担当者が従業員のリーダーシップ発揮のためにできること

    これまでさまざまなリーダーシップ像の研究が行われてきましたが、リーダーシップは、その人の強みや弱みを理解し、強化する方法を学ぶことで、身につけることが可能です。

    企業としては、従業員がリーダーシップを発揮するためには、研修など学びの場を設け、基礎知識を身につけさせることが大切です。リーダーシップを従業員に身につけさせるためには、体系立ててリーダーに求められるスキルやノウハウを学習する機会を作らなければなりません。

    自社で研修を行うことが困難な場合には、外部のリーダー向けの研修や講座を受ける機会を作ることも有効な方法です。専門家による研修で理論を学ぶとともに、社内のOJTなどで理論を実践することができれば、より大きな効果が得られます。他社の受講者と意見交換をすることができれば、良い刺激となって従業員はスキルアップのためのモチベーションを高めることができるでしょう。

    企業にとって優秀な人材は財産となる

    人手不足が社会問題となっている現在、優秀な従業員を確保することは簡単ではありません。リーダーシップが発揮できる人材を確保することはより一層困難です。

    リーダーシップは素質がないと取れないということはありません。従業員の個々の能力を伸ばすとともに、その人の強みや個性を生かすことで、リーダーシップが発揮できるようになります。つまり、優秀なリーダーは、自社で育成することができるのです。

    自社の中にも優秀な人材はいることでしょう。企業にとって従業員は財産です。自社の人材をリーダーに育て上げることは、企業にとって将来大きな利益をもたらすことでしょう。


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