• 更新日 : 2024年3月19日

中小企業でも義務化のパワハラ防止法とは?防止対策や具体例、事例を解説

パワハラとは力関係によって起こる嫌がらせ行為を指します。職場においては優位に立つ者が言葉や態度、行動で、立場の弱い者の就業を邪魔することがパワハラに該当し、身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係の切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害の6種類があります。中小企業も含め、企業はパワハラを防止する責任を負います。

中小企業でも義務化のパワハラ防止法とは?

パワハラ防止法の正式名称は「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」です。一般的には略して「労働施策総合推進法」と呼ばれます。事業主はパワハラの防止に努めなければならないことを定めた法律で、2020年4月から施行されました。2年間の猶予期間を経て、2022年4月から中小企業にも適用されています。

義務違反をした場合の罰則は?

パワハラ防止法には罰則が規定されていません。そのため企業がパワハラ防止に向けた努力義務を履行しなかった場合でも罰金などに処されることはありませんが、厚生労働大臣が必要だと認めた場合には助言や指導、勧告が行われます。勧告に従わないときには、企業名が公表される場合があります。

パワハラ防止法が義務化された背景

パワハラ防止法によって企業にパワハラ対策・防止策を講じることが義務化された背景には、相談の増加が挙げられます。2022年度の総合労働相談センターへの相談事項で、もっとも多かった内容は「いじめ・嫌がらせ」でした。相談件数は69,932件で、前年度比18.7%増、11年連続で最多となっています。

また働き方改革の推進により誰もが働きやすい職場づくりが求められるようになったことも、パワハラへの対策・防止策が事業主の責務とされた背景とされています。

職場におけるパワハラの定義と具体例

職場におけるパワハラは、次の3点をすべて満たすものと定義されています。

  • 優越的な関係を背景とした言動であること
  • 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動であること
  • 被害者の就業環境を害するものであること

ただし業務上必要かつ相当な範囲内で行われるものは適切な指示や指導であるとして、パワハラには該当しません。

身体的な攻撃

暴行や傷害が身体的な攻撃に該当します。具体例には以下のような言動が挙げられます。

  • 平手打ちする
  • 殴る
  • 足蹴りする
  • 物を投げつける

精神的な攻撃

脅迫や名誉毀損、侮辱、暴言が精神的な攻撃に該当します。具体例は以下の通りです。

  • 性的自認や性的嗜好を否定することを言う
  • ミスに対して長時間にわたって厳しい叱責を繰り返す
  • 他の従業員の前で、繰り返して威圧的に叱りつける
  • 能力を否定した、罵倒するようなメールを複数人に宛てて送信する

人間関係からの切り離し

隔離や仲間外し、無視が人間関係からの切り離しに該当します。以下の行為が具体例とされます。

  • 担当業務から外す
  • 仕事を与えない
  • 長時間にわたって別室で仕事させる
  • 自宅での研修を強いる
  • 孤立させる目的で、集団での無視を強要する

過大な要求

業務上明らかに必要ないことや不可能なことをやらせたり仕事を妨害したりすることが、過大な要求に該当します。具体例は次の通りです。

  • 長期間、肉体的に苦痛な過酷である環境で、業務に直接関係ない作業をさせる
  • 新卒採用者に十分な教育を行わないまま、およそ不可能な業務をさせ、できなかったことを叱責する
  • 業務とは関係ない雑用をさせる

過小な要求

業務上の合理性なく、能力や経験とはかけ離れた低程度の仕事をさせることが、過小な要求です。具体例は次の通りです。

  • 管理職を辞めさせる目的で、誰でもできる業務にあたらせる
  • 仕事を与えず、退職に追い込む

個の侵害

過度にプライベートに立ち入ると、個の侵害に該当します。具体例は次の通りです。

  • 職場外で継続的に監視する
  • 許可なく私物を撮影する
  • 性的自認や性的嗜好、病歴、不妊治療歴などの他人に知られたくないような情報を、本人の了解なしに曝露する

パワハラ防止法に基づいた中小企業の対応

企業はパワハラに対して、どのような対策を取る必要があるのでしょうか?中小企業に求められる、パワハラ防止法に基づく対策を説明します。

パワハラの基準と方針を明確に周知する

企業が行うべきパワハラへの対策・防止策には、まず基準と方針を明確化と周知が挙げられます。どのような行為がパワハラに該当するのか、どのような対応をするのかを明らかにし、従業員によく知らしめることが、パワハラ抑止につながります。具体的には就業規則に規定を設けたり、懲戒規定にパワハラに関する事項を追加したりすることが求められます。

相談窓口の整備をする

相談窓口の設置も、パワハラへの対策・防止策として非常に重要です。担当者を配置し、いつでも相談を受けられる体制にしておくことが大切です。またプライバシーが守られるよう、担当者の選定は慎重に行いましょう。自社での対応が難しい場合は、外部委託を検討してもいいでしょう。

パワハラ対応のマニュアル化と研修を実施する

パワハラ対応が迅速にできるよう、マニュアル化や研修実施も大切です。即座に、適切な対応をすることでパワハラを最小限に抑えることができます。対応フローを整備してマニュアル化したり、研修を実施することによって対応方法を教育し、パワハラの早期解決ができるようにしておきましょう。

プライバシーの保護や不利益な扱いの禁止を定める

パワハラ対策では被害者・加害者、関係者のプライバシー保護や、不利益取り扱いの禁止を定めておくことも重要です。プライバシー保護のために必要な措置を講じ、周知しておく必要があります。また相談したことを理由にした不利益取り扱いの禁止を定め、周知や啓発を行うことが求められます。

パワハラが発生した場合の中小企業のリスク

パワハラが発生すると企業によって十分な対策・防止策が講じられなかったと認定され、責任が問われる場合があります。訴訟に発展し、落ち度が認められると賠償の支払い義務が生じます。社会的信用も損なわれ、対外的な取引にも当然、重大な悪影響が及ぶでしょう。人事としても採用活動に大きな支障が出ることが想定されます。

中小企業のパワハラ対策の取り組み事例

中小企業が実際に行っている取り組み事例を紹介します。

株式会社アブソルート

アブソルートはハラスメント発生時に迅速に対応できるよう調査対策室・調査チーム、匿名でも通報できる内部通報制度を設けています。通報から調査、措置までの流れを記載したマニュアルの全従業員への配布、アンケートの実施・会議での取り上げにより意識付けを図り、また徹底した通報者の保護にも努めています。

エクスプライス株式会社

エクスプライスは全従業員を対象にしたハラスメント研修を実施し、知識や対応能力向上を図ってハラスメントを発生させない企業風土づくりをしています。具体的にはハラスメント防止宣言の策定・公表を行い、また弁護士による研修実施のうえ、ハラスメントへの理解を深めています。取り組みの結果、従業員からは「安心して働けるようになった」という声が上がっています。

採用活動に悪影響が出ないようパワハラ対策をしっかり行おう

2020年6月からパワハラ防止法が施行され、企業はパワハラを防止する対策を講じなければならなくなりました。2022年4月からは中小企業にも適用されています。基準と方針の明確化と周知、相談窓口の整備、マニュアル化、研修実施、プライバシー保護と不利益取り扱い禁止の定めなどの対策を、中小企業も行わなければなりません。

パワハラ防止法に違反して対策を講じなくても罰則は科せられませんが、企業責任が問われる恐れがあります。賠償金の支払い義務が生じたり、社会的信用の喪失により対外的な取引に悪影響が出たりする可能性があります。採用活動にも支障が出ると想定されます。

中小企業の場合、こうした悪影響・支障は大きく、採用活動を始めとして様々な部署に迷惑をかける恐れがあります。しっかりとした対策を講じ、パワハラ防止を行いましょう。


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