• 更新日 : 2023年8月10日

コンピテンシーとは?意味や企業導入が増えている理由、評価方法・例を解説

コンピテンシーとは?意味や企業導入が増えている理由、評価方法・例を解説

人事評価・採用・育成の場面で近年多くの企業が取り入れているのが、コンピテンシーの考え方です。今回はコンピテンシーの意味や普及の理由、コンピテンシー評価の方法と事例まで詳しく解説します。

コンピテンシーとは

研究者によって、コンピテンシーの定義はさまざまです。しかし、人事の専門用語におけるコンピテンシーとは、一般に「ある状況や職務において高い業績を生む原因となっている個人の特性」を指します。

コンピテンシーは英語「Competency」の外来語として、そのまま日本でも用いられています。英語で日常的に使われるときの意味は「高い知識やスキルを持っていること」を指し、人事用語のコンピテンシーの方が抽象的に定義されていることがわかります。

この概念の歴史を辿ると、約50年前までさかぼります。1973年に行われた、アメリカの心理学者D・マクレランドによる調査研究論文で、コンピテンシーが初めて脚光を浴びました。この調査研究によって、有能な外交官に共通する特性を明らかにしたのです。その後、コンピテンシーは広く組織の人事活用に応用されるようになりました。日本で広まりを見せたのは、およそ2000年代後半からです。

その後、コンピテンシーの概念は広く知られるようになり、企業の人材採用や評価など人事の各局面で活用されています。後述するコンピテンシーモデル・コンピテンシー評価・コンピテンシー面接という用語も日本で定着してきました。

参考:民間における人事評価制度の目的・役割の変遷|人事評価の改善に向けた有識者検討会|内閣人事局

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コンピテンシーを取り入れる企業が増えている理由

コンピテンシーを取り入れる企業が増えている理由は、主に3つ挙げられます。

成果主義に対応した公正な人事評価ができる

日本では年功序列・終身雇用の企業慣行が衰退しつつあり、雇用の流動性が高まっています。それに応じて、人事評価制度も年功序列制度に対応した職能資格制度による評価から、成果主義に対応した新たな評価に移行する必要があるのです。

そこで公正・明確で客観的な人事評価の枠組みとして、能力やスキルだけでなくコンピテンシーに着目した人事評価が注目を集めています。

効率的な人材育成・採用活動ができる

コンピテンシーを取り入れると、高いパフォーマンスをあげる社員のモデルが具体化されます。個々の社員の目標と現実との差も具体的に明らかになり、各自の目標を明確化しやすいのです。このことが効率的な人材育成につながります。同じ考え方は、採用活動にも応用できます。

生産性が向上する

コンピテンシーを取り入れると、ハイパフォーマーの行動特性が具体化されて共有しやすくなります。有能な社員の特性が社内で共有されることで、ビジネスの生産性も向上するのです。

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コンピテンシーの使い方・活用シーン

コンピテンシーが使われるのは人事の3種類の局面です。
活用シーンと使い方を確認してみましょう。

人事の評価

人事評価は、コンピテンシーを活用できるもっとも重要な場面でしょう。コンピテンシーに着目した人事評価は、明確性・公正性・客観性を担保できるのです。ただし、コンピテンシーによる評価は、結果としての業績そのものを評価するのとは異なります。業績を生み出す行動特性に目を向けているため、偶然の事情によらない信頼性ある評価ができるのです。

採用・面接に活用

コンピテンシーは採用・面接活動にも活用できます。キャリア・スキル・業績という外面を見るのではなく、それらをもたらした行動特性を見抜くように面接を組み立てるのです。コンピテンシーを評価する面接で候補者の本質に迫り、自社のビジネスに必要な人材かどうかを見極めることができます。

人材の育成(能力・キャリア開発)

コンピテンシーは、スキルや潜在能力よりも業績の達成に近い特性です。各社員のキャリア開発における目標地点までの道程を定めるとき、現在のスキルや潜在能力から逆算するよりもコンピテンシーから逆算した方が正確で無駄もありません。効率的な教育・人材育成に役立つのです。

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コンピテンシー評価を導入するメリットと課題

コンピテンシー評価には大きなメリットがありますが、半面で課題も指摘されています。

コンピテンシー評価のメリット

  • 具体性のある項目・基準で公正な評価ができる
    コンピテンシー評価では、具体性のある項目と基準で行動特性という可視的な対象を評価します。管理職者の主観による評価のブレが生じにくく、より公正な人事評価につながります。
  • 公正な評価が社員に納得される
    行動特性を評価される社員にとっては、何が高く評価され何が足らないかということを理解しやすく納得感が持てます。必ずしも可視的でない能力やスキルについて、程度の尺度で評価する場合よりも、評価する側とされる側の認識の一致が生まれやすいのです。

コンピテンシー評価の課題

  • 基準となるハイパフォーマー人材の選定が難しい
    コンピテンシー評価は、ハイパフォーマーの行動特性モデルを基準としています。このモデルを定義するためには、ハイパフォーマーの社員を選定しなければなりません。しかし、その選定基準も一つでありえず選定は容易でありません。
  • ハイパフォーマーからのヒアリングが難しい
    パフォーマンスの高い社員を選定できたとしても、選定された社員のどの行動特性がハイパフォーマンスにつながっているのかを分析しなければなりません。そのためにヒアリングを行います。しかし、ハイパフォーマー自身の自己分析がある程度できていないと抽出すべき行動特性はなかなか明らかになりません。

コンピテンシー評価の導入方法・例

コンピテンシー評価を導入する方法について、順を追って紹介します。

パフォーマンスが高い社員へのヒアリング

高い業績をあげる社員に共通する行動特性を明らかにするために、社内各部門から複数の優秀な人材を選んでヒアリングを行います。

生み出した成果の内容を聞くことも必要ですが、その成果を出すために取った行動について質問することが重要です。さらに成功したときの行動だけでなく、日常の行動様式についても質問して解き明かします。

外部化された行動だけでなく、思考の特性を知ることも重要です。ハイパフォーマンスな行動を取るに至った理由やふだん業務に取り組む意識などを聞きます。

コンピテンシーモデル(基準項目)を作成

コンピテンシーモデルとは、高い成果を上げる社員(ハイパフォーマー)の行動特性を基準項目としてモデル化したものです。「理想の社員像」を分解したものといえます。

ヒアリングをもとに、ハイパフォーマーに共通する行動・思考特性を抽出していきます。
「コンピテンシーディクショナリー」と呼ばれる既成の分類があるので、ヒアリングの結果とコンピテンシーディクショナリーを照らし合わせましょう。ヒアリングの結果と一致する行動特性をコンピテンシー項目として落とし込むことで、基準となるコンピテンシーモデルを作成していきます。

コンピテンシー項目の例としては、自己管理能力・対人理解・チームワーク・リーダーシップ・分析力・情報収集能力などです。

コンピテンシー評価シートを作成

コンピテンシーモデルを人事評価で実際に利用するために、コンピテンシー項目と評価レベルを表にしたコンピテンシー評価シートを作成します。コンピテンシー評価シートの記入・運用をすることで、コンピテンシー評価が容易になるのです。また評価シートを社員本人と共有して、社員の客観的な自己認識にも役立てます。

社員による目標の設定

コンピテンシー評価を共有した社員は、コンピテンシーモデルに近づくよう目標を設定します。具体的な行動・思考特性の獲得を目標とすることができるので、目標達成までの道程は見えやすくモチベーションも高まるのです。

コンピテンシーモデルの評価と改善

コンピテンス評価の実施により、社員の行動に変化が現れます。しかし、しばらく時間が経っても企業業績には結び付かない場合もあるでしょう。コンピテンシーモデルの設定に誤りがあったかもしれません。また環境変化にモデルが適応していない可能性もあります。コンピテンシーモデルを定期的に見直して再定義する改善サイクルが必要なのです。

コンピテンシー面接のメリット・デメリット

コンピテンシー面接とは、高いパフォーマンスを発揮する人材を選ぶために、候補者に対して過去の行動について質問し明らかになった行動・思考特性を評価の対象にしようとする面接手法を指します。コンピテンシー評価を採用活動に応用し、あらかじめ自社のコンピテンシーモデルに近い人材を発見するのです。

コンピテンシー面接のメリット

  • 企業のニーズに合った人材を選びやすい
    コンピテンシー面接では、自社が求める行動・思考特性を備える人材を抽出できます。ミスマッチや離職を避けるのに有効です。
  • 客観的な人材評価ができる
    コンピテンシー面接では、コンピテンシーモデルという明確な評価基準が共有されるので面接官の主観による判断のブレが少なくなります。

コンピテンシー面接のデメリット(課題)

  • ハイパフォーマーのモデルがいないと困難
    コンピテンシー評価と同様、コンピテンシー面接はハイパフォーマーの存在を前提とします。しかし、ハイパフォーマーの選定が容易でないことが課題です。
  • 応募職種ごとのコンピテンシーモデルが必要
    コンピテンシーモデルは社内に一つではなく、部門や職種によって異なります。応募職種ごとにコンピテンシーモデルを構築するのには、かなりの工数が必要です。

コンピテンシーの類語・関連用語との違い

コンピテンシーと混同しがちな類語・関連用語との違いを整理します。

コンピテンシーとスキルの違い

スキルSkillとは、個人が有する専門的な知識・能力のことです。 一方のコンピテンシーは、個人の有する専門的な知識・能力を発揮するための行動の特性を指しています。
スキルは道具ですが、コンピテンシーは道具を使う行動の側面を語っているのです。

コンピテンシーとアビリティの違い

前提として、スキルが後天的に獲得された専門的能力であるのに対し、アビリティAbilityはより一般的な能力を指し、後者が前者を包含しています。

アビリティは一般的な能力を指すのに対し、コンピテンシーが指すのはアビリティ=能力を発揮するための行動の特性です。

コンピテンシーとコア・コンピタンス(コアコンピタンス)の違い

「コア・コンピタンス(Core Competence)」とは、競合他社に真似できない核となる能力のことです。いわゆる企業の「強み」を指します。

コンピテンシーとコア・コンピタンスの一番の違いは対象の次元です。コンピテンシーは社員個人のレベルの行動特性を扱っています。それに対して、コア・コンピタンスは組織のレベルの能力を対象としているのです。

綿密なプロセスでコンピテンシーを導入しよう

コンピテンシーの考え方は採用・育成・評価と人事の各局面で応用でき、一度コンピテンシーを導入すれば高いメリットを広範にわたり期待することができます。そのため、近年多くの企業が取り入れてきました。

しかしその一方で、コンピテンシーの導入にはハイパフォーマーの選定に始まる慎重なプロセスが必要です。とくに初期の工数は少なくありません。

手順を急ぎ誤ると、効果が期待できないばかりか企業業績の逆効果を生むことさえあります。そうなると、やり直しの工数が増えるばかりでしょう。コンピテンシー導入・運用の効用最大化と工数削減のためには、導入前からの綿密なプロセスの積み上げが必要になります。

人事管理において大きなインパクトを期待できるコンピテンシーだからこそ、確実なステップでの導入が望まれるのです。

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※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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