• 更新日 : 2021年11月29日

介護保険の利用限度額と負担軽減措置

介護サービスを利用した時の介護保険の自己負担額(注1)は、原則として1割(注2)となりますが、居宅サービスについては要介護度に応じた「支給限度基準額」が定められており、居宅サービス費用のうちこの基準額を超える部分については全額自己負担となります。

しかしながら、介護サービスを利用する所得の低い方にとって、毎月の介護サービス費用は大きな負担となります。そのため利用者は、その所得に応じて、利用者負担の軽減措置を受けることができることとされています。

では、介護保険における支給限度基準額や負担軽減措置は実際どのように決められているのでしょうか。

ここでは、介護保険の支給限度基準額と負担軽減措置について説明します。

(注1)施設介護サービスを利用した場合は、部屋代や食費などの費用はすべて自己負担となります。
(注2) 所得が一定額以上の場合は、2割または3割となります。

居宅介護サービスの支給限度基準額

介護保険で居住サービスを利用した場合には、要介護度の区分別に1カ月あたりの支給限度基準額が決められています。これを超える部分は全額自己負担となります。

標準的な1カ月の支給限度基準額は以下の通りです。

要支援 150.030 円
要支援 2104,730 円
要介護 1166,920 円
要介護 2196,160円
要介護 3269,310円
要介護 4308,060 円
要介護 5360,650 円

*支給限度基準額は居宅介護サービスおよび地域密着型介護サービスの費用に対して用います。

例えば、「要介護2」の認定を受けている人が1カ月に25万円分の在宅サービスを受けたとします。この場合、介護保険の利用限度額196,160円部分に対しては1割負担となりますが、限度額を超えた部分に関しては全額利用者の負担となります。

つまり、この例では19,616円(196,160の1割)と53,840円(25万円と196,160円の差額)を合わせた73,456円を自己負担することになります。

介護サービスの負担軽減措置

所得が低くても安心して介護サービスが受けられるように、収入や所得に応じた負担軽減措置があります。

特定入所者介護サービス費

下記第1段階から第3段階に該当する低所得者においては、食費・居住費に関して以下の基準費用額と負担限度額の差額が特定入所者介護サービス費として支給されます。

第1段階 :生活保護の受給者または世帯全員が市町村民税非課税であり老齢福祉年金の受給者の場合
第2段階 :世帯全員が市町村民税非課税で公的年金収入額と合計所得金額の合計が80万円以下の場合
第3段階 :世帯全員が市町村民税非課税で公的収入額と合計所得金額の合計が80万円を超える場合
第4段階 :市町村民税が課税される世帯

特定入所者介護サービス費を受けるためには、事前に市区町村に負担限度額認定の申請をする必要があります。

基準費用額
(日額)
第 1 段階の負担限度額(日額)第 2 段階の負担限度額(日額)第 3 段階の負担限度額(日額)
食費1,380 円300 円390 円650 円
ユニット型個室部屋代1,970 円820 円820 円1,310 円
ユニット型準個室部屋代1,640 円490 円490 円1,310 円
従来型個室
部屋代
1,640 円(1,150 円)490 円( 320 円)490 円( 420 円)1,310 円( 820 円)
多床室部屋代370 円(840円)0 円(0円)370円(370円)370 円(370円)

*実費が基準費用額より少なかった場合は、実費が基準費用額となる。
*( )内は特別養護老人ホームおよび短期入所生活介護の場合

例えば、第1段階の人が施設で食事をすると、原則として1日1,080円(1,380円-300円)が支給されます。ただし、1日の食費の実費が1,200円の場合は、900円(1,200円-300円)が支給されます。

高額介護サービス費

高額介護サービス費は、1カ月の介護サービスにおける自己負担額の個人や世帯の合計が上限額を超えた場合その超えた部分の金額に対して支給されるものです。
以下が所得区分ごとの上限額です。

所得段階所得区分上限額

第 1 段階

世帯の全員が市区町村税を課税されておらず、かつ生活保護を受給している方等

個人単位で 15,000 円

第 2 段階

世帯の全員が市区町村民税を課税されておらず、かつ前年の合計所得金額と公的年金収入額の合計が年間80万円以下の方等

個人単位で 15,000 円
世帯単位で 24,600 円

第 3 段階

世帯の全員が市区町村民税を課税されていない方

世帯単位で 24,600円


第 4 段階

第1~3段階に該当しない者


世帯単位で 44,400 円

高額医療・高額介護合算療養費

同一世帯内において、健康保険と介護保険の両方に自己負担(健康保険法の高額療養費および高額介護サービス費が受けられる額を除く)が発生した場合、その自己負担額の合計が基準額を超えた場合には高額医療・高額介護合算療養費が支給されます。

年齢や所得により自己負担限度額が以下のように設定されています。また、毎年8月から1年間に支払った額の合計で算出されます。

平成30年8月以降

被保険者の所得区分70歳以上の基準額(注2)70歳未満の基準額(注2)
年収約1160万円~(標準報酬月額83万円以上、課税所得690万円以上)212 万円212 万円
年収770万~1160万円(標準報酬月額53~79万円、課税所得380万円以上)141万円141 万円
年収370万~770万円(標準報酬月額28~50万円、課税所得145万円以上)
67 万円67 万円
年収156万~370万円(健保の標準報酬月額26万円以下、国保・後期高齢者医療保険の課税所得145万円未満 (注1))56 万円60 万円
市区町村民税世帯非課税31 万円34 万円
市区町村民税世帯非課税で所得が一定以下19万円(注3)34万円

(注1)収入の合計が520万円未満(1人世帯の場合は383万円未満)の場合及び旧ただし書所得の合計額が210万円以下の場合も含む。
(注2)対象世帯に70~74歳と70歳未満が混在する場合、まず70~74歳の自己負担合算額に基準を適用した後、残る負担額と70歳未満の自己負担合算額を合わせた額に基準額を適用する。
(注3)介護サービス利用者が世帯内に複数いる場合は31万円。

まとめ

介護保険における「支給限度基準額」は、居宅サービスに関わる1カ月の費用が支給限度基準額を超えた場合、超えた部分の金額は全て自己負担となります。また、低所得などの理由で介護サービスを受けるのが困難な人のために負担軽減措置があります。

ご自身やそのご家族が介護サービスを受けていらっしゃる方は、介護サービスの各種負担軽減制度を一度検討されてみてはいかがでしょうか。


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