- 作成日 : 2022年7月29日
介護保険料はいつから支払う?40歳の誕生月から?
介護保険料の支払いは、40歳になった誕生月から発生します。いつまでという基準はなく、生涯にわたり支払う保険料です。今回は、いつから介護保険料の支払いが発生するのかを具体例をもとに解説します。また、介護保険料がいくら引かれるのかなど、基本情報とあわせて、払わなくていいケースも紹介します。
目次
介護保険料はいつから支払う
介護保険は40歳以上の国民を対象とした保険制度です。介護保険料についての基礎知識と、40歳になったあと、いつから介護保険料が発生するのか、誕生月の具体例をもとに以下で解説します。
介護保険料とは?
介護保険は、介護が必要となる人が少ない負担額で介護サービスを受けられるよう、社会全体で支える仕組みです。介護保険料とは、介護保険制度で徴収される保険料を指し、介護保険の財源は、国や市区町村の予算と、40歳以上の国民が支払う介護保険料から成り立っています。
介護保険制度では、65歳以上の加入者を「第1号被保険者」、40歳~64歳の加入者を「第2号被保険者」と、対象者を2種類に分けて区分しています。「第2号被保険者」の場合は、末期がんや関節リウマチのような加齢や老化を起因とした病気によって要介護・要支援と認定されたときに限定されますが、65歳以上の「第1号被保険者」の場合は、原因を問わず要支援・要介護と認定されれば1~3割の自己負担で介護保険サービスを利用できます。
介護保険制度は、40歳からの加入が義務付けられており、サラリーマンなどの被用者保険加入者は、40歳から64歳のあいだ、健康保険料とあわせて毎月の給料から介護保険料が天引きされます。65歳以上になると「第1号被保険者」に切り替わるため、健康保険料と切り離され、介護保険料として生涯納付が続きます。
介護保険料の支払いは40歳の誕生日の前日の属する月分から
「第2号被保険者」の介護保険料を支払う期間は、「40歳に達した月から65歳に達した月の前月まで」です。
満40歳に達すると、これまでの健康保険料とあわせて介護保険料の徴収がスタートします。支払いが始まるのは、基本的には「40歳を迎える月」からです。たとえば5月10日が誕生日の人は、5月の徴収分から介護保険料の支払いが始まります。ただし、1日が誕生日となる人は注意が必要です。
介護保険料の徴収は「満40歳に達したとき」とされていますが、この「達したとき」は誕生日当日ではなく、誕生日前日を指します。つまり、1日が誕生日にあたる人は、その前日が属する月から介護保険料の支払いが始まります。したがって、「第2号被保険者」の介護保険料を支払う期間は、「40歳の誕生日の前日が属する月分から65歳の誕生日の前日が属する月の前月分まで」と覚えておきましょう。
介護保険料の支払いが始まる具体例
実際に、誕生日の具体例を用いて、介護保険料の支払いタイミングについて見てみましょう。
- 5月2日が誕生日の人
満40歳に達する「誕生日の前日」は、5月1日です。そのため、5月1日から第2号被保険者となり、5月分の支払いから介護保険料の徴収がはじまります。
- 5月1日が誕生日の人
満40歳に達する「誕生日の前日」は、4月30日です。そのため、4月30日から第2号被保険者となり、4月分の支払いから介護保険料の徴収がはじまります。
第2号被保険者の介護保険料は、加入している健康保険料とあわせて徴収される仕組みです。会社勤めであれば、その会社で加入する健康保険の医療保険制度で、給料から天引きされます。実務上は、健康保険の保険料は翌月分の給料から天引きすることになっているため、5月分の介護保険料も6月に支払われる給料から天引きされることも覚えておきましょう。
なお、自営業者などで国民健康保険に加入している人は、国民健康保険料とあわせて徴収されます。
介護保険料はいくら引かれる?
介護保険料の金額は、年齢、住んでいる市町村、所得などによって変わります。介護保険料がいくら引かれるのか、保険料は大きく分けて「40歳から64歳のとき」と「65歳以上のとき」で変わります。
40歳から64歳の介護保険料
40歳から64歳の第2号被保険者は、加入する健康保険制度によって介護保険料の金額が異なります。
・会社勤めの人
会社の健康保険に加入している人は、「標準報酬月額」によって介護保険料が決定されます。標準報酬月額とは、健康保険や厚生年金の保険料や支給額を決定する際に用いられる報酬区分を等級ごとに分けたものです。原則として毎年4月〜6月の給与の平均額を「標準報酬月額表」の等級と照らし合わせて、標準報酬月額が決定されます。標準報酬月額に介護保険料率を掛けたものが、健康保険料といっしょに徴収される仕組みです。
標準報酬月額の詳細については、以下の記事を参考にしてください。
たとえば、協会けんぽが定める介護保険料率は、1.64%です(令和4年3月分)。第2号保険者は健康保険料といっしょに介護保険料が徴収されますので、満40歳になるまでに支払っていた健康保険料率と介護保険料率を加えたパーセンテージで計算されます。
協会けんぽでは、都道府県別の健康保険料額表を公開しています。それによれば、令和4年3月分の東京都の第2号被保険者に該当する場合、保険料率は11.45%となっています。もし、標準報酬月額が「200,000円」の人は、40歳になるまでの健康保険料は19,620円(会社との折半額は9,810円)ですが、満40歳以降は介護保険の被保険者となり、保険料は22,900円(会社との折半額は11,450円)に増加します。この場合、介護保険料の徴収がはじまることで、増える自己負担は1,640円です。
正確な介護保険料は、給与や住んでいる都道府県によって異なりますが、40歳目前の標準報酬月額に介護保険料率を掛け、およそその約半分の金額が、介護保険料として引かれる額と考えられます。
参考:東京都令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表|協会けんぽ
・自営業等で国民健康保険に加入している人
この場合は、被保険者の所得額や一世帯での被保険者の数、資産などに応じて、市区町村が介護保険料を決定し、世帯主が納付義務者となります。具体的には、以下の4つの方法が介護保険料の算出に用いられます。
- 所得割:被保険者本人、あるいは世帯における前年度の所得をもとに決定
- 均等割:世帯の被保険者数によって決定
- 平等割:1世帯当たりの金額として算出
- 資産割:世帯の資産に応じて算出
ただし、平等割や資産割を廃止する市区町村もあり、具体的な算出方法は、住んでいる市区町村によって異なります。
65歳以上の介護保険料
第1被保険者である65歳以上の介護保険料は、市区町村ごとに定める「基準額」をもとに、本人や世帯の所得に応じて決定されます。
基準額とは、「その市区町村で介護サービスにかかる費用」に「65歳以上の方の負担分」を掛け、「その市区町村の65歳以上の人数」で割った金額です。
たとえば、東京都北区のウェブサイトでは介護保険料の年間基準額を73,370円としています。そして所得段階を16段階に分け、段階に応じた保険料率を基準額に掛けたものが、年間の介護保険料となります。
東京都北区の所得段階によれば、生活保護を受給しているなどの第1段階にあたる人の年間介護保険料は22,011円です。
基準額も所得の段階分けも、市区町村によって異なります。介護保険制度は地域保険であり、市区町村が主導となって制度を実施しているため、このような違いが発生するのです。
介護保険料を支払わなくてよいケースはある?
介護保険制度は40歳以上の国民は加入義務のある保険です。そのため、たとえ無職であっても、40歳以上に該当すれば介護保険料の徴収が発生します。ただし、健康保険の扶養に入っている場合や、生活保護を受けている場合など、介護保険料を支払わなくてよいケースもあります。
健康保険の扶養に入っている場合
専業主婦など、健康保険の扶養に入っている人は、40歳以上となっても介護保険料の支払いは発生しません。健康保険の被保険者である配偶者の保険料のなかに、被扶養者の介護保険料も入っているのがその理由です。
生活保護を受給している場合
40歳から65歳までの生活保護受給者は、医療保険に加入することができないため第2号被保険者になれず、介護保険料を支払うことができません。生活保護費から介護サービス費などの費用が賄われることになります。
65歳以上の方の場合、生活保護を受けている場合でも、介護保険料の支払いは免除にはなりません。ただし、65歳以上で介護保険料の支払いが発生する生活保護の受給者へは、支給される金額に保険料が加算されることになり、介護保険料の実質的な負担はなくなります。
介護保険料の支払いタイミングを理解しよう
介護保険料は、満40歳の誕生日から支払い義務が発生します。法律の解釈では、誕生日の前日が「満40歳」のタイミングです。会社で保険料の手続きを行う場合は、従業員ごとの介護保険料の支払いタイミングを確認したうえで、手続きを行いましょう。
介護保険制度は、社会全体で介護サービスを支える仕組みです。そのため、収入の有無に関わらず、一定の年齢に達したら、生涯に渡り介護保険料の支払い義務が発生します。病気や災害、経済的な理由など何らかの事情で介護保険料が支払えない場合は、減免を申請しましょう。
延滞が長期間に渡ると、さかのぼっての納付ができなくなり、それにより介護サービスを受ける際の自己負担が上がるなど、さまざまな弊害が発生します。介護保険の仕組みを正しく理解し、保険料の延滞がないように対応しましょう。
よくある質問
介護保険料はいつから支払いますか?
満40歳の誕生日が属する月から介護保険料の支払い義務が発生します。法律上、「誕生日の前日」が満40歳になった日を指します。そのため、月の1日が誕生日の人は、その前月分から徴収が始まります。詳しくはこちらをご覧ください。
介護保険料はいくら引かれますか?
40歳以上65歳未満の第2号被保険者で会社勤めの人は、標準報酬月額によって算出されます。自営業など国民健康保険に加入している人は所得や世帯人数に応じて保険料が決まり、市区町村によって異なります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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