• 更新日 : 2024年8月21日

社会人基礎力とは?必要な能力とチェック方法、鍛え方を解説

2006年に経済産業省が提唱した社会人基礎力とは、企業や社会が求める「前に踏み出す力」や「考え抜く力」「チームで働く力」です。転職が一般化する中、従業員にとっても重要な能力です。

本記事では、社会人基礎力について解説します。能力を診断するチェックシートや鍛え方も紹介しますので、従業員の能力開発に活用してください。

社会人基礎力とは?

社会人基礎力とは、経済産業省が2006年に提唱した社会人に求められる能力のことです。同省では、社会人基礎力を「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」と定義づけています。

経済環境の変化や技術革新、少子高齢化による人手不足が急速に進む中、企業を維持・発展させるために社会人基礎力を持った人材が求められています。

また、転職が当たり前となり定年後も仕事を続ける人が増える中、従業員も社会人基礎力を身につけて自分でキャリア形成を行うことが必要になってきました。

社会が求める人物像

現在の社会や企業が求めるのは、変化に柔軟に対応するため自分で考え組織を巻き込んで行動できる人材です。

安定した経済成長が続いている時代は、会社の指示に従いまじめに働いてくれる人材が求められました。しかし、変化の激しい現在、求められる人物像は変わってきています。

「自分で考え組織を巻き込んで行動できる」能力こそが、社会人基礎力を構成する「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」です。

社会人基礎力が求められるようになった背景

社会人基礎力が求められるようになった背景には、以下の3つの変化があります。

  • VUCA時代
  • 終身雇用から転職の時代
  • 人生100年時代

それぞれについて解説します。

VUCA時代

VUCA(ブーカ※)時代とは、変化が激しく予測困難な時代のことです。変化によってビジネスモデルの転換を迫られたり、従来のスキルやノウハウが急速に陳腐化したりすることもあります。VUCA時代では、変化への対応力が企業や個人の将来を左右します。

※Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの頭文字をとった言葉。

終身雇用から転職の時代

日本では終身雇用制度が崩れて、転職が当たり前の時代になりました。転職すると前の勤務先の常識や業界の常識が、通じないこともあります。どの会社でも業界でも通用する普遍的な社会人基礎力が必要とされます。

人生100年時代

人生100年時代と呼ばれるようになり、高齢者の就業率が高まっています。60歳定年で引退するなら、多少古くなったスキルや経験でも定年まで仕事を続けられるかもしれませんが、定年後も仕事を続ける(または転職する)にはリスキリング(※)が必要です。

※職業上のスキルや知識を新たに身につけること。

社会人基礎力に3つの視点(何を学ぶか、どのように学ぶか、どう活躍するか)が新たに加えられた理由の1つは、人生100年時代を迎えたことです。

社会人基礎力はいつから身につける?

経済産業省の社会人基礎力養成モデルでは、能力の習得は就学中からはじまっています。企業にとっては、中核社員として成長を期待する新入社員や若手社員に、早い時期から社会人基礎力を身につけさせることが重要です。

人生100年時代の社会人基礎力の気づきの設定

引用:「人生100年時代の社会人基礎力」の概念|経済産業省

しかし、人生100年時代で職業人生が長くなる中高年の従業員にとっても、社会人基礎力を身につけて新たなキャリアを歩むことは有益であり、企業にもメリットです。

人生100年時代における従業員に対する企業の役割は、「従業員を雇用し続けて守ること」から「自社および社会で活躍し続けられるように支援すること」へ変化しています。

参考:「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」(人材力研究会)報告書|経済産業省・中小企業庁

社会人基礎力の3つの能力と12の要素

経済産業省が定義する社会人基礎力とは、以下の3つの能力です。

  • 【Action】前に踏み出す力
  • 【Thinking】考え抜く力
  • 【Teamwork】チームで働く力

3つの能力と各能力を構成する12の要素について解説します。

社会人基礎力の3つの能力と12の要素

引用:「人生100年時代の社会人基礎力」とは|経済産業省

【Action】前に踏み出す力

「前に踏み出す力」とは、難しい課題や未経験の業務にチャレンジする能力です。上司の指示ではなく自分で判断し、困難や失敗があっても目標に向かって取り組む力が求められています。

「前に踏み出す力」を構成する要素は以下のとおりです。

  • 主体性:自分で考え自ら行動する力
  • 働きかけ力:同僚や関連部署を巻き込む力
  • 実行力:障害を克服して目標を達成する力

【Thinking】考え抜く力

「考え抜く力」とは、課題意識を持って現状を観察し、疑問や課題を解決するために主体的に考える能力です。従来の考え方にとらわれることなく、問題の本質を捉え独自の(または創造的な)解決策を見つけ出す思考が必要とされます。

「考え抜く力」を構成する要素は以下のとおりです。

  • 課題発見力:現状の問題点や課題を発見し、認識する力
  • 計画力:課題解決に向けて必要な作業工程を洗い出し、整理する力
  • 創造力:従来のやり方や考え方から脱却し、新しい価値やアイデアを生み出す力

【Teamwork】チームで働く力

「チームで働く力」とは、問題解決のために組織として協働して取り組む体制や状況を作る能力のことです。組織内のメンバーがお互いに信頼し協力して仕事に取り組むことによって、大きな成果が期待できます。

「チームで働く力」を構成する要素は以下のとおりです。

  • 発信力:自分の意見を整理し、相手にわかりやすく伝達する力
  • 傾聴力:相手の意見を丁寧に聞き、本音を聞き出す力
  • 柔軟性:意見や立場の違いを理解し、異なる意見を尊重する力
  • 状況把握力:自分と周囲の人や物事との関係性を理解し、適切に行動する力
  • 規律性:社会や組織のルールを守り、倫理観を持って行動する力
  • ストレスコントロール力:ストレスを抑え、モチベーションを保つ力

社会人基礎力に新たに3つの視点が追加

人生100年時代を迎え、社会人基礎力に以下の3つの視点が追加されました。変化が激しく予測困難な時代、職業生活が長期化する時代には、学びと学びを仕事に活かすことが重要です。

  • 【学ぶ】何を学ぶか
  • 【統合】どのように学ぶか
  • 【目的】どう活躍するか

それぞれの視点について解説します。

人生100年時代の社会人基礎力

引用:社会人基礎力|経済産業省

【学ぶ】何を学ぶか

「何を学ぶか」とは、学び続けることを学ぶことです。長い職業生活の中では、従来の知識やスキルだけでは満足な仕事ができません。生涯現役として第一線で活躍するには、仕事をしながら常に新しいことを学び続けることが重要です。

【統合】どのように学ぶか

「どのように学ぶか」とは、新しく学ぶこととこれまで培った知識や経験をどのように組み合わせるかを考えることです。また、多様な人材が持つ知識や経験をうまく組み合わせて、新たな価値を生み出すことも含まれます。

【目的】どう活躍するか

「どう活躍するか」とは、自己実現や社会貢献に向けて行動することです。目的が明確だと、何をどのように学べばいいかが正しく判断でき、効果的に学べます。転職やキャリアアップなどをイメージして、目的を実現するための行動力が求められます。

社会人基礎力のチェックシート

従業員の社会人基礎力を高めるには、従業員一人ひとりの能力の現状を知ることが重要です。社会人基礎力の現状を測定するためには、チェックシートを利用するのが簡単です。

厚生労働省や経済産業省がチェックシートを提供しているので、利用を検討してみましょう。

参考:エンプロイアビリティチェックシート 総合版|厚生労働省
参考:インターンシップ・社会人基礎力自己点検シート|経済産業省

社会人基礎力を鍛えるには?

社会人基礎力を鍛える主な方法は以下のとおりです。

  • 現在の自分を客観視する
  • 苦手なものにも取り組む
  • 具体的な行動を起こす
  • 反省・振り返りを行う
  • 他社からのフィードバックを受け入れる

それぞれの方法について解説します。

現在の自分を客観視する

最初に、自分の社会人基礎力を客観的に把握することが大切です。前述のチェックシートを使ったり、上司や同僚の意見を聞いたりすることで、自分の強味と弱味を把握しましょう。

的確に自己分析できれば、不足する能力や鍛えるべき能力が明らかになります。

苦手なものにも取り組む

社会人基礎力を高めるには、得意な能力を更にレベルアップする方法と不得手な能力を平均レベルまで引き上げる方法などがあります。

一般的に、得意分野は取り組みやすく、苦手分野は敬遠しがちです。しかし、苦手の克服が社会人基礎力を大きく高めることもあります。

たとえば、観察力や創造力、実行力を兼ね備えた人材でも、協調性に欠けチームプレイが苦手だという人もいます。周囲の協力がないため優れた能力を発揮できない場合、鍛えるべきは「チームで働く力」です。

具体的な行動を起こす

頭で考えたり、研修を受けたりするだけでは、社会人基礎力のレベルアップには限界があります。具体的に行動を起こすことが重要です。

たとえば、従来の仕事のやり方に疑問を感じたら、改善策を検討したうえで課題や問題点を指摘し、改善提案をしてみましょう。課題発見力や発信力が高まります。

反省・振り返りを行う

社会人基礎力を鍛えるために取り組みをはじめたら、途中で取り組みに対する反省や振り返りをしましょう。「どのくらい力が身についたか」や「取り組みの方向性は間違っていないか」、「改善策はないか」などをチェックしてみましょう。

最初に行った社会人基礎力チェックシートを活用したり、周囲の意見を聞いたりすることも役に立ちます。

他者からのフィードバックを受け入れる

研修会社や大学などで実施している人材育成研修などに参加して、自分の社会人基礎力についてのフィードバックを得ることもおすすめです。第3者の目によって徹底的に自己分析してもらえます。

また、自分では思いつかなかった取り組み方や、改善策を提案してもらえることも期待できます。

企業が社会人基礎力をサポートする方法

転職やジョブ型雇用が一般化すると、終身雇用の代わりに、従業員が社会人基礎力を身につけるためのサポートが企業に求められるようになります。企業がサポートする主な方法は以下のとおりです。

  • 社会人基礎力を人事評価項目とし、目標の設定や中間フォロー、評価のフィードバックなどにより意識付け・強化を図る
  • 従業員が自主的に能力発揮しやすい職場環境づくりを行う
  • 従業員を社内・社外の研修に参加させる

企業と従業員が協力して社会人基礎力を高めよう

社会人基礎力とは、現在の日本社会で仕事をするために必要な基礎的な力です。社会人基礎力には本記事で解説した3つの能力があり、人生100年時代を迎え新たな視点が加わりました。

環境変化が激しく人材の流動化が進む現在、企業の維持・発展と従業員のキャリア開発・形成にとって社会人基礎力の必要性は高まっています。企業と従業員が協力して、社会人基礎力を高めるために取り組みましょう。


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