• 更新日 : 2026年7月3日

等級制度の作り方とは?種類や設計の仕方、導入事例を解説

Point等級制度はどのような手順で作ればよいのでしょうか?

現状分析から等級の種類や数の決定、定義づくり、制度全体の連携まで、7つのステップで設計します。

  • 職能・職務・役割の3種類から自社に合う制度を選ぶ
  • 企業規模に応じて適切な等級数を決める
  • 評価・報酬制度と連動させ、給与レンジを設定する

導入前にシミュレーションで検証し、移行時は等級が下がる従業員へ丁寧にケアすることが大切です。

「等級制度を整備したいが、何から手をつければいいかわからない」「自社に合った制度の設計方法が見えてこない」など、悩みを抱える経営者や人事担当者は多いでしょう。

等級制度は、人材育成や評価、報酬制度の土台となる重要な仕組みです。

しかし、設計を誤ると、評価への不満や社員のモチベーション低下、人材流出などを招く可能性があります。そのため、自社の組織課題や事業戦略に合った制度の構築が欠かせません。

本記事では、等級制度の基本的な考え方から、現代の企業環境に適した制度の種類、具体的な設計手順までをわかりやすく解説します。

そもそも等級制度とは?

等級制度とは従業員の能力、職務、役割などに応じて序列や階層を定め、人材マネジメントの土台を築く人事制度の根幹です。

評価基準の明確化や人材育成の指針の提示、報酬決定の根拠づくりといった重要な機能を担います。上位等級に必要な要件が明示されるため、従業員が自身のキャリアやスキル向上に向けた目標を立てやすくなるのが特徴です。

近年は、ジョブ型雇用の普及や人的資本経営への関心の高まり、多様な働き方の浸透などにより、従来の年功序列型の制度では専門性・成果・貢献度を適切に評価しきれないケースが増えています。

そのため、専門性や成果、組織への貢献度を適切に評価できる戦略的な等級制度への見直しが必要です。

等級制度について詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

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等級制度の種類と特徴

等級制度にはいくつかの代表的な種類があり、それぞれに異なる特徴があります。自社の企業文化や事業内容、目指す組織像に合わせて、最適な制度を選択することが重要です。ここでは主要な3つの制度と最新の考え方を紹介します。

職能資格制度(メンバーシップ型)

職能資格制度は、従業員が持つ職務遂行能力(潜在的な能力)に着目して等級を決定する制度です。長期間にわたる雇用を前提とし、ゼネラリストの育成に適しています。従業員にとっては、幅広い経験を積むことで等級が上がる安心感がありますが、能力と実際の職務内容が乖離しやすいという側面も持ち合わせています。たとえば、等級は高いのに担当業務の難易度が低く、給与水準と業務内容が合わないケースが生まれやすい制度です。

職務等級制度(ジョブ型)

職務等級制度は、「人」ではなく「仕事(職務)」の価値や難易度を評価し、等級を決定するものです。同一労働同一賃金の考え方に近く、たとえば高度な専門知識が求められるエンジニアや研究職など、スペシャリストの処遇に適しているとされています。職務記述書(ジョブディスクリプション)の作成が必要であり、職務内容と報酬の対応が明確になるため、処遇の公平性が高いとされます。

一方で、ジョブディスクリプションの作成・維持に工数がかかること、組織変更時に職務定義の見直しが必要になることが課題です。

役割等級制度(ハイブリッド型)

役割等級制度は、従業員が担う「役割(ミッション)」の大きさに応じて等級を決定するものです。職能と職務の考え方を合わせたハイブリッド型とも言え、従業員に与えられた役割と成果を評価基準とします。変化の激しい現代において、役職や職務内容に縛られず、柔軟な人材配置や抜擢を可能にする制度として導入が進んでいます。

ただし、役割の定義が曖昧になりやすく評価のばらつきが生じやすいのがリスクです。

等級制度の作り方

等級制度を効果的に機能させるには、自社の経営方針や人材戦略に沿って設計することが重要です。

ここでは、等級制度を構築する際の基本的な流れと、制度設計で押さえておきたいポイントを解説します。

1. 現状を分析し、目的を明確にする

等級制度を設計するには、現在の人事制度や組織運営における課題を洗い出し、改善すべき点を明確にすることが重要です。

従業員へのアンケートやヒアリングを実施し、評価への不満やキャリア形成に関する課題を把握すると、制度設計の方向性を定めやすくなります。

そのうえで、自社が求める人材像や将来の組織像を整理し、等級制度により何を実現したいのか目的・方針を明確にすると、経営戦略と連動した制度を構築できます。

現状分析の方法について知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

2. 等級の種類を決める

導入目的や経営方針を踏まえ、自社の組織課題や事業フェーズを整理して、職能等級・職務等級・役割等級の中から自社に適した制度を選択します。

等級制度 向いている企業 特徴
職能等級 長期的な人材育成を重視する企業 従業員の能力やスキルの向上を評価する
職務等級 職務内容や責任範囲を明確にしたい企業 担当する職務の価値や難易度を基準に評価する
役割等級 変化の速い環境で成果創出を重視する企業 担う役割や期待成果に応じて評価する

制度選定に迷う場合は、自社が重視するものを基準に考えましょう。

  • 人材育成を重視したい → 職能等級
  • 職務や責任範囲を明確にしたい → 職務等級
  • 成果や役割に応じた柔軟な処遇を実現したい → 役割等級
  • 若手育成と成果評価の両立を図りたい → 複数の組み合わせを検討

また、現在の組織だけでなく、将来的な組織拡大や事業変化への対応力も考慮することが重要です。たとえば、創業期は職能等級を中心に運用し、組織拡大に合わせて役割等級や職務等級を取り入れるといったように変化させます。

3. 等級数を決める

組織規模や人材構成に応じて、従業員の成長段階やキャリアパスを適切に表現できるように、適切な等級数を設定します。

等級数の目安は、下記のとおりです。

  • 小規模企業(従業員10~99人):3~5等級
  • 中規模企業(従業員100~999人):5~8等級
  • 大規模企業(従業員1,000人以上):8~12等級

ただし、等級数が多すぎると制度が複雑化し、運用・評価が煩雑になるため、細分化しすぎないよう注意しましょう。

組織の実態に合ったバランスのよい階層設計を行うことで、運用しやすい制度を構築できます。

4. 等級ごとに定義・要件を作成する

各等級に期待される役割や能力、責任範囲を明確に定義し、従業員が目指すべき基準を示しましょう。等級要件は、全職種共通または職種別に設計します。

  • 下位等級:チーム目標を理解し、自身の役割を遂行する
  • 中位等級:後輩の指導を行い、チームの目標達成に貢献する
  • 上位等級:部門全体の課題を解決し、事業の成長を牽引する

また、評価や昇格の判断基準となる項目も設定しておくことが重要です。

  • 成果基準:定量的・定性的な成果指標
  • 評価期間:昇格・昇進の評価タイミング
  • 行動要件(コンピテンシー)
  • マネジメント責任の範囲(部下の有無・チーム規模など)

基準を示すことで、従業員は必要な実績や行動を理解し、具体的なキャリア目標を描きやすくなります。

5. 評価制度・報酬制度と連携する

評価制度・報酬制度と連動させ、人事制度全体に一貫性を持たせることが大切です。具体的には、以下の2点を整備します。

  • 評価基準の明確化:昇格・降格の判断基準と評価方法を定め、各等級で求められる役割・成果と評価内容を結びつけて公平性・透明性を高める
  • 給与レンジの設定:等級ごとに給与レンジを設け、成果や組織への貢献度が処遇に反映される仕組みを整える

評価・等級・報酬が連携することで制度全体の信頼性が高まり、従業員の納得感やモチベーション向上につながります。

6. シミュレーションを実施する

等級制度の導入前に、実際の従業員を想定してシミュレーションを行い、制度設計が適切に機能するか検証しましょう。

  1. 等級基準にもとづき、実際の従業員を各等級に仮配置する
  2. 等級基準と配置結果にズレがないか確認する
  3. 評価制度・報酬制度と連携し、処遇に不公平が生じないか検証する
  4. 昇格・降格の判断が適切に行えるか確認する

シミュレーションの結果、ズレや不公平が生じた場合は修正が必要です。修正は「配置を基準に合わせる」ではなく、「基準を実態に合わせる」のが原則です。等級基準の見直し・例外ルールの策定などを検討しましょう。

7. 従業員への周知と移行措置をとる

等級制度を導入する際は、制度改定の目的や背景、評価方法、運用ルールなどを従業員へ丁寧に説明し、十分な理解を得ることが重要です。

説明会や資料配布に加え、質疑応答の機会を設けると、制度変更に対する不安や疑問を解消しやすくなります。

また、新制度への移行で従業員が不利益を受けないよう、経過措置を設けることも大切です。たとえば、一定期間は旧制度との調整を行うなど、段階的な移行を進めると混乱を防げます。

特に、新制度への移行で等級が下がる従業員には、個別面談で丁寧にケアしましょう。

等級制度の設計で注意すべきポイント

綿密なステップを踏んで設計しても、いくつかの注意点を見過ごすと制度が形骸化してしまう恐れがあります。ここでは、等級制度を成功に導くために特に意識すべき5つのポイントを挙げます。

経営戦略との連動性を確保する

等級制度は、それ自体が目的ではありません。企業の経営戦略や事業目標を実現するための手段です。たとえば、新規事業の創出を目指すのであれば、挑戦的な行動や新しいスキル習得を評価する要件を盛り込む必要があります。常に経営の方向性と足並みを揃え、事業の成長を後押しする役割を果たすことが望まれます。

従業員の納得感を醸成する

従業員が制度を信頼し、前向きにキャリアを考えるためには、その仕組みが透明であることが大切です。等級の定義や評価基準が公開されており、誰もがその内容を理解できる状態を目指しましょう。なぜその評価になったのか、どうすれば次の等級へ上がれるのかが明確であれば、従業員は自律的に成長しようと努力します。

運用後の定期的な見直しと改善を行う

企業を取り巻く環境や事業フェーズは常に変化します。一度設計した等級制度が、未来永劫にわたって最適であり続けることはありません。制度導入後も、定期的に従業員からのフィードバックを得たり、運用状況を分析したりすることが大切です。状況の変化に合わせて柔軟に制度を改善していく姿勢が、その実効性を維持します。

公平な評価基準を設定する

等級制度を適切に運用するためには、評価項目や判断基準を明確に定め、評価者ごとのばらつきや主観的な判断を抑えることが重要です。

以下2つをバランスよく組み合わせましょう。

  • 定量評価:売上や生産量など数字で表せるもの
  • 定性評価:リーダーシップや課題解決力、組織への貢献度など数字で表せないもの

定量評価のみでは成果に至るプロセスを評価しにくく、定性評価のみでは評価者の主観が入りやすくなります。「目標達成率80%以上」「業務改善提案を実施している」など、評価基準を具体的な行動や、成果レベルに落とし込むことが大切です。

さらに、評価基準のマニュアル化や評価者研修を実施し、評価基準の解釈を統一しておくと、公平性の高い制度運用につながります。

従業員の意欲向上につなげる制度設計にする

等級制度は、従業員の成長や挑戦を後押しする視点を取り入れることが重要です。

そのため評価結果だけを伝えるのではなく、1on1などの対話の機会を設けて、現在の等級に至った理由や今後のキャリアステップについて共有しましょう。

また、評価に同僚やチームメンバーからのフィードバックを取り入れることで、上司だけでは把握しきれない日常的な貢献や、協働姿勢も反映しやすくなります。プロセスや周囲への貢献を適切に評価すれば、自身の働きが認められている実感につながり、従業員の納得感や成長意欲を高められます。

従業員の意欲を高めるコツを知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

専門家の意見も取り入れる

等級制度の設計には専門知識が求められるため、外部の専門家を活用するのも有効です。

相談先 対応シーン
人事コンサルタント 制度設計・導入後の見直し・評価基準の改定
社会保険労務士 就業規則の整備・労働法規対応・法改正への対応

専門家に相談することで、他社事例や専門知識を活用しながら制度を設計できるため、設計の抜け漏れ・手戻りを防ぎやすくなります。

また、制度導入後の見直しや改定時にも専門家の支援が有効です。

経営陣との合意形成でサポート体制を整える

等級制度は、組織運営のあり方や企業風土にも影響を与えるため、経営陣の理解と協力が必須です。

制度を継続的に機能させるには、制度運用の責任者や運用ルールを明確にし、定期的に制度の運用状況・課題を確認する体制を整えましょう。制度導入後に課題が発生しても、迅速に対応しやすくなります。

また、経営陣には制度導入後も、経営会議で制度運用の状況を共有したり、説明会・社内発信を通じて制度導入の目的や期待する行動を従業員へ伝えたりするなど、継続的に関与してもらうことが大切です。

経営陣自らが発信することで、従業員の理解が深まり、制度の浸透と定着を促進しやすくなります。

等級制度は何段階が良い?

等級数の設定は、企業規模に応じて検討するのが一般的です。

  • 小規模企業(従業員10〜99人):3〜5段階
  • 中規模企業(従業員100~999人):5~8段階
  • 大規模企業(従業員1,000人以上):8〜12段階

ただし、適切な等級数は、組織構造やキャリアパスの設計方針も踏まえましょう。管理職・専門職など複数のキャリアコースを設ける場合は等級数が増える傾向があり、シンプルな組織構造であれば少ない等級数でも運用できます。

また、等級数は、多すぎず少なすぎないバランスが重要です。多すぎると昇格基準の管理や運用負荷が増し、少なすぎると従業員が成長・キャリアの見通しを持ちにくくなります。

4段階の等級制度を作る場合

中小企業が等級制度を導入する際は、4段階程度の等級体系が目安です。

最初から多段階の制度を設計するのではなく、シンプルな等級体系から始めると、運用負荷を抑えながら実効性の高い仕組みを構築できます。

等級 名称 役割
1級 育成層 上司や先輩の指導を受けながら基礎知識や業務の進め方を習得し、ルールに沿って業務を遂行する段階
2級 実務担当層 担当業務を自立して安定的に遂行し、年間業績目標の達成を通じて業績に貢献する段階
3級 中核人材層 中核人材として高い業績を継続的に上げつつ、後輩育成や業務改善にも主体的に取り組む段階
4級 管理職層 マネジメント層としてチーム成果に責任を持ち、目標達成の牽引と組織運営・生産性向上を担う段階

等級基準には、業績目標の達成度などの成果指標と行動要件の両方を設定し、自社の事業規模や業種に合わせて基準を設けることが重要です。

昇格条件を具体化すると、社員は求められる成果や行動を理解しやすくなり、成長目標を明確に描けます。

8段階の等級制度を作る場合

組織規模の拡大に伴い、同じ等級内で社員の能力や成果、担う役割に大きな差が生じる場合は、等級を細分化した8段階制度への移行が有効です。

等級 名称 役割
ランク1 新人 基礎知識や社内ルールを学びながら戦力化の土台を築き、スキルを習得する段階
ランク2 一般 基本業務を手順に沿って安定的に遂行し、組織の一員として責任ある行動をとる段階
ランク3 中堅 上司の助言を受けつつ業務を遂行し、必要に応じて報告・相談しながら一定の自立性を持つ段階
ランク4 上級 業務を自立して安定的に遂行しつつ、知識や経験を活かして周囲を支援する段階
ランク5 主任 業務改善や課題解決を主体的に推進し、後輩育成を通じてチーム成長に貢献する段階
ランク6 課長 管理職として業務プロセス改善やマネジメントを担い、チーム全体の成果最大化を図る段階
ランク7 部長 新たな仕組みや業務プロセスを設計し、中長期視点で組織変革や部門横断の課題解決を主導する段階
ランク8 執行役員 経営層として全社視点で収益モデルや成長戦略を構築し、企業価値向上と経営目標達成を牽引する段階

等級数を増やすことで、成長段階に応じた評価や処遇を行いやすくなり、キャリアパスも明確になります。

ただし、中小企業では4段階程度のシンプルな制度から始め、組織の成長や人員増加に合わせて段階的に等級を増やしていくのが現実的です。

等級制度の導入事例

マネーフォワードでは事業拡大に伴い、従業員数が約200人から2,000人規模へ成長し、デザインチームも数年で約5倍に拡大。既存の能力定義や評価基準では、職種・役割の変化に対応しきれなくなりました。

そこで、デザイナー向けの等級制度と能力定義の見直しを実施しました。各グレードで求められるスキル・役割を整理し、「どのような挑戦や成長機会が得られるか」も能力定義の中に明文化しています。

デザイナーは定性的な評価になりがちなため、上司とメンバーが対話を通じて「目指す状態」を具体的にすり合わせられる仕組みを設けています。

また、横断的な支援を担う専門組織「Design Ops」も設置。各事業部で自律的に制度運用を進めつつ、能力定義のアップデートやマネジメント研修を一元管理で対応することで、評価・育成の一貫性を維持しています。

参考:「機会」を活かして成長につなげる。マネーフォワードの評価制度とデザイン組織改革を追う|CULTIBASE


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