• 更新日 : 2025年2月3日

役員が退職した場合に必要な手続きは?登記の流れや必要書類を解説

役員が退職した場合、変更登記が必要です。ただし退職の理由によって、必要な手続きや登記に必要な書類は異なります。また変更登記の申請には期限があるため、迅速かつ正確に準備を進めなければなりません。この記事では、退職理由別の登記申請書類やオンライン申請の可否について解説します。

役員とは

役員とは、法人の経営方針や事業の方針を決定する役割を持つ人です。会社法をはじめ、法人税法、金融商品取引法など複数の法律で定義がされていますが、それぞれの法律で定義は異なります。ここでは、会社法の規定にもとづく役員について解説します。

会社法が規定する役員の種類

会社法では、以下の3役を役員として定めています。

  • 取締役
  • 会計参与
  • 監査役

取締役は経営方針の立案や事業計画の策定を行う役員です。代表取締役も取締役のなかから選出されます。会計参与は取締役とともに会計にかかわる文書を作成する役員です。監査役は取締役や会計参与を含め、法人の業務に問題がないかを監視する役員です。

参考:会社法|e-Gov法令検索

役員が退職するケース

役員が退職(退任)する場合、理由は以下の4つのいずれかに該当します。

  • 任期満了
  • 辞任
  • 解任
  • 欠格事由の発生

役員が退職した際の変更登記では、変更の理由も登記されます。退職を承認する手続きや登記に必要な書類も異なるため、退職理由を間違えないように理解しておきましょう。

なお役員が死亡した場合や成年被後見人になった場合は、上記のいずれにも該当しません。しかし、民法における委任の終了事由に該当し、自然退職の扱いになります。

参考:民法|e-Gov法令検索

参考:役員が制限行為能力者(成年被後見人、被保佐人、被補助人)になった場合には、役員の地位はどうなりますか。|厚生労働省

任期満了

任期満了は、会社法または定款等で定められた任期の満了にともなって退職するケースです。会社法では、役員の任期は原則としてそれぞれ以下のように定められています。

  • 取締役 2年
  • 会計参与 2年
  • 監査役 4年

任期を満了すると、役員は原則として退職となります。ただし株主総会等で所定の手続きを経て再任された場合は、引き続き役員を務めます。特に手続きを取らない場合は、たとえ後任がいなかったとしてもいったん退職となるので、継続の意向がある場合は忘れずに手続きを行いましょう。

辞任

辞任は、任期中に自分の意志で役員を辞めることです。辞任の理由はさまざまで、業績不振やほかの経営陣との対立のほか、体調不良など個人的理由の場合もあります。

辞任による退職では、本人からの辞任届提出のみで足ります。ただし辞任するのが代表取締役である場合、原則として取締役会を招集し辞任の意思を示すべきと考えられています。

また辞任によって取締役の人数が足りなくなってしまった場合は、株主総会等で後任の指名承認を行わなければなりません。

解任

解任は、任期の途中で会社からの命令によって役員を退職させることです。辞任と異なり、役員本人の退職の意思は問いません。役員を解任する際には、株主総会の決議が必要です。

欠格事由の発生

欠格事由(取締役になれない事由)に該当した場合の退任が、欠格事由の発生による退任です。取締役の欠格事由として、以下の事由が定められています。

  • 法人
  • 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律に違反したもの
  • 金融商品取引法、民事再生法、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律、会社更生法、破産法に定められたうちの所定の罪を犯し、その執行を終わった日(又は執行を受けることがなくなった日)から2年を経過していない者
  • 上記に定めた罪以外の罪によって禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)

会社法などにおける法律上の罪を犯した場合には、禁固よりも軽い罰金であっても欠格事由に該当します。また、執行を終わってから2年経過するまでは欠格事由に該当したままとなります。これは、会社法などに違反した場合には、その他の罪よりも一層取締役に不適切であると考えられるためです。

またそのほかの日本の法律に抵触した場合は、禁固以上の刑に処せられた場合にのみ欠格事由に該当します。たとえば交通違反で道路交通法に規定する罰金を命じられた場合は、禁固より軽い刑であるため欠格事由には該当しません。

参考:会社法|e-Gov法令検索

参考:一般社団法人及び一般財団法人に関する法律|e-Gov法令検索

参考:金融商品取引法|e-Gov法令検索

役員が退職したら登記手続きを行う

役員が退職したら、退職理由を問わず変更登記の手続きが必要です。手続きを行わないと、罰金が科せられる恐れもあります。また任期満了による退職後、再任されたとしても、登記手続きが必要です。

参考:役員の変更の登記を忘れていませんか? 再任の方も必要です|法務省

手続きの期限

変更登記の期限は、登記の事由が発生した時から2週間以内です。2週間を過ぎても手続きは可能ですが、100万円以下の過料が科される場合があります。

期限の起算日は、株主総会で決議される役員変更であれば、総会の翌日です。辞任の場合は、会社に辞任の意思が到達した日の翌日を起算日として計算します。もし辞任届が受理されなかったとしても、内容証明等で受け取った日が確認できれば、その日の翌日が起算日となります。

参考:会社法|e-Gov法令検索

申請先

役員の変更登記は、法人の本店所在地を管轄する法務局に申請します。オンライン申請と書面申請の2つの方法があり、書面申請では郵送も可能です。

登記申請の費用

登記申請では、登録免許税が必要です。登録免許税は資本金が1億円を超える場合は3万円、1億円以下であれば1万円です。以下のいずれかの方法で納付します。

  • 収入印紙
  • 現金
  • 電子納付(インターネットバンキング等)

電子納付は対応している金融機関が限られています。e-Gov電子納付で対応可能な金融機関を確認して利用しましょう。

役員の退職にともなう登記手続きの必要書類

役員が退職した際の登記手続きでは、登記申請書と所定の添付書類が必要です。添付書類は退職事由によって異なります。

また役員の退職とあわせて、再任や後任の選定を行った場合は、当該就任に関する添付書類も必要です。

変更登記申請書

変更登記申請書は、退職事由を問わず必要な書類です。退職と同時に新たな役員が就任する場合でも、1通のみの提出で問題ありません。

任期満了の場合の添付書類

任期満了での退任では、以下の添付書類が必要です。

  • 定時株主総会議事録
  • 株主リスト
  • (代理人申請を行う場合)委任状

定時株主総会の議事録は、当該退職が任期満了であることが記載されたものを用意します。

辞任の場合の添付書類

辞任での退職では、以下の添付書類が必要です。

  • 辞任届
  • (代理人申請を行う場合)委任状

任期満了の場合と異なり、辞任の場合、株主総会議事録は必要ありません。ただし、当該役員の辞任とあわせて後任の役員を選出した場合や、代表取締役の辞任による後任選定では、臨時株主総会の議事録が必要です。

参考:株式会社変更登記申請書(取締役会設置会社で,役員(取締役・監査役)が辞任して,新たな役員が就任する場合)|法務局

解任の場合の添付書類

解任での退任では、以下の添付書類が必要です。

  • 株主総会議事録
  • 株主リスト
  • (代理人申請を行う場合)委任状

株主総会議事録は、解任が可決された旨の記載があるものを添付します。

欠格事由が発生した場合の添付書類

欠格事由が発生したことによる退任では、以下の添付書類が必要です。

  • 欠格事由に該当することを証明する書類
  • (代理人申請を行う場合)委任状

欠格事由に該当することを証明する書類としては、たとえば犯罪であれば判決書の謄本などが該当します。株主総会の承認は必要ないため、株主総会議事録も基本的には必要ありません。ただし退職によって新たな役員が選出された場合は、選出に関する株主総会議事録が必要です。

役員の退職にともなう登記はオンライン申請できる?

役員の退職にともなう登記は、オンラインでも申請できます。オンライン申請を利用するためには、以下のものが必要です。

必要なもの

事前準備

  1. 申請者情報の登録、ID、パスワードの取得
  2. 申請用総合ソフトのインストール

オンライン申請では、申請用総合ソフトで申請書を作成し、添付書類とあわせてオンラインで提出します。登記に必要な費用も、申請用総合ソフトから支払えるため、窓口の受付時間を気にすることなく手続きを完了できます。

また商業登記電子証明書など必要なものが準備できない場合は、書面申請の「QRコード付き書面申請」がおすすめです。より正確、迅速に書面を作成でき、手続きの進行状況もネットで確認することが可能です。

参考:株式会社の役員変更の登記をしたい方(オンライン申請)|法務局

参考:QRコード(二次元バーコード)付き書面申請について|法務局

役員に退職金を支給した場合の手続き

役員に退職金(役員退職慰労金)を支給した場合は、以下の手続きが必要です。

  • 源泉徴収
    源泉徴収の金額は、退職所得の受給に関する申告書を退職する役員から受け取っているかどうかによって計算方法が異なります。申告書を受け取っている場合は、退職までの勤続年数や退職金の金額による計算式によって控除額を計算します。

なお役員に退職金を支給する場合は、株主総会での決議が必要です。事前に役員退職金に関する規程を作成しておくと、実際に支給事由が発生した際の承認や支給手続きをスムーズに進められるでしょう。

参考:No.2732 退職手当等に対する源泉徴収|国税庁

役員退職の手続きは退職理由の確認から

役員が退職した際には、変更登記が必要です。ただし変更登記に必要な書類は退職理由によって異なるので、具体的な変更登記の手続きに入る前に、退職理由を確認しましょう。

変更登記はオンラインでも可能です。オンライン申請であれば、法務局の受付時間以外でも申請手続きができ、会社からの移動時間もかかりません。申請期限が2週間と短いため、効率的に手続きを進めるためにもオンライン申請をおすすめします。


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