• 更新日 : 2023年5月30日

年末調整の対象とならない人とは?

通常、給与所得者は年末調整において年間の所得税を精算することで納税関係が終了しますが、例外的に年末調整の対象とならない従業員がいるケースがあります。

年末調整の対象となるケースと対象とならないケースでは、それぞれどのような点で異なるでしょうか。従業員が年末調整の対象とならないケースについて解説します。

年末調整の概要と流れ

毎月の給与を支払う際に控除する源泉所得税は概算による仮払いとなるため、納付すべき所得税の正確な納税額は総収入額や控除額が確定した年末に計算し、事前に納めた納税額との精算を行います。この手続きが年末調整です。

年末調整では会社が従業員各人の所得税の過不足を調整するため、納税者が個人で確定申告する必要はありません。

年末調整は、勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している従業員が対象です。具体的には、年間を通じて勤務する従業員や年の途中で転職により採用されてから年末まで勤務する従業員などが対象となります。

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出しない従業員の場合は、提出した従業員よりも毎月の給与から控除する源泉所得税が多く計算される仕組みになっているうえに、年末調整の対象とはなりません。多く計算された源泉所得税の精算・還付の手続きをするには、従業員自身で確定申告を行う必要があります。

確定申告は、例年給与が支払われた年の翌年2月16日から3月15日までの間に行います。ただし、年末調整が行われず、源泉所得税が多く計算されたために税金の還付が受けられる場合には、還付申告をすることで払い過ぎた所得税の払い戻しを受けることができます。還付申告は、翌年1月1日から5年以内であればいつでも可能です。

なお、年末調整が行われた従業員であっても、年末調整で控除できない医療費控除や寄付金控除、(一年目の)住宅借入金等特別控除などにより所得税の還付が受けられるケースがあります。この場合も翌年の確定申告期間に限らず、5年以内であればいつでも還付申告をすることができます。

年末調整が行われない従業員は、自分で確定申告をしなければ所得税の還付を受けることができません。また、所得税に不足があれば、不足分が追徴された上で無申告加算税や延滞税などのペナルティを課せられる可能性があります。年末調整の対象とならない従業員には、確定申告により所得税の精算が必要となることを必ず説明しましょう。

確定申告についての基本情報は、こちらの記事をご参照ください。

会社は年末調整後、源泉徴収票に給与や給与所得控除社会保険料、生命保険料などの人的・および物的控除の金額、最終決定した所得税額を記し、従業員に交付します。

なお、従業員が退職する際には、年末調整の時期に限らず源泉徴収票を交付する義務があることにも注意しましょう。

年末調整の対象となる人 / ならない人

年末調整の対象者になる人とならない人を、具体的な条件とともに見ていきます。

年末調整の対象となる人

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出した納税者のうち、主たる給与の収入金額が年間2,000万円以下で、「災害被害者に対する租税の減免、 徴収猶予等に関する法律」によって災害による源泉所得税等の徴収猶予や還付を受けていなければ、原則として年末調整の対象となります。

年末調整の対象となるための主な条件は、以下のとおりです。

  • 1年間を通して勤務した、あるいは転職による採用後年末まで継続して勤務した従業員
  • 死亡により退職した、または心身の障害により年の中途で退職し、本年中に再就職が見込めない従業員
  • 12月中に給与を受け、その後退職した従業員
  • パートタイムで働いていた従業員が退職し、本年の給与総額が103万円を超えない場合(ただし、退職後本年中に別の勤務先から給与を受け取る見込みがある場合を除きます)
  • 海外の支社や子会社に年の中途で転勤することとなり、非居住者となった従業員(非居住者とは、国内に「住所」も1年以上の「居所」も有しない個人をいいます)

なお、上記の理由にあたらない退職者は年末調整の対象者にはならないため、確定申告が必要です。

また、退職した後に給与による支払いがなかったとしても、株式売買による譲渡所得や家賃収入などによる不動産所得を得るなど給与収入以外の合計所得が20万円以上生じた場合は、年末調整を実施した場合であっても、自社の給与と給与所得以外の所得について確定申告をする必要があります。

年末調整の対象とならない人

年末調整の必要がない主なケースは、以下のとおりです。

  • 1年間の主たる給与の収入額が合計額が2,000万円を超える従業員
  • 災害減免法によって源泉所得税・復興特別所得税の徴収猶予や還付を受けている従業員
  • ダブルワークなど2カ所以上の勤務先から給与収入を得ており、自社以外の勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している従業員
  • 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が未提出の従業員
  • 年の中途で退職した従業員(年末調整の対象となるケースに該当しない場合)
  • 非居住者
  • 一定の条件を満たす日雇労働者

年末調整の対象とならない従業員は、原則その年の12月31日に会社に在籍していない退職した従業員です。年の途中で転職した場合は、転職先の会社(12月31日時点で在籍)で年末調整を行います。つまり、「転職前の会社は年末調整の対象外」「転職後の会社は年末調整の対象」という関係になります。

年末調整の対象となるのはメインの勤務先のみ

2カ所以上の会社から給与を受け取っている場合には、メインとなる勤務先が「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出を受け、その会社で年末調整を実施します。そのため、年末調整が行われていない収入や年末調整で控除できない所得控除や税額控除がある場合には、従業員自身で確定申告をするように説明しなければなりません。また、年の途中で退職し、本年中に再就職しなかった場合には、所得税の過払い分を払い戻す還付申告があることを説明しましょう。

さらに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出を受けないと、年末調整の対象者とならないだけではなく、配偶者控除や扶養控除などの人的控除も適用されないため、翌年の毎月の給与から控除する源泉徴収税額が高く計算されます。
従業員が独身、配偶者等の扶養となっているケースでも、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が必要となりますので注意しましょう。

年末調整が不要なケースの詳しい情報は、国税庁のHP(下のリンク)を参照してください。

【参考】年末調整がよくわかるページ(令和4年分)|国税庁

よくある質問

年末調整とは

給与から天引きされた1年間の所得税額と、実際に支払われた1年間の給与に対する所得税額を年末に調整することです。 詳しくはこちらをご覧ください。

年末調整の対象となるケースとは

「扶養控除等(異動)申告書」を提出した会社で1年間を通して勤務した場合など、さまざまなケースがあります。詳しくはこちらをご覧ください。

年末調整の対象とならないケースとは

1年間の給与の合計額が2,000万円を超える場合など、さまざまなケースがあります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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