• 作成日 : 2022年8月5日

残業問題とは?解決するために取り掛かるべきこと

残業問題とは?解決するために取り掛かるべきこと

政府主導で働き方改革が推進されているなか、多くの企業でも労働時間削減に向けたの取り組みが推進されています。しかし、依然として長時間労働はなくなっていません。長時間労働は、健康だけでなく、さまざまな弊害を引き起こしますが、残業に対する賃金の未払いも大きな問題となっています。今回は、残業問題について、その背景、デメリットのほか、対策などについて解説していきます。

残業問題とは?背景と原因

残業とは、一般的には会社の就業規則で定める所定労働時間を超えた労働であると理解されています。しかし、厳密には労働基準法で定める1日8時間を超える法定労働時間を超え、割増賃金の支払い義務がある時間外労働を残業と捉えるべきでしょう。

いずれにしても、日本において長時間労働は多くの会社で問題となっており、また非正規労働者が増え、全体の総実労働時間は減少傾向にあるものの、フルタイムの正社員については依然として常態化しているのが現状です。

働き方改革の背景

2018年7月6日に「働き方改革関連法」が成立し、労働制度の抜本的な改革が進められてきました。

その背景とされるのは、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少という構造的な問題に加え、生産性向上の低迷、雇用形態による賃金格差などがありますが、残業問題もその一つとなっています。

働き方改革では、これらを解決し、生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作り、多様な働き方を選択できる社会を実現することを目指しています。それによって、一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることが究極的な目的とされています。

残業問題では、働き方改革関連法として労働基準法を改正し、上限規制を厳格化しました。それによって経営の現場では、弊害が生じていることも知っておく必要があります。

勤務時間外でのサービス残業増加

労働基準法の改正により、時間外労働(休日労働は含まず)の上限は、原則として月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできなくなりました。

臨時的な特別の事情があり、労使が合意する場合でも、時間外労働は年720時間以内、時間外労働と休日労働を合わせて月100時間未満、2~6カ月平均80時間以内とすることが義務づけられています。

こうした規制強化に対して、経営の現場では問題も生じています。

業務量が減らないまま、管理職が部下に残業を禁止すれば、評価が下がることを恐れる部下は、タイムカード上では退社したことにして残業せざるを得ない事態になるでしょう。実際にこうしたサービス残業も増加しています。

サービス残業は、本来、使用者が支払うべき賃金を支払わない賃金不払いであり、明らかに労働基準法違反となります。法定労働時間を超えるサービス残業であれば、割増賃金も未払いになります。

時間外労働の上限規制が厳格化される以前からこうした実態はあり、政府も「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」を策定し、対応してきました。

従業員にサービス残業をさせた場合、労働基準法において「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という罰則が適用されます。

罰則が適用された場合、こうした情報は、SNSでシェアされてすぐに拡散されます。企業イメージが悪化すれば、人材の採用が困難になったり、従業員の離職率が高まったりする可能性もあります。

残業削減による人員の増員と人件費の増加

残業問題は、過重労働を引き起こし、うつなどの精神障害から過労自殺の増加にもつながり、社会問題にもなっています。

働き方改革では、この点も踏まえ、「過重労働撲滅特別対策班」の新設や企業名公表など、労働基準監督行政における取り組みを強化しています。

平成29年には「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を策定し、従業員の自己申告制により始業・終業時刻の確認および記録を行う場合、実際の労働時間と合致しているか否かについて、使用者が必要に応じて実態調査を実施することを定めています。

こうしたことから、サービス残業が生じにくい法的な整備は進んでいるといえるでしょう。

その一方、業務量が変わらず、あるいは増えている企業では、それまでの従業員で対応しきれなくなった時間は、人員を増員するか、派遣社員など外部委託などによってカバーする必要がでてきます。当然のことながら、人件費や外注費が増加することになります。その結果、企業としての利益が減少することも考えられます。

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残業問題への対策方法

サービス残業は明らかに違法ですが、法令を遵守しても企業経営に影響を与えることになります。では、どのような対策を講じ、こうした事態を回避すればよいのでしょうか。

裁量労働制など勤務制度の見直し

労働基準法では、法定労働時間を定め、原則として時間外労働を禁じ、例外的にそれを超える場合にも厳格な規制を設けていますが、時間外労働とならない弾力的な運用が可能な次のような労働形態も認めています。

  1. 専門業務型裁量労働制
    対象となる従業員は、新商品や新技術の研究開発、情報処理システムの設計、コピーライター、新聞記者などであり、労使協定で定めた時間を労働したものとみなします。
  2. 企画業務型裁量労働制
    対象となるのは、事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査および分析の業務に従事する従業員であり、労使委員会で決めた時間を労働したものとみなします。
  3. 変形労働時間制
    交替制勤務や、季節などによって業務に繁閑の差がある場合、一定期間を平均して、法定労働時間の範囲内であれば、1日8時間、週40時間を超えて労働させることができます。
  4. フレックスタイム制
    協定した労働時間の範囲内で、始業・終業時刻を従業員にゆだねる制度であり、一定期間の総労働時間を労使協定で定めれば、始業・終業時刻を労働者の自由にできます。
  5. 事業場外みなし制
    事業場の外で労働する外回りの営業職などに適用できるものであり、所定労働時間または労使協定で定めた時間を労働したものとみなします。

こうした労働形態を企業の状況を踏まえて導入することが有効だといえるでしょう。

サービス残業の禁止を徹底。ノー残業デーなどの活用

会社としてサービス残業の禁止を徹底する取り組みとして「ノー残業デー」があります。

企業が、定時で仕事を終えて残業しない日を週に1~2日程度をノー残業デーとして設定し、その日は定時で帰るように従業員に推奨するというものです。

取り組みの歴史は意外と古く、1950年代から1970年代の高度経済成長期に当たり前となっていた長時間労働を改善するために導入が始まったといわれています。

1週間の真ん中で区切りがつけやすいことから、水曜日に設定することが一般的です。大手企業では、導入しているケースは少なくないようですが、形骸化していることもあるようです。

併せて業務改善にも取り組み、実効性を上げる工夫が重要になります。

残業時間内で業務をこなせる目標の見直し

前述の変形労働時間制を導入することで、時間外労働となることなく、繁閑に応じて労働時間を調整することができますが、それでも、時間外の残業は生じてしまいがちです。

無駄な業務の排除、業務の効率化、業務配分の見直しなどの業務改善に取り組むとともに、残業が生じるにしてもその時間内に処理できるように目標を設定することが大切になります。

それでも時間を超えてしまうのであれば、目標自体の見直しをする必要があるでしょう。また、勤怠管理システムを導入し、残業時間を可視化するのも効果的です。

残業を事前申請制にする

残業時間を抑制する方法として、残業の事前申請制もあります。従業員が残業を予め事前に申請し、それに対して上司が承認した場合にのみ残業を認めるというものです。

申請が多い従業員を把握することができるため、部下の抱える業務の進捗の遅滞やトラブルなどがあれば、早期に対応することもできるでしょう。

ただし、承認するに際し、一定のルールを設けなければ、この制度も形骸化する恐れがあります。

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残業がもたらすデメリット

野放図な残業は、企業と従業員の双方に多くのデメリットをもたらします。具体的な対策を講じず、放置していると、取り返しのつかない悪影響を及ぼすリスクもあると考えるべきです。

残業対策に取り組まないと、思わぬ大きな問題とリスクを抱え続けることになります。

従業員の健康状態悪化

すでに社会問題化しているように残業による過重労働は、脳血管疾患や心臓疾患などの重度の疾患につながります。

最悪、過労死という事態になれば、大切な人材を失うだけでなく、企業は遺族から訴えられることにもなります。

最近では、労災認定では過労死よりも、うつなどの精神障害による過労自殺の件数が増加する傾向があり、平成27年12月1日からは、改正労働安全衛生法に基づく「ストレスチェック制度」が施行されています。

義務ではないといえ、企業は従業員のメンタルヘルスに十分に配慮することが求められています。

ダラダラとサービス残業をすることによる、生産性の低下

業務改善も含めた残業削減に取り組まずに放置すれば、生産性は低下するでしょう。

サービス残業がなくならない背景として、労使双方にやむを得ないという意識が醸成され、企業風土となっていることがあります。

従業員も所定時間内に仕事を処理するのではなく、残業が当たり前になっており、効率的に業務処理するという意識が希薄になっています。心身に負荷がかからないような長時間労働であり、労災事故につながらないにしても、従業員の仕事に対するモチベーションはかなり低下している可能性があります。

また、光熱費などの無駄なコストが増えることにもなります。

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従業員の業務管理ならマネーフォワード クラウド勤怠

残業問題の背景、原因、そのデメリットと対策などについて解説してきました。

対策の一つに残業時間の可視化を挙げましたが、勤怠管理システムであれば、「マネーフォワード クラウド勤怠」がおすすめです。

従業員の勤怠状況をリアルタイムに確認できる勤怠チェック機能のほか、裁量労働制、フレックスタイム制などさまざまな雇用形態に対応することができるほか、残業、休日出勤の申請や承認なども行えます。

残業問題の解消に取り組む際は、マネーフォワード クラウド勤怠の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

よくある質問

残業問題とは何ですか?

法定労働時間を超える時間外労働であり、サービス残業や過重労働などの問題を指しています。詳しくはこちらをご覧ください。

残業問題への対策方法には、どういったものがあるか教えてください。

裁量労働制など勤務制度の見直し、事前申請制などがあります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:坪 義生(社会保険労務士)

じんじ労務経営研究所代表(社会保険労務士登録)、労働保険事務組合 鎌ヶ谷経営労務管理協会会長、清和大学法学部非常勤講師、「月刊人事マネジメント」(㈱ビジネスパブリッシング)取材記者。社会保険診療報酬支払基金、衆議院議員秘書、㈱矢野経済研究所、等を経て、91年、じんじ労務経営研究所を開設。同年より、企業のトップ・人事担当者を中心に人事制度を取材・執筆するほか、中小企業の労働社会保険業務、自治体管理職研修の講師など広範に活動。著書に『社会保険・労働保険の実務 疑問解決マニュアル』(三修社)、『管理者のための労務管理のしくみと実務マニュアル』(三修社)、『リーダー部課長のための最新ビジネス法律常識ハンドブック』(日本実業出版社、共著)などがある。

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