- 更新日 : 2024年5月17日
裁量労働制とは?2024年の法改正の内容は?対応方法についても紹介!
裁量労働制とは、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ労使で取り決めた時間を労働したものとみなして賃金を支払う制度です。裁量労働制には一定のルールがあり、適用可能な職種も限られています。本記事では、裁量労働制の概要や種類、フレックスタイム制等との違い、2024年4月からの改正点と対応方法等について解説します。
目次
裁量労働制とは
裁量労働制とは、実際の労働時間にかかわらず、会社と労働者であらかじめ取り決めた時間を働いたものとみなす制度です。裁量労働制では、業務の進め方や時間配分などが労働者の裁量にゆだねられます。
ここでは、裁量労働制の目的について説明するとともに、変形労働時間制やフレックスタイム制など、他の柔軟な労働時間制度との違いについて説明します。
裁量労働制の目的
裁量労働制の目的は、業務効率を良くし、労働生産性を向上させることです。
通常の労働時間制度では、始業から終業までの労働時間をカウントし、その時間に対して賃金を支払います。労働時間は会社が管理し、労働の質や成果にかかわらず労働時間の長短が賃金に反映されます。
しかし一定の業務や職種では、仕事の進め方や時間配分を労働者自身に自由に決めさせた方が、良い結果が得られるものがあります。労働者に業務遂行についての裁量を与えることにより、質の高い労働の提供が期待できるでしょう。
そうしたことから、一定の業務においては、実労働時間の長短にかかわらず、会社と労働者が取り決めた「みなし労働時間」を働いたものとする「裁量労働制」が取り入れられました。
変形労働時間制との違い
変形労働時間制とは、業務の繁閑等に合わせ、平均労働時間が週40時間を超えないように、あらかじめ労働時間を配分する制度です。忙しい時期には労働時間を多く、そうでない時期には労働時間を少なく設定することで、全体としての労働時間の短縮を図っています。
変形労働時間制では、繁忙期などに法定労働時間を超えて働かせても、時間外手当を支払う必要はありません。逆に、閑散期など労働時間が少なく設定されているときも、賃金減額はされません。
変形労働時間制と裁量労働制の大きな違いは、労働時間の管理方法です。変形労働時間制では、始業・終業の時刻など労働時間を会社が管理します。それに対して裁量労働制では、労働時間管理は労働者自身が行います。
また、変形労働時間制は職種に制限がないことも、裁量労働制と異なる点です。
フレックスタイム制との違い
フレックスタイム制は、始業・終業の時刻や働く時間を、労働者自身が決められる制度です。
フレックスタイム制では、一定期間(清算期間)の総労働時間(総枠)の範囲内で、各労働者が自由に労働時間を調整できます。そのため「この日は9時から19時まで」「この日は11時から5時まで」といった自由な働き方が可能です。ただし会社によっては、コアタイムが設定されていることがあります。
始業や終業の時刻を自由に決められることから、裁量労働制と混同されがちですが、フレックスタイムで用いるのは、あくまでも「実際の労働時間」です。この点が「みなし労働時間」を用いる裁量労働制と大きく異なります。
また、フレックスタイム制には職種に制限がないことも、裁量労働制との違いです。
事業場外みなし労働時間制との違い
事業場外みなし労働時間制は、裁量労働制と同じ「みなし労働時間制」の一種です。
事業場外みなし労働時間制とは、事業場外で働く場合で、労働時間の把握が困難な場合に、所定労働時間またはその業務に必要とされる時間を働いたものとみなす制度です。
外回り営業や在宅勤務に用いられることの多い制度ですが、電話やメールなどで随時会社との連絡が取れるような場合は、事業場外みなし労働時間制を使うことはできません。
裁量労働制との違いは、事業場外みなし労働時間制は「事業場外で労働した時間」に限られる点です。
また、裁量労働制は限られた職種にしか適用できませんが、事業場外みなし労働時間制は、特に職種の限定はありません。
高度プロフェッショナル制度との違い
高度プロフェッショナル制度とは、高度の専門知識があり、一定の年収要件を満たした労働者について、労働基準法の労働時間・休憩・休日・割増賃金等の規定を適用しない制度です。
職種が限定されていることや、労働時間を会社が管理しないなどの点で、裁量労働制と似た制度だといえるでしょう。
しかし裁量労働制では、休日労働や深夜労働などには労働基準法が適用され、みなし時間が法定労働時間を超えれば時間外手当も支払われます。これに対し、高度プロフェッショナル制度は、労働基準法のこうした規定は排除されています。
また、高度プロフェッショナル制度では年収1,075万円以上という年収要件がありますが、裁量労働制に年収要件はありません。
裁量労働制の種類
裁量労働制には「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」があります。共に業務の遂行方法を労働者の裁量にゆだねる制度ですが、適用される職種や重要事項の決定方法等に違いがあります。
専門業務型裁量労働制
専門業務型裁量労働制は、一定の専門性の高い職種に適用されるみなし労働時間制度です。専門業務型裁量労働制の適用が可能な職種は、次の20種類に限定されています。
- 新商品や新技術の研究開発、人文科学・自然科学に関する研究の業務
- 情報処理システムの分析または設計の業務
- 新聞や出版、放送番組制作のための取材・編集の業務
- デザイナーの業務
- 放送番組等のプロデューサー・ディレクターの業務
- コピーライターの業務
- システムコンサルタントの業務
- インテリアコーディネーターの業務
- ゲームソフトの開発の業務
- 証券アナリストの業務
- 金融工学等の知識を用いる金融商品開発の業務
- 大学での教授研究の業務
- M&Aアドバイザーの業務
- 公認会計士の業務
- 弁護士の業務
- 建築の業務
- 不動産鑑定士の業務
- 弁理士の業務
- 税理士の業務
- 中小企業診断士の業務
なお、M&Aアドバイザーの業務は、2024年から追加されたものです。
専門業務型裁量労働制を適用するには、過半数労働組合または過半数代表者とで、必要事項について労使協定を締結し、所轄労働基準監督署へ届け出る必要があります。
また2024年4月からは、制度が適用される労働者の同意も必要となりました。
企画業務型裁量労働制
企画業務型裁量労働制は、専門業務型裁量労働制のように、適用できる職種が限定列挙されていません。
企画業務型裁量労働制が適用できる業務は、次の全てに該当するものです。
- 事業の運営に関する事項についての企画・立案・調査・分析の業務
- 業務遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があることが客観的に認められる業務
- 仕事の進め方や時間配分について、会社が具体的な指示をしないとする業務
もう少し具体的にいえば、本社や本店等の経営企画、営業、財務、人事、広報などの部署における企画・立案・調査・分析の業務で、事業の運営に影響を及ぼすものが該当します。
例えば、人事部の業務でも「人事制度の調査分析を行い、新たな人事制度を策定する業務」は企画業務型裁量労働制の適用が可能ですが、社会保険事務や給与計算の業務には適用できません。
同様に、営業部の業務でも「営業活動上の問題点等について調査・分析を行い、企業全体の営業方針や商品ごとの営業計画を策定する業務」は企画業務型裁量労働制が適用できますが、個別の営業活動の業務への適用はできません。
なお、企画業務型裁量労働制を適用するには、労使委員会の決議と所轄労働基準監督署への決議の届出が必要です。また、対象労働者の個別同意も取らなければなりません。
2024年4月以降における裁量労働制の変更点・見直しについて
2024年4月1日から、裁量労働制のルールが変わりました。ここでは、裁量労働制の見直しが行われた背景や専門業務型・企画業務型それぞれの変更点について解説します。
裁量労働時間制が改正された背景
裁量労働制は「実際に働いた時間ではなく、労使で取り決めた時間を働いた時間とみなす」制度で、適切に運用されれば、会社・労働者双方にメリットをもたらすはずのものです。
しかし実際は「裁量労働制を使うと、かえって長時間労働になりやすい」といった状況が指摘されていました。
また、時間外手当を削減する目的で、本来は裁量労働制が適用できない職種にも裁量労働制を使うなど、不適切な運用をする会社があることも問題視されていました。
このような状況を改善するため、2024年4月から裁量労働制のルールが改正されました。
専門業務型裁量労働制の改正点
2024年4月から改正された点の一つは、専門業務型裁量労働制の対象となる職種に「M&Aアドバイザーの業務」が加えられたことです。
「M&Aアドバイザーの業務」の範囲は広いのですが、制度の対象となるのは「調査・分析およびこれに基づく考案・助言」の全てを一人で行い、かつ業務の遂行方法や時間配分について裁量がある場合に限られます。
また、大きな改正点として、制度の適用時に労働者の同意が必要になったことが挙げられます。なお、一度同意をした場合でも撤回できます。
労働者の同意が必要になったことに伴い、労使協定の項目にも、次の事項が加えられました。
- 制度を適用する際は労働者の同意が必要なこと
- 同意をしなかった労働者に、不利益な取り扱いをしないこと
- 同意の撤回の手続きについて
- 同意・撤回に関する記録を保存すること など
企画業務型裁量労働制の改定点
企画業務型裁量労働制では、2024年4月から、労使委員会の運営規程に定める事項や労使委員会での決議事項が追加されました。
労使委員会の運営規程に定める事項として、次が加えられました。
- 対象労働者に適用する賃金や評価制度の内容について、事前に労使委員会に説明すること
- 制度の実施状況の把握の頻度・方法など、制度を適正に運営するために必要な事項
- 労使委員会を開催する頻度
なお、労使委員会の決議事項にも、以下が追加されています。
- 労働者の同意の撤回の手続きについて(申出先・申出方法等)
- 賃金や評価制度の変更時には労使委員会に内容を説明すること
- 各労働者について同意の撤回等に関する記録を一定期間保存すること
企画業務型裁量労働制を採用している会社は、労使委員会を開催しなければなりませんが、頻度についての定めはありませんでした。しかし、改正によって開催頻度が「6ヶ月以内ごとに1回」へと変更されています。また、定期報告は決議の有効期間の始期から起算して、「初回は6ヶ月以内ごとに1回、その後は1年以内ごとに1回」の実施が必要です。
専門業務型・企画業務型共通の改正点
裁量労働制で労働者を働かせる場合は、健康・福祉措置を講じる必要があります。今回の改正で「健康・福祉措置として実施することが望ましい」とされる事項が追加されました。
対象労働者全員への措置として追加されたものは「勤務間インターバルの確保」「深夜労働の回数制限」「労働時間の上限措置」です。
対象労働者の状況に応じて講じる措置としては「一定の労働時間を超える対象労働者への医師の面接指導」が追加されました。
詳細については、下の図をご参照ください。
引用:裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です|厚生労働省
法改正に関する対応のポイント
裁量労働制のルールが変更されたことに伴い、会社には様々な対応が求められています。ここでは、主な対応事項について紹介します。
専門型・企画型に共通の対応
専門業務型裁量労働制も企画業務型裁量労働制も、制度を適用するときは、対象労働者の個別同意を取る必要があります。
同意を取る際には、労働者が制度についてよく理解・納得したうえで判断できるように、書面等で内容を明示して説明することが適切とされています。
明示・説明をする内容は、次の事項です。
- 対象業務の内容など労使協定または労使委員会決議の内容
- 適用する裁量労働制の概要
- 同意した場合に適用される賃金制度や評価制度
- 同意しなかった場合の配置や処遇
また、次の事項についても、労使で取り決めたうえ、労働者に説明する必要があります。
- 同意の撤回について(申出先や撤回の方法等)
- 健康・福祉措置について
- 苦情処理窓口について
企画型に固有の対応
2024年4月の採用労働制ルールの改正に伴い、企画業務型裁量労働制を採用している会社は、労使委員会の運営規程を変更する必要があります。
新しく運営規程に盛り込む事項は、次のとおりです。
対象労働者に適用する賃金や評価制度の内容について、事前に労使委員会に説明すること
制度の実施状況の把握の頻度や把握方法など、制度を適正に運営するうえで必要なこと など
また、労使委員会で「同意撤回の方法・申出先等」「賃金や評価制度を変更する場合の労使委員会への説明」「同意や撤回の記録の保存」などについて決議を行う必要があります。
なお、労使委員会の開催頻度が「6ヶ月以内ごとに1回」に改正されました。
定期報告の頻度も「決議の有効期間から起算して、初回は6ヶ月以内ごとに1回、その後は1年以内ごとに1回」に変更されたため、注意が必要です。
企業にとっての裁量労働制のメリット
裁量労働制を導入することで、会社の労務管理の負担軽減や社員の満足度向上といった効果が期待できます。
労務管理の負担削減・各種計算/管理が楽に
裁量労働制を導入することで、労務管理の負担が軽減されることがあります。
裁量労働制では、みなし労働時間が法定労働時間内に収まっていれば、時間外手当が発生しません。そのため、給与計算の負担が少し抑えられます。
また、みなし労働時間を「9時間」にするなど法定労働時間を超える場合でも、超過時間は毎月変わらないため、時間外手当の予測ができ、人件費管理がしやすくなります。
こうしたことから、裁量労働制の適用は、労務管理のしやすさにもつながるでしょう。
社員の満足度向上
裁量労働制の導入により、社員の満足度が上がることがあります。
通常の労働時間制では、労働時間の長さに対して賃金が支払われます。そのため、仕事の遅い社員に多くの割増賃金が支払われるといった不当な状況が多々見られます。
しかし裁量労働制では、実労働時間ではなく、みなし労働時間に対して賃金が支払われるため、能率良く働いて早く仕事を終わらせても、通常と同じ賃金が得られます。
このような働き方ができることは、労働生産性の高い社員の満足度向上につながります。そのため、離職率の低下や優秀な人材の確保が期待できます。
企業にとっての裁量労働制のデメリット
裁量労働制には、大きなメリットがある一方、制度の導入や運営に手間がかかるといったデメリットもあります。
制度導入までの負担が大きい・各種環境整備が必要
専門業務型裁量労働制を導入するには、労使協定の締結や届出が必要です。また、企画業務型裁量労働制の導入には、まず労使委員会を設置したうえで、決議・届出をしなければなりません。
更に、労働者に制度を説明したり同意を取得したりするにも、時間や労力がかかります。裁量労働制の制度は複雑なため、説明する担当者には、それなりの知識も求められるでしょう。
そして制度を導入した後も、健康・福祉措置を講じたり、同意の撤回に対応したりする必要があります。
このように考えると、裁量労働制の導入や運用に伴う負担は、小さくないといえるでしょう。
従業員にとっての裁量労働制のメリット
裁量労働制は、従業員にもメリットのある働き方です。会社に時間を管理されないため、柔軟な働き方が可能になるためです。
労働時間の柔軟性・ワークライフバランスの充実
通常の労働時間制では「9時から18時まで」を拘束されますが、裁量労働制では自分で労働時間を調整できます。自分の都合に合わせ、働く時間帯をずらしたり、増減したりできます。
そのため、仕事とプライベートの両立がしやすくなり、より良いワークライフバランスの実現も期待できるでしょう。
場合によっては労働時間を短縮可能
裁量労働制で働くことで、労働時間を短縮できることがあります。
普通の働き方で「8時間」かかる仕事でも、効率良く働けば「7時間」で終わることもあるでしょう。そうした場合でも、裁量労働制では賃金が減額されることはありません。
本人の集中力や工夫次第で労働時間を短縮できることも、裁量労働制のメリットです。
従業員にとっての裁量労働制のデメリット
裁量労働制で働くデメリットは、労働時間管理が難しいことです。
労働時間について自己管理を行う必要がある
裁量労働制では、働く時間を自分で管理するため、ある程度の自己管理能力が求められます。
自己管理能力が高い人は、裁量労働制下で効率良く働き、良い結果を出すことができるでしょう。
しかし慣れないうちなどは、仕事を切り上げるタイミングがつかめず、つい長く働いてしまいがちです。また、成果を上げようとして仕事を続けた結果、長時間労働になることもあるでしょう。
そして、裁量労働制で長時間働いても、賃金には反映されません。そのことがモチベーション低下につながることもあります。
裁量労働制における残業代の計算方法
裁量労働制の場合は、みなし労働時間を使って賃金を計算します。ここでは、裁量労働制を適用した場合の賃金の計算方法、時間外・休日・深夜労働の割増賃金の計算方法について説明します。
みなし労働時間による一定の賃金支払
裁量労働制で、1日のみなし労働時間を「8時間」と定めているときは、実際の労働時間が6時間であっても、また10時間であっても、8時間労働したものとして賃金を計算します。
なお、裁量労働制を導入しても、休日手当や深夜手当は支払わなければなりません。また一定の場合には、時間外手当の支払いも必要です。
時間外手当の計算(法定労働時間を超えるケース)
労働基準法は、法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて労働させた場合は、通常の25%以上の割増賃金(時間外手当)を支払うよう義務づけています。
裁量労働制でも、みなし労働時間自体が法定労働時間を超えている場合は、超えた分は時間外手当の対象です。例えば、みなし労働時間を「1日9時間」と定めた場合、法定労働時間を超えている1時間分の時間外手当が必要になります。
深夜残業の手当
労働基準法により、深夜(22時から翌日5時まで)に労働させた場合は、深夜手当として、通常の25%以上の割増賃金を支払う必要があります。
裁量労働制の下でも、22時から翌日5時までの時間帯に働かせたら、深夜手当の支払いが必要です。
休日労働の手当
労働基準法では、法定休日に労働させた場合は、休日手当として、通常の35%以上の割増賃金を支払うこととされています。
なお、法定休日とは「週1日、または4週に4日の休日」をいいます。
裁量労働制が適用されていても、法定休日に働いた場合には、休日手当が発生します。
裁量労働制の導入手続き・やり方
裁量労働制を導入するには、どのような順序で何をすればよいのでしょうか。専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制に分けて説明します。
専門業務型裁量労働制の導入手続き
専門業務型裁量労働制を導入するには、以下を行う必要があります。
- 専門業務型裁量労働制について、過半数組合または過半数代表者と労使協定を締結し、届出を行う
- 就業規則や個別の労働契約書に制度について記載する
- 労働者の同意を取得する
- 制度を実施する
なお、労使協定の有効期間が満了したら、再度、労使協定を締結する必要があります。
上記のうち、労使協定について、少し補足します。労使協定で定める事項は、次のとおりです。
- 対象とする業務
- 1日のみなし労働時間
- 健康・福祉確保措置
- 苦情処理のための措置
- 適用するときは労働者本人の同意を得なければならないこと
- 同意しなかった場合に不利益な取り扱いをしないこと
- 同意の撤回の手続き など
締結した労使協定は、所轄労働基準監督署に届け出る必要があります。
企画業務型裁量労働制の導入手続き
企画業務型裁量労働制を導入するときに必要な事項を、紹介します。
- 労使委員会を設置する(労使委員会がない場合)
- 専門業務型裁量労働制について、労使委員会で決議し、届出を行う
- 就業規則や個別の労働契約書に、制度について記載しておく
- 労働者の同意を取る
- 制度を実施する
上記のうち、労使委員会の決議事項について補足します。
労使委員会の決議事項は、次のとおりです。
- 対象とする業務
- 対象労働者の範囲
- 1日のみなし労働時間
- 健康・福祉確保措置の内容
- 苦情処理のための措置の内容
- 制度の適用に当たり労働者の同意を得なければならないこと
- 同意しなかった場合に不利益な取り扱いをしないこと
- 同意の撤回の手続き 等
なお、決議書は、所轄労働基準監督署に届け出る必要があります。
裁量労働制を導入するうえでの注意点
裁量労働制はメリットの多い制度ですが、適切に運用しないと長時間労働につながる懸念があります。
適切な管理を行わない場合、長時間労働になりやすい
裁量労働制の問題の一つに、長時間労働を助長しやすいことがあります。長時間労働になる原因の一つは、労働者に過剰な量の仕事が課されることかもしれません。
裁量労働制では、長時間働いても賃金が増額されないことから、みなし労働時間内では終わらない量の仕事を、労働者に課す会社もあるようです。
しかしその結果、長時間労働が続けば、労働者の健康面に支障が出ることもあり、会社の責任が問われます。
そうした結果にならないよう、裁量労働制を運用するときは、みなし労働時間と業務量が釣り合うよう、労働者の能力も勘案し、適切に管理することが大切です。
厚生労働省の不適切データ問題
以前、裁量労働制の労働時間をめぐる不適切データが問題になりました。
2018年、当時の安倍首相が、国会答弁で「一般労働者より裁量労働制の労働者の方が、労働時間が短いというデータがある」旨を発言しました。
しかし、その厚生労働省のデータは、一般労働者に「1ヶ月に最も残業時間が多い日の残業時間」を、裁量労働制の労働者に「1日の通常の労働時間」をそれぞれ質問し、集計した不適切なものでした。
そしてその後、別の調査で「一般労働者の方が裁量労働制の労働者より労働時間が短い」結果が出ていることが判明しました。
こうした騒動の結果、働き方改革関連法案に盛り込まれる予定だった裁量労働制に関する法案は、見送られることになりました。
制度をよく知って、裁量労働制を活用しよう
裁量労働制とは、実際の労働時間にかかわらず、労使で設定した「みなし労働時間」を働いたものとする制度で、専門業務型と企画業務型の2種類があります。柔軟な働き方として注目されていますが、長時間労働を助長しやすいといったデメリットも指摘されています。
2024年4月、裁量労働制のルールが変更され、労使協定や労使委員会の決議事項などが変更されました。複雑な制度ですがメリットも多いため、ルールをよく知ったうえで、裁量労働制を活用してみてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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