• 更新日 : 2023年10月24日

年末調整の未済とは?確認と対応の方法について解説!

給与所得者は、年末に勤務先から源泉徴収票を受け取ります。源泉徴収票には、年末調整後の正しい給与所得額や所得控除額、納税額、特別徴収普通徴収などの分類が確認できます。一方、年末調整が行えない人は「未済」として扱われ、確定申告などの対応が必要となるのです。本記事では、年末調整における未済の概要や対応方法を解説します。

年末調整の未済とは?

給与所得者は、毎月の給与やボーナスから所得税を源泉徴収されます。

この源泉徴収は年間の収入を概算して行われるため、本来納めるべき年税額とは必ずしも一致しません。こうした過不足額の精算を目的に行われるのが年末調整です。

年末調整を行わないと収入や控除などの正確な計算ができず、所得税の納税額に過不足が生じることもあります。このような状況を「年末調整の未済」といいます。

年末調整において、未済として扱われる状況としては以下のような例があります。

  • 年の途中で退職し、年内に再職しない場合
    年の途中で退職した場合、企業は年末調整を行うことができません。
    年内に再就職した場合、前勤務先の退職時に受け取った源泉徴収票を新しい勤務先に提出すれば、12月に合算して年末調整が行われます。しかし、年内に再就職しない場合には年末調整が行われないため、確定申告が必要です。
    また、例外として、退職が12月末である場合には退職した勤務先で年末調整が行われます。
  • 副業やアルバイト、パートなど、複数の企業から収入を得ている場合
    複数の勤務先から給与を受け取っている場合、最も収入の多い勤務先1社のみで年末調整が行われ、それ以外の勤務先では年末調整未済となります。未済となった収入については確定申告が必要です。
  • 年収2,000万円以上の場合
    年収が2,000万円以上の場合、確定申告の必要があるため、年末調整での税金の精算は行われません。
  • 住宅ローン控除を受ける場合
    住宅ローン等を利用して住宅の新築や中古住宅の購入、増改築などを行った場合には毎年住宅ローン控除が受けられますが、そのためには初年度に確定申告が必要です。そのため、年末調整は未済とされます。

参考:
中途退職で年末調整を受けていないとき|国税庁 
年末調整のしかた P6表内「年末調整の対象とならない人」|国税庁 
住宅ローン控除を受ける方へ|国税庁 

年末調整の未済は源泉徴収票で確認できる

では、年末調整が行われたかどうかを確認するにはどうしたら良いでしょうか。

年末調整が終了すると、源泉徴収票を受け取ります。

源泉徴収票には、確定した収入額や給与所得控除後の金額、それ以外の所得控除の金額、源泉徴収額などが記載されています。年末調整が未済であるかどうかを知るには、以下の点を確認しましょう。

  • 摘要欄に「年調未済」と記載されている
  • 「給与所得控除の金額」欄や、扶養控除などの欄が空欄になっている
  • 乙蘭の部分に丸やチェックなどの印が入っている
    (乙蘭は、副業やアルバイト、パートなどの掛け持ちをしている場合にチェックされます。)

また、摘要欄に「普通徴収」と記載されている場合があります。これは毎月所得税と共に給与から天引きされている住民税に関する記載です。

住民税は地方税であり、国税である所得税とは別に徴収される税金です。前年の収入をもとに計算され、通常、6月から翌年5月までの分を一括または4回に分けて納付することになっています。これを「普通徴収」といいます。

対して「特別徴収」とは、事業者が毎月の給料の支払時に給料から差し引いて徴収し、従業員に代わって納入する制度です。そのため、前年に給与の支払いを受けている人については「特別徴収」として給与から天引きされます。

年末調整が未済だった場合どうすればよい?

年末調整が未済のまま必要な対応を行わないでいると、さまざまな控除が受けられず、給与を受け取っていた期間に所得税を多めに納めていたとしても修正されません。

また、給与所得には残業代や休日出勤手当、一定額以下の出張旅費、通勤費、そのほかの各種手当など、勤務先から支給されるさまざまな手当も含まれます。なかには残業や休日出勤など、1年のうち繁忙期にしか発生しない手当もあるでしょう。仮に裁量労働制の仕事であったとしても、場合によっては時間外手当の支払いが発生するケースもあります。

そのため、年末調整の未済をそのままにしていると、手当を受給していない時期の分も含めて概算で計算されてしまい、収入が高く見積もられ、所得税額が高くなってしまうことにもなりかねません。そもそも、正しい申告がなされないことにより、意図していなくても申告漏れと判断され、ペナルティが科される場合もあるのです。

では、年末調整が未済であった場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。パターン別にみていきましょう。

  • 年の途中で退職し、年内に再就職した場合
    退職時に受け取った源泉徴収票を新しい勤務先に提出します。年末調整は新しい勤務先で行われるため、自分で申告などを行う必要はありません。
  • 年の途中で退職し、年内に再就職しない場合
    12月末の時点で再就職していない場合には、年末調整を行うことができません。そのため、確定申告が必要です。年内に給与所得があって年末調整が未済の場合には、確定申告をすることにより正確な所得税額が計算され、これまで納めた額よりも多ければ還付され、少なければ納付することになります。
  • 副業やアルバイト、パートなど、複数の企業から収入を得ている場合
    会社役員などで複数の企業で収入を得ていたり、副業やアルバイト、パートなどを掛け持ちしていたりする場合は、最も収入の多い勤務先1社でのみ年末調整が行われます。そのほかの収入については、確定申告が必要です。申告せずにいると、追徴課税(加算税、延滞税)が発生することもあるため、注意が必要です。
  • 年収2,000万円以上の場合
    給与の年間収入額が2,000万円を超える場合には、年末調整は行われず、自分で確定申告をしなければなりません。

確定申告とは、源泉徴収されていない所得税について自主的に収入を申告し、税金を納める手続きです。自営業者や法人、所得の多い人などが行うものというイメージがありますが、実際には年末調整の未済で税額が確定していない場合にも、申告が必要です。

確定申告期限は、収入を計算した年の翌年2月16日から3月15日までの間とされており、申告時に所得税を納付することになっています。

源泉徴収されている給与以外に収入がある場合や、中途退職して年末調整が未済となっている場合には、必ず確定申告を行いましょう。

参考:
給与所得となるもの|国税庁
給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁
中途退職で年末調整を受けていないとき|国税庁

年末調整が未済の場合には忘れず対応しよう!

会社員が受けられる「給与所得控除」は、収入の額に応じて決められた計算式により計算されます。計算された給与所得控除額を収入額から引き、そこからさらに扶養控除や所得控除を引いた額を収入として計算した税額が、正しい納税額となります。これまで解説した内容からもわかるように、年末調整で控除を行うことによって、納税額は大幅に変わってくるのです。

さまざまな理由により年末調整を受けられない場合や、受け取った源泉徴収票に「年調未済」の記載があった場合には、原因を確認し、新しい勤務先に提出したり、確定申告を行ったりするなど適切な対応を行いましょう。

税金に関する内容であるため、忘れると追徴課税などのペナルティが科される場合もあります。忘れないように注意しましょう。

よくある質問

年末調整の未済とは何ですか?

年末調整が済んでいないことです。年の途中で退職した人など、12月末の時点で企業が年末調整の計算を行うことができない場合、年末調整の未済となります。源泉徴収票の摘要欄に「年調未済」と記載されているかどうかで判断できます。 詳しくはこちらをご覧ください。

年末調整が未済の場合にはどうすればよいですか?

年内に再就職した場合には、新しい勤務先に元の勤務先の源泉徴収票を提出し、合算して年末調整を行ってもらいます。そうでない場合には、自分で確定申告を行う必要があります。 詳しくはこちらをご覧ください。


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